月別アーカイブ: 2019年2月

アガサ・クリスティの好きなコーヒーカップ

2月のサロンは、アガサ・クリスティの小説を通じて小説や映画に出てくるコーヒーカップをテーマに集まりました。
 

日本におけるオールド・ノリタケをはじめ近代輸出工芸史の第一人者であり、東京藝術大学・特任教授の井谷善惠先生の新著「アガサ・クリスティーとコーヒー (珈琲文化選書)」に描かれているコーヒーの世界、あらためて注目して見てみると、当時の時代考証や言葉の使い方、イギリスという国の社会的地位の変遷などいろいろなことが見えてきます。日本コーヒー文化学会常任理事で、かつ英米文学にも造形の深い井谷先生ならではの洞察力で、非常に興味深い世界を私たちに教えてくださいました。
 

各作品の中に登場するコーヒーカップに注目しつつ、また先生のコレクションもお持ちいただき、みなさんで触って手に取って鑑賞させていただいた後は、地上40階の高層ビルのブラインドを上げ、絶景の空間にてコーヒー&ケーキでの楽しい懇親会。
 

懇親会用のカップは、会場提供に協力いただいた参加者様の大コレクション、フランス東部の、今は存在しない窯・KG Lunévilleのピンクの花模様のカップを使わせていただきました。井谷先生曰く、このピンクの顔料は他の色とは違って、最も高価な顔料代のものだということ。また金継ぎ中のカップから漆の話についても花が咲き、次回の井谷先生のサロンのテーマも固まりつつあります!
 


フランステーブルウェアの教科書・第2回読書会

まだまだ春には遠そうな2月中旬、第2回読書会が開催されました。
今日の章は、LES ASSIETTES(お皿)。本書の訳では「陶磁器の皿」と訳しています。
本章を主に訳していただいた中山久美子先生のファシリテーターで、読書会が進められました。
 
舌を噛みそうなカタカナがたくさん出てきますが、いったいそれらが何なのか、まだ日本ではそれほど知られていない形状だったりモチーフだったり、地名ですら馴染みがないものも多いです。調べてみようにも、カタカナではなかなか出てこない…従って、検索するための原語リストからスタートです。
 
ルーアンの「ランブルカン文様」って? ムスティエの「ベラン様式」って? 「サマデのバラ」って何? 
ただただ本を読んでいても作例が出ていないものについて、画像とともに、みなさんで紐解きます。
 
お皿は最もコレクションしやすいアイテムだからでしょうか、今回参加者のみなさんもそれぞれ集めているものがあるようで、色々なフランスのお皿をお持ちいただきました。それらを見て触って撫でて叩いて(!)、モノを理解していきます。


 

18世紀以前のファイアンスにあるペルネット痕なども、実物を見てみないとなかなかわからないものですね。
 
 


第3回アンティーク検定講習・2級=後半の部=

2月の3連休、雪予報で脅されていましたが、幸い東京はそれほどの大ごとにはなりませんでした。この連休の土日は、アンティーク検定講習・2級の後半の部が行われました。
 
通算3日目となる土曜日は、「英語」の授業でスタート。日本で普段暮らしている大人にとって、英語で物事を考えたり表現したりすることは滅多にないものですが、アンティーク検定試験2級以上には外国語(英語またはフランス語)の科目があります。対象が西洋アンティークですから、論文とまではいかなくても、対象となる工芸品をどう表現するか、色、サイズ、時代、状態、それらを英語で表現する方法を学びます。
 

絵画のサイズは縦と横のどちらから言うのか、ある立体のもののサイズを表す場合、高さ、長さ、奥行きはどういう順番で言うのか、知っていますか?
 

2限目は、写真、写真製版、版画、フォトコラージュなど紙モノの世界について学びます。アンティークではよくリトグラフなどのポスター、ポショワールの絵などもありますが、それぞれどんな技法で作られているのか、木版画と銅版画は主にどんな時代に誰によって製作されていたのか…学ぶことは尽きません。

実際にアンティークの写真を見て、写真なのか写真製版なのか、区別の仕方を教わり、目が疲れたところで、ランチへ。雪が舞うことはなかったですが、キリッとした寒さの中、少し歩いてリヴィエラ・カフェへ。
 

午後の講座は、2級受験者泣かせの科目「現代時事アンティーク」について、美術館に勤める現役の主任学芸員の講師より、アートフェアや美術館に関する現代事情を学びます。なぜアートフェアにはビエンナーレとかトリエンナーレといったイタリア語が使われるのか、現代のアート市場における日本の立ち位置は?日本の建築家は海外でどう評価されている?そんなお話をたっぷり学びました。

 

最終日は、午前中にアール・ヌーヴォーに関する講座を受けた後、午後はいよいよフィナーレ、アール・デコの館と言われる東京都庭園美術館へ。案内は本検定試験監修者の岡部昌幸先生です。普通ならすぐ建物の中に入るのですが、この庭園美術館の歴史や裏話、誰も知らない誰も書かない逸話など、美術館運営に関わった人しか語れない生の証言を聞くのも楽しいものです。

現在展示中のフォトコラージュはちょうど前日の授業でも話題に出ましたので、展示もじっくり鑑賞し、そしてCAFE TEIENにてディプロマ授与、全員が全単位を取得、晴れてアンティーク鑑定2級の認定を受けることができました。


 
受講生のみなさま、寒い中、全4日間に渡る集中講習、本当にお疲れ様でした。次は1級の検定試験を目指して、アンテナを張り続けてくださいね!