2017年秋 パリ&ヴェルサイユ研修 第5日目

 いよいよ最終日。今日は雨が降るかも、と言われていたのもまた嬉しく裏切られ、太陽が!
 

 今日の午前プログラムは、パリ公設オークション、クレディ・ミュニシパルでのオークション参加です。クレディ・ミュニシパルは、ルイ16世の時代から存在する、公設質屋。ではなぜ、そこでオークションが行われるのか?その仕組みについて、説明しましょう。
 

 市民がお金を借りるのに、普通は銀行へ融資の依頼に行きます。でも、担保や信用がなくて融資が下りないケースだってあります。そんなとき、クレディ・ミュニシパルに来れば、質種と共に、お金を貸してもらえます。質種となるのは、通常は宝石とか金(きん)、でも美術品・工芸品も質種として受け入れてもらえます。それら質種の評価額を算出してもらい(それを算出するのは、国家資格を持ったオークショニアが行います)、評価額の半額を即金で貸してもらえます。
 

 1年経って、借りたお金と利息を返せば、当然質種は返してもらえます。でもお金が返せなくても、利息さえ払えば、そのまま借りたお金は借りていられるのです。例えば2000ユーロの評価額の宝石を持ち込んで、その半額の1000ユーロを借りる、1年経って借りた1000ユーロが返せなくても、1000ユーロの1年分の利息さえ払えば、またそのままお金は借りていられる、というわけで、これは何度でも更新できます。つまり利息だけ払えば永遠にお金を借り続けられることができるわけです。
 

 しかし、やがてその利息すら払えなくなる・・・と、催促がいきます。フランスの催促は容赦ありません。1度目、2度目・・・そして最終通告にも拘わらず利息の返金がない場合はどうなるか・・・その質種がオークションにかけられる、という仕組みなのです。もっとも、そんなケースは稀で、統計によれば90%のものは返却される、つまりちゃんとお金と利息を返して、元の持ち主に戻るそうです。
 

 ですから、ここで出品されているものは、すべて質流れ品。こういうものを縁起が悪い、と思う日本人もいるでしょうが、フランスでは、100年前、200年前のものが平気で出回っているアンティーク先進国、すべてのものが王侯貴族のお城からの出物であるわけではないのですから、そんなことはお構いなしです。そしてここで業者により落札されたものが、街中のアンティークショップで売られているわけですから。
 

 クレディ・ミュニシパルは、19世紀にはその役割が拡大し(つまりは人々がお金を借りに押し寄せ)、その質種も、金銀宝飾類だけではなく、生活必需品まで、そして最後にはマットレスまでもが持ち込まれました。マットレスを持ち込むということは、もう何もない、裸同然の貧困層が発生していた、という悲しい社会状況もありました。その持ち込まれたマットレスには蚤やシラミがたくさんいたので、蚤を取る蒸気の機械まで併設してあり、その機械は現在でも歴史的遺品として、(一般には入れないけれども、私たちは特別に入場許可してもらった)この施設のある場所に展示されています。
 


 

 
 さて、説明が長くなりましたが、今日のオークションは、宝石でも時計でも金製品でもなく、なんとテーブル・アートのオークション!実はこの研修内容を組み立てている夏前の段階では、クレディ・ミュニシパルのオークション・カレンダーは発表されておらず、9月に入ってから、偶然にも研修の週にテーブル・アートのオークションがあることがわかったのです。通常テーブル・アートや美術工芸品のオークションは3ヶ月に1度くらいしか行われませんので、これはもう偶然のラッキーとしか言いようがありません。
 

 すでにオンラインカタログで入札の目星をつけている研修生と共に、会場へ入ります。会場にあまり人がいないのは、今ではインターネットによるライブ・オークション参加が可能なことや、テーブル・アートはやはり宝石や金製品に比べて、参加業者が限られる、というのもあるかもしれません。
 

