西洋骨董鑑定の教科書、ついに発売!

 この度、パイインターナショナル社より、「西洋骨董鑑定の教科書」がついに発売になりました。
 
 

 美術史を学ぶための書籍は巷に溢れているのに、装飾美術を体系的に学ぶための本はなかなか見つかりません。とはいえある分野に特化したものーたとえば「ウェッジウッド物語」(日経BP社)、「リモージュボックス」(平凡社)、「ウィリアム・モリス」(河出書房新社)、「魅惑のアンティーク照明」(西村書店)ーといった本ーはありますし、洋食器のブランドやお店紹介のような本もそれなりにあります。そもそも装飾美術とは、使って愉しむためのもの、堅苦しい理論めいた本などなくても、興味を持ってコレクションしていくうちに、自然と覚える・・・当協会の設立者もそのように思っており、いわゆる「教科書」「検定本」を作ることには、あまり積極的ではありませんでした。
 

 日本人は真面目なので、教本があれば、教本を読んでガリ勉してしまいます。英検受かっても、喋れないじゃないか・・・というのも、英検攻略本で効率よく勉強すれば、検定試験は受かる、でもそれって英語のコミュニケーションを身につけたことになる?というのと同じで、モノを見ないで触らないで、買いもせずに、ただ本で覚えた知識で「アンティーク鑑定ができる」なんて人を作りたくはなかったのです。
 

 しかし、それはやはり傲慢な考えだったのかもしれないと思うようになりました。自然と身につける、なんてことは、よほどの情熱や時間をかけないと難しいのです。ここは日本、西洋ではありません。代々伝わる、おばあちゃんが使っていたチューリーンや、銀のシュガーシフタースプーンや、アンティークドールは、日本の家庭にはないのです。
 

 それに美術史も同じ、ただ絵を見ていても絵がわかるようにはなりません。絵画はそもそも誰もが簡単に理解できるものではありません。そう、美術は教養なのです。ちゃんと絵がわかるようになるためには、専門的な知識(たとえばアトリビュートなど)を学ぶ必要があります。解説書を読んだり評論を読んだり・・・1つの美術展が開催されるたびに、山ほど関連図書が刊行されているのも、そういう書物の助けなしには、理解できないからなのです。
 

 そうは言っても本を出版するというのは並大抵のことではない、今や書店は年々減り続け、本を読む人口も減り続け・・・やがて紙の本は消滅するのでは、とささやかれているご時世。出版助成もなかなか「公共性」がないゆえに応募基準を満たせず、という状態でした。
 

 そんな折、美術書や豪華本の出版で定評のある、パイインターナショナルさんより、イギリスのアンティーク専門家の本を翻訳刊行するにあたって、監修をお願いできないだろうかというご依頼が、当協会を通じてありました。これは神の思し召しか!?と、当協会を挙げて全面協力させていただくことに。
 

 このような経緯でもって関わらせていただいた本書ですが、ものすごい情報量がぎっしり詰まっており、また分野によっては日本語がまだ確立していない語句も多くあり、連日連夜、原書出版社、編集者、翻訳者を交えての研究、議論が続きました。
 

 椅子の脚一つとっても、日本語では「椅子の脚」、しかし原書ではどの部分を指すかによって語彙がいくつもあります。背の部分も同じ。「家具職人はこういう言い方をする」「いや、でも一般的にその言葉は誤解を招く」といったようなことが、多くありました。語彙が少ないということは、そのものの歴史が浅い、ということでもあります。そう、日本に西洋の家具や照明器具が入ってきたのは歴史的にも新しいので、燭台の枝の数によって呼び方が違うなんて文化はなかったのでした。
 

 本書が出版されたことによって、西洋装飾美術の世界を理解する手助けの一つとなれば、こんなに喜ばしいことはありません。
 

 画像だけでも3万点を超す豪華な教本ですので、ぜひ手に取って見てくださいね。
 

 本書は当協会でも販売しています。
 
  
 


サヴィニャックを見尽くす会 〜AEAOサロン倶楽部・4月の会〜

 レイモン・サヴィニャックというポスター画家を知っていますか?
 

