アンティーク検定講習2級・前半の部

 1/27-1/28の2日間にわたって、アンティーク検定講習2級が行われました。2級は、12単位24時間の集中講習が4日間で行われ、すべての講座を出席することで、修了証が授与されます。初回の講習にもかかわらず、福岡や大阪から泊まりで参加の受講生もあり、大変画期のある講習会となりました。
 

 2級の講習会に参加するには、アンティーク検定の3級をすでに取得していることが必須条件です。したがって、全くの入門者ではなく、一通りの基礎知識があることが前提となります。
 

 初日・午前は、まず装飾美術の独特な用語をおさらいしました。3級ではバロックやロココ、ネオクラシックといった大雑把な様式を知って入ればよいのですが、2級では、ブール、ビザール、ロカイユ、カルトゥーシュ、フェストーン、アンピール、エクレクティシズム・・・知らない人なら舌を噛みそうな用語がたくさん出てきます。
 

 そして、「紙モノ」と言われる、版画や写真に関しても、知識を深めます。紙の修復家の講師の解説で、写真と写真製版の違い、ヴィンテージプリントを見るときのチェックポイント、版画の種類や歴史を早足で学びます。
 
 

 

 午後は、ケーキ&お茶と共にガラスと香水瓶に関するレクチャーを行なった後、松濤美術館にて開催中の「ラリックの香水瓶」展を見学。会期の最終日に近づいているだけあって、多くの見学者で賑わっていました。
 

 2日目は、朝から夕方まで、ぶっ通しでの講座です。銀器に関するレクチャーの後は、装飾美術や美術品のマーケットの動向について、現実にアートマーケットで仕事をしている講師より、楽しい業界話や裏話をご披露いただきました。
 
 
 
 みなさんでのランチ時には、赤ワインで気分をほぐしていた受講生も!?
 

 午後は、西洋美術史の通史を初期ルネサンスから19世紀末まで、実に400年分の西洋美術を一気に解説いただき、講師も受講生もヘロヘロになりながらも何とか終えることができました。美術史の流れを知ることは、西洋装飾美術・アンティークを学ぶ上で不可欠ですが、なかなか通史を一度に学ぶ機会はないものです。世に書物はあふれているものの、噛み砕いてわかりやすく解説してくれる人がいるといないとでは、理解度も大違い、そんな世界を4時間たっぷり堪能しました。
 
 
 
 遠方からの参加者を含む受講生のみなさま、講師の先生方、お疲れ様でした。後半は3週間後の週末に行われます。
 
 


ラリックの香水瓶の世界へようこそ!

 AEAOサロン倶楽部・1月の会は、ラリックの香水瓶をテーマに集まりました。ちょうど松濤美術館で開催されている「ルネ・ラリックの香水瓶ーアール・デコ、香りと装いの美ー」展の見学も兼ねて、ラリックの香水瓶の世界を深く知ろう!という主旨です。

 
 
 見学前のミニ・レクチャー会場は、カフェ・タカギクラヴィア。お隣にはコンサート・ホール「松濤サロン」があり、スタインウェイのピアノのある素敵なカフェです。こちらで、特製サンドイッチ(美味しい!)とコーヒーをいただきながら、フランスと香水の切っても切れない関係、香水の歴史、香水瓶のデザインの変遷、などを学びます。
 
 

 

 そして、松濤美術館へ。この日は同美術館学芸員の方が、私たちのサロン参加者のために、特別に作品解説をしてくださるというVIP待遇を受けました。やはり事前に章ごとの解説を頭にインプットしておくと、時代やテーマが頭に入りやすいですね。
 


 
 ミニ・レクチャーで少しお話しましたが、日本のマーケットではフレグランスの化粧品業界全体に占める割合がダントツに低く、むしろ「香水公害」という言葉もあるほどで、香水があまりウェルカムな社会ではありません。一方、ルネ・ラリックを生んだフランスはといえば、歴史的にも18世紀にはほぼ全員がなんらかの香水をつけていたと言われる香水大国です。
 

 その香水ですが、かつてはお客さんはお店で調合してもらって量り売りで買い、自宅で自前の容器に入れ替えていました。その習慣を20世紀初頭に塗り替えたのが、まさにルネ・ラリックの香水瓶だったのです。
 

 アール・ヌーヴォー期にジュエリー・デザイナーとしてすでに大成功を収めていたルネ・ラリック、外見のデザインの工夫で、如何に中身(コンテンツ)が素晴らしいものであるのかを表すことを知っている、元ジュエリー・デザイナーの知恵だったと言えるのでしょう。彼の香水瓶は、量産品であるにも関わらず、ただの容器の域を超えて、やがて美術工芸品としての価値にまで高められていきます。
 

 本展覧会は、1/28(日)まで開催されています。お見逃しなく!
 
