アンティーク検定」カテゴリーアーカイブ

アンティーク・コレクター2級の検定試験について

今年の検定試験要項でご案内していますように、アンティーク・コレクター2級の検定試験は今回第11回が最後となります。次回以降、2級を取得するにはアンティーク検定講習を受講する必要があります。

この変更についての理由をご説明したいと思います。
第1回よりアンティーク・コレクター2級の試験を実施してきましたが、4科目すべてにおいて合格基準の70%程度の正答率をクリアする必要があります。

西洋美術史、これは類似検定試験の「美術検定」などがありますが、概ねレベルとしては同等で、西洋美術史の通史を1冊読んで理解すれば答えられる問題がほとんどだと思います。重箱の隅をつつくような問題やひっかけ問題は出題されず、素直な問題が出題されています。

西洋装飾美術工芸史につきましては、従来体系的にまとまった書籍がありませんでした。ガラス、陶磁器、銀器、モード、ジュエリー・・・それぞれの分野での専門書は存在していましたが、1冊でわかりやすく解説されている本は日本語の出版物では存在しておらず、イギリス人アンティーク専門家ジュディス・ミラー氏の著書『Antiques Detective』が2018年に「西洋骨董鑑定の教科書」として翻訳出版されたのを機に、本書を検定試験のテキストとしています。しかしながら本書は辞典的な書籍でもあり、なかなか一人で読み解いていくのは難しく、外部のアンティーク講座などを受講していてもこの科目で合格基準点をクリアするのは容易ではないようです。

外国語(英語またはフランス語)は、言語としての外国語能力を問う試験ではありません。西洋アンティークに携わるものとして、アンティーク業界での最低限の語彙とその意味がわかるというのが指標になり、内容としては西洋装飾美術工芸史の一環です。英語とフランス語を選択制にしているのは、イギリス・フランスがアンティーク二大大国であり、多くのアンティーク・ディーラーがこれらの国で買い付けを行なっていること、文献がこのどちらかの言語で書かれていることが多いこと、公開オークションの頻度がアメリカ、イギリス、フランスで高いことなどによります。外国語の単語を2つ選んで、日本語に訳し意味を説明する問題では、得意なものを選べるとはいえ、アンティーク業界でその言葉の意味を勘違いして理解している例なども目立ちます。

現代時事アンティーク、この科目は4科目の中で最も取得点数が低く、従って合格基準値も低く設定されることが多いのですが、それでも難しいという声がよく聞かれます。基本的にはアートの話題に関して常にアンテナを張って、また展覧会などに足を運んでいれば、1年以内に話題になった時事ネタがほとんどですので難しい問題はあまりないのですが、それでもグローバルに目を向けてチェックしているのは、その業界で仕事をしていない限り大変なことかもしれません。また日本で話題になった有名な展覧会が巡回しない地域もありますので、情報キャッチを常にしていないとなりません。

このように、4科目の中でも西洋美術史以外の科目は独学が一般に困難であり、またこれこそが本検定試験の他との差別化でもあるのですが、大学受験生でもない限りねじり鉢巻をして試験に臨むというのも大人にとっては簡単ではないでしょう。

当初から2級以上の受験に際し、海外研修に参加した場合は西洋美術史以外は合格免除とする免除規定がありました。これは海外研修に参加することで、その研修プログラムに概ね3科目が包括されていることや研修参加という積極的なモチベーションを加味し、評価されているからです。

しかしながら数日とはいえなかなか海外に研修に行く機会は誰にでもあるものではないでしょう。アンティーク・コレクター3級は独学で受験して合格した方も、2級はなかなか受からないため、興味はあるのに受験は止めてしまうケースも出てきました。3級は受験者数も、また合格者数も毎回増えていく一方でしたが、2級の受験者数はなかなか伸びません。1級は2級を合格していないと受験できないため、「興味はあるのに」上位の級を諦めてしまう方が増えてきました。

そこで2018年より、検定試験と並行して検定講習をスタートいたしました。試験で合格しても講習で修了しても同等の級が取得できるというシステムで、3級は2日間6単位、2級に至っては4日間12単位の集中講習です。講習も8割以上出席する必要があります。また2級の講習を受講する際には3級を試験で合格しているか講習で修了している必要があります。講習をスタートしたところ、「試験ではなく、講習で理解して級を取得したい」という方が結構多いということがわかりました。中には週末ごとに地方から講習会場の東京に上京して受講された方もいらっしゃいます。やはり大人の習い事の世界は、ただガリ勉して筆記試験を受けて級を取得するのではなく、学んで理解してステップアップしていきたい、そのための時間や費用の捻出は惜しまない、という希望が多いのではないかと思います。