 クレディ・ミュニシパルのような公設オークションには、最低落札価格というのがありません。もちろん評価額はありますが、なにせ質流れ品ですから、いくらでもいいので売り切って、債権者にお金を返さなくてはならないのです。いくら以下なら売らない、なんて言えないわけです。それで、スタート価格で誰も手が挙がらないような場合、「競り下げ」が行なわれます。その競り下げのときに瞬時に手を挙げる、あるいは声を発するのがテクニックなのですが、慣れないとなかなか難しい技かもしれません。
 

 

 

 それでも主催者は、2ロットを「競り下げ」で落札し、また研修生も何ロットも落札、すっかりパリの業者の仲間入りをしてしまいました!Anneも家族から頼まれていたボヘミアンガラスに入札していましたが、思いの外上がってしまい、途中で断念。オークションというのは、競り出したら火傷しないところで上手く「手を引く」のもコツですが、ついついヒートアップしてしまいがちです。
 

 テーブル・アートなので、それほど「うぉぉぉぉ」というヒートアップになった出品物は少ないのですが、最近の傾向でしょうか、シルバーよりもステンレスの方が値段が付いてしまう、という現象がいくつか起こっていました。ゾーリンゲンとはいえINOXのカトラリーセット、評価額は60-80ユーロのものが最終的に550ユーロまで上がったときなど、さすがに「C’est fou ça!(おかしくないかい!)」という声も上がっていました。
 

 オークションが終了し、ここでホテルに戻って帰国の途につく研修生を見送り、全員一旦解散です。というのもかさばる落札物を持って、どこかに行くわけにはいかないので、一旦ホテルに戻ります。
 

 午後は当初セーヴル美術館見学の予定でしたが、直近になって、パリ6区でアンティーク市が開かれているという情報があり、ここも民度の高い地区ですから、良いものが販売されているに違いない、と急遽プログラムを変更、果たして大正解でした!クレイユ・モントローの完品の食器類が破格の値段で出ていたり、19世紀末のリキュールグラスやショットグラス、リモージュの金彩が美しい最上級のデミタスカップ、あれやこれや、またしても両手にしっかり戦利品を抱えての最終日午後、実際に現地で店主と談義しながら、値段交渉をなどもして買い物をする、これに勝る研修はないですよね!?
 

 5日間にわたって、研修に参加された皆様、お世話になった先生方、ありがとうございました。お疲れ様でした。
 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ研修 第4日目

 研修4日目。「明日から寒くなるよ、暖かいのは今日までだよ」と言われ続けているものの、ちっとも寒くならないパリ。傘も全く不要なパリ(日本のお天気は、ずっと雨!)。今日の午前プログラムは、主催者が大好きなプライベート・ミュージアム、ジャックマール・アンドレ美術館見学。この元ブルジョアの邸宅の成り立ちからフランス学士院に遺贈されるまでの歴史をAnneの解説で学び、18世紀装飾美術の世界に入り込みます。
 

 昨日のヴェルサイユでランビネ美術館がヴェルサイユ骨董村に負けた理由の一つに、今日このジャックマール・アンドレ美術館の見学が予定されていたから、というのもあります。ランビネ美術館は正真正銘18世紀に建造された館ですが、ここジャックマール・アンドレ美術館は19世紀に建てられた、18世紀コレクターの美術館なのです。そう、あのニシム・ド・カモンド美術館と似ていますね。18世紀の装飾工芸品というのは、19世紀のブルジョアにとって、憧れであり、美の真髄でもあったのです。
 

 ランチは、この邸宅がダイニングとして使われていた場所が現在は美術館内のカフェ・サロンとして運営されており、そこでキッシュとサラダのお食事をいただきます。通常フランスではお昼休みは13時くらいから、レストランは12時であればオープンしたばかりのガラガラなものですが、ここは11時45分のオープンと同時にお客さんが入り、12時過ぎにはほぼ満席!日本時間で12時に入ってよかった〜、と一同そのお味にも満足。天井画はティエポロのフラスコ画です。17世紀のタピスリーの装飾も見事です。

 

 