  
 


第1回アンティーク検定講習・3級

 日本全国でセンター試験が行われていたこの週末、当協会では第1回アンティーク検定講習が行われました。3級は連続2日間、集中して12単位の講習を受け、最後にチェックテストを経て、試験コースと同等の級が取得できるシステムで、2018年よりスタートしました。(従来の試験コースも並行して行っています。)
 

 たった2日間で、アンティーク・西洋装飾美術の全般を網羅するのですから、かなりハードな詰め込みの講習なのですが、参加者のみなさんの集中力とモチベーションはとても高く、次々と飛び出る質問も的を得た興味深いものだらけ、講師陣の方がヘトヘトになるほど、充実した時間でした。
 

 初日は、アンティークの定義とは何?という基本のキからスタートし、西洋美術史の通史をルネサンスから20世紀初頭まで一気に駆け抜け、ランチをはさんで、午後は宝飾美術(モード・ジュエリー)、西洋陶磁、そしてガラスについて学びました。
 

 

 

 2日目は、一時帰国中のフランス国家資格者エベニストによるヨーロピアン家具の歴史や、修復のノウハウ、そして銀器について学び、午後はモノを実際にマーケットで見て知識を身につける、という実践講座で、ちょうど開催されていた「骨董ジャンボリー」最終日へ。何箇所かのブースを解説付きで回った後は、フリータイムで各自お買い物やらディーラーさんとの会話を楽しみ、最後に「アンティーク検定3級」の試験問題をすべてクリアし、無事全員が修了証を手にしました。
 

 

 参加者の中には、すでにアンティーク・ディーラーとして活躍されている方、老舗画廊の2代目、など、とても入門級とは思えないプロとしての知識を持った方までいらして、参加者全員のテンションもとても高かったのですが、これもやはりみなさんが「この世界が、好き」という気持ちから来るものでしょうか。
 

 骨董ジャンンボリーの出展者の方々にもインタビューをしましたが、やはり誰もが口を揃えて言うのは、「好きなものを買って、覚えて、それが一番の勉強」だということ。確かにこの分野は、生活必需品目ではありません、でも、好きな人にはたまらない世界で、ハマる世界なのです・・・よね。
 

 講習参加者のみなさま、2日間の集中講座、お疲れ様でした。
 

 引き続き、2週間後にはアンティーク検定2級の講習が開催されます。
 
 


小平新文化住宅へお邪魔しました

 本年も残すところあと1週間となりましたね。本協会も1年を振り返りますと、多くのみなさまに支えられながら数々の活動をしてきました。2回の海外研修、第6回アンティーク検定試験、そして毎月1回行われているAEAOサロン倶楽部、それぞれ多くの方達にご協力・ご参加いただきました。
 
 AEAOサロン倶楽部・8月の会でゲスト講師を務められた、淺井カヨ先生のご自宅が東京都小平市にあり、この度お邪魔させていただきました。最近ではマスコミへのご出演も多い先生ですので、ご存知の方も多いでしょうか。日本モダンガール協會の代表であり、古きよきものを愛するライフ・スタイルを実践していらっしゃいます。音楽史研究家のご主人・郡修彦さんとお二人で設計を行ったそのご自宅にて、「蓄音器鑑賞会&建物紹介」が随時開催されています。
 

 文化住宅というのは、日本で1920年代から30年代にかけて流行した和洋折衷様式の住宅で、この小平新文化住宅は、見事に当時の様式を再現した建物です。
 
 1920年〜30年代といえばヨーロッパはアール・デコの時代、当時の宮様であった朝香宮様は、パリにしばらく生活し、パリで出会ったアール・デコ・スタイルをそのまま日本で再現し、朝香宮邸(現東京都庭園美術館)を造りましたが、日本の一般の中流階級では、文化住宅と呼ばれる、三角屋根のある応接間を備えた住宅を建てていたようです。玄関を入ってすぐに応接間と呼ばれる洋室があるのが特徴、その応接間にて、ゼンマイ式蓄音機による音楽鑑賞会が催されました。
 

 蓄音機で聴く音楽鑑賞会、いまではとても貴重な時間です。昭和初期の音楽、当時の宝塚の少女たちの歌声・・・しばし時が止まります。
 

 

 そして、待望の建物紹介。どこもかしこも細部にわたっての、お二人の古き良きものを愛するこだわりが垣間見られる空間、アルミサッシではない木枠の窓枠は触ってもひんやりせず、エアコンなんてなくても火鉢のぬくもりで十分に暖かいお部屋です。
 


 

 とてもシンプルで機能的なお台所。
 


 

 これが噂の「氷冷蔵庫」です。電気を使わなくても物は冷やせていたのですね。
 


 

 2階の書斎も、アンティークなアイテムが和洋たくさん。
 


 

 そしてなんと、クリスマス・ケーキというサプライズが待っていたのでした。クリスマス、やはり大正から昭和の方たちも、楽しんでいたようですよ!
 


