海外研修関連講座:「リモージュの魅力」Vol.2

先月に引き続き、今月のアカデメイアは「リモージュの魅力」第2回でした。前回は19世紀までのお話をしましたが、今回は20世紀のリモージュ。

20世紀の二大様式と言えばアール・ヌーヴォーにアール・デコ。リモージュも敏感に反応します。アール・ヌーヴォー期には流れるような曲線のテーブルウェアが、アール・デコ期にはジェオメトリックで様式化された、シャープなデザインの食器が作られます。

そしてこの時代になると、芸術の他分野(画家、彫刻家、ポスター画家、イラストレーター)で活躍しているアーティストたちも、リモージュの窯とコラボレーションしていきます。エドゥワール・コロンナ、ジョルジュ・ドゥ・フール、ポール・ジューヴ、アントワーヌ・ブールデル、エドゥワール=マルセル・サンドス、ジャン・デュフィ、シュザンヌ・ラリック…

リモージュ生まれのカミーユ・タローというセラミック・アーティストが活躍するのもこの時期。エナメルの絵付けを用いた大胆な花柄紋様のフラワーベースはアイコニック的な作品です。タローといえばジロー、というわけで(!?)リモージュにはアンドレ・ジローという人もいました。André Giraud & Brousseauの作品はニューヨークのMoMAにも所蔵されています。

20世紀後半、戦争で疲弊したリモージュでは多くの窯が廃窯となりました。戦争だけでなく、人々の生活や価値観も大きく変わってしまったのです。もう人は食器で豊かさをマウントすることもないし、何百点ものセルヴィスを買うのは時代遅れになります。それでもリモージュの磁器産業を絶やしてはならない、現代のセンスと共にリモージュも共存していくのだ、という気持ちがあったのでしょう、コンテンポラリー・アーティストであるアルマンやセザールらとコラボをしたり、エルメスと共作したり、話題を作っていきます。

そんな中で「リモージュ・ボックス」が生まれます。もともと18世紀に貴族の間で流行った嗅ぎタバコ入れやドラジェ入れ、つけぼくろ入れといった小箱の文化は19世紀に貴族の消滅と共に廃れてしまいました。それらを復活させよう、として1960年代に生まれたのが、すべて手作りで1点1点作り上げるリモージュ・ボックス。このリモージュ・ボックスには世界中にコレクターがいます。開けてみると、あっと驚くような仕掛けがしてあったり、細かい部分が実に精巧に演出されていたりで、なんとも愛らしい!これは場所を取らないし、可愛いし、滅多に割れたり壊れたりもしないのでコレクションしやすいかと思います。ただ凝ったものはそれなりのお値段ですが。

2回に渡って行いました「リモージュの魅力」は今回で終了です。

3月のアカデメイアは海外研修のためお休みとさせていただきます。

4月から新アカデメイア「読書会:『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』第2期」がスタートします。5月には教会見学も入っています。ご受講をお待ちしています。