 ランチ後は、ゆっくり歩いてジアンのアトリエへ向かいましょう・・・のはずが、ミュージアムショップでハマってしまい、しばしお買い物。外はまたしても真夏のような暑さゆえ、バス2〜3区間で移動し、ジアンのアトリエへ。
 

 今回の研修は、「見学する」だけではなく、「実践する」が含まれているのですが、今日の午後はジアンにて、陶器の絵付け体験に参加します。
 

 ちょうど初日の講座でporcelaine dure(硬質磁器)までを学び、その後19世紀に登場したfaïence fine(上質陶器)を学ぶ時間はなかったのですが、Gienはまさにこのfaïence fineですから、続きはここで、実践を交えて学びます。
 

 

 私たちを迎えてくれたのは、ソレンヌさん、日本語が話せます。ジアンの歴史や特徴といったことを一通りざっくり学び、そしてタブリエを身につけて、いきなりの絵付けスタート。今回は焼成する時間はないので、絵付けだけを、グアッシュを用いて行います。どんな色から色をつけていくのか、線はどうやって描いていくのか、絵付けの失敗はやり直しがきかないので、緊張のあまり筆が震えてしまったり・・・でもどうにかこうにか、みなさん仕上がり、バックスタンプを押してもらって完成です!
 
 

 今日は研修4日目で、あと1日ありますが、最終日の午前中までの参加で、用事のため帰国しなくてはならない研修生もいたため、前倒しで今日の夜にカクテル・パーティ&ディプロマ授与式を行いました。
 

 

 パーティには、特別ゲストでébéniste(家具職人マイスター)、そしてそのアシスタントの日本人女性アサコさんをお迎えし、通訳のマサコさんをも交えて、おしゃべりを楽しみました。いつもならAnneのお子さんが給仕係として参加してくれるのですが、今日の夜はお習い事、そして明日も学校のため、今回は残念ながら不参加です。
 

 

 5日目に続きます。
 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ海外研修 3日目

 今回の研修タイトルに「ヴェルサイユ」と入っているので、てっきりヴェルサイユ宮殿に行く!と勘違いされた方もいらっしゃるようですが、ヴェルサイユ宮殿には行きません。正確には、ヴェルサイユ宮殿の前は通りましたが、入場はしていません。
 

 ヴェルサイユ宮殿は、もちろん素晴らしい国家遺産で、もし初めてフランスに行くのであれば訪れるに値するものですが、ここはツアーでも組み込まれているほど有名な観光地、アンティーク研修で行かなくても、いくらでも個人でも行けるところです。ありとあらゆるガイドブックにも載っています。私たちの研修は、この研修に参加しなければ体験できないようなところに行って、普通の旅行者ではできないようなことを行っているのですから、今回はせっかくヴェルサイユに行くけれど、宮殿見学は、パス。参加者の方々も「昔ツアーで行きました」という方ばかりでした。
 

 それでは何をしにヴェルサイユに行くのかといえば、まずはヴェルサイユ宮殿のお膝元にある、マナースクールのサロンにて、テーブルアートの歴史やテーブルマナーのレッスンを体験する、というのが午前中のプログラムです。
 
 そのスクールとは、Madame France de Heereの主催する、L’atelier de savoir-vivre(アトリエ・ド・サヴォワール=ヴィーヴル)、savoir-vivreとは礼儀作法のこと。このスクールでは色々なコースがありますが、私たちは初心者用入門編をお願いしていました。
 

 さて、朝9時半前に、予約したミニバスにてパリを出発した私たちは10時過ぎにはヴェルサイユへ到着、少し近くをぶらついてからMadame de Heereの私邸へ到着します。迎えてくださったのは、ご本人と、Liptonという愛らしい犬。
 

 Madame de Heereは、その苗字からわかるように、フランドル系の貴族の末裔の方。彼女によればヴェルサイユという街は、ヴェルサイユ宮殿が宮廷になった時代から貴族が住み始め、街を形成していったので、今でもやはり民度の高い街であり、元貴族も多く、また子供の多いカトリック系の住民が多いとのこと。そう、フランスで子供が多いのは、よっぽどのお金持ちか、逆によっぽど貧しいかのどちらかなのです!Madame de Heereにも4人のお子さんがいらっしゃるとのことでした。
 

