投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

読書会「名画のインテリア」で18世紀の宮廷生活を想像する楽しさ

先月より開始しました読書会「名画のインテリア」、今日はその第2回です。

まずは前回の絵画のおさらいで、「花婿を探せ!」。結婚式の様子なのに花婿はどこに?という質問があり、小栁先生が当時のフランドル絵画の描かれ方から解明してくださいました。AIの答えはどうやら見当違いだったということで、まだまだ人類の叡智にはほど遠いですね。

今回のテーマは鏡、化粧室、マルシャン・メルシエ、ヴェルニ・マルタン、コモッド…と17世紀から18世紀にかけての名画に描かれる調度品を見ながら、当時の宮廷の流行り、風俗、生活様式、工芸の技術、時の治世者の好みや性格などさまざまな視点を通して学びます。

今年ルーヴルが購入してコレクションに入ったばかりという家具の紹介などもしていただきました。(購入価格を調べましたが、オフィシャルには公表していませんでした!)

ところでフランスは犬に優しい国で犬好きが多いことで知られていますが、この文化も元々はフランス王家が猟犬を愛玩動物としていたことから、上方文化が下方へ降りてきた例ですね。アール・ドゥ・ラ・ターブル然り、モード然り、すべては芸術の頂点であった18世紀の文化が礎となっていることを、犬小屋が描かれている絵画を見ながらあらためて思ったのでした。

本読書会、8月はお休みで次回は9月ですが、毎回あまりに楽しすぎて、どうやら当初予定の3回では終わりそうもありません。第二弾あるいはスペシャル回の開催を検討しています。お申込みは随時受付中です。

初めての口頭試問付きアンティーク検定試験

第16回目となるアンティーク検定試験、今年の1級の試験は初の口頭試問付講習形式を実施しました。従来の試験形式でも受験できますが、勉強の仕方がよく分からない、十二分に理解した上で取得したいという受験希望者の声を反映させ、論述は事前に提出、2日間の講習で2級までの知識を再確認し、最後に試験官より論述に関しての口頭試問を一人ずつ受けるという形で、従来の検定試験より1週間前のこの週末に行われました。

1日目は、西洋美術史、西洋装飾美術工芸史、外国語でのdescriptionをインプットではなくアウトプットできるように訓練を兼ねて再確認します。脳みそがフル回転した終日講習でしたね。

2日目の午前中は、現代時事アンティーク、この分野が唯一自分で考えて意見を述べるという、がり勉や丸暗記が全く役に立たない科目です。即席で意見を述べるには、普段からアート情勢を追って、自分の頭で考えていないといけない、考えなしでただ話し始めて誘導質問されるとどんどん意見が上書きされていき、ついには自分が最初に主張したことと正反対の結論になる、という自爆もよくありがちです。

テーマはどれも深い考察を必要とする問題ですが、自分自身のポジションをとっているか、「一般には」「現代人は」と主語をぼかして自分の意見を無にしていないか、これは日本の受け身的教育を受けてきた日本人にはなかなか厳しい方式です。今回のテーマの1つは、ガウディのサグラダ・ファミリアが3DプリンティングやAIを用いた構造解析、デジタル技術の導入により、かつて300年かかると言われていた完成がカウントダウンに入ったことに関し、主導権が人間の創造性からテクノロジーへ移っていくことをどう考えるか、という問題でした。決して簡単ではありませんよね。

口頭試問へ向けての直前対策講座を行い、そしていよいよ一人ずつ試験会場へ入室。

1つ1つの細かい事象は今や検索エンジンで調べればすぐわかるどころか、AIが教えてくれます。提出する論述をAIを使って仕上げたとしても(それ自体は今や誰も防ぐことができない)、自分で書いた文章の内容に関しての背景、歴史、美術史的な意義を自らの言葉で語れるかを口頭試問でチェックされるという、ごまかしの効かない試験が行われました。

それぞれの持ち時間が終了し、みなさん緊張と疲労でぐったりしていましたが、即日成績発表です。カフェに移動して、いよいよスコアが手元に!

結果、今回幸い不合格の方はゼロでした。「合格」または「条件付き合格」となり、全員1級の認定証を手にすることができました!!

