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アンティーク検定講習・2級=後半の部=

今週末は第14回アンティーク検定講習・2級の後半の部が行われました。土曜日は夏のような気温、日曜日は冬の始まりのような気温と気候が乱高下の中、午前のオンライン講習に午後の見学講習、2日間とも楽しく学びました。

オンライン講習では西洋美術史の前半からの続き、モードやジュエリー史の宝飾芸術の世界、現代時事にアート・マーケット、そして家具と建築について、それぞれ1時間ずつと短いながらも濃い内容にまとめられた講座でした。アンティークと一言で言っても馴染みのある分野と全く目にも留まらなかった分野が人それぞれで、この講習ではその全てを網羅するだけになかなか大変です。それでもみなさん、このマラソンに頑張ってついて来て下さいました。

土曜日の見学講習は、パナソニック汐留美術館で開催中の「ベル・エポック―美しい時代」展の鑑賞、土日は日時指定予約制だけあってスムーズに入場。19世紀末から第一次大戦までの古き佳き時代、総合芸術が開花するパリに集まった芸術家、工芸作家、装飾家たちの作品~美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、そして科学~がコンパクトにまとめられた幕の内弁当豪華版でした。

日曜日の見学は、迎賓館・赤坂離宮。明治以降の素敵な洋館は各地にいくつか残されていますが、東宮御所として作られたこの建物は外観も内装もすべてレベチです!

ちょうど午前のオンライン講座で家具や建築を学んだばかりだったので、「この椅子はルイ16世様式」「兜や戦争モチーフ、これはアンピールね」と答え合わせも順調に。ところどころ迎賓館専属のガイドさんに、この食器はどこのメーカーのものか(陶磁器はノリタケと大倉陶園、銀器は燕三条、クリスタルはカガミ、とすべて国産でした)、シャンデリアは当時のオリジナルのものなのか、などと色々質問もしてみました。ここのガイドさんは見学者から質問されたいオーラを満面に出しているので、どんな微細なことでも気軽に聞けるのですよね。

今年に入って、部屋によっては撮影可の日も設定されていたのですが今日は残念ながらすべての部屋での写真撮影が禁止、それでも青空の中で映える堂々とした松に噴水の主庭はその美しさと優雅さに「雅」を感じます。

前回訪れたときは半分工事中だった正門も奇麗にお化粧直しされていました。

ところで昨今どこでも観光地にはインバウンドの観光客があふれていますが、ここはほぼ日本人、あとは少数の東アジアの人たちで明治神宮とはやはり違いますね。

最後の懇親会は、迎賓館の前庭でもキッチンカーが出ていてカクテルが楽しめたのですが、別邸にあるカーブドッチ迎賓館のカフェへ。ガラス張りの明るい空間の中、お茶&スイーツをいただきながら、2級の修了証授与が行われました。受講者のみなさま、おめでとうございました。本日、こうしてあらたなる鑑定士が誕生しました。


アンティーク検定講習・2級

9月の最終週末は、アンティーク検定講習・2級の前半の部が行われました。講習参加者はみなさん3級を講習または試験で取得していますので、既に基礎的な知識は持っている方々ばかりです。2級でより深い知識と鑑定の術を培うべく、今回の講習を受講されています。

初日は終日座学講習で、まずは顔合わせと自己紹介。なぜアンティークに関心を持っているのか、どこに惹かれてハマったのか、そんな思いを語り合ったところでテーブルウェアの歴史をざっと学びます。

「美しいフランステーブルウェアの教科書」も、「西洋骨董鑑定の教科書」もどちらも写真や画像が豊富で良い本なのですが、情報量が多すぎて事典的なものとなってしまい、どこをどう噛み砕いて読んでいけばよいのか、独学ではなかなか難しいかもしれません。

そこで実際にモノを見て、これは何のための道具?何用のカトラリー?といった知識も身につけると同時に、実際にモノを鑑定するという実技に入ります。

普段は、例えばアンティークショップにある品物、またはオークションに出品されている品物の解説を読む=受動な立場なのですが、この2級では自らそれらを鑑定する=能動、の作業を行います。

言われればそうだけど、自分で言語化する、というのは慣れていないとなかなかできないもの、最初は「え~っと…」と戸惑うのですが、何を言えばよいのか、リストに沿って言語化していくうちに出来るようになります。

みなさんそれぞれ配られた鑑定品のdescriptionを仕上げていきます。サインが摩耗していて読めない、これは手彩?プリント?この刻印はいったい何?と、アンティーク品ですから状態も様々。様式は?装飾文様は?とさまざまな角度で紐解いていきます。ちなみにこの鑑定品はそのままお持ち帰りいただけるのですよ。

どっと疲れたところでお昼は近くのお店でランチ。講習会場近辺のレストランは色々利用しましたがコロナ以降なくなってしまったり経営が変わってしまったりで、そんな中このところ利用していて評判のよいのが「スパイス料理とワインZero」という名の、カレー屋さん。全くカレーの雰囲気がない店名と店内なのですが、お昼のカレーが美味しくて、みなさん満足してくださいます。

焼き立てのナンが絶品!

