月別アーカイブ: 2019年9月

第4回アンティーク検定講習・2級

9月の土日4日間に渡って行われました、第4回アンティーク検定講習・2級が昨日終了しました。

2級を試験で挑戦した方はおわかりかと思うのですが、3級と2級には大きなレベルの差があります。2級を試験で合格するには、4科目(西洋美術史、西洋装飾美術工芸史、外国語、現代時事アンティーク)ですべて基準点をクリアする必要があり、1科目でも落とした場合は、次年度に1回のみ、既に合格した科目の免除が与えられていますが、そこで逃してしまうとまたゼロから受け直しとなります。

ちなみに第8回アンティーク検定試験(2019年・6月実施)の合格率は30%でした。

そこで、そんな難しい試験を受けて不合格になって落ち込むよりは、講習でみっちり4日間集中講座を受けて気持ちよく2級を修了しよう、というニーズもそれなりにあり、今回も7名の方が講習に臨みました。全員全講座を受講し出席率100%、最後に2級のディプロマを手にすることができました。

3級の講習を半年前に受けた方、1年前に受けた方、今回同時に受けた方、さまざまでしたが、みなさん既に3級の知識は有していますので、2級はさらに奥深く踏み込みます。

西洋美術史はに関しては、中世からキュビスムあたりまでの流れを深く切り込み、同時に装飾様式との関連を学びます。また特別な装飾様式であるアール・ヌーヴォー、アール・デコを始め、歴史主義とは、折衷主義とは、といった言葉を大きな建築から小さなジュエリーに至るまで、深めていきます。

そして2級を受験する人はまずほとんどの人が過去問を見て「手も足もでない」と怯える現代時事アンティーク。ちなみに2019年の合格基準では、他の科目が30点満点中20点で合格なのに対して、現代時事は18点と、合格基準を下げていますが、それでもなかなか合格に至らない、受験者泣かせの科目です。この現代時事アンティークのところを、体験談をも含めて興味の間口を広げようと、上野の森美術館学芸課長の坂元暁美先生に解説していただきます。受講生側からの質問も活発に出て、「現代アートとテーマパークはどう違うのか?」「なんでもかんでもアートと呼ぶ現代の風潮は如何なものか」といった有意義な議論にも発展しました。

また2級では実際にモノを見て触っての「鑑定」を行います。陶磁器、銀器、ガラスのそれぞれについて、いきなり自分の目の前に「鑑定物」が置かれ、それらについてdescription(記述)をします。ただ講義を聞くという受動的なスタイルに慣れていると、この能動的な作業に思った以上に「書けない」「わからない」ということが認識できるのですが、そもそも鑑定は記憶から情報を取り出すのではなく、何をどう調べればよいか、さえわかっていればできる作業です。そのノウハウについて学びます。

外国語(英語)も、語学としての英語を学ぶのではなく、特殊なオークション用語や、3次元のもののサイズを表現するのにどの順番で表現するのか、美術館の銘板に書いてあるこの用語の意味はどういうことに使うのか、といった、海外文献を読んだり美術館を訪問したりするのに役立つ英語を学びます。

版画や写真といった紙モノの世界についても、実際に「写真」と「インクジェットプリンターの写真という名の印刷物」との違い、一見全くわからないのですがルーペでドットが見えるかどうか、などを体験します。

課外授業は、当協会監修者である岡部昌幸先生による、ブラタモリならぬブラオカベ!今回は会期終了直前の「1933年の室内装飾展」(東京都庭園美術館)を隅から隅まで見学、庭をも含めてたっぷり2時間歩き回された後も、白金台界隈めぐりが続き、最終目的地ショコラティエではみなさん「甘いホットチョコレートのドリンクに、スイーツとしてのチョコレート」をほうばって疲労回復。

4日間で12単位という実にハードな集中講習をすべて終え、カクテル&ディプロマ授与では全員が笑顔で終えることができました。受講生のみなさん、出講いただいた先生方、お疲れ様でした。

次回第5回アンティーク検定講習・2級は2020年1〜2月に実施する予定です。


お屋敷シリーズ、旧古河虎之助邸を訪ねる

9月のサロンは、お屋敷訪問シリーズ第二弾、昨年9月に行われた第一弾の鳩山会館に続き、今回は旧古河虎之助邸を訪ねる会でした。

お屋敷訪問シリーズを催行するのは季節のよい5月、9月、10月などで、雨さえ降らなければ・・・と思っていたのに明け方はまさかの雨・・・でしたが、ランチの時間には小雨となり、どうやら止む様子。まずはプレレクチャーを、アンティークの調度品が可愛く飾られている隠れ家カフェにて、フルコースランチをいただきながら。

明治から戦前までの日本の社会階層や住居はどんな状況だったのか、なぜこの期間に洋館が建設されたのか、施主はどんな人たちだったのか、どのくらいの女中や下働きの人たちが必要とされていたのか、建築スタイルとしては何様式が多かったのか、持ち家率ってどのくらいだったのか…住まいにまつわる話題は誰にとっても身近なだけに盛り上がったところで、前菜がサービスされました。

特別にお願いして作っていただいたお料理は、どれも丁寧に料理された感がたっぷりの、ヘルシーで美味しいものでした。全員しっかり完食!