 レッスンは、カフェとシューケットをいただきながら、フランス料理がなぜユネスコの無形文化遺産になっているのか、といった説明から、17世紀からの宮廷での食卓の歴史をざっと学びます。フランスは何でもかんでも学びは歴史から入るところが特徴ですが、これはとても大事なことだと思います。
 


 

 

 そして、実践演習へ。フランスに住んでいない日本人が、フランス人の自宅に招かれる、とうい機会はそうそう訪れるものではないと思いますが、今回私たちは、「招かれた」ようなシチュエーションでのレッスンが始まります。
 

 まずは挨拶の仕方。映画で観る、手の甲に頰付けのキスはどんなときにするのか?初めて会った時の握手の仕方は?相手が若い女性と年配の女性の場合、挨拶の仕方まで変わってくるのか(変わります)、そんなことを実践形式で行います。みなさん緊張するあまり、予定外の動作などもして、「そこは、足は曲げない!」なんて訂正されながらも、なんとか様になりました。
 


 

 続いてはテーブルアート。今日のメニューはこれこれです、さて、まずは思うようにテーブルセッティングをしてみてください、と。みなさん思うようにセッティングをし、一つ一つ、Madame de Heereに直してもらいます。もちろんその理由を丁寧に説明していただき、理解しながら。
 

 残ったスープをすくうのに、お皿を傾けてもいいの?パンでソースを拭いてもいいの?いろいろな質問が出ましたが、すべてのケースにおいて(なぜなら答えはシチュエーションによって異なるので)丁寧に教えていただき、あっという間の入門コースでした。
 


 

 お昼は、ヴェルサイユ宮殿を横切り、トリアノン・パレスへ。ここも、研修フライヤーには「トリアノン・パレスにてランチ」とありましたので、てっきり宮殿内プチ・トリアノンの中にでもあるカフェか何かで食事をするのか、と思っていた方もいたのですが、トリアノン・パレスはヴェルサイユにあるラグジュアリーホテルです。日帰りで十分行けるヴェルサイユに泊まる方はあまりいないのかもしれませんが、ここはスパやエステを備えていて、おそらくはヨーロピアンの富裕層が1週間ほど滞在してゆっくりリラックスするような高級スパ・ホテル。カリスマ料理人ゴードン・ラムゼイのレストランが入っているので有名です。
 


 
 私たちは、ラ・ヴェランダbyゴードン・ラムゼイにてランチを。本当は午前のマナースクールでランチを実際に食べるコースもあったのですが、マナーを学びながら食べても食べた気がしないし、どうせなら評判のレストランでコース料理をいただきましょう、ということで、正解でした。
 

 きちんとしたフランス料理を一度はコースで食べる、というのも、テーブルアートを知る上で大切なことだと思います。さすがに毎回はできないですが・・・。
 

 
 トリアノン・パレス内で、ついついお土産を買っちゃったりしながら、午後の予定地を半決め状態で後にします。午後と言っても、コース料理を食べた後は、もう午後の3時。
 

 午後は2つのプランがあって、1つはランビネ美術館の見学。ヴェルサイユに日帰りでやってくる人の99%はヴェルサイユ宮殿を訪れるので、この18世紀に建てられた素晴らしい美術館を見学する人はまずいないのですが、装飾美術部門が充実しており、美術品や美しい家具に囲まれて暮らしていた18世紀ヴェルサイユ・ブルジョワの室内を見ることができるのです。
 

 もう1つのプランは、ヴェルサイユ骨董村の散策です。ただ骨董村は基本金土日のみのオープンで、それ以外の日は、ゆるーく開けている店もあるかもしれない、という程度。
 

 幸い両者が至近距離にあるので、まずは行ってみましょう、と腹ごなしに歩き、美術館の場所を確認し、骨董村へ。どこも開いてなかったら美術館に戻ればいいだけなのですが、果たして行ってみると・・・
 

