月別アーカイブ: 2024年1月

建物見学・お茶の水 〜ニコライ堂と、さようなら山の上ホテル〜

1月のAEAOサロン倶楽部は、お茶の水界隈の建物見学を実施いたしました。2023年10月に、山の上ホテル休館の発表が出てすぐに山の上ホテル見学ツアーを計画したのですが、残念ながらパーラーやレストランの予約は取れず、でも休館イベントと称し、館内で歴史展示をしていること、山の上教会を開放していて見学できることから、本日無事催行できました。

まずは懇親会を兼ねたランチ会&ミニレクチャーでスタート。主催者が集合時間の2分前に到着すると、もう参加者さん全員が席に着いていらっしゃいました(スミマセン!)。サロン倶楽部は毎回メンバーが流動的ですが、目的や趣味が似通っているのか、すぐにみなさんで仲良くなります。今回のランチは大学が集まるお茶の水エリアにふさわしい、中央大学構内にある高台で見晴らしのよいレストラン、その名もそのまま『Good View Dining』にて。昨今では大学もおしゃれなレストラン施設を構えているところが多いようですが、意外と穴場ではないでしょうか。特別なコースランチを予約していたのですが、味もサービスも申し分なく、贅沢な空間と19階からのすっきり晴れた空の眺めで美味しくいただきました。

食後は本日のメインとなる見学地の一つ、ニコライ堂へ。ニコライ堂は通称で、正確には東京復活大聖堂教会と言います。ハリストス正教会のハリストスとはキリストのギリシア語読み。ニコライ堂の名は、1861年にロシアより函館へ来日し、正教を日本に伝えにやってきたニコライ・カサートキン司祭の名に由来しています。

1891年に竣工したこの建物はジョサイア・コンドル氏の設計ですが、1923年の関東大震災で被災します。ドームは崩壊し、イコノスタシスは焼損、わずか土台と煉瓦壁のみ残ったそうですが、建築士・岡田信一郎の指揮のもと、6年後の1929年に現在の形に復興します。ビザンティン様式の建物の特徴であるとされるドーム、正方形、八端十字架、イコンがこの大聖堂に表れています。

外観は写真が撮れますが、内部は写真撮影禁止、拝観料を払うといただけるパンフレットを見ながら、すべてを脳内に焼き付けてきました。聖堂内にいくつかあるイコンは原則に従って無署名のため、制作者がはっきりは断定できないということですが、帝政ロシア時代のサンクトペテルブルクに渡って学んだイコン画家・山下りんの作品と思われるイコンについて聖堂内のスタッフの方からお話をいただきました。明らかに他のイコンとは筆致が異なる、これは彼女のものでしょう、と。

見事な装飾の大聖堂教会を見学した後は、続いて2月13日で休館となる山の上ホテルへ。緩やかな坂を登っていくと、レトロ感ムンムンの山の上ホテルが表れてきます。「文化人のホテル」と呼ばれ、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、伊集院静などの名士らが好んで利用したとされるホテルですが、2019年にリニューアルしたばかりなのになぜ休館となってしまうのでしょうね。

館内レストランの中で唯一予約制でなく、整理券を引いて待つと入れるコーヒーパーラー・ヒルトップはさすがに到着した時刻では20時までの案内も終了ということでしたが、最後に内部を見学したいという人々の要望に応じて「休館イベント」が開催、創業70年間の山の上ホテル歴史展示が館内で行われていました。資料や家具などをあちこちにアール・デコの装飾がさりげなく表れる館内でたっぷり鑑賞させていただきました。

そして今回は結婚式でしか使用できない山の上教会も開放しており、暖かい陽だまりの中でチャーチをゆっくり見学できました。1月とは思えない暖かく晴れた日の見学で、本当に最後に来られてよい思い出となりました。

ご参加のみなさま、今日はよく歩きましたね、お疲れ様でした。


海外研修関連講座:「リモージュの魅力」

いよいよ3月の海外研修が2ヶ月後に近づいてきました。せっかく遠い遠い地へ赴くのですから、そしてそれぞれの美術館や施設での見学時間は限られていますから、できるだけ知識を事前に入れておくと現地での解説もわかりやすいかな、ということで、今月と来月は「リモージュの魅力」と題しリモージュ磁器に関する勉強会を行うことになりました。

リモージュの焼き物は日本でも手に入りやすいですから、もちろん今回の研修のご参加者でなくても本講座を楽しんでいただけます。

第1回目の今月は、リモージュ焼きの誕生から19世紀末までのお話。リモージュがどんな地なのか、かつての工芸品にどんなものが作られていたのか、そして磁器の原料カオリンはどこでどのような経緯で発見されたのか、フランス革命でどんな影響が起こったのか、やがて19世紀のリモージュは…と歴史を辿っていきます。

工芸の世界、中でも革命後も国立製陶所として生き残ったセーヴルと対照的に民間の手に委ねられたリモージュでは、歴史的資料が残っていないのか詳細がわかっていないことが多々あります。たとえば19世紀の前半に活躍した陶工ベニョル、一時はフランスでも忘れ去られていた名前でした。研究者や陶磁器博物館の学芸員たちが彼の作品からその制作活動に関して研究を続け、ようやくまとまった第一段階のものが仕上がり、展覧会を開催したのが一昨年のこと。彼こそがリモージュ磁器のパイオニア的存在であり、現在のリモージュのテーブルウェアの基礎を作り上げた人だったのです。

