日別アーカイブ: 2017年10月18日

2017年秋 パリ&ヴェルサイユ海外研修 3日目

 今回の研修タイトルに「ヴェルサイユ」と入っているので、てっきりヴェルサイユ宮殿に行く!と勘違いされた方もいらっしゃるようですが、ヴェルサイユ宮殿には行きません。正確には、ヴェルサイユ宮殿の前は通りましたが、入場はしていません。
 

 ヴェルサイユ宮殿は、もちろん素晴らしい国家遺産で、もし初めてフランスに行くのであれば訪れるに値するものですが、ここはツアーでも組み込まれているほど有名な観光地、アンティーク研修で行かなくても、いくらでも個人でも行けるところです。ありとあらゆるガイドブックにも載っています。私たちの研修は、この研修に参加しなければ体験できないようなところに行って、普通の旅行者ではできないようなことを行っているのですから、今回はせっかくヴェルサイユに行くけれど、宮殿見学は、パス。参加者の方々も「昔ツアーで行きました」という方ばかりでした。
 

 それでは何をしにヴェルサイユに行くのかといえば、まずはヴェルサイユ宮殿のお膝元にある、マナースクールのサロンにて、テーブルアートの歴史やテーブルマナーのレッスンを体験する、というのが午前中のプログラムです。
 
 そのスクールとは、Madame France de Heereの主催する、L’atelier de savoir-vivre(アトリエ・ド・サヴォワール=ヴィーヴル)、savoir-vivreとは礼儀作法のこと。このスクールでは色々なコースがありますが、私たちは初心者用入門編をお願いしていました。
 

 さて、朝9時半前に、予約したミニバスにてパリを出発した私たちは10時過ぎにはヴェルサイユへ到着、少し近くをぶらついてからMadame de Heereの私邸へ到着します。迎えてくださったのは、ご本人と、Liptonという愛らしい犬。
 

 Madame de Heereは、その苗字からわかるように、フランドル系の貴族の末裔の方。彼女によればヴェルサイユという街は、ヴェルサイユ宮殿が宮廷になった時代から貴族が住み始め、街を形成していったので、今でもやはり民度の高い街であり、元貴族も多く、また子供の多いカトリック系の住民が多いとのこと。そう、フランスで子供が多いのは、よっぽどのお金持ちか、逆によっぽど貧しいかのどちらかなのです!Madame de Heereにも4人のお子さんがいらっしゃるとのことでした。
 

 レッスンは、カフェとシューケットをいただきながら、フランス料理がなぜユネスコの無形文化遺産になっているのか、といった説明から、17世紀からの宮廷での食卓の歴史をざっと学びます。フランスは何でもかんでも学びは歴史から入るところが特徴ですが、これはとても大事なことだと思います。
 


 

 

 そして、実践演習へ。フランスに住んでいない日本人が、フランス人の自宅に招かれる、とうい機会はそうそう訪れるものではないと思いますが、今回私たちは、「招かれた」ようなシチュエーションでのレッスンが始まります。
 

 まずは挨拶の仕方。映画で観る、手の甲に頰付けのキスはどんなときにするのか?初めて会った時の握手の仕方は?相手が若い女性と年配の女性の場合、挨拶の仕方まで変わってくるのか(変わります)、そんなことを実践形式で行います。みなさん緊張するあまり、予定外の動作などもして、「そこは、足は曲げない!」なんて訂正されながらも、なんとか様になりました。
 


 

 続いてはテーブルアート。今日のメニューはこれこれです、さて、まずは思うようにテーブルセッティングをしてみてください、と。みなさん思うようにセッティングをし、一つ一つ、Madame de Heereに直してもらいます。もちろんその理由を丁寧に説明していただき、理解しながら。
 

 残ったスープをすくうのに、お皿を傾けてもいいの?パンでソースを拭いてもいいの?いろいろな質問が出ましたが、すべてのケースにおいて(なぜなら答えはシチュエーションによって異なるので)丁寧に教えていただき、あっという間の入門コースでした。
 


