2024年公式海外研修:フランスの工芸を巡って~リモージュ&オービュッソンとパリ~Day 3

予定ではアドリアン・デュブーシェ磁器博物館を10時見学でスタートですが、9時にバスでホテルへ迎えに来ていただき、ドライバーさんの好意で少しリモージュの街の主だったところを回って土地勘を掴むこととし、市庁舎とその近くのサンテティエンヌ大聖堂の外観を見学しました。市庁舎はドライバーさん曰く、「パリ市庁舎のミニチュア」、たしかにファサードの建築などそっくりです。市庁舎前の噴水にはリモージュ磁器が使われているのですね。

市庁舎は各種手続きなど用事のある市民が入る役所ですが、我々は内部装飾を一目見ようとちゃっかり中へ。さすがに階段を上ろうとすると「そこから先はダメだよ」と咎められましたが。

そして威風堂々とそびえたつ13世紀に建築が開始されたゴシックのこの大聖堂、北の入口のポータイユの彫刻の美しさに見とれてしまいます。

にわか観光の後、アドリアン・デュブーシェ国立磁器博物館へ到着、ようやくリモージュ磁器の研修に入ります。ところで「アドリアン・デュブーシェ」って聞きなれない名前かもしれません。この人物は19世紀のリモージュの実業家にして美術評論家兼コレクター、リモージュの県立美術館の館長に就任してから個人の陶磁器コレクションを美術館に寄贈したことで彼の名を冠することになったのです。フランスでは二大国立陶磁器博物館の1つがセーヴル、そしてもう1つがこのリモージュのアドリアン・デュブーシェなのです。

建物は1900年の建築のままですが、隣にあった装飾美術学校の跡地が新たに展示スペースとなり、拡張工事の末2012年にリニューアル・オープンしています。創建当時のアール・ヌーヴォーのモザイクなど建築としても価値のある建物。美術館入口には現代セラミックアートのモニュメントも設置されていました。

館内に入り、Anne Kolivanoffによる解説を聴きながら博物館を一通り回ります。新たなスペースとなったメザニン部分では陶磁器に関するテクニックの展示、そして古代から18世紀までの世界の陶磁器の歴史をたどります。

この館で最も値段の高い焼き物とされているのがこの中国の白磁だ、と耳打ちされると、一層輝いて見えますね。

セーヴルの国立陶磁博物館の前にはベルナール・パリシーの像がありますが、こちらではアドリアン・デュブーシェの像が。

そしてこの地ならではのリモージュ磁器の展示部分に。事前にリモージュの講座をアカデメイアで学んでいるので、みなさん復習を兼ねての見学ですから知識に余裕はありますが、現物を目の前にするとどれも写真を撮りたくなってしまい、追われるように歩き回ります。19世紀前半のアリュオーから後半の万博を通した黄金時代・プイヤの作品まで。よくカタログに登場するリモージュ磁器の「グラン・ド・リ」のテーブルウェアもこちらにありました。当時ロシア皇帝が注文したことでも有名になった名作中の名作ですね。

アール・ヌーヴォー、アール・デコ時代のリモージュ、そして時間がなくざっとしか回れなかったコンテンポラリーのアーティストとのコラボレーション作品らのゾーンを垣間見て最後のミュージアム・ショップタイム。陶磁器好きなら丸1日かけてゆっくり鑑賞したいところです。

後ろ髪を引かれる思いで博物館を後にし、徒歩で近くのビストロ『Bistrot de LEON』にてランチです。オシャレなレストランで、カフェ・グルマンなどもう芸術的ですね。

ランチ後はバスにてカソー窯へ。現ロワイヤル・リモージュとなっている当時のアリュオー社の9つあった窯の唯一残っている1つです。

ここで学芸員より解説をしてもらいながら窯を見学します。窯は上下に分かれており、上部で900℃の素焼き、そして下部で1400℃の本焼成を行います。火の回り方の経路や、当時の職人らがどういう方法で焼成温度を計測していたのか、窯に生地入れる前段階で使用した鉢(gazette)とその積み方、燃料が薪から石炭に変わって火の男(homme du feu)、火の女(femme du feu)たちの働き方はどう変わったか…

1時間ほどの解説の後は、隣接されているロワイヤル・リモージュのアウトレット・ショップでのショッピング。

午後の見学はここまで。後はディナーまで自由時間ですが希望者はバスでホテルへ戻る途中で下ろしていただき、エナメル作品の展示で有名な市立美術館を見学…のはずが、なんと水曜日は休館!?フランスの美術館は月曜日または火曜日が休館日と決まっているので、よもや水曜日の休館は想定外、残念ですがここは金曜日に来ることにして、朝外観だけ見た大聖堂の内部に入り、そして近くのリモージュ磁器セレクトショップを回ったりしながら、各自ホテルへ。

この日のディナーは、ヴェトナム料理。フランス料理は美味しいのですが、旅の途中で1度アジア系の料理を入れると、ちょっと胃にもホッとするひと時、選んだレストラン『Tan Saigon』は大人気のようで、ひっきりなしにテイクアウト客やUberの配達員も訪れ、店内も満席でテラスでコートを羽織って外で食べている人も。こういうカジュアルなレストランでは予約を受け付けてくれないのですが、無理を言って席を確保してもらって大正解でした。人気のフォー、ボブン、生春巻き、ネムなどを青島ビールやライチジュースなどと共に楽しみました。

ホテルへ戻る途中、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼への道標を発見!ヴェズレーが出発地の「リモージュの道」の巡礼路でしたね。