検定講習は、コロナ禍の2020年からはオンラインでも受講できるようになりましたが、それまでは会場に集まり、みなさんで親睦を深めながら、また懇親をしながら楽しく行なってきたこともあり、好評でした。そして講習で2級を取得した方は、その後の1級を受験し(1級は試験のみです)、合格されている方が非常に多いです。1級と2級には知識の量やレベルの差はなく、2級がインプットを着実にできているかを問うのに対し、1級は2級で培った知識をアウトプットする能力を問う試験です。2級を講習でマスターした方々はその後のさらなる学びを経て、何度かの挑戦でほとんどの方が最終的に1級のアウトプットができるようになっていきます。

以上のような傾向もあり、2級の検定試験は今回第11回を持って最後とし、以降は要望の多い検定講習に一本化いたします。2級を一部合格されている方々は、ぜひ今回の機会に受験し、合格されることを期待しています。


第7回アンティーク検定講習・3級が行われました

全国11の都道府県で緊急事態宣言が発令されている中ではありましたが、第7回アンティーク検定講習3級が予定通り開催され、またあらたに「アンティーク・コレクター」の資格所持者が誕生しました。

アンティーク検定試験が終了した直後ではありますが、試験よりも講習を受けて理解した上で資格を取得したいという人たちはやはり多く、今回も「興味はあるのだけど、全く初めてで・・・」という方たちが集まり、一緒に楽しい2日間の講習を共にしました。

前回よりこのアンティーク検定講習は会場の人数を半数に制限し、またオンラインでの受講も可能としていますが、今回は緊急事態宣言下。東京のメガ・ステーションに隣接した都の施設である会場は休館になっておらず、学校も休校にはなっていないとはいえ「やはり出歩かない方がいいのではないか」「かといってオンラインでは小さな画面を見ているだけでは集中して頭に入りそうもない」とご参加の方々もいろいろ迷われたようでした。それでもみなさん勇気を持ってご参加していただき、本当に感謝申し上げます。

初日の午前は、アンティークの定義について、そして陶磁器に関しての入門を学びました。

お昼は通常ですと会食&懇親なのですが、今回は残念ながら会食は自粛。老舗ベーカリー・関口フランスパンの手作りサンドイッチとスイートポテトパイを食べて、午後の講習へ。

午後は銀器とガラスに関する授業で、実際にものを見て、ルーペを使って銀器の刻印を見たり、ガラスとクリスタルの違いを感じたり、とオンラインでは出来そうもない鑑定の会なども行なった結果・・・たった1日受講するだけで、1週間前に行われたアンティーク検定試験の問題がみなさんスラスラ解けるようになりました。

2日目は午前がZoomによる、家具&建築と様式の授業。そして午後は自由学園・明日館にて学芸員の方よりレクチャーを受け、フランク=ロイド・ライトの動態保存されている建築物や家具を実際に触って、西洋建築の影響を受けた日本のモダニズム建築に触れました。

最後に明日館の食堂と呼ばれる喫茶室でお茶&パウンドケーキで一息つき、全員全過程を修了、無事修了証を手にしました。


第10回アンティーク検定試験が終了しました

1月9日にアンティーク検定試験・3級がオンライン形式にて実施されました。前回に引き続きオンラインのみでの開催となりましたが、若い方を中心に全国からの出願がありました。

今回は3級限定の試験です。問題は通常通り60問、最初の20問は正誤問題、続く40問は三択問題です。オンライン形式ですので、クイズやアンケートのようにポチっとしていけば、あっという間に到達してしまい、送信完了。最近では慣れている人も多いのでしょうか、多くの人が終了時刻を待たずに回答を提出していました。

3級は入門級ではありますが、やはり全く西洋美術装飾工芸を知らない、触れたことがない、という人にとっては初めて聞く言葉なども出てくるかもしれません。

アンピール様式に出てくるモチーフは? 
マヨルカ焼きって? 
モーニング・ジュエリーって何? 

