月別アーカイブ: 2019年10月

世田谷美術館「チェコ・デザイン100年の旅」展

10月のAEAO サロンは「チェコの可愛いデザインを求めて 〜ミュシャ、チェコ・キュビスムからチェコ・アニメまで〜」と題して、世田谷美術館で開催されているチェコ・デザインの鑑賞会を行いました。装飾工芸の世界ではミュシャは言うまでもないですが、逆にミュシャしか知らない・・・という人も多いのではないでしょうか。そんな知られざるチェコのデザインを総括した展覧会です。

見学に先立ってのプレ・レクチャー会場は、館内の公園に面したフレンチレストラン『Le Jardin』。窓の外からは緑が生い茂り、とても東京23区内とは思えない風景、日曜日とあってウェディングと思わしき団体がお庭で集っていました。

ちょうど先月国立プラハ工芸美術館を訪問された中山久美子先生(当協会アンティーク・スペシャリスト)が建築も含めた現地の様子をレポートしてくださり、またチェコという国についても歴史や政治をおさらいした上で展覧会の章立てや、チェコ・キュビスムについて詳しく解説してくださったおかげで、会場に足を踏み入れても戸惑うことなく、進んでいけます。

展覧会場は、都心の混み混みした会場とは異なって非常にゆったりとした空間構成、また場所柄や内容の性質からしても、昨今よくあるメディアにそそのかされてとりあえず話題になっているから来ましたよ、という鑑賞者はほぼ皆無、みなさんニッチに好きな人が集まっているという感じが読み取れ、非常に居心地のよい空間でした。

アール・ヌーヴォーから現代までのチェコ・デザインがだいたい10年ごとにブースで仕切られて展示されており、そこには家具ありテーブルウェアあり調度品ありポスターあり、あらためて装飾工芸という分野は、産業、デザイン、機能、この3つの軸で成り立っているのだと感じさせてくれます。

10月は台風や大雨に何度もやられ散々なお天気の月でしたが、この日は太陽も出て暑くもなく寒くもない本当に気持ちの良い日とあって、砧公園は多くの家族づれのピクニックや子供たちのスポーツで賑わっていました。普通は展覧会見学といえば結構歩くので、足も疲れがちですが、緑の中を歩くのは別腹ならぬ別筋肉でしょうか!?ぶらぶらと公園を横切りながら帰途につきました。


最終日はシャンティイにて

いよいよ研修最終日。今日はシャンティイへの日帰り旅行です。
折しも10月18〜20日の間はシャンティイ内で「植木市」が開催とあって、朝からものすごい人で賑わっていました。
ミニコンサートなども随時行われています。

シャンティイには何があるのか?お城があります。そのお城はいつ誰によって建てられたのか・・・よく見ると建築様式が異なる部分で成り立っています。
城内のコンデ美術館、まずはそんな解説から入り、レセプション会場での正餐に使用していたテーブルウェアなども見ながら・・・

メイン目的であるシャンティイ窯の部屋へ。
フランス陶磁の美は18世紀の軟質磁器にあり、と言う人が多いのも宜なるかな、昨日のセーヴルの軟質磁器も然り、今日はそのセーヴルよりも早く軟質磁器の窯を開いたシャンティイ窯。

柿右衛門を愛したコンデ公が庇護したシャンティイ窯の軟質磁器についての解説を聴きながら、作品を堪能した後は、城内レストランにてランチ、総評、ディプロマ授与式です。全員にディプロマが授与されました。

午後は厩舎や馬具美術館を訪れたり(シャンティイには有名は競馬場があります)、広大なル・ノートル設計の庭を散策したり、シャンティイ城の居室部分を見学したりしながらシャンティイ領地を堪能し、夕刻の電車でパリに戻りました。

ご参加いただいた研修生のみなさま、5日間お疲れ様でした!


典雅のセーヴル!

研修4日目。今日はいよいよフランスが世界に誇るセーヴル焼きのセーヴル訪問です。
セーヴルはパリの郊外、メトロで行くことも出来ますが、ミニバスを配車し、ちょっと優雅に参りました。

午前はセーヴル製陶所の工房をガイディング見学、もちろんプライベートで訪れることはできません。成形技法、焼成の技法、装飾技法、研磨技法などを実際に製陶所に潜入して、見学します。今回のガイドは、なんと日本で巡回した「フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」展を企画したセーヴル陶磁都市解説員モアンヌ前田恵美子氏。シュヴァリエを叙勲されている文化人にして専門家、これ以上のガイドはありません。期待を裏切らず、非常に丁寧で詳細な解説をしていただきました。

かつての王立磁器工房は、現在ではフランス国営の製陶所。200人ほどのスタッフはゆえに全員国家公務員、今でも18世紀の製法を忠実に再現し、作り続けられています。おそらく恐ろしいコストのかかる製法、民間ならとっくに「効率や生産性」を問われて、廃窯となっていたかもしれません。国営だからこそできる、フランスの誇るべき芸術です。

といっても無尽蔵に贅沢をしているわけでもなく、たとえば金彩を施したものは、壊れても金だけは回収し、次の作品へ使われます。工房には「金専用のゴミ箱」まで設置されており、金粉1粒でも持ち帰ることは出来ません。

頭の中がパンクした後は、すぐ近くに出来た坂茂設計のミュージックホール、ラ・セーヌ・ミュジカルへ。元々ルノーの工場跡地がしばらく放置されており、ようやく再開発が始められたところに、このミュージックホールが完成し、景観を一新しました!

この建物内のレストランにてランチをいただき、屋上まで上がって再開発地区を眺めた後は、カロリーを消費すべくぶら歩きしながらセーヴルに戻ります。

午後はセーヴルの美術館側の中でもヴァンセンヌとセーヴルの18世紀のコレクションを中心にアンヌ・コリヴァノフによるガイディング見学、とどっぷりセーヴル磁器の世界に浸った1日でした。