 
 AEAOサロン倶楽部、2018年もまた淺井カヨ先生との楽しい会を企画したいと思っています。前回ご都合のつかなかったみなさまも、乞うご期待くださいね。
 

 
 


華やかなりし、セーヴル磁器

 今日は今年最後のAEAOサロン倶楽部。師走の土曜日といえば、みなさんお忙しいでしょう、と思いきや、本サロンは早い段階で満席となり、キャンセル待ちが出てしまいました。それで急遽二部制とし、午前の回・午後の回と2回に分けて行うことに。
 

 セーヴルというのは、食器のオートクチュールのようなもの、さすがにそうそう出回っているものではありません。今回、ちょうどサントリー美術館にて開催されている「六本木開館10周年記念・フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」展を機会に、セーヴル磁器をちゃんと学んでみましょう、ということで、AEAOサロンでは初のテーマとしてセーヴルを取り上げてみました。
 
 

 主催者の色が思いっきり入り込んだ、身勝手な解釈を押し付けてしまったかもしれませんが、セーヴルの魅力はなんといっても18世紀の、軟質磁器時代にあると思っています。18世紀の装飾品・工芸品はエレガンスの頂点を極め、19世紀以降のコレクターの中にも、多くの18世紀贔屓な人たちがいて、お金持ちはこぞって18世紀の美術工芸品を買い集めていました。やはり社会の格差が大きく、富が集中していたからこそ華開いたエレガンスなのかもしれません。
 

 展覧会は、「マリー・アントワネットから草間彌生まで」と、18世紀から現代までを俯瞰する構成になっていますが、本展覧会の醍醐味はなんといっても18世紀の作品ではないか、ということで、ほぼ18世紀にフォーカスしたお話となりました。
 
 
 
 18世紀の貴族の生活、18世紀のテーブルアートの歴史などを知っていないとなかなか入り込めないアイテムもあります。そんなお話をしながら、また軟質磁器時代でしか作れない色、金彩の盛りについて、硬質磁器と軟質磁器が並行していた時代の絵付け顔料の違い、セーヴルが独自に開発した、ビスキュイと呼ばれる無釉白磁がセーヴルの花形商品であった経緯、リトロン、トランブルーズ、硬質磁器と軟質磁器はどうやって見分けられるのか、刻印はどう違う・・・と、18世紀だけでもどんどん話が尽きず、あっという間に時間は過ぎ去ってしまいます。
 

 会場は、銀座の、とあるカフェの個室、このお部屋はアンティーク調度品でセンスよく飾られた空間、本サロンにぴったりの雰囲気を醸し出しています。軽食の野菜のシフォンケーキやフレンチトーストもボリューム満点で、今回もとても楽しく充実したサロンでした。
 

 次回、来年早々のサロンは「ラリックの香水瓶」を取り上げます。
 (現在「満席」と表示しておりますが、会場のカフェは貸切にしましたので、お問い合わせください。)
 
 


ロートレックの版画ポスターの世界 ベル・エポックのパリへワープ!

 AEAOサロン倶楽部11月の会は、恵比寿にある備屋珈琲店の貴賓室にて行いました。厳選した生豆を備長炭を用いた技術で焙煎した香り高いコーヒーがアンティーク・カップでいただける、素敵なお店ですが、予約開始と同時に埋まってしまう貴賓室という名のおしゃれな個室、ラッキーにも今回、本サロンで予約をすることができました。
 

 現在三菱一号館美術館で開催中の、「パリ❤️グラフィック展ーロートレックとアートになった版画・ポスター展ー」のプレ講座としてのレクチャーを担当していただいたのは、19世紀フランス美術の専門家であり、当協会のアンティーク・スペシャリストでもある中山久美子先生。
 


  
 中山先生のお話は、版画の技法に始まり、ヨーロッパにおける版画の役割を歴史的に解説いただき、さらにリトグラフが発明されてから、写真の登場と版画のアート化に至るまでの経緯を詳しくわかりやすくご説明いただきました。アフィショマニーと呼ばれるポスターマニアの世界を、当時のポスターの画像を見ながら聞いていると、本当に19世紀末のパリへワープしたような気分になります。
 