 

 お昼は、ヴェルサイユ宮殿を横切り、トリアノン・パレスへ。ここも、研修フライヤーには「トリアノン・パレスにてランチ」とありましたので、てっきり宮殿内プチ・トリアノンの中にでもあるカフェか何かで食事をするのか、と思っていた方もいたのですが、トリアノン・パレスはヴェルサイユにあるラグジュアリーホテルです。日帰りで十分行けるヴェルサイユに泊まる方はあまりいないのかもしれませんが、ここはスパやエステを備えていて、おそらくはヨーロピアンの富裕層が1週間ほど滞在してゆっくりリラックスするような高級スパ・ホテル。カリスマ料理人ゴードン・ラムゼイのレストランが入っているので有名です。
 


 
 私たちは、ラ・ヴェランダbyゴードン・ラムゼイにてランチを。本当は午前のマナースクールでランチを実際に食べるコースもあったのですが、マナーを学びながら食べても食べた気がしないし、どうせなら評判のレストランでコース料理をいただきましょう、ということで、正解でした。
 

 きちんとしたフランス料理を一度はコースで食べる、というのも、テーブルアートを知る上で大切なことだと思います。さすがに毎回はできないですが・・・。
 

 
 トリアノン・パレス内で、ついついお土産を買っちゃったりしながら、午後の予定地を半決め状態で後にします。午後と言っても、コース料理を食べた後は、もう午後の3時。
 

 午後は2つのプランがあって、1つはランビネ美術館の見学。ヴェルサイユに日帰りでやってくる人の99%はヴェルサイユ宮殿を訪れるので、この18世紀に建てられた素晴らしい美術館を見学する人はまずいないのですが、装飾美術部門が充実しており、美術品や美しい家具に囲まれて暮らしていた18世紀ヴェルサイユ・ブルジョワの室内を見ることができるのです。
 

 もう1つのプランは、ヴェルサイユ骨董村の散策です。ただ骨董村は基本金土日のみのオープンで、それ以外の日は、ゆるーく開けている店もあるかもしれない、という程度。
 

 幸い両者が至近距離にあるので、まずは行ってみましょう、と腹ごなしに歩き、美術館の場所を確認し、骨董村へ。どこも開いてなかったら美術館に戻ればいいだけなのですが、果たして行ってみると・・・
 

 
 大半が閉まってはいるものの、開いているお店ー正確には従業員が店で事務仕事をしているので、ついでに開けているような店、といってもいいのでしょうがーがあり、中に入って見せてもらうと・・・なんだか買いたいものが出てきてしまった研修生。18世紀のガラス瓶を購入したお店は、置いてあるものから一流店だとすぐにわかりますが、話を聞いてみると、ビエンナーレにも出店しているレベルの店で、18世紀の価値ある工芸品を扱っているのだとか。若い店員さんの知識も深く(と上から目線で言うのもナンですが、最近では何も知らない人が店番でいることも少なくないのです)、話せば話すほどいろいろなものを見せてくれるのも、フランスならでは。
 

 

 民度の高い地域に素晴らしい工芸品が売られている、というのはやはり本当。もちろんその価値にふさわしいお値段ではありますが、若干パリより安めな感じもしました。
 

 
 調子に乗って開いているお店を片っ端から訪れ、お買い物。店主同士でおしゃべりしているようなのどかな光景ですが、ねえ、これ欲しいんだけど、と言うと愛想よく応じてくれます。パリではあふれんばかりにいる中国人観光客も、この日ここには一人もいません。
 


 

 「これ、全部の店が開いていたら大変なことになっていましたね」とお互い言い合い、帰りのミニバスを待つも、なかなか現れず・・・電話をすると、「シャトー(ヴェルサイユ宮殿)の前じゃなかったっけ?」。そう、ヴェルサイユに行ってヴェルサイユ宮殿をパスする行動を取るお客はレアなのです!
 

 楽しく充実したヴェルサイユ・デーでした。