午後の3限目は銀器の鑑定を、刻印を入念に読み込みながら実践です。休憩時にルイボス・ティと生クリーム大福で目の疲れを取ったところで、4限目は複製芸術について。写真、版画の世界を紐解いていきます。よく蚤の市などで見つかる古い写真やファッションプレートの見かたを、ルーペを使いながらの鑑定ごっこで初日の講習が終わりました。

いつも講習で利用している東京芸術劇場が来年7月中旬まで一時休館とのことで、次回の講習はこの便利な会場が利用できずに残念。

1日目は終日会場にこもっての講習でしたが、翌2日目は午前にオンライン講習が2コマ。1コマ目はアール・ヌーヴォー&アール・デコ。ちょうど午後の見学地にも沿ったテーマですね。そして2コマ目は西洋美術史I。なぜアンティークを勉強するのに西洋美術史をやらなくてはいけないのか、というご意見(ご批判)はよくあるのですが、アンティーク=装飾美術は西洋美術史と深くかかわっているのです。西洋美術史の流れを知らずして装飾工芸品を語ることはできないのです。

オンライン講座が正午で終わり、午後は東京都庭園美術館にて集合、当協会の検定監修者である岡部昌幸先生による解説で館内を見て回ります。とはいえ「館内」に入れたのは実に集合から1時間後、まず庭園にてこの館が建てられた歴史、国の重要文化財に指定されるまでの経緯、野外彫刻の存在から茶室見学、建物の外観での建築としての見かたなど教わり、そしてようやく「建物公開2024 あかり、ともるとき」展を鑑賞。

外は時折小雨が降ったり止んだりのどんよりなお天気な上、展覧会も会期の初めにも関わらずかなりの入館者でにぎわっていました。そのためか館内カフェも混み合っており、予約時で7組待ちでしたが、ちょうど一通り旧館を鑑賞できたタイミングで席に案内され、お茶とケーキでの懇親会を兼ねたひと時も。

最後に新館の方の展示品も鑑賞し、足も脳みそもフル回転でしたがこれにて前半の講習が終了いたしました。後半はまた3週間後ですね。ご参加いただいたみなさま、お疲れ様でした!


アンティーク検定試験1級・対策講座

今日は7月7日に行われる第14回アンティーク検定試験のための対策講座をオンラインにて開催しました。ちょうど2週間前ですね。今年のアンティーク・スペシャリストである関根靖子さん、白木真知子さんがアドバイザーとして参加、後輩のために勉強法や経験談などをお話いただきました。

1級は他の分野における検定試験でも同じかと思いますが、簡単ではありません。時々「何も勉強しなくても受かりますか?」と聞かれますが、何も勉強しなくても誰でも受かる試験に受かっても嬉しくない…ですよね?

日本の学校教育の弊害の一つに、インプットは得意だけれどアウトプット慣れしていない、ということがあります。暗記はできる、選ぶことはできる、聞かれたら答えられる、でも自ら言語化して表現するのは苦手、意見なんて特にない…こんな人が多いのではないでしょうか。

1級の試験はまさに「すべて自ら言語化して表現する」力を求められます。知識としては2級の段階ですでに全て網羅されていますので、それらを嚙み砕いて消化する、という作業を広範囲にわたって復習する必要があります。

1級の受験者はみなさん2級の講習を修了(2021年以前は試験で合格)されており、西洋美術史の通史、オークションカタログのdescriptionの読み方、陶磁器、銀器、ガラス、モード、ジュエリーにおける知識、アートマーケットの現状などについて学んでいます。それらの知識を誰かに正確に説明できるようになる、これが1級のレベルに求められています。

試験というのは一種の慣れでもありますので、習うより慣れよ、でしょうか。みなさんどうか受かりますように!!