 ポスターの3巨匠と言われたシェレ、ロートレック、ミュシャについても、それぞれのポスターの特色や代表的ポスターについて、画像を見ながら学びました。
 


 
 ポスターが、もはや情報の手段としてではなく、ポスターそのものがアートとなったこの時代は、ポスターの黄金時代、そしてパリが最も華やかでバブルで享楽的だった時代とも一致します。ベル・エポックという言葉は、そんな華やかだった時代を、懐古する呼び方です。
 

 お話の後は、ティー&スイーツタイムですが、飲み物はみなさん全員コーヒーを注文、やはり専門店のコーヒーは一味も二味も違いますね。
 

 お茶&談話をしながら、それでは当時のポスターは、昨今いくらくらいで買えるのだろうか・・・そんなお話を、パリで行われたポスターのオークションカタログを見ながら、落札額をみなさんで当てっこ。需要と供給で決まる美術品の価格ですが、複製芸術の場合、どのような点が値段に反映するのか、人気のあるポスターは?そんなお話で盛り上がります。
 

 最後にベル・エポック時代のポスターのリプロダクション品を少々ご紹介。そもそもが複製芸術ですから、複製芸術のオリジナルのリプロダクション(???)も、なかなか可愛いものがあります。絵画、たとえばモナリザのポストカードやポスターは、いかにも安っぽいお土産な匂いがしますが、ロートレックのポスターのリプロダクションのポスターは、額装するとそれなりに素敵ではないですか!?
 


 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ研修 第5日目

 いよいよ最終日。今日は雨が降るかも、と言われていたのもまた嬉しく裏切られ、太陽が!
 

 今日の午前プログラムは、パリ公設オークション、クレディ・ミュニシパルでのオークション参加です。クレディ・ミュニシパルは、ルイ16世の時代から存在する、公設質屋。ではなぜ、そこでオークションが行われるのか?その仕組みについて、説明しましょう。
 

 市民がお金を借りるのに、普通は銀行へ融資の依頼に行きます。でも、担保や信用がなくて融資が下りないケースだってあります。そんなとき、クレディ・ミュニシパルに来れば、質種と共に、お金を貸してもらえます。質種となるのは、通常は宝石とか金(きん)、でも美術品・工芸品も質種として受け入れてもらえます。それら質種の評価額を算出してもらい(それを算出するのは、国家資格を持ったオークショニアが行います)、評価額の半額を即金で貸してもらえます。
 

 1年経って、借りたお金と利息を返せば、当然質種は返してもらえます。でもお金が返せなくても、利息さえ払えば、そのまま借りたお金は借りていられるのです。例えば2000ユーロの評価額の宝石を持ち込んで、その半額の1000ユーロを借りる、1年経って借りた1000ユーロが返せなくても、1000ユーロの1年分の利息さえ払えば、またそのままお金は借りていられる、というわけで、これは何度でも更新できます。つまり利息だけ払えば永遠にお金を借り続けられることができるわけです。
 

 しかし、やがてその利息すら払えなくなる・・・と、催促がいきます。フランスの催促は容赦ありません。1度目、2度目・・・そして最終通告にも拘わらず利息の返金がない場合はどうなるか・・・その質種がオークションにかけられる、という仕組みなのです。もっとも、そんなケースは稀で、統計によれば90%のものは返却される、つまりちゃんとお金と利息を返して、元の持ち主に戻るそうです。
 

 ですから、ここで出品されているものは、すべて質流れ品。こういうものを縁起が悪い、と思う日本人もいるでしょうが、フランスでは、100年前、200年前のものが平気で出回っているアンティーク先進国、すべてのものが王侯貴族のお城からの出物であるわけではないのですから、そんなことはお構いなしです。そしてここで業者により落札されたものが、街中のアンティークショップで売られているわけですから。
 

 クレディ・ミュニシパルは、19世紀にはその役割が拡大し(つまりは人々がお金を借りに押し寄せ)、その質種も、金銀宝飾類だけではなく、生活必需品まで、そして最後にはマットレスまでもが持ち込まれました。マットレスを持ち込むということは、もう何もない、裸同然の貧困層が発生していた、という悲しい社会状況もありました。その持ち込まれたマットレスには蚤やシラミがたくさんいたので、蚤を取る蒸気の機械まで併設してあり、その機械は現在でも歴史的遺品として、(一般には入れないけれども、私たちは特別に入場許可してもらった)この施設のある場所に展示されています。
 


 