アンティークが好きで、よくマーケットに出かけて店主とおしゃべりをしたり、海外に行くと蚤の市巡りなどをしています、という人は比較的馴染みがあるかとは思います。それでもちょっとした歴史や背景を頭に入れていないと戸惑う問題もあったのではないでしょうか。

公式テキストとなっている「西洋骨董鑑定の教科書」は画像も多く分厚いテキストですが、やや事典的なものでもあり、3級の試験を受けるのにこれを全部覚えなくてはいけないのか、と思うとちょっと尻込みしてしまう方もいらっしゃいます。実際の問題はごくごく基本の部分からの出題になっていますが、どこが基本でどこが応用なのか、なかなか区別もつきにくいかもしれませんね。

試験なんて緊張するし、嫌だなあ、という人向けには「アンティーク検定講習」もあります。3級の場合は2日間の集中講習に出席することで取得となりますが、サロン形式の楽しい講習です。次回のアンティーク検定講習は1/16-17に実施予定です。


ウィズコロナの時代、第6回アンティーク検定講習

8月末〜9月にかけて、第6回アンティーク検定講習が行われました。今回はコロナ禍の下、少人数とはいえ集まって行う講習会の実施時期に関して迷いましたが、講習会場である東京芸術劇場が感染対策を万全にして施設を再開していることもあり、通常の会場定員数を半数にして行うことにしました。また希望であればオンラインでのご参加もOKとたところ、3級、2級ともオンラインでのご参加申し込みもあり、初のハイブリッド方式の試みです。地方在住の方々にとっては、この状況下で上京をためらわれる傾向にあったかと思いますが、オンラインでの参加という新しい形で実現することができました。

3級は「アンティークがはじめて」という、興味はあるけれどどうやって学んだらよいのだろうという方向けです。「西洋骨董鑑定の教科書」を買い、独学で勉強をして試験を受けて級を取ることもできますが、敢えて講習を受講する方には、すでに興味の方向は定まっているが多視点から学んでみたいという傾向があり、実際今回の受講者の方々にも、すでにアンティーク関係のビジネスをされている方が何名かいらっしゃいました。

2級は4日間の受講で多くの知識を入れ込み、また実際に物を鑑定できるレベルまでの講習です。大学などの授業では1年30週かけて学ぶ西洋美術史をたった2時間で詰め込み、外国語でdescriptionという、オークションカタログに記載されているエントリーを書く練習、また装飾美術の範囲も家具・工芸品だけでなくモード、ジュエリー、さらにはあまり馴染みのない写真や建築、そして現代アート展までもを網羅します。実地見学も含まれ集中研修旅行のような様相でもありますが、目的はあくまで「装飾美術工芸を楽しむこと」、参加者のみなさんと楽しく交流をしながら行いました。

今回の実地見学は、3級ではアール・デコ建築の東京都庭園美術館、2級ではアダム・スタイルの影響を取り入れた鳩山会館(旧鳩山一郎邸)と、ネオ・バロック様式の見られる迎賓館・赤坂離宮にて。日本における明治以降の様式美建築を訪ねながら、今はしばし訪問できないヨーロッパの様式を学ぶというウィズコロナ時代の講習でした。

次回のアンティーク検定講習は2021年1〜2月を予定しています。


合格された方、おめでとうございました

第9回アンティーク検定試験の結果の通知を行いました。今回あらたに合格された方、おめでとうございました。今回は初のオンライン試験ということで、並並ならぬ苦労や不安もあったかと思います。そのような中での合格、喜ばしい限りです。

「アンティーク検定試験」につき、級ごとのレベルに関して、お話しましょう。

3級は「目標:西洋アンティークに関する入門的な知識を持ち、コレクションを楽しめる」とあります。具体的にはどのようなことを言うのでしょうか。たとえばお店の人に「バロック風」「ロココスタイル」「ヴィクトリアン」「アール・デコ」と言われて、それがいつの時代の、どのような特徴を持ったものかわかるでしょうか?「これはボーン・チャイナです」と言われ、それが何を意味するのかわかるでしょうか?「このシャンパンフリュートは高いですよ、クリスタルですから」と言われ、クリスタルの定義がわかるでしょうか?3級の入門知識とは、このようなものです。特に体系的な学問としての装飾美術を勉強していなくとも、少しはこの世界のことが普通の人よりもわかる・・・といったレベルです。

現に大学生の場合、知識ほぼゼロのまま4月から西洋美術史や西洋文化史といった授業をスタートして(今年は5月にずれ込んだ大学も多かったようですが)、例年6月末〜7月初旬の検定試験を受験するわけですが、2ヶ月あまりでなんとか基準点の60%をクリアできる学生さんが輩出されていますので、少しだけ「お勉強」をがんばれば合格も夢ではありません。

ところが2級となると、ぐっとグレードが上がります。大抵どんな検定試験でも同じですが、3級と2級の差は結構あります。日本で幅広く普及している検定試験の一つに、公益財団法人・日本英語検定協会が実施している「英検」がありますが、英検3級が中学卒業程度、英検2級が高校卒業程度、となっています。文科省の統計によりますと高校の英語授業時間数の合計が3年間でだいたい1500時間くらいですので、英検3級合格後に英検2級を合格するのに、そのくらいの勉強量が必要となります。これが3級と2級の差と言えるでしょう。