今回の最高得点者は、なんと最高齢のマダム、彼女だけが唯一過去に2級までを試験でパスしています。現在では2級は講習のみでの取得となっていますが、試験実施時代に一生懸命覚えたあれやこれや、やはり脳の引き出しの中でちゃんと保存されていたようで、今回少しの整理を行ったら、見事に整理整頓できたというわけでしょうか。多くの高齢者が認知症におびえている中、誰よりも高得点でした。

認定証を授与した後は、スイーツとお茶でホッと一息。受験者のみなさま、お疲れ様でした。そしてあらためて合格おめでとうございます。試験官からも「これからは得た知識を自ら語れるようにしてくださいね、そしてぜひアートを買って、手元に置いてください」と、アンティーク・コレクター試験にふさわしいアドバイスでした。

心惹かれるチャイナドレス展へ

6月、すでに2回目のAEAOサロン倶楽部では前回のイスラム美術に続き、1930年代の上海モダンガールの象徴、チャイナドレスの展覧会へ足を運びました。

東京の文京区後楽に日中友好会館という、戦前に旧満州国日本留学生寮だった建物があります。その中に1988年にオープンしたのが日中友好会館美術館、中国の伝統工芸から現代アートまで様々な展覧会を開催しているのですが、今回の特別企画展『心惹かれるチャイナドレス展』は、19世紀末から1940年代までのファッションを、特に国際モダン都市・上海を中心に西洋モードから影響を受けて移行していく過程がうかがえる展示です。

この会館内にも美味しそうな中華レストランがあるのですが、今回の懇親会ランチは飯田橋・神楽坂エリアで見つけた、フレンチのようなシックなチャイニーズ、結華楼さんの個室にて。ふかひれのスープ、北京ダック、抹茶小籠包、エビのオーロラソース、トマト冷麺などしっかりコース料理でいただきました。トマト冷麺など、ほぼイタリアンのプリモ・ピアットに出てくるカッペリーニ・ポモドーロのようなお味。

あいにくの雨でしたが、神楽坂通りから歩いて日中友好会館美術館へ。飯田橋から行くとあの不便な陸橋でしか行けない立地にあるのが玉に瑕ですが、そこまで知名度があるとは思えない美術館なのに、展覧会場は結構な人でにぎわっています。そろそろ会期終了間際であるのと、メディアの評判も上々なのか、雨の中の平日午後にして多くの鑑賞者であふれていました。

私たちが「チャイナドレス」と呼んでいるものは、1930年代の上海で誕生したもの。そのルーツとなるものが清王朝・満州民族の旗袍(チーパオ)と言う伝統ファッションであり、やがて上下セパレートのものからワンピース型のドレスへと変遷していく過程で女性の地位向上や美意識の変化が生まれ、そこに国際様式、アール・デコが入り込み立体裁断が生まれ、また新たな素材革命が起き…とたった40年くらいの間に大きく変わったチャイナファッションの歴史をじっくりと深掘りすることができました。

纏足の靴や手刺繍の小物類の展示もあり、そう広くない会場がぎっしり20世紀初頭のチャイナドレスコレクションで彩られていて、とても充実した展覧会でした。

飯田橋駅まで戻り、ちょっと疲れたのでお茶でも、ということでGODIVAカフェへ。上質なチョコレートが雨のうっとうしさを癒してくれますね。

夏のAEAOサロン倶楽部、絶賛プログラム思案中です。もう少々お待ちくださいね。

読書会「名画のインテリア」スタート!

新しい読書会「名画のインテリア」がスタートしました。昨年12月に創元社より発行された『名画のインテリア』の著書、小栁由紀子先生より本書を紐解いてわかりやすく解説いただくシリーズです。

本書は室内装飾の項目が五十音順の章立てになっています。つまり時代や場所はバラバラなのですが、それを時代順にみていきましょうということで、本日の第1回は、中世から18世紀の途中まで。

項目でいくと、中世の部屋、長持、タペストリー、オリエントの絨毯、17世紀ブルジョワの室内、金唐革、漆の家具、ゴブラン製作所、オテル…と読み進めていったところで時間になりました。

今回タペストリーの項目の中で取り上げられた、ヘラルト・ダヴィトの『カナの婚礼』に描かれている某人物は男性なのか女性なのか、新婦は一目瞭然で分かるが新郎ってどこにいるのだ?という疑問が出て、みなさんであれこれ意見を出し合ったのですがどうもよく分かりません。次回までの宿題にしましょう、ということでお開きになりました。

その後AIに聞いてみたところ、これまた最初は噓をつき、そして訂正後も眉唾ものの回答が…AIの種類を変えるとまた違う答えが出るということは、ルーヴル美術館所蔵の作品であっても解釈が定まっていないということなのですね。でもこうして解き明かされていない秘密を探る楽しみ、これもアンティークの世界の醍醐味なのです。

