そもそもこの検定試験は、こと細かい知識を暗記して、試験に臨む、という主旨のものではなく、西洋アンティークに興味があり、ものの見方や、西洋装飾美術工芸の世界に詳しくなりたい、という人たちの目安になれば、というスタンスで行っています。
2級を受ける方の中には、アンティーク検定なのに、西洋美術史を勉強しなくちゃいけないの?と、仰る方がいるのですが、西洋美術史は、西洋装飾美術工芸を理解する上で、基礎となるもの…というより、そもそも西洋装飾美術工芸と、西洋美術は、ルネサンスまでは、同じスタイルでした。それが、絵画彫刻の、いわゆる美術と、家具や工芸品などの装飾美術に分かれて様式が発展していったのが、ルネサンス以降なのです。
美術史では、ルネサンス以降19世紀前半まで、このような様式で進んでいきます。
バロック、ロココ、新古典主義、ロマン主義・・・
一方、西洋装飾美術工芸史では、例えばフランスを例に取ると、代表的な様式で、
ルイ14世様式、レジョンス様式、ルイ15世様式、ルイ16世様式、帝政様式、王制復古様式、ルイ・フィリップ様式、ナポレオン3世様式・・・
と進んで行きます。
でも、ルイ14世様式って何か?と言えば、まさにバロックなのです。荘厳で、ドラマティックで、光と陰の対比的な彫刻や、ふんだんな金(きん)使いは、たとえばイタリアバロックの巨匠、カラヴァッジョの絵画やベルニーニの彫刻に通じるところがあります。
ロココ絵画とルイ15世様式は、切っても切れない関係、ヴァトー、ブーシェ、フラゴナールといった画家たちの絵は、雅宴画という新ジャンルを生み出しますが、ルイ15世様式というのは、小さいスケールで、華やかで軽快、柔らかいモチーフで貴族趣味のスタイルです。

フラゴナール「ぶらんこ」

ルイ15世様式
バロックとは、「歪んだ真珠」という意味、ロココとはロカイユ(貝殻装飾)から派生した言葉、これも語源を知っていれば、なんとなく想像できるスタイルですね。
新古典主義の絵画と、ルイ16世様式の家具を見てください。

ダヴィッド「ホラチウス兄弟の誓い」

ルイ16世様式
どちらも、ロココやルイ15世様式とは違って、とても直線的で、理性的なものを感じませんか?
同時代の美術と装飾美術工芸、こうして密接にリンクし合っているのですから、西洋美術史もこの際、一緒に知っておくと、西洋装飾美術工芸の理解の手助けに、大いになるのです。
受験者のみなさま、このblogで登場している用語、是非覚えておいてくださいね。