 
 大半が閉まってはいるものの、開いているお店ー正確には従業員が店で事務仕事をしているので、ついでに開けているような店、といってもいいのでしょうがーがあり、中に入って見せてもらうと・・・なんだか買いたいものが出てきてしまった研修生。18世紀のガラス瓶を購入したお店は、置いてあるものから一流店だとすぐにわかりますが、話を聞いてみると、ビエンナーレにも出店しているレベルの店で、18世紀の価値ある工芸品を扱っているのだとか。若い店員さんの知識も深く(と上から目線で言うのもナンですが、最近では何も知らない人が店番でいることも少なくないのです)、話せば話すほどいろいろなものを見せてくれるのも、フランスならでは。
 

 

 民度の高い地域に素晴らしい工芸品が売られている、というのはやはり本当。もちろんその価値にふさわしいお値段ではありますが、若干パリより安めな感じもしました。
 

 
 調子に乗って開いているお店を片っ端から訪れ、お買い物。店主同士でおしゃべりしているようなのどかな光景ですが、ねえ、これ欲しいんだけど、と言うと愛想よく応じてくれます。パリではあふれんばかりにいる中国人観光客も、この日ここには一人もいません。
 


 

 「これ、全部の店が開いていたら大変なことになっていましたね」とお互い言い合い、帰りのミニバスを待つも、なかなか現れず・・・電話をすると、「シャトー(ヴェルサイユ宮殿)の前じゃなかったっけ?」。そう、ヴェルサイユに行ってヴェルサイユ宮殿をパスする行動を取るお客はレアなのです!
 

 楽しく充実したヴェルサイユ・デーでした。
 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ海外研修 第2日目

 今日は比較的ゆっくりのスタートです。よく海外旅行のツアーに参加されると、朝6時半朝食、8時出発といった強行スケジュールが多いのですが(効率よく沢山の見学地が詰め込まれていて、それはそれで有意義だと思いますが)、私たちの研修は、あくまでも中身のみをプログラミングしており、自由時間はそれぞれ好きなことをして滞在できます。朝ジョギングをしてもよし(さすがにいなかったですが)、買い物をしてもよし(フランスではスーパーは日本より早く、9時にはオープンします)、朝寝坊をしてもよし(主催者の特権!?)・・・。
 

 午前は11時にオープンの銀食器ギャラリーにて、実施でのレクチャーを行いました。パリでも有名な銀食器専門店Isabelle Turquinの店内にて、18世紀の銀食器の中でも、レアなものをいくつか見せてもらいます。まず、ここが銀食器専門店だと外から見てもわかりません。それもそのはず、このギャラリーは元ファーマシーだったところをギャラリーにしているのですが、看板や内装の一部はファーマシー時代のものをそのまま継承しているのです。
 
 

 これは、何に使うものかわかりますか?の恒例のクイズ、なかなか食器だけ見ても想像がつきません。そう、フランスの食卓史、テーブルアート史を学んでいないとわからないものがたくさんあります。例えば、これはナツメグを潰すものですよ、と言われ、はてナツメグはどんな料理にどのようにいつから使われていたのか?そう、総合的な知識がないと、なかなかわからないものが多いのですが、そんなお話もすべて解説してもらいます。
 

 

 
 19世紀の半ば以降、クリストフル社により爆発的にシルバープレートの銀食器が量産された中で、18世紀のスターリングシルバーの品々は貴重です。その中でも、状態のよい、名工の工芸品を多く有しているのが、このギャラリー。お値段も・・・ちょっと、さすがにというものでもありますが。
 

 銀食器カトラリーに関して言えば、やはり揃っていてこそ価値のあるもの。最低でも6組、普通は12組などで販売されていますが、さすがにそんなに買えないし、要らないし・・・と思っていたら、「これはバラでしかないから、お安いのだけどね」と言って、バラの箱を見せてくれました。研修生のみなさん、むしろそれなら!といくつかお買い上げ。研修生価格(?)で、少し割り引いてもらえました。
 