ランチを終えて外に出たら雨は止み、それほど気温も高くなく、ちょうどよい庭園散策日和となりました。

そしていよいよ館内ツアー。館内は事前予約制で、館内学芸員によるガイドでのみ見学ができます。この会はほぼ協会サロンの参加者で、ゆっくりと隅々まで鑑賞することができました。

明治〜昭和初期に建設された多くの邸が和洋館並列形式なのに対し、ここは洋館単独として設計され、内部に和館が取り入れられているという、一見外観からはわからない造りとなっています。

学芸員さんによれば、コンドルが設計した「洋館の中に和館を取り入れる」スタイルは4館しか設計しておらず、この旧古河邸が現存している唯一のものだそうです(他の3館は消失)。

洋と和を両方取り入れるのに、よく「折衷」という言葉を使いますが、ここは「折衷ではなく、調和と共存」。和館が存在している様子は外観からは一切わからない、また屋敷から眺めた庭はあくまでもイングリッシュ・ガーデンのみが目に入り、その向こうの低地にある日本庭園は、まさかあるとは気づかない、そんな計算された設計で、言われてみると美しく調和しているのですね。

戦後の財閥解体によりまずは国に接収され、次に進駐軍による接収の後、「30年間、お化け屋敷のように荒れ放題だった、動物も住みついていた」状態の館を数年かけて修復工事、平成元年にようやくほぼ元の状態に復元し美術館としての開館となりましたが、荒れ放題からの修復の大変さ、困難さを経験してきただけに、現在ではスリッパに履き替え、ガイドツアーのみの見学となっています。

30年の空白期間ゆえか当時の様子でわからないことは残っており、たとえば館内見どころの1つである大理石を使用して作られた五右衛門風呂のような丸い浴槽にどうやってお湯を張っていたのかについても、諸説あるようです。

館内内部には冷房施設はなく、扇風機や冷風機のみでした。真夏でなくて、雨上がりの今日でよかったわね、と結果オーライ!まだバラの季節前だけあって、庭の訪問者があまりいないのも、かえって当時の邸の住人になれたような気分を味わうことができました。

好評のお屋敷訪問シリーズ、今度はどこを訪ねましょうか・・・。


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従いまして、9月のニュースレターの配信が遅れますことをご了承くださいませ。

9月のニュースレターにつきましては、配信までの間、こちらでご紹介させていただきます。

9月のニュースレターをお届けいたします。

* 2019年10-12月期 アンティーク講座

10-12月期のアンティーク講座のプログラムをupしております。
お申し込みは各スクールにて受け付けております。
尚、アンスティチュ・フランセ東京につきましては定員、締め切りがございますのでご注意ください。

< アンスティチュ・フランセ東京 >

10月24日(木)
17世紀~20世紀におけるフランスのモード史 ~バロックモードからパコ・ラバンヌまで~

10月31日(木)
フランスのレース、ブティの世界 ~シャンティイ・レースや南仏ブティの愉しみ方~

11月14日(木)
フランスのアンティーク・ジュエリーの歴史 ~宮廷の「宝石」からコスチュームジュエリーまで~

11月28日(木)
フランスにおける香りの歴史とアンティーク香水瓶、嗅ぎタバコ入れ、ヴィネグレット

12月12日(木)
パリ万博から眺める、装飾美術工芸の世界

< よみうりカルチャー恵比寿センター >

10月4日(金)
ヨーロッパの茶文化とサロン

11月1日(金)
美しい名作椅子たち

12月6日(金)
ヨーロッパの宮殿と装飾 Part2

< 目黒学園カルチャースクール >

10月7日(月)
ヨーロッパの茶文化とサロン

11月18日(月)
美しい名作椅子たち

12月2日(月)
ヨーロッパの宮殿と装飾 Part2 

2019年10-12月期 アンティーク講座

* AEAOサロン倶楽部

ワンショットで集い、学び、楽しめるサロン形式の講座です。
毎月1日に翌月のサロンの申し込みをスタートしています。

9月:
9/16(月・祝)「コンドルが建てたお屋敷へ行こう!」*残席1

10月:
10/27(日)「チェコの可愛いデザインを求めて ~ミュシャ、チェコ・キュビスムからチェコ・アニメまで~」

以降は今後のサロンの開催予定です。詳細が決まり次第HPにてupいたします。お申し込みは前月の1日より行います。

11月(日程未定):
「さようなら原美術館 ~1930年代の洋風邸宅~」

12月(日程未定):
「『リヒテンシュタイン公爵家の至宝展』を知り尽くす!」

12月20日(金)or 21日(土)
「オークションへ行ってみよう!」(*内覧会またはオークション)

1月(日程未定):
「サラ・ベルナール最後の巡回地、松濤にてベル・エポックを偲ぶ」

AEAOサロン倶楽部

* 第5回アンティーク検定講習

講習を受講することにより3級および2級を取得できる、第5回アンティーク検定講習は2020年1月~2月に開催予定です。会場の確保ができ次第、ご案内いたします。

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