 ミュシャ、ロートレックなどのアール・ヌーヴォーのポスター画家、またアール・デコ時代のカッサンドルなどに比べて知名度は低いかもしれませんが、「あぁ、牛乳石鹸のあのポスター!」「ペリエの、あれね!」とフランス人なら誰もが知っている、ユーモア満載のポスター画家、その展覧会「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」が練馬区立美術館にて開催しています。
 

 AEAOサロン倶楽部・4月の会は、サヴィニャックLOVEの中山久美子先生のプレ・レクチャーと、本展の見学会で行われました。
 

 レクチャー会場は、近隣カフェでお茶&タルトをいただきながら。サヴィニャックとは、どんな作家だったのか、彼がポスターに秘める思いとはなんだったのか、どんなメッセージをどんな方法で描いているのか、そんなお話を、図録を見ながら解説していただきます。
 
 

 

 

 サヴィニャックがアシスタントを務め、崇拝していたカッサンドルが最後には自殺してしまうのと対照的に、94歳まで生きたサヴィニャックの作品は、パリという20世紀の都会のウィット、ユーモアをふんだんに表しており、どれも愛らしいモチーフ、そこには強い政治的プロパガンダやイロニーといったものは見られません。実家が大衆食堂を営んでいた家庭であり、芸術家目線ではなく、一般人目線でものごとを捉えていたがゆえに、街中の広告というものの意図や効果をより理解していたとも言えるのでしょう。
 

 美術館会場は土曜日とあって、また会期の終わりに近づいていることもあり、多くの人で賑わっていました。なんと200点を越す作品数で、同館のほぼ全会場が本サヴィニャック展に当てられていました。
 
 

 現在のポスターデザイナーは、みなさんデジタル制作でしょうが、本展ではポスターの原画が数多く出品されています。グワッシュなどで描かれた原画は、それだけでファイン・アートと言える作品のレベルです。
 

 

 本展は練馬区立美術館での展覧会は4/15までですが、その後宇都宮美術館、三重県立美術館、兵庫県立美術館、広島県立美術館を巡回いたします。
 
 


3月のパリ研修・最終日

 いよいよラスト・デー。今日の午前は18世紀装飾芸術の集大成とも言える美術館、ニシム・ド・カモンドを見学します。カモンド伯爵のこの館は、20世紀の建物の快適さーたとえばエレベーターがあったり、清潔なバスルームがあったり、全館暖房やインターフォンのシステムなどーと、18世紀の装飾芸術の頂点という、2つの特徴を備えた、芸術作品そのもの。カモンド伯爵が、戦死した最愛の息子・ニシムの名を残し、フランス国家と装飾美術協会にまるごと遺贈した全作品が見られる、贅沢な空間です。
 
 
 

 特別展で、スザンヌ・ラリック展も開催されていました。
 

 ヴィリエ界隈にあるマルシェをふらつきながらお昼をした後は、雰囲気がガラッと変わって、職人さんのエリア、バスティーユ界隈へ。ここで、エベニストらによる家具工房の見学とデモンストレーションの様子を見せていただきます。実際にフランスの家具職人は、どういう仕事をしているのか、アンティークの家具修復は、どんな風に行われるのか、ニスはどうやって塗るのか、アンピール様式の家具を修復するときと、ナポレオン3世時代の家具を修復するときの違いは何か、その全貌をマイスター家具職人より、日本人で国家資格を持ったお弟子さん、石塚さんの解説で学びます。
 
 
 

 

  

 研修生の中には、今回アンティーク家具を買った人もいて、そのお手入れ方法、最適な用品を教えてもらい、早速近所のお店で購入していました。
 

 さて、楽しかった研修もいよいよ終わり、ディプロマ授与とカクテルパーティ。今回はオ・プティ・リッシュという、直訳すれば「小金持ち」という名前のレストランの個室サロンにて行いました。
 
 かつて大通りにあったレストランは、「大金持ち」、そして、1本脇に入った通りにあるこのレストラン「小金持ち」には、旦那さんを送った後の御者たちが、一杯引っ掛けるのに寄ったお店だそうです。「大金持ち」の方はオスマン大改造計画とともになくなってしまったのですが、「小金持ち」は2018年の現在でも残っているというわけで、伝統的なフランス料理のお店です。
 

 

 70年代から浸透したヌーヴェル・キュイジーヌでフランス料理も変わったかと思いきや、最近ではまた伝統料理に戻りつつあるようで、この「小金持ち」も、多くのお客さんで賑わっていました。
 