アンティーク検定試験も、2級は科目数も4科目となり、そのすべてで基準点を満たす必要があります。これが「目標:ヨーロッパの人々が一般に知っている装飾工芸美術の流れやスタイルを理解し、主な工芸品について、知る」に該当しますので、3級を合格して、すぐに2級を受験してもなかなか大変なのが現実だと思います。マニエリスムにどんな作家がいましたか? アイリーン・グレイが好んで使用していた家具の資材は何ですか? サイズの表記で縦横高さの順番は美術図録やオークションカタログではどのような順序で表示しますか? 京都市京セラ美術館の新館長にして建築家は誰ですか? このような問題が出題されます。

2級以上の試験は、海外研修参加者の場合3科目が免除合格となる優遇制度がありますので、それを利用して西洋美術史だけ受験して合格するパターンがあり、これですと西洋美術史は書籍も多いですし、問題も時系列的に出題され、奇をてらった問題や引っ掛け問題はありませんので、真面目に美術史の通史を1冊理解できれば合格はかなり近くなります。

一方ですべての科目を受験する場合、1回で合格する受験者はかなり少なく(元々学芸員の資格保持者であったり、大学で専門に美術史を学んでいた人などはこの限りではありませんが)、アンティーク講座を1年、2年と受講し続けて、2年越し3年越しで合格、というパターンが一般的でしょうか。この4科目のうち、独学で勉強できるのは西洋美術史、そして美術市場や展覧会情報などにアンテナを常に張っていれば比較的わかるのが現代時事アンティークですが、西洋装飾美術工芸史、外国語(これは外国語の試験というよりは、やはり西洋装飾美術工芸史の一種です)となると、勉強の仕方もわからないし、本もないし・・・となってしまうのが現実でしょう。参考文献は紹介してはいますが、各分野毎にさまざまな視点での書籍はあるものの、なかなかまとまったものはありません。

本協会のAEAOサロン倶楽部や、代表が務めるアンティーク講座などでは、まさにこの「勉強の仕方もわからないし、本もないし・・・」といった分野を主に扱っておりますし、本協会主催の海外研修も、普通にはなかなか学ぶ機会のない西洋装飾美術工芸史にフォーカスした研修を行なっていますので、独学ではなかなか習得できない部分を補完しています。

また、合格となるためにはすべての科目の基準点をクリアする必要がありますが、1科目でも基準点に達した場合、一部合格として、次年度再挑戦に限り、その科目が免除されるシステムを採り入れています。これは通訳案内士などの資格試験も同様のシステムですし、1次試験と2次試験が存在する試験では、1次試験合格者で2次試験が不合格であった場合、1度だけ1次試験が免除されるという資格試験があり、当検定試験もチャンス拡大に向けてこのようなシステムを採用しています。

2級は1つの「壁」ではありますが、2級を合格すれば、知識の習得は完了です。というのも1級は2級以上の知識が求められるわけではなく、1級の「目標:ヨーロッパにおけるアンティーク市場の現代事情や傾向を把握し、また多様な工芸品の知識や歴史をより深く理解する」は、アウトプットの力が試されるからです。

1級の試験に合格した人は、みな声を揃えて「2級の方が難しかった」と言います。それは2級までがひたすら幅広く知識を習得するエネルギーが必要なのに対して、1級はそれらの知識を自ら披露してアウトプットする作業であり、試験では設問を選択して回答できるからです。

もともとこの世界が好きな人が受験する試験ですから、絵画でも工芸品でも自分の好きな分野、得意なジャンルがあり、試験ではそれらを選んで回答すれば合格に近づきます。ただ日本では自ら表現する機会があまりなく、与えられたものを答える、という試験が一般の学校教育ですので、その視点をチェンジする必要はあるでしょう。 

なお、試験が苦手、大人になってまで試験なんて受けたくない、という大人の資格試験希望者のために、3級と2級は「検定講習」も並行して実施しています。どちらも集中講習で、8割以上の出席が必要となりますが、緊張せず、学びながら資格を取得したいという人にはこちらの方が向いています。週末を丸々講習に充てるのと、少人数制講習のため費用もかかりますが、確実に級は取得できます。また検定講習のレベルは検定試験のレベルと同様です。

今回の検定試験で惜しくも基準点に足りなかった方、合格のためのアプローチは色々ありますので、どうぞこれに懲りず再トライしてみてくださいね。