次回は18世紀の続きから行います。初回を逃した方もオンデマンドでご受講が可能です。お申込みは随時受け付けています。

東京ジャーミー、東洋一美しいモスクに身を置いて

AEAOサロン倶楽部「イスラム美術と東洋一美しいモスク」にて、代々木上原にある東京ジャーミーの見学ツアーに参加しました。ジャーミー(Camii)とは、人の集まる場所を意味するアラビア語が起源の「大規模なモスク」を意味するトルコ語だそうです。

イスラム美術は現在私たちが学んでいる西洋アンティークのルーツともなっている多くの要素を含んでいます。ヴェネチアのガラスもイスラムから入ってきましたし、カリグラフィー、幾何学模様、植物模様…多くの装飾の共通項目があります。今や渡航制限もあり、イマーム・モスクやピンクモスクを見になかなか行けないご時世ですが、東京には実は東洋一美しいとされるモスクがあるのです!

日曜日のお昼、まずは懇親会と称してイタリアンのランチをいただきます。ここ代々木上原はグルメなお店の激戦区、民家のようなところにも知る人ぞ知る名店が隠れていてお店選びも迷ったのですが、今日はランチ後そのまま通り沿いに歩いて東京ジャーミーに辿り着ける立地にあるお店、La Stella Polareを選んでみました。北極星という意味のイタリア語ですね。5階のフロアからすでにミナレット(尖塔)が見えています。

冷製スープ、前菜、パスタにフォカッチャ、ドルチェとフルコースながらも上品な量でどれも美味しくいただいた後、東京ジャーミーへと向かいます。

14時半からのガイドツアーをめがけて早めにやって来たのですが、時間になるとどんどん人が膨れ上がってきました。

この地にモスクが建てられたのははるか昔、ロシア革命時にまで遡ります。当時ロシアに住んでいたトルコ系イスラム教徒がシベリアを経て日本へ移住、この辺りに住み着いて礼拝堂を建設したのが1938年、その初代礼拝堂が老朽化のため1986年に解体されます。その同じ場所に再建されたのが現在のこのモスク、躯体は鹿島建設ですが、大理石やセラミックの資材はトルコから輸入、工芸職人、技術者もトルコから来日して2000年に完成したのが、この東洋一美しいとされるオスマン様式のモスクだということでした。

その装飾の特徴(チューリップやカーネーションの由来、コーランの一節であるカリグラフィー)や、扉の向いている方角(メッカ)、1日5回のお祈りは何を意味するのか、コーランの役目は何か…そんなイスラム教の初歩的な解説を1時間たっぷりかけてユーモアを交えて語っていただいた後、いよいよ礼拝堂へ上がります。外観をより近づいて見られる位置から、「鳥の宮殿」と呼ばれる人口の巣箱の彫刻なども鑑賞できました。お隣のトルコ文化センターの建築についてのレクチャーなども受けたところで、いよいよ聖堂内へ、靴を脱いでスカーフをかぶって入ります。もう入った瞬間に美しいステンドグラスとドームの幾何学模様が目に飛び込んできます。どこを見ても美しい、鮮やかな、それでいて静謐な装飾。

ちょうどお祈りの時間が始まりました。なぜ横に一列に並ぶのか、女性と男性で場所が違う理由、今はどんな内容なのか、なぜここで一部の人たちは帰るのか…ただモスク内に入っても絶対にわからないであろう細かなしぐさの意味などもガイドの方が解説してくださいます。そして、女性だけが上がれる女性専用の礼拝場所へも急こう配な螺旋階段を上って行ってみました。女性専用のこの場所のほうがより天井のドームやステンドグラスに近く、シャンデリアも至近距離で見ることができます。

充実した見学ツアーでしたが、ちょうど早稲田大学の調査研究グループの学生さんが一緒で、私たちの仲間の一人・中山久美子先生がインタビューされることに!彼女も早稲田大学大学院の卒業生なので、偶然とはいえ最適解な人物を選んでいるところもアラーの神の力!?

そして最後に館内にあるハラールマーケットへ!トルコのバザールでよく目にしたようなお土産から、バクラヴァなどのアラブ菓子、チーズケーキ、くるみケーキ、その他乾物でなかなか普通に売っていないような食品や香辛料などあって大盛況、もちろん私たちもあれこれ買いましたとも!

また近くに来たらぜひ訪れてみたい場所が1つ増えました。ご参加いただいたみなさまもお疲れ様でした。