 
 さて、説明が長くなりましたが、今日のオークションは、宝石でも時計でも金製品でもなく、なんとテーブル・アートのオークション!実はこの研修内容を組み立てている夏前の段階では、クレディ・ミュニシパルのオークション・カレンダーは発表されておらず、9月に入ってから、偶然にも研修の週にテーブル・アートのオークションがあることがわかったのです。通常テーブル・アートや美術工芸品のオークションは3ヶ月に1度くらいしか行われませんので、これはもう偶然のラッキーとしか言いようがありません。
 

 すでにオンラインカタログで入札の目星をつけている研修生と共に、会場へ入ります。会場にあまり人がいないのは、今ではインターネットによるライブ・オークション参加が可能なことや、テーブル・アートはやはり宝石や金製品に比べて、参加業者が限られる、というのもあるかもしれません。
 

 クレディ・ミュニシパルのような公設オークションには、最低落札価格というのがありません。もちろん評価額はありますが、なにせ質流れ品ですから、いくらでもいいので売り切って、債権者にお金を返さなくてはならないのです。いくら以下なら売らない、なんて言えないわけです。それで、スタート価格で誰も手が挙がらないような場合、「競り下げ」が行なわれます。その競り下げのときに瞬時に手を挙げる、あるいは声を発するのがテクニックなのですが、慣れないとなかなか難しい技かもしれません。
 

 

 

 それでも主催者は、2ロットを「競り下げ」で落札し、また研修生も何ロットも落札、すっかりパリの業者の仲間入りをしてしまいました!Anneも家族から頼まれていたボヘミアンガラスに入札していましたが、思いの外上がってしまい、途中で断念。オークションというのは、競り出したら火傷しないところで上手く「手を引く」のもコツですが、ついついヒートアップしてしまいがちです。
 

 テーブル・アートなので、それほど「うぉぉぉぉ」というヒートアップになった出品物は少ないのですが、最近の傾向でしょうか、シルバーよりもステンレスの方が値段が付いてしまう、という現象がいくつか起こっていました。ゾーリンゲンとはいえINOXのカトラリーセット、評価額は60-80ユーロのものが最終的に550ユーロまで上がったときなど、さすがに「C’est fou ça!(おかしくないかい!)」という声も上がっていました。
 

 オークションが終了し、ここでホテルに戻って帰国の途につく研修生を見送り、全員一旦解散です。というのもかさばる落札物を持って、どこかに行くわけにはいかないので、一旦ホテルに戻ります。
 

 午後は当初セーヴル美術館見学の予定でしたが、直近になって、パリ6区でアンティーク市が開かれているという情報があり、ここも民度の高い地区ですから、良いものが販売されているに違いない、と急遽プログラムを変更、果たして大正解でした!クレイユ・モントローの完品の食器類が破格の値段で出ていたり、19世紀末のリキュールグラスやショットグラス、リモージュの金彩が美しい最上級のデミタスカップ、あれやこれや、またしても両手にしっかり戦利品を抱えての最終日午後、実際に現地で店主と談義しながら、値段交渉をなどもして買い物をする、これに勝る研修はないですよね!?
 

 5日間にわたって、研修に参加された皆様、お世話になった先生方、ありがとうございました。お疲れ様でした。
 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ研修 第4日目

 研修4日目。「明日から寒くなるよ、暖かいのは今日までだよ」と言われ続けているものの、ちっとも寒くならないパリ。傘も全く不要なパリ(日本のお天気は、ずっと雨!)。今日の午前プログラムは、主催者が大好きなプライベート・ミュージアム、ジャックマール・アンドレ美術館見学。この元ブルジョアの邸宅の成り立ちからフランス学士院に遺贈されるまでの歴史をAnneの解説で学び、18世紀装飾美術の世界に入り込みます。
 

 昨日のヴェルサイユでランビネ美術館がヴェルサイユ骨董村に負けた理由の一つに、今日このジャックマール・アンドレ美術館の見学が予定されていたから、というのもあります。ランビネ美術館は正真正銘18世紀に建造された館ですが、ここジャックマール・アンドレ美術館は19世紀に建てられた、18世紀コレクターの美術館なのです。そう、あのニシム・ド・カモンド美術館と似ていますね。18世紀の装飾工芸品というのは、19世紀のブルジョアにとって、憧れであり、美の真髄でもあったのです。
 

 ランチは、この邸宅がダイニングとして使われていた場所が現在は美術館内のカフェ・サロンとして運営されており、そこでキッシュとサラダのお食事をいただきます。通常フランスではお昼休みは13時くらいから、レストランは12時であればオープンしたばかりのガラガラなものですが、ここは11時45分のオープンと同時にお客さんが入り、12時過ぎにはほぼ満席!日本時間で12時に入ってよかった〜、と一同そのお味にも満足。天井画はティエポロのフラスコ画です。17世紀のタピスリーの装飾も見事です。

