2024年もあと何時間かで終わろうとしています。今年「アンティーク検定」の受験や受講をしていただいたみなさま、そして海外研修や国内研修をはじめ、本協会のさまざまな活動にご参加いただいたみなさま、有難うございました。
本協会は2014年7月に設立していますので、人間でいえば現在の年齢は10歳と数か月、まだ小学生といったところでしょうか。まずは義務教育を無事終え、そしてその後どのような道に進むのか、子どもながらに考えているところです。
今日は大晦日でもありますし、事務局としての業務は休業しておりますが、代表理事として少しこれからの展望などについて、グダグダと思いを綴ってみたいと思います。
協会設立の趣旨は、「用の美である西洋装飾工芸の世界を生活に取り入れて愉しもう、そのための西洋文化の歴史や知識を身につけよう」というのが根本にあり、その知識を体系的に学ぶ一つの方法として「アンティーク検定」が生み出されました。日本では数多の趣味検定が存在しており、それらの多くは資格を取得してビジネスに直結させることがゴールではなく、資格を取得するプロセスをも含めて趣味の世界を深く探求する、という人生を豊かにするためのものです。
この「アンティーク検定」も全く同じで、ガリ勉をして重箱の隅をつついたようなニッチな知識や語彙を頭に詰め込むことではなく、知らないことはその場で知ればそれでよいよね、それよりもこの発見を大切にしようね、というスタンスです。そもそもこういう世界にのめり込むのもある程度若いころに無駄な買い物などをした後、本当に粋なものに目が行くミドル~シニア世代ですから、今更小難しい受験勉強なんてしたくないわ、というごもっともなニーズにも応え、最上級の1級以外は検定講習という方法でチャレンジすることも可能になっています。(その結果、現在2級は試験のニーズがなく、講習のみで取得可能になっています。ただ、この方針については今後改変の可能性があります。)
法人格を一般社団法人にしたのは、利益を追求することを目的としない非営利型が一般社団法人の中に存在するからです。資本主義社会ですから、普通はどの企業も利益を追求するのが当たり前なのですが、非営利型法人というのは事業で得た利益を構成員に分配することを目的とせず、事業や社会的貢献活動のために利用することを目的としています。(ただ、そもそも利益が出せるのか、というと…実は万年赤字なのが実情です。)
ここで、非営利型法人というと一般に思い浮かぶのがNPO法人であり、その多くは公共機関からの補助金、寄付金、助成金などが収入の一部を占めています。それでよく勘違いというか誤解されるのですが、「国からお金が出ているんでしょう」と言われることがあります。「公共のお金でやっているのに、なぜ無料ではないのか、非営利ではないのか」「海外研修費が高すぎる、非営利団体なのだからもっと安くあるべき」などとご批判を頂くこともあるのですが、当協会はコロナ禍時に国より持続化給付金、東京都より東京都中小企業者等月次支援給付金を頂いた事を除き、助成金・補助金といった公的な収入は全く得ていません。収入源はあくまで受験者の検定試験料・講習料であり、そして様々な周辺活動の参加費(+検定を未取得の場合は年会費)をその都度参加者の方々に負担していただいています。また海外研修に関しては、コロナ禍以降、参加希望者の要望により旅行会社主催のツアー型で行っていますので、収入は旅行会社へ入っています。
初回の検定試験実施にあたってはフランス大使館より後援名義をいただきました。これも時折誤解されるのですが、後援名義というのは応援してくださることで、協賛ではありません。つまり協賛金を受け取っているわけでもなんでもなく、「応援していますよ」という御印を記載することができるお墨付きマークのようなものに過ぎないのです。
さらに本協会の社員(社団法人の構成員をこう呼びます、会社員などの意味ではありません)は現在1名の代表理事と2名の理事(共に任期2年)で構成されていますが、業務運営に当たっては、設立時より歴代全員が無報酬です。検定の監修者からのアドバイスも無報酬でいただいています。
設立前に「検定試験を実施する団体を作る」というアイデアの実現化に向けて調査をしていた時点で、民間検定試験の実施団体は歴史と知名度のある超大手(英検、漢検など)以外は検定事業で利益は出せないということが判明しました。それではなぜこんなに幾多もの検定試験が存在するのかというと、私企業が販売促進のためにその商品を広めるための検定試験を実施する団体を発足し、バックアップをしているという形態が主流なのです。例えば『チョコレート検定』というのは株式会社 明治の一部門であるチョコレート検定委員会が主催している検定試験です。
アンティーク検定をバックアップしてくれそうな一般企業ってどこかあるのだろうか…と検討してみましたが、扱うものの範囲が広すぎますし、また仮にどこかの企業にスポンサーになっていただいたとしたら、その企業の規制がかかり校正な試験問題を作成することができなくなるのも問題です。それでスポンサー探しは諦め、出来る範囲で経費を抑え、中立的な立場で運営することにしました。
コロナ禍を経て、この1~2年の物価高により運営にかかる経費が軒並み高騰し、また従来は無料または安価で使えたシステムが廃止になったり、買い切りだったソフトがサブスクとなって費用が恒常的に発生したり、と厳しい局面を迎えています。広告ガチャガチャの無料サイトや、記入された個人情報がどう漏れるか分からない怪しいフォームを使用するわけにもいかないので、セキュリティにお金がかかる時代ですから致し方ありません。検定の受験料などなるべく値上げをしたくないのですが、11年目にして改定の可能性も出てきました。
このように無報酬社員のマンパワーもバジェットもリソースが限られる中で、自分軸でこの世界をどのように提供できるか、を考える時期に来ていると思っています。
コロナ前くらいまでは、とにかくも知ってもらうことが一番、と如何にして裾野を広げ「アンティーク検定」の名を広め1人でも多くの方を取り込むか、に躍起になっていました。また来るもの拒まず、でどなたでも参加希望者は受け入れてきたのですが、ここにきて不特定の母数を獲得することよりも、協会の趣旨に共感し、一緒に愉しんでもらえる方々と深くかかわることの大切さを感じ始めました。SNSでもフォロワーが一定数まではほのぼのとしたコミュニケーションで楽しくやっていたのが、フォロワー数が増えるとともにアンチがどこからともなく湧き出てきて不快な思いをする、というケースがあるようですが、同じようなことが当協会にも起こり始めています。
当協会の運営規模やリソースから出来ることは限られており、残念ながらすべての方を満足させることはできません。運営方針についても監修者と都度議論を重ねて行っており、無理をしてまで他人軸で行う必要もないので、少しずつ方向転換を検討しているところです。
2025年の予定としては、主活動であるアンティーク検定試験(7月)、アンティーク検定講習(3月、9~10月頃)、海外研修(3月・南フランス)、春の国内研修(5~6月頃・金沢)、秋の国内研修(10~11月頃・訪問地未定)、お出かけ講座のAEAOサロン倶楽部(毎月)、アンティーク座学講座であるアカデメイア、スペシャリスト講習会(4月)などの他に、コロナ以前のような現地集散型のプライベート海外研修やオークション見学会、遠足なども考えています。
最後になりましたが、コロナ禍以降、「存続のために、好きに使ってください」とある個人の方より「使途を定めない寄付金」を定期的にいただいております。この場を借りてM.T.様に心より御礼を申し上げます。
2025年も新たな挑戦を重ねてまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。みなさま、どうぞよい年をお迎えください。
代表理事:河合 恵美