 実は恒例の、といっても過言ではない問題が発生し、研修日翌日23日はAFのストが予告されてしまいました。この日、研修生のうちのお2人がこの日のフライトを予約していたのですが、うち1人は、どうしてもその日に帰国していなくてはならないという事情で、飛ぶか飛ばないかギリギリまでわからないというリスクを取るよりは、と前日にフライトを変更し、前倒しで一足早く帰国の途に。もう1人は「まあなんとかなるでしょう」と鷹揚に構えていたところ・・・まさかの欠航。「でもなんとかなると思いますし、なんとかします!これもフランス研修のよい体験ですから」と、もうフランス人並みのエスプリが身についてしまいました。
 

 次回の海外研修は、9〜10月辺りを考えています。テーマはこれから、またアンヌ・コリヴァノフをはじめ海外の講師陣と相談、開催される文化イベントを考慮しながらプログラミングする予定です。
 
 


3月のパリ研修・4日目

 今日はマレ地区で、アンヌ・コリヴァノフによるコニャック・ジェイ美術館を見学します。マレには必見とも言えるカルナヴァレ美術館があるのですが、現在修復中で閉館(いつ再オープンするのでしょう!?)、その代わりといっては何ですが、コニャック・ジェイ美術館も18世紀の家具調度品を学ぶ素材がたくさん眠っています。
 

 この美術館は建物は16世紀末の建築物で、外見の華やかさは全くありません。しかし内部は、フランス装飾工芸品の黄金時代である18世紀の家具調度品のコレクション、中でも小さな小箱類(嗅ぎタバコ入れ)、ネセセールと呼ばれる裁縫道具セット、シャトレーヌやミニアチュールなどは見ものです。
 

 見学後は、しばらくお目にかからなかった太陽の下、ヴォージュ広場まで歩いて、レストランへ。さすがにアンブロワジーとはいかず、でもとても美味しいと評判のラ・パレス・ロワイヤルで頂きました。実際とても美味しく、入ってくるお客さんとサービス係の会話から、常連さんが多いのもわかります。
 

 腹ごなしにヴィラージュ・サンポールを散歩し(てお買い物をし)、メトロに乗ってゴブラン製作所へ。
 

 ゴブラン製作所の見学は週に1回、1時間半の館内ツアーでしか訪れることができません。フランス人の一般の方達に混じっての見学です。タピもタピスリーも、実際に製作しているところを見ることができるのですが、もちろん撮影NG、絶対に何も触ってはダメ、おしゃべりも最小限に、という条件で入ります。
 


 
 それでもお喋りがしたくて堪らなくて、職人さんに喋りかけちゃう人、質問に答えちゃう職人さん、やっぱりフランス人にとって黙っていることほど辛いことはないのでしょうか?館内専門ガイドさんも、この人は循環呼吸をしているのかしら、と思うほど、とにかく言葉多く喋り続けていた1時間半でした。
 

 研修生のみなさんの中にはフランス語がわかる方もいらっしゃいますが、さすがにこのゴブラン製作所ガイドの早口大会みたいなフランス語は消化不良です。終了後は小栁先生がメモを取ってくれていたおかげで、カフェにてみなさんで復習を行うことに。
 

 


3月のパリ海外研修・3日目

 今日はアニエス・キュニーによる、ジャックマール・アンドレ美術館でスタートです。今回のテーマ、18世紀の家具工芸品と室内装飾に欠かせないのが、この邸宅美術館。最終日のニシム・ド・カモンド美術館もそうですが、第二帝政期の銀行家はいったいどれだけ金持ちだったんだ、と驚くばかりの家具調度品が展示されています。
 
 
 

 常設展示をアニエスが解説している横から、喋りたくて堪らないガードマンが入ってきては、一言二言補足説明をしてくれるという、日本ではあり得ない光景もフランスならでは。
 

 現在開催中のメアリー・カサット展も一緒に見学しました。やはり印象派の展覧会は本家本元フランスでも大人気で、この展示会場はごった返していました。
 

 今日のランチは、美術館に併設されているカフェでのサラダ、キッシュ、タルト、どれも日本の2〜2.5倍の大きさです。ティエポロのフレスコ画を見ながらの優雅なひととき。普通フランスではランチは日本時間よりも1時間ほど遅く、13時くらいからなのですが、このカフェはオープンの11時45分には列ができるほどの人気スポットです。原則予約は受け付けないのですが、実は1日1組だけはこっそり受け付けてくれるのを知っており、今回は私たちのグループがその恩恵に預かりました。
 

 午後はいよいよアニエス・キュニーの私邸を訪れます。スクエア・ドルレアンという場所は、かつてフレデリック・ショパンやジョルジュ・サンドが住んでいて、アレクサンドル・デュマなどがしょっちゅう訪れた、19世紀後半の文化知識人たちの香りムンムンな地区、ここの一角にアニエスの自宅があります。
 