 

 

 ランチ後は、ゆっくり歩いてジアンのアトリエへ向かいましょう・・・のはずが、ミュージアムショップでハマってしまい、しばしお買い物。外はまたしても真夏のような暑さゆえ、バス2〜3区間で移動し、ジアンのアトリエへ。
 

 今回の研修は、「見学する」だけではなく、「実践する」が含まれているのですが、今日の午後はジアンにて、陶器の絵付け体験に参加します。
 

 ちょうど初日の講座でporcelaine dure(硬質磁器)までを学び、その後19世紀に登場したfaïence fine(上質陶器)を学ぶ時間はなかったのですが、Gienはまさにこのfaïence fineですから、続きはここで、実践を交えて学びます。
 

 

 私たちを迎えてくれたのは、ソレンヌさん、日本語が話せます。ジアンの歴史や特徴といったことを一通りざっくり学び、そしてタブリエを身につけて、いきなりの絵付けスタート。今回は焼成する時間はないので、絵付けだけを、グアッシュを用いて行います。どんな色から色をつけていくのか、線はどうやって描いていくのか、絵付けの失敗はやり直しがきかないので、緊張のあまり筆が震えてしまったり・・・でもどうにかこうにか、みなさん仕上がり、バックスタンプを押してもらって完成です!
 
 

 今日は研修4日目で、あと1日ありますが、最終日の午前中までの参加で、用事のため帰国しなくてはならない研修生もいたため、前倒しで今日の夜にカクテル・パーティ&ディプロマ授与式を行いました。
 

 

 パーティには、特別ゲストでébéniste(家具職人マイスター)、そしてそのアシスタントの日本人女性アサコさんをお迎えし、通訳のマサコさんをも交えて、おしゃべりを楽しみました。いつもならAnneのお子さんが給仕係として参加してくれるのですが、今日の夜はお習い事、そして明日も学校のため、今回は残念ながら不参加です。
 

 

 5日目に続きます。
 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ海外研修 3日目

 今回の研修タイトルに「ヴェルサイユ」と入っているので、てっきりヴェルサイユ宮殿に行く!と勘違いされた方もいらっしゃるようですが、ヴェルサイユ宮殿には行きません。正確には、ヴェルサイユ宮殿の前は通りましたが、入場はしていません。
 

 ヴェルサイユ宮殿は、もちろん素晴らしい国家遺産で、もし初めてフランスに行くのであれば訪れるに値するものですが、ここはツアーでも組み込まれているほど有名な観光地、アンティーク研修で行かなくても、いくらでも個人でも行けるところです。ありとあらゆるガイドブックにも載っています。私たちの研修は、この研修に参加しなければ体験できないようなところに行って、普通の旅行者ではできないようなことを行っているのですから、今回はせっかくヴェルサイユに行くけれど、宮殿見学は、パス。参加者の方々も「昔ツアーで行きました」という方ばかりでした。
 

 それでは何をしにヴェルサイユに行くのかといえば、まずはヴェルサイユ宮殿のお膝元にある、マナースクールのサロンにて、テーブルアートの歴史やテーブルマナーのレッスンを体験する、というのが午前中のプログラムです。
 
 そのスクールとは、Madame France de Heereの主催する、L’atelier de savoir-vivre(アトリエ・ド・サヴォワール=ヴィーヴル)、savoir-vivreとは礼儀作法のこと。このスクールでは色々なコースがありますが、私たちは初心者用入門編をお願いしていました。
 

 さて、朝9時半前に、予約したミニバスにてパリを出発した私たちは10時過ぎにはヴェルサイユへ到着、少し近くをぶらついてからMadame de Heereの私邸へ到着します。迎えてくださったのは、ご本人と、Liptonという愛らしい犬。
 

 Madame de Heereは、その苗字からわかるように、フランドル系の貴族の末裔の方。彼女によればヴェルサイユという街は、ヴェルサイユ宮殿が宮廷になった時代から貴族が住み始め、街を形成していったので、今でもやはり民度の高い街であり、元貴族も多く、また子供の多いカトリック系の住民が多いとのこと。そう、フランスで子供が多いのは、よっぽどのお金持ちか、逆によっぽど貧しいかのどちらかなのです!Madame de Heereにも4人のお子さんがいらっしゃるとのことでした。
 

