月別アーカイブ: 2023年10月

読書会:マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編・第4回「旧約聖書の世界 2」

前回に引き続き、旧約聖書の世界を絵画で辿っていきます。前回のあらすじを簡単にご説明いただき、みなさんの脳内に「天地創造、楽園追放、ノアの方舟」などが戻ってきたところで、今日はモーセから。

モーセといえば誰もが「モーセの十戒」を思い浮かべますね。やってはいけないこと十箇条が石板に書かれているものを神から授かるのですが、これも多くの画家が題材にしています。

これは教科書にも出ている、レンブラントの絵。

ルーベンスの「サムソンとデリラ」。

「ルツとボアズ」のエピソードがベースにあるという、この超絶有名なミレーの絵。

世界一有名な「ダヴィデ」はやはりこの人のもの。

「ソロモン」の審判は、日本の大岡裁きですね。

艶かしい美しさの「スザンナ」。

今日の授業はここまでですが、この辺りの歴史、ユダ王国が新バビロニアに滅ぼされ、人々が捉えられるバビロン捕囚、やがてその新バビロニアもアケメネス朝ペルシアに滅ぼされ…と昔々世界史で習った(けど忘れた)出来ごともわかりやすく説明いただき、誰もが同じことを思ったでしょう、「今まさに起こっているイスラエルとパレスチナの戦争…どこまで歴史を遡っての恨みごっこなんだ!?」と。戦争は1日も早く休戦してほしいですが、その根っこまで解決することはもう不可能かもしれない、そんな気分にもなってくるくらい、複雑に絡み合っています。

次回はユディットからと、クリスマスの図像を学びます。


AEAOサロン倶楽部・10月の会は「旧安田楠雄邸庭園見学と谷根千さんぽ」

昨今「谷根千」がちょっとしたそぞろ歩きブームになっていますが、大規模開発も受けず、戦災の被害もあまり受けなかったこの地域での古き佳き街並みのレトロ感が、今の私たちの感覚を刺激してくれるのでしょうか。

そんな谷根千の一部、千駄木界隈はかつて財閥を成した企業家や学者など文化人が多く住んでおり、大きな屋敷を構えていた人たちもいました。その屋敷の一つが旧安田楠雄邸です。今日はこの屋敷をガイド付きで見学をしました。

まずは当サロンの醍醐味でランチ&懇親会を谷根千のトラディショナル・フレンチレストラン「ル ブォータン」にて。15年続く老舗のレストランだそうです。ちょっとゴミゴミしている谷根千界隈では珍しくゆったりとした空間でのお店、お料理もお店のコンセプト通り「胃にもたれない、カラダに優しい料理」でした。

予めお願いして90分でコース料理を出していただき、お店から歩いて10分ほどの旧安田邸へ。途中で狸坂という名のマニュアル自転車では難しそうな坂などもありましたが、そこは食後の消化散歩にはよいコース、みなさんスイスイと歩いて到着。

今日はガイドさんによる解説付きで邸内を見学させていただきました。元々1919年(大正8年)に実業家・藤田好三郎により建てられたこの和風建築のお屋敷、その後の関東大震災にも耐えたのですが藤田氏が別の屋敷を建てたことにより売却、それを買い取ったのが安田財閥の初代安田善四郎氏でした。たまたま元の自宅が関東大震災で消失し、この屋敷を居抜きで入居したそうです。その後代々住み続けていたのですが、2代善四郎氏の長男楠雄氏が他界後の1995年、相続税のため日本ナショナルトラストに屋敷を寄贈、現在では東京都名勝に指定されています。

ここはその唯一の洋風の応接間、照明や家具もオリジナルで残されています。

ガラスも大正時代のまま、歪みや気泡が見られるのも古き良きものの魅力。

この見事なお庭!それぞれの部屋から異なった見え方をする素晴らしいお庭です。

そして今日はたまたま月2回開催されている、「旧安田楠雄邸で聴く 蓄音機の音色」の鑑賞会の日でもあり、見学後に当時の蓄音機でSPレコードによるオペラのアリアなどの鑑賞会にも参加しました。

屋敷を後にし、近くにある島薗家住宅の外観など山手の豪奢なお屋敷を見ながら、江戸時代の加賀藩の支藩の大聖寺藩(十万石)の屋敷跡である須藤公園の須藤の滝などを眺め、谷中銀座へ。

さきほど歩いていた上品で静かな山手エリアから打って変わってこちらはすごい人、人、人だかたりで活気が溢れていました。若い人たち、外国人観光客で賑わっていて、流行りのスイーツや面白い工芸品などを売るお店も。

ここは残念ながら時間切れ。

夕やけだんだんを登り、スカイツリーも眺められる高台にある日暮里駅に到着、今日はここで解散となりました。

たくさん歩いて健康的な1日でしたね。

次回11月のサロンは「渋沢栄一の暮らした大正のお屋敷とフレンチのランチ」です。お屋敷巡りはまだまだ続きます!


