日別アーカイブ: 2016年4月26日

オークションというもの

 オークション会社の人から見たらたまったものではないでしょうが、美術工芸品を間近で見たい、と思ったら、オークション会場に足を運ぶことです。もっとも日本では、招待状がないと入れなかったり、業者さんに限っていたり、よほどの度胸がないと入りづらかかったり、ということがありますが、欧米では、市民が気軽に街のオークションハウスを訪れます。
 

 下見会、内覧会と謳っているときは、基本その商品をじっくり手にとって見て、状態をすべて納得した上で入札してもらうために行われるものですから、あらゆる情報を与えるように設定されています。
 

 そうは言っても、よいこと(有名人の来歴など)は比較的目立つように書いてあっても、悪いこと(瑕疵など)は、時として書かれていないこともあります。しかし、目の利く人であれば、落札予想価格から、状態や、たとえば年代的に修復されているのが当たり前の作品であるとか、熱処理をしていないわけがない石だとか、そういったことは暗黙の了解になっていますし、聞けば普通は正直にスタッフが教えてくれます。
 

 出品者にとっても、オークション会社にとっても、競争相手がいればいるだけ価格は上がりますから、なるべく多くの「潜在的入札者」がいる場所で開催しようとします。たとえば、現代アートならアメリカ、宝石や時計ならスイスや香港、というように・・・。
 

宝石のオークションの下見会

宝石のオークションの下見会


 

 残念ながら日本は、かろうじて先進国ではありますが、一般に美術品を買う人が少ないのか、世界的なオークションが開催されることは稀です。しかしながら、日本で価格を保っている近代作家の作品などは、やはり日本のオークションでよく見かけます。
 

 また、オークションが行われる場所によって、値段が異なってくるのも、よくある話。その地域にたくさんコレクターがいれば、当然その地域での価格は上昇します。
 

 それならは、すべてその地域で行えばよいのではないか、と思いがちですが、欧米の街のオークションハウスには、たとえば出品者の遺族がまとめて放出したありとあらゆるジャンルのものがあり、1点2点だけを特別なジャンルのオークションに出すまでもない、ということがあるのです。その場合、お宝であっても、まとめたジャンルのオークションではない場合、テキトーな値段で落札されてしまう、といったこともよくあります。
 

 オークション会社、というと、有名な会社の名前ばかりが頭に浮かぶ人も多いでしょうが、街のオークションでは何千円、といった金額で落札されるオークションも普通に行われているのです。
 

 当協会の6月の海外研修では、オークションハウスの見学が入っています。パリ・ドルーオー会館は、16のオークションルームがあり、日曜日以外は毎日、下見会かオークションが開催されていて、誰でも気軽に(最近は荷物検査がされているようですが)入ることができます。その日はどんなものが出ているのか・・・楽しみですね。