 
 
 
 
 
 

 すべての様式・時代の家具や調度品で彩られている彼女の自宅の家具を、実際に触ってひっくり返して、木を触って学ばせてもらうという、プレステージな授業です。
 
 
 
 
 
 
 

 そして夕方〜夜のオプションは、前日の講義室をお借りしたセバスチャン・ムニエのギャラリーのヴェルニサージュ、そしてギュスターヴ・モロー美術館での室内楽コンサート。
 
 
 
 

 フランスの美術館では、室内楽を中心としたこじんまりしたコンサートが時折開かれており、音楽と美術のマリアージュがなんとも言えない雰囲気を醸し出してくれます。日本のように、小煩い(!)アナウンスや、本日は〜、の解説も何もなく、時間になったらミュージシャンが出てきて演奏して、お客さんは粛々と神聖な音楽を聴いて、拍手して、おしまい。そんな素朴な文化つくりの魅力はなかなか真似のできないものですね。
 


3月のパリ海外研修・2日目

 今日は丸1日、ドルーオー界隈での研修です。午前中は、セバスチャン・ムニエのタピストリーギャラリーを講義室にお借りし、まずはヴィエノワズリーでウェルカム・コーヒー。そしてアンヌ・コリヴァノフによる、ルイ14世からアール・デコまでの室内装飾の変遷について、学びます。通訳の小栁先生は、元々フランスの装飾芸術に造形の深い先生ですが、近年フランス教育功労賞を受勲された方だけあって、的確な翻訳がありがたい限り。
 

 
 
 

 近くの大衆ビストロ、シャルティエ(アール・ヌーヴォーの内装で有名です)でランチの後は、いよいよオークションハウス・ドルーオーにて、実際のオークションの様子を見学したり、翌日のオークションのためのプレヴュー会場を見学したり、フランスのオークションのしくみについて、どっぷりハマります。こんなカンタンに誰でも参加できて、落札できたらその場で支払いをして持って帰れるシステムに、みなさんアドレナリンが全開?
 
 
 
 
 
 
 

 その後はドルーオーのすぐ近くにある、18世紀家具のエキスパート、パトリシア・ルモニエのギャラリーを訪問し、ミュージアムピース級の家具についての説明をしていただきました。
 
 
 
 
 

 本日最後はパサージュ散策ですが、午後の3時、4時でも季節外れに寒い0度前後のパリ、風邪を引きかけた研修生もチラホラいましたので、散策はさらっと小半時間ほどして、2日目が終わりました。
 


3月のパリ海外研修・初日

 3月18日より、公式海外研修がスタートしています。
 

 今回のテーマは家具と室内装飾。18世紀の宮廷から現代までの家具工芸品に焦点を当て、家具の歴史、様式、木材をはじめとする家具素材の流行や変遷、室内装飾のスタイル、マーケットでの市場価格と動向・・・と、アンティーク家具に関する一通りのことを5日間で一気に学ぶプログラムです。
 

 通常の研修では、月曜スタートでまずは歴史などの講義からスタートし、徐々に実際にそれらの作品が収蔵されている場所など関連箇所を見学し、そして最後にアートマーケットの世界を学び、週末にはマーケット巡りなどもどうぞ、という流れなのですが、今回は例外的にマーケットからスタートしました。
 

 理由はというと、年に2回パリ郊外で開かれる「シャトゥのアンティーク市」の最終日が3/18であり、折角3月に研修を行うのであれば、 この歴史ある市・シャトゥに行かない手はない、と思ったからです。
 

 ところが前日3/17からパリは異例の寒波が襲い、雪が舞って来ました。シャトゥの市はイル・デ・ザンプレッショニスト(印象派の島)と呼ばれている、中洲の島にあり、風も吹き付けます。3/18の天気予報も雪、気温も0度を超えるかどうかという寒さです。こんな過酷な気候の中、屋外の市に連れ出して研修生の方達が体を壊しても大変、急遽プログラムを変更することも考えていましたが、「それなら1人ででもシャトゥに行きたい」という参加者もいらして、予定通り決行することにしました。この日を逃すと、確かにマーケット巡りの日がありません。マーケットを見て学ぶ、というのはとても大事な「目利きへの道」なのです。
 

 シャトゥ在住40年近くになる日本人の方が、カイロを持って私たちを待ってくださり、みなさん「寒い・寒い」と言いながらも、最集合の時点では両手にあれこれ抱えて帰ってきました。
 