第12回アンティーク検定講習・2級 <前半の部>

この週末はアンティーク検定講習・2級の講習会が開催されました。2級は4日間の集中講習で資格を取得できます。まずは前半2日間の講習です。

今回はすでに過去に3級を試験で合格した6名の受講生、遠くは福岡や水戸からご参加いただきました。

最初に自己紹介を兼ねてアンティークの思いなどについて各人語っていただいたのですが、「人生を変えるきっかけ」にこの世界に入った、という方が多く、古く美しいものに心を奪われて、という共通の美の意識がある方々です。中にはすでにアンティーク・ディーラーとしてお仕事をされている方もいらっしゃって、頼もしいネットワークですね。

1日目は東京芸術劇場で終日行う座学です。テーブルウェアの歴史をざっと学んだ後、鑑定とは何をするのか、実際に品物をいきなり渡されての鑑定の練習。これは何のために使う何なのか、といった品名がわからないものから、この刻印はあれかな、これかな、と鑑定への道標を掴めたものまでさまざま。

みなさんでの懇親を兼ねたランチを挟んで、午後は西洋美術史の通史のお勉強。西洋美術史というと絵画・彫刻を扱うのでアンティークとの関連性がイマイチわからない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも純粋美術(絵画・彫刻)と応用美術(装飾・工芸)との間には密接な関連性があります。「バロック」「ロココ」といった様式名も共通して使う言葉ですし、西洋アンティークを知る上で欠かせない教養として、ルネサンスから19世紀までの美術史をマラソンで通しました。一度も西洋美術史を学んだことがない方は、一度は通史で学んでみることをおすすめします。一度頭に入れておくと、(微細な部分は忘れても)アートの流れというものが身についてきますよ!

2日目、午前はオンラインによる講習でアート・マーケットに関する事象と、建築・家具・装飾について学びました。アート・マーケットという分野も一般には学ぶ機会がなかなかないと思います。1日目の美術史は大学でも専攻がありますし、巷のカルチャーセンターなどでも多くのコースが存在、書籍も多く発行されていますが、マーケット(市場)をアート分野に限って学ぶというのは、本講習でしかないかもしれません。日本の世界におけるアートシェアはどのくらいなのか、なぜ日本で世界的なオークションが開催されないのか、日本のアート購入に関する特殊事情とは何か、といったマーケット事情から、話題となっているアートニュースに関してどうやってアンテナを張っていったらよいのか、世界的なアートフェアやアンティークフェアはどこで開催されているのか、ざっと俯瞰してみました。

午後は前半の課外授業で、今回は明治期の建築の卒業制作とも言われた「迎賓館・赤坂離宮」を訪れました。午後3時に正門で待ち合わせをしたのですが、それまで雨模様だった東京も雨が止み、太陽が現れ始めましたよ!

正門から写真を撮り、チケット売り場の西門へと周ります。そして本館と庭園の見学。この赤坂離宮は現在は迎賓館として使用されていますが(国賓が誰もお泊まりにならない期間はこのように一般開放されています)、創建当時は東宮御所として、そして昭和天皇が短い期間お住まいになられたものの、皇室の方々があまり積極的に住みたがらなかった宮殿と言われており、戦後国の所有になってからは一時は国会図書館として利用されていました。その後何度も改修を経て現在の形になっているのですが、様式建築・様式家具のお手本が鑑賞できるのです。

ルネサンス様式の室内装飾、ルイ16世様式の室内装飾と家具、そしてアンピール様式の室内装飾と家具が部屋によって分かれており、外観の建築はネオ・バロック様式。これも西洋の様式を学ぶと、とても理解しやすいですね。

残念ながら内部は写真撮影が不可のため、外観と庭園しか写真は撮れませんが、バロック建築宮殿には欠かせない噴水にもちゃんとお水が供給されていました。

宮殿内部を鑑賞した後は主庭と前庭を散策し、2日間の講習が終了いたしました。

アンティーク検定講習・2級の後半は11月に行います。受講生のみなさま、2日間の講習、大変お疲れ様でした。