本日(9/18)、パリの競売場・ドルーオーで開催されているオークションは、本協会の6月の研修に参加された方々には、ちょっと興味深いものです。
パリの老舗レストラン、グラン・ヴェフール、ここは創業1784年と、18世紀の室内装飾をそのまま感じることのできる、素晴らしい空間です。当時最も盛り場であったパリの中心部、パレ・ロワイヤル回廊に位置し、今でもその装飾と、最高水準のフランス料理の味で、世界中からの食通を唸らせています。
現在のシェフは、日本でもその名の知れているギィ・マルタン氏ですが(本協会の研修グループにも、笑顔で挨拶に来てくださいました)、以前のシェフ、レイモン・オリヴェー氏(1909-1990)、おそらくフランスの一定年齢以上の世代で、彼の名を知らない人はいないでしょう。というのも、TV番組「料理の芸術と魔術」というシリーズに13年間出演し、国民的シェフとして、その名声を博していました。
レイモン・オリヴェー氏が亡くなって、もはや四半世紀が経ちますが、今回は、彼の最後の奥様であった日本人である未亡人が所有している、グラン・ヴェフールに関するあらゆるものが、オークションに出品されています。歴史的資料として、とても貴重な文献や書物(イラスト入りレシピのマケット、メニューのコレクション)、そしてグラン・ヴェフールで使用されたジャムポットとシュガーポットの大コレクションなどが、ドルーオー会場にて展示、11時よりハンマースタートです。
カタログを見るとおわかりのように、このようなものは、時には街の蚤の市や古道具屋さんでもよく見られるものです。古いレストランのメニューカード、真鍮製のなべ、コーヒーミル、お皿・・・特別に目を引くようなものではありません。では、そのような蚤の市でも手に入りそうなものと、こうしてオークションに出品されるものの違いは何か、と言えば、ズバリ来歴・由来でしょう。
今回のオークションは、レイモン・オリヴェー氏というカリスマシェフの所有物であり、かつ出どころが、正真正銘彼の未亡人からであること、そしてそのコレクションの一定量というところにあるのでしょうか。
またこうしてオークションに出品される品というのは、オークショニアと鑑定士が公認した品物ですから、たとえば日本のヤフオクのような、信ぴょう性が不明なもの、というのはありません。
このオークションで落札した人たちが、これらをどのように保存していくのかは、誰にもわかりません。業者さんだけでなく、一般の人々も参加し、落札することができます。すべてのLOTをまとめて落札しない限り、コレクションそのものは逸脱してしまいますが、それでも大切なものを後世に残すシステムの一つ、それがオークションの役割なのでしょう。
レイモン・オリヴェー氏のクレープのレシピが、(途中までは無料で)こちらで見られます。1957年の放映、半世紀を経ても、なんら変わりのない伝統の味、クレープのレシピと、在りし日のオリヴェー氏の様子に、歴史を感じますね。