展覧会」カテゴリーアーカイブ

アンティーク・レースの世界

 横浜そごう美術館で開催されている、「ダイアン・クライスコレクション アンティーク・レース展」、GWにお時間がある方、ぜひお勧めです。
 
   
 ダイアン・クライス氏は、アンティークレースの鑑定家であり、コレクター。レースの本場とも言える、ベルギーのアントワープ生まれの方で、お祖母様はレース職人、代々レースに囲まれた家庭に育ち、2005年より日本を拠点にコレクションや研究をされている方です。
 
 本展では、16世紀から19世紀までのヨーロピアン・レースを辿り、技法の発展だけでなく、そのモチーフやゆかりの人物などと共にアンティーク・レースが網羅されています。フランスやイギリスの王室で使用されていた貴重なレースから、キリスト教文化に根付くレース、そしてウォー・レースと呼ばれる戦争のレースまで、気の長いハンドメード作業の集大成が展示されています。
 

  
   
 

 会場にはルーペも備え付けられていますので、レースの網目なども、じっくり目にすることができます。
 
 横浜そごう美術館の展覧会は5/13までですが、その後巡回します。
 

 京都
 2018年5月18日(金)~6月3日(日)美術館「えき」KYOTO
 
 東京
 2018年6月12日(火)~7月29日(日)渋谷区立松濤美術館
 

 今回横浜でご都合がつかない方も、まだ見られますよ!
 
 


フランス人間国宝展

 東京国立博物館にて、9/12-11/26の会期で「フランス人間国宝展」が開催されています。
 
 
 日本の人間国宝にならって、フランスでも当時の文化省により「人間国宝(メートル・ダール)」がつくられたのが1994年、主に工芸分野で熟練の技をもった作家たちを評価するもので、現在124名のアーティストが認定されているようです。
 

 その名誉あるメートル・ダール13名に、2名を加えた15名の工芸アーティストたちの作品が、今回表慶館にて展示されています。
 

 第1室の陶器から、第8室のガラスまで、金銀細工、革細工、真鍮細工、壁紙、傘、扇、織り布、羽根細工、エンボス加工・・・と伝統的なフランスの工芸技術を駆使した現代作品が全部で230点ほど紹介され、その技と美の世界へ誘います。
 

 作品はどれも現代に制作されたものですが、工芸品はファイン・アートに比べてコンテンポラリー度に度肝を抜かれる、ということがあまりなく、お茶碗はお茶碗、家具は家具、傘は傘、と、コンテンポラリー・デザインでありながら、使って愉しむものだ、という使命は十分に感じ取れるものばかり。飾って眺める美術品とは、やはりちょっと違います。
 
 

 作品はどれもこれもそれだけで唸るほど素晴らしいものですが、フランスの展覧会は、近年「何を見せるか」と同じくらい「どう見せるか」が大事、昨今のインスタ映えではないですが、「如何に見せるか」が命とも言われ、セノグラフィー(空間構成)、照明、音響といった展示周辺がとても重要視されています。この展覧会は、そういったフランスの展覧会のあり方をまざまざと見せつけてくれます。
 

 普段のトーハクとはかなり趣を異にした独自のセノグラフィーでのメートル・ダールの工芸品、ぜひこの機会にフランスの匠に触れてみましょう。この中の何人かの作品が、後世「アンティーク」として名が残ること間違いないのですから・・・。
 
 


「ファッションとアート 麗しき東西交流」展

 横浜美術館にて4/15よりスタートしたこの展覧会は、西洋アンティークを学ぶわたしたちにとって、見どころ満載の作品が多く展示されています。
 


 
 この展覧会では、服飾品、工芸品、絵画、写真を通して、19世紀後半から20世紀前半の、西洋と日本のファッションと美術の変遷を辿ることができるようになっています。
 

 今ではよく「里帰り品」と呼んで珍重されている、日本が明治期に輸出したティーセットなどの洋食器、そしてアクセサリーとしての薩摩焼のボタンやブローチ、絹製品であるハンカチやシャツ、そんな展示品を通して、装飾美術のルーツとなる当時の日本や西洋の社会風俗を学ぶことができます。
  
 「シャトレーヌ」というアイテムをご存知でしょうか。フランス語で城の女主人を表す言葉ですが、19世紀にリバイバルしたジュエリーです。チェーン製の腰飾りの形態をしており、時計や針道具、文具などが吊るされていて、まだ女性がバッグを持たない時代において、バッグの役割を果たすものでした。そんな「シャトレーヌ」も展示されています。
 
 シャトレーヌ(展示品とは異なります)
 


 
 ルネ・ラリックのポーチやハンドバッグは、本当にうっとりする見事な金細工で、見とれてしまいます。(箱根ラリック美術館所蔵品)
 
 ロイヤル・ウースター社は、伊万里のモチーフでのティーカップを作っていましたが、実に見事なティーセットが展示されています。(三菱一号館美術館所蔵品)
 

  
 アール・デコを代表するジャン・デュナンの漆のコンパクトはどれも繊細でデザイン製に富んでおり、これも素晴らしいアイテム。(京都服飾文化研究財団所蔵品)
 

 日本が開国して以来、国際港湾都市となった横浜にあるこの美術館でこういった展覧会を開催するのは、本当に意義深いものですね。展覧会は6/25までです。
 
 横浜美術館 『ファッションとアート 麗しき東西交流』展