アンティークと、修復

 昨日が最終日でしたが、東京・上野桜木の旧平櫛田中邸アトリエにて、「修復のお仕事展’16』が開催されていました。
 
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 絵画や工芸品の保存修復を手がける修復家たちが、その仕事ぶりを紹介する珍しい展覧会、秋晴れのよいお天気の中、大変賑わっていました。
 

 古いものをよい状態で保存していくためには、修復は欠かせない技術です。何世紀を経ても状態が変わらず、ベストコンディションで保てるものは、そうは多くありませんし、経年変化と共に劣化した状態で保存するより、修復して保存した方が、後世に残せることが多いです。
 

 アンティークの工芸品に関して言えば、18世紀以前のもので、修復されていなくて、よいコンディションのもの、というのは、まず見つけるのが大変です。たとえば、陶器。錫白釉陶器は、磁器がヨーロッパで焼かれるまでの間、ヨーロッパの陶磁器世界の中心でしたが、いかんせん陶器です。釉薬が剥がれてしまった箇所には、生地が露出しています。絵付けの顔料が剥がれているものもあります。
 

 それでは、こういったものは、修復されていると価値が落ちるのか?あるいは修復されていないオリジナルで状態の悪いものは、どういう価値なのか?といった問題も上がってきます。
 

 工芸品に関しては、たとえばオークションなどでセールに出る場合、修復歴は分かっていれば必ず記載されています。「修復の痕あり」といった表現で、オリジナルのままではないことを表しています。これは、オリジナルで手を加えていない状態よりは、後世において修復の手が入っているということですから、全く同じ状態のものが2つあれば、当然修復されていないオリジナルのものの方が価値が高いのは、言うまでもありません。家具などは、修復されたパーツの部品が、その時代のものではなく、現代のもので代用されているケースが多いです。
 

 オークション会社が、自ら修復を勝手に行うことはないのですが、落札した業者さんが、顧客に紹介する前に、しかるべき修復を施してから販売する、といったことはよくあります。むしろ、修復をしていないと、売れないものがあるからです。アンティーク・ドールで足が一本取れている状態で、あるいは椅子の布貼りが取れたままの状態で、購入する人はなかなかいないでしょう。
 

 修復にも、上手な修復と下手な修復があり、下手な修復の場合は、もともとの工芸品の価値をさらに下げることにもなってしまいます。ですから、修復品を購入する場合は、そのあたりの見極めも大切になってきます。
 

 日本の修復技術である「金継ぎ」、この言葉はそのまま海外でも Kintsugi として広まっています。海外で活躍する日本人修復家は数多く、日本人の手先の器用さと、丁寧な仕事が、芸術的感性に合っているのかもしれませんね。
 
 


アート・ディーラー(画商)とアーティスト

アーティストの名前は知られていても、彼らを世に出したアート・ディーラーの名前まではなかなか後世に伝えられないのかもしれません。メディチ家がルネサンス期の芸術家たちを擁護するパトロンとしての力を持っていたのは知られていますが、近現代においては君主の擁護がなくなった代わりに、アート・ディーラーがその役目を担った、と言ってもよいでしょう。

現在、パリのリュクサンブール美術館で開催されている展覧会、
 

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             『Paul Durand-Ruel
          Le pari de l’impressionnisme
             Manet, Monet, Renoir』
           『ポール・デュラン=リュエル
                印象派の賭
            マネ、モネ、ルノアール』
 

などは、まさに印象派のアート・ディーラーとしてのポール・デュラン=リュエルの扱った作品を展示しています。パリの後、今年はロンドンのナショナルギャラリー、アメリカのフィラデルフィア美術館を巡回します。
 

アート好きなパリっ子でも、実はデュラン=リュエルの名前を知らない人は沢山います。「そんな画家の名前、聞いた事ない」って、やはりアーティスト名と勘違いしてしまうのですね。
 

ルノワールによるデュラン=リュエルの肖像画

ルノワールによるデュラン=リュエルの肖像画

現在では「ギャラリスト」と言う呼び名もあり、彼らは自らギャラリーオーナーとなって、芸術家を一緒に育て、プロモートしていく仕事ですから、ただ作品を転売するアート・ブローカーとは違う、という自負を持っている人も多いようです。19世紀〜20世紀にかけてのフランスでは、このデュラン=リュエルをはじめ、ヴォラール、カーンワイラー、ギヨームなど、多くのディーラーたちが芸術家を支え、世に送り出したという経緯がありますから、彼らの功績をもっと評価してもよいのでしょうね。