第3回アンティーク検定・お役立ちブログ2

(前回の続きです。)
 

・これは、何でしょう?
 

 この1本だけですと、はて何だろう?ワインのカラフ?水のボトル?それともふた付の花器?
 
 いろいろな想像が浮かび上がりますね。
 もちろん、今これを手に入れて、どう使おうと、それは自由です。ただ飾っておいても、素敵な置物です。
 

 でも、当時は何の目的で作られたのでしょうか?そろそろ謎解きをしましょう。
 

 19世紀後半のヨーロッパでは、産業革命のおかげで、鉄道網が発達し、人はレジャーで旅行ができるようになりました。それまでは、人は生まれた地から半径何キロまでの間でのみ生活をし、その場所を動く事なく、一生を終えたのです。
 

 旅行するようになると、必要なものは・・・旅行セットです。
 今の日本では、手ぶらでも、ホテルのアメニティが至れり尽くせりですが、今でもヨーロッパでは、高級ホテルでも歯ブラシはないところがほとんど。
 その旅行セットも、ブルジョアのセットですし、まだプラスチックは大量生産されていなかったのですから、こんなに豪華だったりしていました。
 
 
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 さて、このふた付きボトルですが、これは化粧瓶です。
 香水瓶と表記されていることもありますが、香水、化粧水、そういったものを入れていたのでしょう。
 

・これは、どこのメーカーのものでしょう?

 baccarat_necessaire
 

 比較的よく見るものですので、知っている方もいるかもしれません。
 

 知らない場合、こういったものは、どこかにサインが入っていないのかな?と、よく裏返したりしてサインを探しますが・・・これは、入っていません。
 

 答えは、バカラ社の化粧瓶です。
 

 ちょうど昨年(2014年)、バカラ社は創業250周年を迎え、日本でも全国で展覧会が開催されていましたので、記憶に新しい方もいらっしゃるでしょう。
 

 サインが入っていないのに、バカラって分かるの?
 

 はい、分かります。
 バカラ社に、このように文献が残っており、1890年代からこのシリーズの生産が始まっていたということが分かっています。
 

baccarat_bambou
 
 
 ちなみに、バカラ社でエッチングのサインが入るのは1936年から。それ以前は、紙のシールによるサインは入っていたのですが、当時の紙のシールが残っていることはほとんどなく、従ってサインなしのものを「オールドバカラ」と呼んでいます。
 

 100年を経たガラスですから、揃っているものはあまりなく、1つ割れ、1つ壊れ・・・今ではバラけて単体で、ヨーロッパの蚤の市やアンティークマーケットでよく見かけます。もちろん揃っていれば、それだけ価値もありますので、お値段も、します。
 

 バラバラになったこういうのを1つ1つ集めていって、また揃えてみる、というのも、現代の醍醐味かもしれませんね。