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パピエ・マシェ、漆に憧れて生まれたヨーロッパの工芸品

8月のAEAOサロン倶楽部は、「パピエ・マシェの世界」でした。日本ヴォーグ社発行『手づくり手帖』Vol.20(早春号)に詳しい記事が掲載されていますが、本誌の創刊編集長にして当記事の執筆者でもあり、また素晴らしいパピエ・マシェのコレクションを所有されている小山ひろ子先生による直々の渾身のレクチャーをご披露いただきました。
 
 

アンティーク界の人以外は耳慣れない言葉かもしれません、「パピエ・マシェ」とはフランス語の文字通り、マシェ(咀嚼された)のパピエ(紙)、英語ではペーパー・マッシュと言います。マッシュポテトでおなじみの「マッシュ」。

果たしてこの技法がなぜある時期、爆発的にヨーロッパ、とりわけイギリスで流行り始めたのか、そのルーツは何だったのか、どんなものが作られたのか、どうしてこの素材に魅せられたのか、やがて下火になっていく原因は何だったのか・・・1時間ではとても消化しきれないヴォリューミーな内容をテンポよくリズミカルに説明してくださる小山先生。
 
このサロンのためにご自宅より重い秘蔵品を私たちのためにお持ちいただき、博物館級の作品を惜しげもなく触らせていただきました。見事な針道具セットは、たとえお裁縫をやらなくても側にあるだけで優雅な気分になれる逸品ですし、また愛らしい小物のボタンやメガネケースなども見せていただきました。
 
レクチャーで印象に残ったのは、英国訪問中、デザイナーのアレキサンダー・マックイーンが買う予定になっていたパピエ・マシェのチェストを小山先生がアンティークショップのガラス越しに目をつけて、売主のディーラーとお話されたというお話。将来の持ち主になる予定だったマックイーンは購入前に自殺してしまったそうで、そのショップに展示されていたのだそうです。お値段はというと、一流のデザイナーが購入予定のものとあってかなりの高額、流石に代わりに買って日本に持ち帰るわけにはいかなかったとか(笑)。お金があっても美の目利きにはなれませんが、いいものはやはり高いのですね、現代においても。