 

 その後はヨーロッパ最大の蚤の市、サントゥワン(日本の通称名では「クリニャンクール」)へ。午後になっても気温は下がらず、寒いままです。いくつかのマーケットで、それぞれの店主によるスタンドを解説していただいた後は自由解散、屋根のあるマーケットもありますが、それにしても真冬並みです。雪はいよいよ本降りとなり、主催者は知り合いの暖房の効いたスタンドの中で避難させてもらいながら、ご近所ディーラーさんたちとマーケット情報交換をしていました。
 

 その間にみなさんしっかり買い物をされていたようで、「家具を買って、日本への配送手続きをしちゃいました」なんてアッパレな方も!今回の研修生は、どうやら思った以上に勇敢でタフです。
 

 寒〜いながらも、楽しいマーケット散策の初日が終了しました。
 


パリジェンヌってなんだ!?

 3月のAEAOサロン倶楽部は、ちょうど世田谷美術館で開催中の展覧会「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」に合わせ、ファッションにおけるロココから20世紀初頭までのパリの世界での立ち位置、パリジェンヌの装飾品について学びました。
 

 当サロンはワンスポット形式で行なっており、基礎知識も特に必要なく、誰でもいつでも参加できる開かれたサロンなのですが、今日は1つ、参加者のみなさんへ課せられたデューティがありました。それは、「自分にとってパリジェンヌ(パリジャン)をイメージするものを、何か1つ身につけてくること」。何も新調する必要はなく、お化粧でもファッションでもベレー帽1つ、スカーフ1枚でも何でもよいので、ちょっとパリジェンヌ(パリジャン)を再現してみましょう、という企画です。
 

 この課題に「三日三晩悩みました」という方、「自分が思い描いたパリジェンヌのあの服を着ようとしたら、太ってしまって入りませんでした」などのコメントと共に、まずはお一人ずつ自己流パリジェンヌ(パリジャン)を披露しながらのスタート。普段のサロンでは、会場内に余計な音楽などが流れていたら音を消してもらうのですが、今回は、昨年亡くなったフランス映画界のミューズ、ジャンヌ・モローのシャンソンをBGMに。
 

 
 そして、中山久美子先生(共立女子大講師、当協会認定アンティーク・スペシャリスト)による「パリジェンヌ展」の講義を、展覧会の章立てに沿って、フランスの政治や社会、風俗の歴史とともに、ルイ14世時代からジャズ・エイジまでを一気に徹底解説していただきました。
 

 
 18世紀の頃のお話は、宮廷文化ゆえ自分たちに遠い存在であるパリジェンヌ感も、19世紀後半労働者の女性や娼婦までもがパリジェンヌになり得る時代になると、社会風俗も身近に感じられて、質問も積極的に飛び出し、活気あるサロンとなりました。
 

 今回のサロンは、参加者のご好意によりご自宅のあるマンションの共有施設を利用させていただいたのですが、終了後はみなさんで高層マンションの屋上に出て、パリではなく東京の初春の空気を吸って、楽しく終えました。
 

 さて、来週からは本物のパリジャン・パリジェンヌたちの中での海外研修が始まります。
 
 


アンティーク検定講習2級・後半の部

 この週末は、アンティーク検定講習2級・後半の部が行われました。アンティーク検定講習でも2級は、一発試験で合格する代わりに、4日間24単位すべての講座を出席し、最後にチェックテストが行われます。時間も体力もお金もモチベーションも覚悟も必要な、それなりにハードルの高いものだと思いますが、誰1人脱落することなく、最後までやる気満々な講習生たちでした。
 

 後半初日は、テーブルアートの歴史と宝飾芸術についての講座。よくアンティーク市場のテーブルウェアでも「これは、何に使うもの?」と疑問に思うカトラリーなどがありますが、「XXに使うものです」とただ用途を知るだけでなく、なぜそういうものが登場しているのか、テーブルアートの歴史と背景はどうだったのか等を奥深く学びます。宝飾芸術も同じ、宝飾・ジュエリーというものの役割が変化してくる歴史や背景を知ることによって、なぜこの時代にこういうものが出て来たのか、がわかるようになります。
 
 

 

