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香りの器

2月のAEAOサロンでは、汐留美術館にて開催中の「香りの器ー高砂コレクション展ー」にちなんで、香りの器に関するおはなしをオンラインにて行いました。

月1回のAEAOサロン倶楽部、実は今月でちょうど開催5周年。2016年2月よりスタートし、なんと初回のテーマも今回と同じ、香水瓶のテーマで集まったのです。当時はまだ本協会の活動としてはアンティーク検定試験と海外研修しか行っておらず、月1回みなさんで集まってお茶でもしながらアンティークのお話に花を咲かせてという趣旨と、海外研修へ誰もが行けるわけでもないので、研修にちなんだテーマのプレレクチャーを研修に参加しない人とも共有しましょう、という意図で始まりました。

その後の海外研修では2度ほど香水博物館を訪れていますし、またAEAOサロン倶楽部でも過去に「ラリックの香水瓶」展(松濤美術館)や「ラリック・エレガンス」展(練馬区立美術館)に合わせて香水瓶を鑑賞する機会がありました。今回のAEAOサロン倶楽部ご参加の方たちも、過去のサロンや研修に参加された方たち、そしてまたあらたにご参加いただいた方など、香水が好き、香水瓶に興味がある、というパルファン・ファンのメンバーで集まり、最後にアンンティーク香水瓶のコレクターさん所有のアール・ヌーヴォー期の美しいお品をみなさんで見せていただいたいたりして、目の保養をさせていただきました。

高砂コレクションとは、一企業である(世界五大香料会社の一つ、大企業です!)高砂香料工業株式会社さんが研究のために世界中から蒐集された「香りの器」の集大成です。通常は本社のあるニッセイアロマビル内の高砂コレクション・ギャラリーにて展示されていますが、2020年に創業100年を記念してのコレクション展覧会を企画され、現在は巡回展として汐留美術館で開催されている展覧会です。

私企業の所蔵品ですから、これまで他では見たことのないような貴重な香水瓶もありますし、また紀元前のものから、古代ギリシア、古代ローマ、イスラム世界における香りの器、西洋の黄金期の香水瓶、アール・ヌーヴォー、アール・デコ時代の一斉を風靡した香水瓶、そして日本の香炉や香道具に至るまで、あらゆる香りの器が勢ぞろいです。

時代の流れで、現在では人工的な香料がやや疎まれる時代、なるべくナチュラルにという回帰傾向がありますが、人工香料が製作された過程や技術も人類の叡智の一つ、そして貴族階級でない一般庶民が香水を身につけられるようになったのも、人工香料により香料の値段がうんと下がった恩恵です。

また香りの器は、レストランの食事が単なるお皿の上の食材だけでなく、テーブルウェアからレストランの内装、サービスなどすべてを含んだものであるのと同様、中味の香りと同等にその器の美しさ、繊細さ、愛らしさも重要な香りの一部ではないかと思わせられるアイテムです。あまり場所も取らないし、何よりも美しいものだらけで、コレクションするのが楽しいアンティークですね!