 陶磁器、銀器、とくれば、次はガラスですね、というわけで午後はバカラ美術館へ。
 

 パリ16区と言えば、結構知られた富裕層地域ですが、その16区の中にも細かい序列があり、バカラ美術館のあるPlace des Etas-Unisといえば、最高級地区です。
 

 この瀟洒な邸宅は、20世紀の社交界の女王と言われた、故ド・ノアイユ子爵夫人の暮らした建物で、フランスの名門貴族の館、というわけです。子爵夫人亡き後は別の富豪の手に渡って、バカラ社はこの建物をいわば借りていることになるのですが、現在の持ち主は、すぐ隣に住んでいて、毎日窓からこの建物を眺めているのだとか。
 

 ここはバカラ本社であり、バカラのショップであり、レストラン「クリスタル・ルーム」を運営しており、そして美術館でもある総合施設です。最近所蔵したニューコレクションが展示されているというので、ワクワクしながら訪ねました。
 

 美術館ゾーンは残念ながら写真撮影は禁止ですが、美術館へと登る階段には、800kgの重さのシャンデリアが。19世紀中頃に作られたもので、当時はもちろんキャンドルで照らされていたのです。
 

 

 

 

 そして美術館の中は・・・・ここからは、ぜひパリに行かれる方は、館を訪れてみてください!
 

 3日目に続きます。
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ海外研修 第1日目

 「海外研修はいつ行うか決まっているんですか?」という質問をよく受けます。毎年この時期に行う、と決まっているわけではありません。過去に9月、6月、3月と行ってきて、今回は10月に。いろいろな季節で、その時々に行われるアンティーク・フェアやオークションに参加しながら、アンティークの世界を学べるプログラムを組んでいます。(次回は2018年3月を予定しています。これは、PADというフェアに合わせての研修です。)
 

 あくまでも旅行ではなく研修(=現地での専門家が指導を担当)ですので、オークションハウスも休みに入り、専門家もアンティークショップも蚤の市もお休みだらけの夏休み(8月)にはできないのが残念、8月にパリに行くと観光客しかいなかった、と言われる通り、ヨーロッパ最大の蚤の市サントゥワン(日本通称名:クリニャンクールの蚤の市)でも、半数以上の業者さんが3週間のお休みを取るお国柄ですから・・・。
 

 さて、今回のパリ&ヴェルサイユ海外研修の様子をレポートしていきたいと思います。
 今回のテーマは「art de la table(テーブル・アート)」に絞ってみました。
 

 第1日目は、ギャラリーSebastien Meunierを会場にウェルカム・コーヒーの後、フランスの陶磁器に関する講義。講師はテーブル・アートの専門家でおなじみの、Anne Kolivanoffの奥深い講義に、プロの日本語通訳が付きます。
 

 

 

 通訳が入ると、1時間の講義は実質30分くらいになってしまうところ、早口Anneのトークに、事前にしっかり準備をしてくださったプロ通訳のおかげで、1時間半の講義もたっぷり1時間半分の内容となりました。ファイアンスから入り、軟質磁器、硬質磁器に至るまでの歴史と特徴、マーケットでのプライスまでもをしっかり頭に入れます。
 

 午後はパリっ子たちも気軽に訪れるオークション・ハウス「ドルーオー」の見学。この日はオークションは行われておらず下見会のみでしたが、オークション・ハウスの成り立ち、利用方法、そして下見会場を通してテーブル・アートの出品作品について、みなさんであれこれウンチクを語りながらのひととき。
 

 ーえ、触っていいんですか?え、開けてもいいんですか?(自分が落札するかもしれない商品なのですから、思う存分状態を確かめて、実見をしなくては!)
 

 ーあのテーブル・ウェア一式の予想落札価格、いくらだろう、え、こんなに安いんですか?70ピースもある!ああ、でも全部持って帰らなくちゃいけないんですよね・・・、うーん、どうしよう・・・(落札したが最後、はいどーぞ、と箱ごと渡されるオークションシステム、日本へ持ち帰りの場合は本当によーく考えないと。)
 

 ーこの黒い石、なんですか?あまり見ないですよね。(カタログを調べて)なんと隕石!?そんなものまで出品されてるんですか!
 