 午後は移動して、ロイヤルパークホテル・ザ汐留のバーラウンジで、陶磁器の授業。早めに行って席のセッティングをしていたところ、なんとTVスクリーンがあり、男子フィギュアのフリーが放映されているではありませんか!しかも、羽生選手、宇野選手の登場・・・結果はもうご存知の通り、日本勢が金銀を独占!すっかり気分も高揚したところで、高級3大食器と言われるマイセン、セーヴル、ヘレンドの磁器に関する講座を、ちょうど当ホテルでのストロベリーフェアのケーキ&お茶とともに行いました。
 

 その後は目の前のパナソニック汐留ミュージアムに移動して、ヘレンド展を見学し、初日は終了。
 

 2日目は、家具(椅子)の歴史でスタート。画像を見て、これはどの時代のどういう椅子か、を鑑定します。脚の形で推定できるもの、木材の種類で推定できるもの、使用されている材質で推定できるもの、そんな鑑定の材料について、学びます。
 

 外国語の授業では、オークションカタログに記されている用語(英語)は何を意味するのか、一般にはこの英語はこういう意味だけど、美術用語ではこういう意味にしか使わない、そんな業界に特化した英語を学びました。たとえば立体の作品のサイズを表記する場合、幅、高さ、奥行き、これらをどんな順番で表記するか、知っていますか?
 
 
 

 みなさんでイタリアンのランチをはさんで、午後は20世紀の西洋美術史、そしてアール・ヌーヴォーとアール・デコという2つの装飾様式について、輪廻の視点からのお話で紐解いていきます。単にアール・ヌーヴォーは曲線です、アール・デコは直線です、といった様式の特徴を頭に入れるのではなく(そんなことは受講生たちはとっくに学んでいますから)、美術とは、装飾とは、といった深い概念を洞窟絵画の時代から遡って考えるという、哲学のような講座でした。
 

 

 晴れて24単位すべて終了した後は、カクテル&授与式。受講生のみなさま、先生方、本当にお疲れ様でした。

 

 次回のアンティーク検定講習は、2018年9〜10月を予定しています。
 
 


シシィに愛された窯・ヘレンド

 AEAOサロン倶楽部・2月の会は、ちょうどパナソニック汐留ミュージアムで開催中のヘレンド展に合わせ、ヘレンドを取り上げました。会場は、12月のサロン(「華やかなりし、セーヴル磁器」)でお世話になった、銀座ミタスカフェの個室。ここのケーキはボリュームたっぷりで美味しい上、個室も素敵なアンティーク調度品で囲まれた空間なのですが、キャパに対して申込者が殺到し、2回ならぬ、まさかの3回開催となりました!ご参加いただいたみなさま、有難うございます。
 
 
 

 複製、コピー、パクり、真似・・・あまりよい言葉とはされていませんが、ヘレンドという窯がマイセンやセーヴルと肩を並べるほどの高級磁器の地位を築き上げたのは、まさにヘレンドが、古磁器を完璧に模倣することができたからなのです。マイセンのディナーセットの補充を請け負って、マイセンそっくりの品を作ることができた、この精緻な技術がヘレンドの発展に大きく寄与したのです。
 

 なんだ、マイセンのコピーか・・・と思うなかれ、そもそも陶磁器だけでなく、西洋の美術は模倣を手本としてきました。古くはルネサンス、古代ギリシア・ローマの美術を模倣して復活させることでした。陶磁器先進国であった中国からの青花を手本に、デルフトはブルー&ホワイトを生み出し、有田の柿右衛門はマイセン、シャンティイ、多くの窯にそのモチーフが転用されました。
 

 もちろん真似だけで大きく成長したわけではありません。ヴィクトリア女王に愛された「ヴィクトリア」シリーズ(注文されたからこそ、この名前がついたわけですが)、ウージェニー皇后に愛された「インドの華」、そしてエリザベート皇后に愛された「ゲデレ」など、時のファッション・リーダーたちから次々と愛されていったヘレンドの製品、実物を見れば、その理由もおわかりですよね。
 

 「何かヘレンドをお持ちの方はお持ちください、みなさんで一緒に鑑賞しましょう」と呼びかけたところ、1回目は講師だけが持参したのですが、2回目は何名かの方がそれぞれのキャビネットケースからお持ちくださり、さらに3回目は、もうクロスに乗り切らないほどみなさんあれこれお持ちいただきました。やはりコレクターも多いですね。
 


 

 先日開かれていたテーブルウェア・フェスティヴァルでもヘレンドのテーブルコーディネートのブースがあり、新作「ヴァイオレット」が展示されていました。皇妃エリザベートが愛したすみれの花のモチーフで、とても上品なシリーズです。4月より、販売開始となるそうです。