この19世紀の窯へは3月の研修で実際に訪れる予定ですので、我々もその痕跡を辿ってみたいと思います。

19世紀後半には万博の影響もあってリモージュには多くの窯が誕生し、そのいくつかは現在も残っています。ベルナルド、アビランド、レイノー…そしてかつてのセーヴルで作られたモチーフを復刻したものがリモージュで作られ続けています。そんな煌びやかな18世紀セーヴル時代を彷彿させる名品は、ナポレオン3世時代の第二帝政下でさらに華開いていったのでした。

次回は、黄金期のリモージュが20世紀に入ってどのような経緯を辿っていったのか、現在のリモージュ窯はどうなっているのかを学んでいきたいと思います。

アカデメイア「リモージュの魅力」、オンデマンドでもご視聴いただけます。


第13回アンティーク検定講習・3級

今週末はアンティーク検定講習・3級が開催されました。早いもので年2回の講習会も13回目となります。今回は首都圏だけでなく関西、北陸、中部と各地からお集まりいただき、またオンラインですがドイツからのご参加者さんもあって、賑やかな講習会となりました。

3級は年1回の試験でも取得できますが、なかなか忙しい日々の生活の中で試験勉強のための時間を捻出して受験するのも大変、どうせ勉強するなら講習会で学びながら同時に級を取得してしまおう、と考える方もいらっしゃいます。そのための講習会ですので、基本のき、知識ゼロの入門から入れるのがこのアンティーク検定講習3級なのです。

もちろんみなさんアンティークに対する興味がある方ばかり、中にはもう何十年も前から海外のアンティーク市を巡っていたという方、すでにプロとしてディーラーをされている方、何年も周辺講座を受講していた方、建築が好きでいろいろ日本を回っているという方、みなさん好奇心たっぷりの方々で頼もしい講習会のメンバーです。

1日目

1限目:アンティークとは何か?西洋とは?装飾美術とは?

よく言われる「100年前のもの」というのは何か法律があるのか、他に古物を表す言葉に何があるか、西洋の定義は何か、装飾美術とアンティークの関係は、とまずは基本的な定義について学びます。

2限目:陶磁器

陶器と磁器の違い、西洋陶磁器のルーツ、ボーンチャイナと陶磁器の基本について学びます。

お昼は近くのワイン食堂という名のイタリアンへ。午後の講習もありますので、ワインを飲みたそうにしていた方達も、ここはちょっと我慢です!

3限目:銀器の知識と刻印の読み方

初めて実際に銀器を手に取って、ルーペを使って刻印を読んでいきます。なかなかルーペの倍率と視力が合わなくて、みなさん目が疲れてきましたね。

4限目:ガラスの世界と宝飾

ガラスとクリスタルの違い、西洋のガラスの歴史をざっと学び、そして宝飾芸術についても触れていきます。

4限目まで終わったところで、今日行った内容のところを、実際の直近の試験問題で復習をします。朝初めて問題を開けたときには全然わからなかったところも、こうして1日の講習を終えて夕方に再び目にすると、あら不思議、わかるようになるのです!

2日目

5限目:建築と家具で学ぶ様式

オンラインにて、バロックからモダニズムまで500年の建築と家具の様式を俯瞰していきます。そもそも様式とは何か、バロック、ロココ、ネオクラシック、リヴァイヴァル…様式で出てくるこれらの言葉の由来や特徴などを学びます。

6限目:外出見学

今回はこの日が建物解説日に当たっていたこともあり、フランク・ロイド・ライトとその弟子・遠藤新の設計した重要文化財「自由学園・明日館」を見学しました。館長による1時間の講座を講堂で拝聴し、そして建物を一緒に見学、最後は喫茶室で談話しながらのディプロマ授与。全員が認定証を手にし、またあらたな鑑定士の卵たちが誕生しました。

今回の参加者の方々の中には、引き続き2級を受講される方、3月の海外研修へ参加される方などもいらっしゃって、これからこの世界を奥深く入り込んでいこう!という意欲のある方々ばかり、頼もしい仲間たちでした。ご参加いただいた皆様、2日間お疲れ様でした。


竹久夢二学会のバス・ツアーに参加して

当協会の監修者・岡部昌幸先生が理事を務めている竹久夢二学会のバスツアーに有志の方々と参加しました。

朝8時出発、なんとバスは「竹久夢二生誕130年記念号」!こんなバスがあるのですね、バス内にも夢二の作品が飾られている、テンションの上がるバス内にて岡部先生のレクチャーを受けながら東京から高崎へ向かいます。

高崎市美術館で開催中の「竹久夢二のすべて」展を見学、また旧井上邸の外観も見学できました。

展覧会見学後は伊香保へ向かいます。まずは水沢うどんを食べに清水屋さんへ。もちもちのうどんの美味しさに舞い始めた雪景色の風情も趣があります。

そして竹久夢二伊香保記念館へ。館内でご説明をいただいた後、大正ロマンの館、夢二黒船館を短い時間でざっと見学。夢二の作品はもちろんですが、この館にはアンティーク好きにはたまらない家具調度品、装飾工芸品が満載です。

もう少し時間がほしかったところですが後ろ髪を引かれる思いで記念館を後にし、夢二のアトリエやアート・イン・レジデンスの建物に近づいたころには一面雪景色に!それでも束の間の晴れ間に屋上に出て榛名山が鑑賞できました。