投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

12月のサロン、リヒテンシュタイン侯爵たちのの名作磁器

12月のAEAOサロンは、東急Bunkamuraにて開催中の「建国300年 ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」の鑑賞会をみなさんで行いました。1719年にリヒテンシュタイン侯国が誕生して今年でちょうど建国300年。しかしリヒテンシュタイン家の歴史ははるか12世紀まで遡ります。

どうしてこんな豆粒(失礼!)のほどの国家が存在するのか…そういえばヨーロッパには他にも小さな国家、いわゆるミニ国家がいくつかあります。宗教的な特殊性をもつところから、19世紀における近代国家統一の際に組み込まれずに存続した結果小さな国家として維持されているところまで、そしてその産業は観光であったり、宗教であったり、法人誘致であったり。

まずは鑑賞会の前にちょっと予備知識を入れておきましょう、ということで、ドゥ・マゴでランチをいただきながらのレクチャーです。

通常のランチメニューにはデザートが付いていないので、ケーキをオプションで付けていただきました!

いつも展覧会会期の最後の月は会場が混み合ってゆっくり鑑賞できないのですが、幸い入場した時間帯は休日の食事時間帯と重なっていたのでしょうか、比較的ゆったりしていました(その後どんどん人が入ってきましたが)。

リヒテンシュタイン侯爵家の家訓の「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」にふさわしい美術品ばかりですが、中でもわたしたち西洋装飾工芸愛好家を唸らせるのは、数々の磁器コレクションが揃いも揃ってその歴史的価値だけでなく、美意識、審美眼の点においても最高のものであることです。

景徳鎮窯や有田窯で焼かれた磁器を輸入して、ヨーロッパで金具をつけ、自分たちの生活に取り入れるという技法は、こうしてみるとまるで最初から仕組まれていたかのよう。今でもアンティークの愛好家は、古い道具や工芸品を現代の生活に合わせて用途を変更して楽しみますが、何百年も前に花瓶に金具をつけてキャンドルスタンドにしていたのですね。

本展覧会は最後の会場のみ写真撮影が可でした。といっても写真ではなかなか伝わらないかもしれませんが、この部屋では油彩画と磁器への絵付けが同時に展示されていて、一瞬どちらがどちらかわからなほど、磁器への絵付けの繊細さが際立っています。西洋の顔料は、東洋(日本や中国)の顔料に比べてガラス分が少ないため、濃淡のグラデーションが可能と言いますが、作品を目の前にするとその精緻を極めた技術にうっとりしてしまいます。

大好評の本展覧会、会期を少し延長して26日までとなったようです。クリスマス後も見られますので、ぜひこの機会に鑑賞されるとよろしいと思います。


最後に行けてよかった、原美術館!

11月のAEAOサロン倶楽部は「さようなら原美術館」と称し、惜しくも2020年1月に閉館となる原美術館を訪れました。

最近ではごくごく少人数、数名で食事を楽しんで何らかの見学をする課外型と、もう少し多くの人で一緒に行うお勉強会と、主に2つのタイプのサロンを開催しております。主に気候の良い季節は外に出て歩き、寒さ暑さの厳しい季節は快適な室内でのお勉強がふさわしいかなと思っておりますが、今回で言えば前者を前提としていたところ、なんと受付開始初日で定員が埋まってしまいました。その後も、キャンセル待ちのリクエストがかなりあり、やはり「もう行けない、最後だ」と思うとこの機会に訪れてみたい方も多かったのでしょう。レストラン側にお願いして席数を増やしていただき、キャンセル待ちの方も全員参加することができました。

まずはみなさんで集まって、美食から。よく「隠れ家的レストラン」と言われていても実際は全然隠れ家なんかじゃないことがありますが、今回のお店は本格的な「隠れ家」でした。そのため「ちょっと迷いました〜」という方も。もちろん最近ではGoogleMap様のおかげで、方向音痴組もずいぶん助けられていますね。

外観、内観ともちょっと日本とは思えない素敵なレストランでスパークリングワイン付きのフレンチ・フルコースを頂きます。器、お料理、どれも凝っていて、とても美味しくいただきました。