 レッスンは、カフェとシューケットをいただきながら、フランス料理がなぜユネスコの無形文化遺産になっているのか、といった説明から、17世紀からの宮廷での食卓の歴史をざっと学びます。フランスは何でもかんでも学びは歴史から入るところが特徴ですが、これはとても大事なことだと思います。
 


 

 

 そして、実践演習へ。フランスに住んでいない日本人が、フランス人の自宅に招かれる、とうい機会はそうそう訪れるものではないと思いますが、今回私たちは、「招かれた」ようなシチュエーションでのレッスンが始まります。
 

 まずは挨拶の仕方。映画で観る、手の甲に頰付けのキスはどんなときにするのか?初めて会った時の握手の仕方は?相手が若い女性と年配の女性の場合、挨拶の仕方まで変わってくるのか(変わります)、そんなことを実践形式で行います。みなさん緊張するあまり、予定外の動作などもして、「そこは、足は曲げない!」なんて訂正されながらも、なんとか様になりました。
 


 

 続いてはテーブルアート。今日のメニューはこれこれです、さて、まずは思うようにテーブルセッティングをしてみてください、と。みなさん思うようにセッティングをし、一つ一つ、Madame de Heereに直してもらいます。もちろんその理由を丁寧に説明していただき、理解しながら。
 

 残ったスープをすくうのに、お皿を傾けてもいいの?パンでソースを拭いてもいいの?いろいろな質問が出ましたが、すべてのケースにおいて(なぜなら答えはシチュエーションによって異なるので)丁寧に教えていただき、あっという間の入門コースでした。
 


 

 お昼は、ヴェルサイユ宮殿を横切り、トリアノン・パレスへ。ここも、研修フライヤーには「トリアノン・パレスにてランチ」とありましたので、てっきり宮殿内プチ・トリアノンの中にでもあるカフェか何かで食事をするのか、と思っていた方もいたのですが、トリアノン・パレスはヴェルサイユにあるラグジュアリーホテルです。日帰りで十分行けるヴェルサイユに泊まる方はあまりいないのかもしれませんが、ここはスパやエステを備えていて、おそらくはヨーロピアンの富裕層が1週間ほど滞在してゆっくりリラックスするような高級スパ・ホテル。カリスマ料理人ゴードン・ラムゼイのレストランが入っているので有名です。
 


 
 私たちは、ラ・ヴェランダbyゴードン・ラムゼイにてランチを。本当は午前のマナースクールでランチを実際に食べるコースもあったのですが、マナーを学びながら食べても食べた気がしないし、どうせなら評判のレストランでコース料理をいただきましょう、ということで、正解でした。
 

 きちんとしたフランス料理を一度はコースで食べる、というのも、テーブルアートを知る上で大切なことだと思います。さすがに毎回はできないですが・・・。
 

 
 トリアノン・パレス内で、ついついお土産を買っちゃったりしながら、午後の予定地を半決め状態で後にします。午後と言っても、コース料理を食べた後は、もう午後の3時。
 

 午後は2つのプランがあって、1つはランビネ美術館の見学。ヴェルサイユに日帰りでやってくる人の99%はヴェルサイユ宮殿を訪れるので、この18世紀に建てられた素晴らしい美術館を見学する人はまずいないのですが、装飾美術部門が充実しており、美術品や美しい家具に囲まれて暮らしていた18世紀ヴェルサイユ・ブルジョワの室内を見ることができるのです。
 

 もう1つのプランは、ヴェルサイユ骨董村の散策です。ただ骨董村は基本金土日のみのオープンで、それ以外の日は、ゆるーく開けている店もあるかもしれない、という程度。
 

 幸い両者が至近距離にあるので、まずは行ってみましょう、と腹ごなしに歩き、美術館の場所を確認し、骨董村へ。どこも開いてなかったら美術館に戻ればいいだけなのですが、果たして行ってみると・・・
 

 
 大半が閉まってはいるものの、開いているお店ー正確には従業員が店で事務仕事をしているので、ついでに開けているような店、といってもいいのでしょうがーがあり、中に入って見せてもらうと・・・なんだか買いたいものが出てきてしまった研修生。18世紀のガラス瓶を購入したお店は、置いてあるものから一流店だとすぐにわかりますが、話を聞いてみると、ビエンナーレにも出店しているレベルの店で、18世紀の価値ある工芸品を扱っているのだとか。若い店員さんの知識も深く(と上から目線で言うのもナンですが、最近では何も知らない人が店番でいることも少なくないのです)、話せば話すほどいろいろなものを見せてくれるのも、フランスならでは。
 

 