 

 
 

 ドルーオーを出た後は、すぐ近くにギャラリーを構えているTourbillon氏が私たちを迎えてくれ、ガレやドームのガラス作品を紹介しながら、ガラスの技法に関してのレクチャーをしてくださいました。ウン千万円級の作品は、ウィンドーや店内ではなく、金庫の中に入っていて、普段はお得意様にしか見せないものですが、惜しげもなく見せてくれて、「触ってみなさい、触らないとわからないでしょう」と。Tourbillon氏のお店は、ドルーオー通りと、蚤の市サントゥワンのマルシェ・ビロン(サントゥワンの中でも最も高級店が連なるマルシェ)にあります。
 

 そして、ドルーオー界隈と、パッサージュを散策。築地市場の周りに美味しい食堂があるように、オークションハウスの周りにはたくさんのギャラリー、アンティークショップ、鑑定事務所、オークション会社が軒を連ねています。この界隈をQAD(Quartier Art Drouot)と言うのですが、QADは言ってみれば「場外」?
 

 初日はこんなところで、終了となりました。
 

 パリはまだ夏時間なので、日の入りも遅く、19時過ぎまで明るい上に、例外的なインディアン・サマー、半袖の人もいて、テラスでみなさんガッツリとビールを飲んでいます!日本の天気をスマホでみては、「あら、雨続きのようね、しかも寒そうね、うっしっし」と参加者一同ほくそ笑むのでした。
 

 第2日目に続きます。
 
 


ウィンザーチェア、シンプルな機能美に満ちた、この愛らしい椅子

 AEAOサロン倶楽部10月の会は、秋晴れで日差しの眩しいお天気の中、開催されました。
 

 今回は日本民藝館で開催中のウィンザーチェア展の見学を含め、ウィンザーチェアについて学びましょう、というテーマ。通常まずは見学前の勉強会を行うのですが、ミュージアムカフェを含め、適当なカフェが近場にありません。パンがなければケーキを・・・ではないですが、カフェがなければレストランで、というわけで、東大キャンパス内にある、フレンチレストランでランチをいただきながらの勉強会という、ちょっとゴージャスなサロンになりました。
 

 守衛さんの厳しいチェックのある大学もありますが、われらが(!?)東京大学駒場キャンパスは、公開試験会場などにもなっているせいか、フリー。もっともこの広大な敷地内に、学食ではなく一般のレストランがあるのですから、まあ当然ですね。
 

 11時の開店と同時にレストランへ入り、ランチをいただきながらのミニ・レクチャー。ウィンザーチェアの由来は?いつからある、どんな椅子?イギリスとアメリカでウィンザーチェアは違うの?なぜ日本でこんなに有名なの?ウィンザーチェアの影響を受けた家具デザイナーって?といったことを学びます。
 

 ランチお勉強会の後は、東大キャンパス内をお散歩しながら、日本民藝館へ。この辺りは高級住宅街でもあるので、みんなで「あの家、素敵〜!」「停まっている車、何気にすべて外車ですねえ」なんて街を散策しながら、到着。趣のある、立派な建物が青空に映えています。民藝運動の中心人物であった柳宗悦が初代館長を務めた、歴史ある博物館です。
 

 

 靴を脱いでスリッパに履き替え、目指す大展示室「ウィンザーチェア ー日本人が愛した英国の椅子」にて、現物のウィンザーチェアを鑑賞、これだけのさまざまな種類のウィンザーチェアが一堂に会すと、圧巻です。コムバック・チェア、ボウバック・チェア、ロウバック・チェア・・・。
 

 イギリスの古陶スリップウェアなどの展示も愉しみ、西洋アンティークの世界は、決して王朝文化だけからのものではない、ということを再認識できた、よい展覧会でした。
 

 

 日本民藝館でのウィンザーチェア展は、11月23日まで開催されています。