腹ごしらえをした後の腹ごなしは、御殿山のお散歩。ちょうどこの時間は即位パレードの時間と重なっていて、みなさんTVに釘付けか、あるいはパレードの沿道にでかけていらっしゃったのでしょうか、車も人もあまり通らず、とても和やかに楽しくお散歩を愉しみました。

この界隈は旧毛利邸、旧岩崎邸(現開東閣)、旧益田邸など名だたる名家の屋敷跡地です。これから訪れる原美術館も、昭和13年に建設された原邸、アール・デコからバウハウスの流れを引く、昭和モダニズムの代表的な建築です。

原美術館では、当協会監修者の岡部昌幸先生をお迎えし、先生の大学の学生さんもジョイントしてのガイディングが行われました。ヨーロッパの邸宅美術館などはそのほとんどがかつての貴族の館であり、現在は国なり市なりの所有となっているためそのまま住んでいるケースは少ないのですが、今回庭でのガイディング中に敷地内にお住まいの原夫人にご挨拶されるなど、本当に現役の邸宅美術館としてのライブ感がありました!

最後となる展覧会は「加藤泉−LIKE A ROLLING SNOWBALL」展。

現在美術は今やサイズで勝負という趣向にだんだん移っていく中、原美術館では手狭であったり搬入口が限られていたりバリアフリーに対応できなかったり、色々課題があるということで、改修してこの歴史的建造物の姿・デザインを変えてしまうよりは、と美術館としては閉館されるようですが、この白亜の昭和モダニズムの建物だけはぜひ残ってほしいと思います。

なお、伊香保温泉の近くにある群馬のハラ・ミュージアム アークにて、引き続き現代美術の作品は見られます。


世田谷美術館「チェコ・デザイン100年の旅」展

10月のAEAO サロンは「チェコの可愛いデザインを求めて 〜ミュシャ、チェコ・キュビスムからチェコ・アニメまで〜」と題して、世田谷美術館で開催されているチェコ・デザインの鑑賞会を行いました。装飾工芸の世界ではミュシャは言うまでもないですが、逆にミュシャしか知らない・・・という人も多いのではないでしょうか。そんな知られざるチェコのデザインを総括した展覧会です。

見学に先立ってのプレ・レクチャー会場は、館内の公園に面したフレンチレストラン『Le Jardin』。窓の外からは緑が生い茂り、とても東京23区内とは思えない風景、日曜日とあってウェディングと思わしき団体がお庭で集っていました。

ちょうど先月国立プラハ工芸美術館を訪問された中山久美子先生(当協会アンティーク・スペシャリスト)が建築も含めた現地の様子をレポートしてくださり、またチェコという国についても歴史や政治をおさらいした上で展覧会の章立てや、チェコ・キュビスムについて詳しく解説してくださったおかげで、会場に足を踏み入れても戸惑うことなく、進んでいけます。

展覧会場は、都心の混み混みした会場とは異なって非常にゆったりとした空間構成、また場所柄や内容の性質からしても、昨今よくあるメディアにそそのかされてとりあえず話題になっているから来ましたよ、という鑑賞者はほぼ皆無、みなさんニッチに好きな人が集まっているという感じが読み取れ、非常に居心地のよい空間でした。

アール・ヌーヴォーから現代までのチェコ・デザインがだいたい10年ごとにブースで仕切られて展示されており、そこには家具ありテーブルウェアあり調度品ありポスターあり、あらためて装飾工芸という分野は、産業、デザイン、機能、この3つの軸で成り立っているのだと感じさせてくれます。

10月は台風や大雨に何度もやられ散々なお天気の月でしたが、この日は太陽も出て暑くもなく寒くもない本当に気持ちの良い日とあって、砧公園は多くの家族づれのピクニックや子供たちのスポーツで賑わっていました。普通は展覧会見学といえば結構歩くので、足も疲れがちですが、緑の中を歩くのは別腹ならぬ別筋肉でしょうか!?ぶらぶらと公園を横切りながら帰途につきました。