 民度の高い地域に素晴らしい工芸品が売られている、というのはやはり本当。もちろんその価値にふさわしいお値段ではありますが、若干パリより安めな感じもしました。
 

 
 調子に乗って開いているお店を片っ端から訪れ、お買い物。店主同士でおしゃべりしているようなのどかな光景ですが、ねえ、これ欲しいんだけど、と言うと愛想よく応じてくれます。パリではあふれんばかりにいる中国人観光客も、この日ここには一人もいません。
 


 

 「これ、全部の店が開いていたら大変なことになっていましたね」とお互い言い合い、帰りのミニバスを待つも、なかなか現れず・・・電話をすると、「シャトー(ヴェルサイユ宮殿)の前じゃなかったっけ?」。そう、ヴェルサイユに行ってヴェルサイユ宮殿をパスする行動を取るお客はレアなのです!
 

 楽しく充実したヴェルサイユ・デーでした。
 
 


2017年秋 パリ&ヴェルサイユ海外研修 第2日目

 今日は比較的ゆっくりのスタートです。よく海外旅行のツアーに参加されると、朝6時半朝食、8時出発といった強行スケジュールが多いのですが(効率よく沢山の見学地が詰め込まれていて、それはそれで有意義だと思いますが)、私たちの研修は、あくまでも中身のみをプログラミングしており、自由時間はそれぞれ好きなことをして滞在できます。朝ジョギングをしてもよし(さすがにいなかったですが)、買い物をしてもよし(フランスではスーパーは日本より早く、9時にはオープンします)、朝寝坊をしてもよし(主催者の特権!?)・・・。
 

 午前は11時にオープンの銀食器ギャラリーにて、実施でのレクチャーを行いました。パリでも有名な銀食器専門店Isabelle Turquinの店内にて、18世紀の銀食器の中でも、レアなものをいくつか見せてもらいます。まず、ここが銀食器専門店だと外から見てもわかりません。それもそのはず、このギャラリーは元ファーマシーだったところをギャラリーにしているのですが、看板や内装の一部はファーマシー時代のものをそのまま継承しているのです。
 
 

 これは、何に使うものかわかりますか?の恒例のクイズ、なかなか食器だけ見ても想像がつきません。そう、フランスの食卓史、テーブルアート史を学んでいないとわからないものがたくさんあります。例えば、これはナツメグを潰すものですよ、と言われ、はてナツメグはどんな料理にどのようにいつから使われていたのか?そう、総合的な知識がないと、なかなかわからないものが多いのですが、そんなお話もすべて解説してもらいます。
 

 

 
 19世紀の半ば以降、クリストフル社により爆発的にシルバープレートの銀食器が量産された中で、18世紀のスターリングシルバーの品々は貴重です。その中でも、状態のよい、名工の工芸品を多く有しているのが、このギャラリー。お値段も・・・ちょっと、さすがにというものでもありますが。
 

 銀食器カトラリーに関して言えば、やはり揃っていてこそ価値のあるもの。最低でも6組、普通は12組などで販売されていますが、さすがにそんなに買えないし、要らないし・・・と思っていたら、「これはバラでしかないから、お安いのだけどね」と言って、バラの箱を見せてくれました。研修生のみなさん、むしろそれなら!といくつかお買い上げ。研修生価格(?)で、少し割り引いてもらえました。
 

 陶磁器、銀器、とくれば、次はガラスですね、というわけで午後はバカラ美術館へ。
 

 パリ16区と言えば、結構知られた富裕層地域ですが、その16区の中にも細かい序列があり、バカラ美術館のあるPlace des Etas-Unisといえば、最高級地区です。
 

 この瀟洒な邸宅は、20世紀の社交界の女王と言われた、故ド・ノアイユ子爵夫人の暮らした建物で、フランスの名門貴族の館、というわけです。子爵夫人亡き後は別の富豪の手に渡って、バカラ社はこの建物をいわば借りていることになるのですが、現在の持ち主は、すぐ隣に住んでいて、毎日窓からこの建物を眺めているのだとか。
 

 ここはバカラ本社であり、バカラのショップであり、レストラン「クリスタル・ルーム」を運営しており、そして美術館でもある総合施設です。最近所蔵したニューコレクションが展示されているというので、ワクワクしながら訪ねました。
 

 美術館ゾーンは残念ながら写真撮影は禁止ですが、美術館へと登る階段には、800kgの重さのシャンデリアが。19世紀中頃に作られたもので、当時はもちろんキャンドルで照らされていたのです。
 

 

 

 

 そして美術館の中は・・・・ここからは、ぜひパリに行かれる方は、館を訪れてみてください!
 

 3日目に続きます。