いよいよ3月の海外研修が2ヶ月後に近づいてきました。せっかく遠い遠い地へ赴くのですから、そしてそれぞれの美術館や施設での見学時間は限られていますから、できるだけ知識を事前に入れておくと現地での解説もわかりやすいかな、ということで、今月と来月は「リモージュの魅力」と題しリモージュ磁器に関する勉強会を行うことになりました。
リモージュの焼き物は日本でも手に入りやすいですから、もちろん今回の研修のご参加者でなくても本講座を楽しんでいただけます。
第1回目の今月は、リモージュ焼きの誕生から19世紀末までのお話。リモージュがどんな地なのか、かつての工芸品にどんなものが作られていたのか、そして磁器の原料カオリンはどこでどのような経緯で発見されたのか、フランス革命でどんな影響が起こったのか、やがて19世紀のリモージュは…と歴史を辿っていきます。
工芸の世界、中でも革命後も国立製陶所として生き残ったセーヴルと対照的に民間の手に委ねられたリモージュでは、歴史的資料が残っていないのか詳細がわかっていないことが多々あります。たとえば19世紀の前半に活躍した陶工ベニョル、一時はフランスでも忘れ去られていた名前でした。研究者や陶磁器博物館の学芸員たちが彼の作品からその制作活動に関して研究を続け、ようやくまとまった第一段階のものが仕上がり、展覧会を開催したのが一昨年のこと。彼こそがリモージュ磁器のパイオニア的存在であり、現在のリモージュのテーブルウェアの基礎を作り上げた人だったのです。
この19世紀の窯へは3月の研修で実際に訪れる予定ですので、我々もその痕跡を辿ってみたいと思います。
19世紀後半には万博の影響もあってリモージュには多くの窯が誕生し、そのいくつかは現在も残っています。ベルナルド、アビランド、レイノー…そしてかつてのセーヴルで作られたモチーフを復刻したものがリモージュで作られ続けています。そんな煌びやかな18世紀セーヴル時代を彷彿させる名品は、ナポレオン3世時代の第二帝政下でさらに華開いていったのでした。
次回は、黄金期のリモージュが20世紀に入ってどのような経緯を辿っていったのか、現在のリモージュ窯はどうなっているのかを学んでいきたいと思います。
アカデメイア「リモージュの魅力」、オンデマンドでもご視聴いただけます。