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小平新文化住宅へお邪魔しました

 本年も残すところあと1週間となりましたね。本協会も1年を振り返りますと、多くのみなさまに支えられながら数々の活動をしてきました。2回の海外研修、第6回アンティーク検定試験、そして毎月1回行われているAEAOサロン倶楽部、それぞれ多くの方達にご協力・ご参加いただきました。
 
 AEAOサロン倶楽部・8月の会でゲスト講師を務められた、淺井カヨ先生のご自宅が東京都小平市にあり、この度お邪魔させていただきました。最近ではマスコミへのご出演も多い先生ですので、ご存知の方も多いでしょうか。日本モダンガール協會の代表であり、古きよきものを愛するライフ・スタイルを実践していらっしゃいます。音楽史研究家のご主人・郡修彦さんとお二人で設計を行ったそのご自宅にて、「蓄音器鑑賞会&建物紹介」が随時開催されています。
 

 文化住宅というのは、日本で1920年代から30年代にかけて流行した和洋折衷様式の住宅で、この小平新文化住宅は、見事に当時の様式を再現した建物です。
 
 1920年〜30年代といえばヨーロッパはアール・デコの時代、当時の宮様であった朝香宮様は、パリにしばらく生活し、パリで出会ったアール・デコ・スタイルをそのまま日本で再現し、朝香宮邸(現東京都庭園美術館)を造りましたが、日本の一般の中流階級では、文化住宅と呼ばれる、三角屋根のある応接間を備えた住宅を建てていたようです。玄関を入ってすぐに応接間と呼ばれる洋室があるのが特徴、その応接間にて、ゼンマイ式蓄音機による音楽鑑賞会が催されました。
 

 蓄音機で聴く音楽鑑賞会、いまではとても貴重な時間です。昭和初期の音楽、当時の宝塚の少女たちの歌声・・・しばし時が止まります。
 

 

 そして、待望の建物紹介。どこもかしこも細部にわたっての、お二人の古き良きものを愛するこだわりが垣間見られる空間、アルミサッシではない木枠の窓枠は触ってもひんやりせず、エアコンなんてなくても火鉢のぬくもりで十分に暖かいお部屋です。
 


 

 とてもシンプルで機能的なお台所。
 


 

 これが噂の「氷冷蔵庫」です。電気を使わなくても物は冷やせていたのですね。
 


 

 2階の書斎も、アンティークなアイテムが和洋たくさん。
 


 

 そしてなんと、クリスマス・ケーキというサプライズが待っていたのでした。クリスマス、やはり大正から昭和の方たちも、楽しんでいたようですよ!
 


 
 AEAOサロン倶楽部、2018年もまた淺井カヨ先生との楽しい会を企画したいと思っています。前回ご都合のつかなかったみなさまも、乞うご期待くださいね。
 

 
 


華やかなりし、セーヴル磁器

 今日は今年最後のAEAOサロン倶楽部。師走の土曜日といえば、みなさんお忙しいでしょう、と思いきや、本サロンは早い段階で満席となり、キャンセル待ちが出てしまいました。それで急遽二部制とし、午前の回・午後の回と2回に分けて行うことに。
 

 セーヴルというのは、食器のオートクチュールのようなもの、さすがにそうそう出回っているものではありません。今回、ちょうどサントリー美術館にて開催されている「六本木開館10周年記念・フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」展を機会に、セーヴル磁器をちゃんと学んでみましょう、ということで、AEAOサロンでは初のテーマとしてセーヴルを取り上げてみました。
 
 

 主催者の色が思いっきり入り込んだ、身勝手な解釈を押し付けてしまったかもしれませんが、セーヴルの魅力はなんといっても18世紀の、軟質磁器時代にあると思っています。18世紀の装飾品・工芸品はエレガンスの頂点を極め、19世紀以降のコレクターの中にも、多くの18世紀贔屓な人たちがいて、お金持ちはこぞって18世紀の美術工芸品を買い集めていました。やはり社会の格差が大きく、富が集中していたからこそ華開いたエレガンスなのかもしれません。
 

 展覧会は、「マリー・アントワネットから草間彌生まで」と、18世紀から現代までを俯瞰する構成になっていますが、本展覧会の醍醐味はなんといっても18世紀の作品ではないか、ということで、ほぼ18世紀にフォーカスしたお話となりました。
 
 
 
 18世紀の貴族の生活、18世紀のテーブルアートの歴史などを知っていないとなかなか入り込めないアイテムもあります。そんなお話をしながら、また軟質磁器時代でしか作れない色、金彩の盛りについて、硬質磁器と軟質磁器が並行していた時代の絵付け顔料の違い、セーヴルが独自に開発した、ビスキュイと呼ばれる無釉白磁がセーヴルの花形商品であった経緯、リトロン、トランブルーズ、硬質磁器と軟質磁器はどうやって見分けられるのか、刻印はどう違う・・・と、18世紀だけでもどんどん話が尽きず、あっという間に時間は過ぎ去ってしまいます。
 

 会場は、銀座の、とあるカフェの個室、このお部屋はアンティーク調度品でセンスよく飾られた空間、本サロンにぴったりの雰囲気を醸し出しています。軽食の野菜のシフォンケーキやフレンチトーストもボリューム満点で、今回もとても楽しく充実したサロンでした。
 

 次回、来年早々のサロンは「ラリックの香水瓶」を取り上げます。
 (現在「満席」と表示しておりますが、会場のカフェは貸切にしましたので、お問い合わせください。)