アンティーク検定講習・2級 <後半の部>

前半に引き続き、後半も三連休の中の土日で第13回アンティーク検定講習・2級が開催されました。後半3日目の講習・1限目は、西洋美術史の続き、バロックから20世紀初頭までを俯瞰していきます。ようやくなじみのある絵画や画家の名前が登場してくる時代になってきました。西洋美術史は社会学や経済学と併せて見ていくととても面白い見方ができるのです。

2限目はモード史。モードというのはフランス語で「流行」のこと、英語で言うところのfashionです。流行を作っていったのは誰だったのか、それはどのような時代にどのようなスタイルで誕生したのか、モード史についてヘンリー8世の衣装からシャネル、ディオールまでを見ていきました。

お昼をはさんで3限目は、アンティークショップ『アンティークス・ヴィオレッタ』の店主でもあり当協会認定アンティーク・スペシャリストでもある青山先生によるショップからの配信で、アンティークジュエリーの歴史を学びます。『アンティークス・ヴィオレッタ』さんでは主にイギリスから仕入れられたアンティーク・ジュエリーが店頭に並んでいます。ジョージ1世からエドゥワード8世に至るまでのイギリスの王室の歴史とともに、身につけたジュエリーを紐解いていきます。

4限目では、アール・ヌーヴォーとアール・デコのジュエリー、そしてコスチューム・ジュエリーについて、こちらは実際の商品を今回はふんだんに見せていただくという贅沢な講習でした。

4日目、5-6限目はアール・ヌーヴォー&アール・デコについて。それぞれどういうムーブメントだったのか、いつ、どこで興った様式で、なぜ廃れたのか、そしていつリヴァイヴァルしたのか、この20世紀の二大様式をまとめてみたところで監修者・岡部先生より「日本における1920−30年代の建築」に関してもお話がありました。

最後の見学は、世界的に認められたアール・デコ建築邸宅である旧朝香宮邸、現東京都庭園美術館の開館40周年記念「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」を岡部先生の解説で周りました。あいにくの雨で気温も低かったのですが、みなさんの好奇心の方が強く、傘を刺して茶室や庭の高台へもしっかり歩き、そして邸宅内での装飾品・調度品をじっくり解説をいただきながら鑑賞。

雨のおかげで見学者も少なかったので、いつもは並んで順番待ちをするカフェへも待ち時間ゼロで入れ、無事ディプロマ授与式も終えることができました。

受講者のみなさま、4日間の講習お疲れ様でした。そして修了おめでとうございます。次は1級を目指してぜひこの世界を引き続き堪能していただけますように。


アンティーク検定講習・2級<前半の部>

3連休の週末ですが、土日は第13回アンティーク検定講習・2級が開催されました。先月の講習で3級を修了された方、また昨年のアンティーク検定試験で3級を合格された方が今回2級に臨みました。3級ではそれぞれ「入門」に過ぎなかった各分野の知識をもっと深めていきます。

午前の講習・1限目は、まずテーブルウェアの歴史を「美しいフランステーブルウェアの教科書」を参考に学びます。多くの人がアンティークに興味を持つきっかけがテーブルウェア。でも一体いつから今の洋食器の歴史が始まったのか、そしてどのようなアイテムがかつて存在していたのか、「フランス式サービス」「ロシア式サービス」の違い…500年のテーブルウェアの歴史について俯瞰してみました。

2限目は「鑑定とは何か」について。よくオークション・カタログに書かれている内容は、一体何が書かれているのか、そもそも「鑑定」とは何をすればいいのか、真贋を当てること?それとも値段? そんな鑑定の基礎をいきなりですが「英語で」行います。クリスティーズ・ニューヨークのオークション鑑定士のdescriptionを学んでいきます。

ランチ休憩はこのところ講習者さんの間でも評判の高い「ワイン&スパイス」、もちろん午後もあるのでワインはお預けですが。

午後の3限目は銀器を刻印だけでなく意匠と様式から読み解くレッスン、そして実際に受講者さん用の鑑定品を同じように刻印と様式から鑑定していきます。

4限目は複製芸術について。版画や写真の分野ですが、これもアンティークの分野に入るのですね。講師のコレクションであるファッション・プレートを見ながら版画の手法についてのお勉強。

2日目はオンラインにて。5限目は現代時事アンティーク。過去4年分の1級の検定試験問題と2023年のArt Market Report(Art Basel &UBS発行)を見ながら現代のアートトピックスやマーケット事情についての考察。6限目は西洋美術史をルネサンスから18世紀初期までに絞って学びました。知識の引き出しがもうパンパンになってきた頃でしょうか。

そして前半の外出講座は迎賓館・赤坂離宮。

首都圏に住んでいる方でも、実は来たことがないという人たちが結構います。それもそのはず、一般公開されてまだ10年も経ってないのですね。

建築や家具の様式というものを学ぶのにうってつけのこの宮殿、前回も含め何度か検定講習で見学していますが、最近の試みで一部のエリアに限って写真撮影が実験的に許可されており、ちょうどその日に該当していました。この日はアンリ2世様式(フランス・ルネサンス様式)とされる「花鳥の間」が装飾品に限って撮影可能となっていて、濤川七宝を写真に収めることができました。

2月にしては暖かく、主庭の噴水も勢いよく水が噴き出していて、気持ちのよい日曜の午後でした。

後半の講習は2週間後です。それまでに引き出しの整理をちょっとしておきましょうか。