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ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間~DAY 6~

いよいよ研修も最終日に近づいてきました。いつも研修は5日間で、時にはブリュッセルへ行ったりアルザス・ロレーヌ地方へ行ったり移動もしていたのですが、なぜか今回は時間が過ぎるのがものすごく速く感じます。

ところでホテルの朝食について記述して来なかったのですが、ロンドンのホテルの朝食はイングリッシュ・ブレックファーストでソーセージから卵からフルーツから、なんとアジア食(ヌードルなど)もあって、あのホテルはヒースロー方面へも便利で各国のエアラインのクルーたちの定宿にもなっているのか国際色豊かでした。そしてパリは、まあコンチネンタルだから品数は少ないだろう、と思っていたところ、確かに種類はイギリスには及ばないものの、何もかもがより美味しい、そして洗練されています。

このフレッシュオレンジジュースは、オレンジをこうして上からどんどん入れるとその場で搾りたてが飲めます。お隣には野菜が置いてあって、果て!?と思っていたところ、なんと野菜スムージーが作れる機械が。パンもイギリスのものもそれなりに美味しかったのですが、やはりね、違うよね、という味の違いを感じられるお味で、ついつい欲張って食べてしまいます。みなさん「ダイエットは来週からね」と言いながら、もう一つクロワッサンを…と。

たっぷりの朝食を取り、朝の待ち合わせ時刻までに微妙な時間が空くのですが、たまたま夜のレストランの場所を下見に行ったところ空いているコンビニ(スーパーMonprixのミニ版Monop’)が朝7:45からやっているのがわかり、店開いてますよ、とLINEグループで連絡したところ、一走り朝の買い物に出かける人たちも。限られた滞在時間は有効に使いたいですからね。

さてAnne先生にまたホテルへお迎えに来ていただき、ホテルからロワイヤル通りにある高級食器店を案内してもらいます。ラリック、クリストフル、ベルナルド…アール・ドゥ・ラ・ターブルはAnneの専門でもあり、話は尽きません。「このカトラリーは何用のものか、分かる人?」ー答えはアスパラガス用のサービスカトラリーなのですが、こんなの日本で暮らしていたらすぐには思いつきませんよね。

コンコルド広場で、今度はコンコルド広場の歴史・変遷、そしてオテル・ド・ラ・マリーヌの建設から現代こうして生まれ変わるまでの経緯を説明いただきます。館内では全員がオーディオガイドをつけて見学することになっており、日本語もありますのでフランス語が分かる方はフランス語、そうでない方は日本語のオーディオガイドと共に見学しますが、事前に大まかな様子を聞いておくと話に入りやすいですよね。

ところでこのオーディオガイド、専門家の間では「うーん、ちょっとやりすぎよね、そもそも一般大衆向けに、子供でもわかるように製作されているからね…」と若干辛口批評があるのですが、新劇のお芝居のような調子で語っているのですね。でも館内に他に一切説明はなく、このオーディオガイドだけが頼り、しかもGPSが埋め込まれているのでどこで見学者がどの方向で作品を見ているのかがわかるので、その作品をピンポイントに解説するという点では、画期的です。たいてい美術館では解説が書いてある場所に人が動くのですが、耳から入れば動く必要もないわけで、ヴェルサイユ宮殿などではもっと前から取り入れられているようです。日本もデジタル化を速く進めていかないと、世界から取り残されそう。

オテル・ド・ラ・マリーヌの館内を見学した後、それでも18世紀の再現にモダニティを取り入れた場所としてこの天井の部分の補足説明をしていただき、ミュージアムショップでお買い物をした後、館内にある、どうやら美味しいと評判の高いレストランでランチ。

内装がこれまたピクトレスクな空間で、こんなところで食べるクロック・ムッシューはその辺のビストロとは一味違う!?

そしてヨーロッパ最大の常設蚤の市、クリニャンクールへと向かいます。専用バスに連絡を取り、時間を早めてもらってクリヨン・ホテルの前でピックアップしてもらうことに。なんと50人乗りですか!?というゴージャスな大型バスが来ましたよ!

クリニャンクール、と呼ぶのは実は日本人だけで、現地の人はサントゥワンと言いますが、この蚤の市は現在11のマルシェが点在し、それぞれのマルシェで特徴があります。家具のポール・ベール、高級品を扱っている屋内マルシェのセルペット、そして随一ゴージャスなアンティークを扱うビロン、紙もの(版画、写真)が中心なドフィーヌ、そして最後に最もポピュラーで日本のディーラーさんたちも買い付けているヴェルネゾンに足を踏み入れたところで一旦解散、フリー・ショッピングタイムに。

1時間後に約束の場所で落ち合うと、みなさんそれぞれに「こんなものを買っちゃった」「私は、これ」と戦利品を見せ合ったところでバスと落ち合い、帰路へ。Anne先生に至っては70年代のポップなテーブルをお買い上げ、このままメトロで持ち帰るそうです。よくフランス人は掃除機とか家具とかを剥き出しで持ってバスやメトロに乗っていますが、こんな光景も日本ではちょっと珍しいのかもしれませんね。

若干スケジュールを早めに終えたのには、もちろん理由が。ギャラリー・ラファイエットに行く!とか、パトリック・ロジェのショコラを買う!とか、とにかくもう買い物はこの日しかできないのです。夜はディナーをルカ・カルトンで予約済み、明日朝は7時出発ですから、もう泣いても笑っても今しか買えない、というわけで、途中でバスを降りて目的地に向かう人、ホテル到着後すぐに待ち合わせて出かける人、みなさん最後の最後まで元気いっぱいです。

昨今パリもロンドンも、格式のある場所におしゃれしないでわざとカジュアルな装いで行く風潮が流行っていて、オペラハウスなどで最も着飾らずに行ける都市はパリとロンドンだ、なんて言われますが、ちょっと残念な気もします。肩肘張らないリラックスさは大事だけど、ちょっといいレストランに行くときに、サービス係の人たちの装いよりも格段に劣る格好はしていきたくないもの、今回のルカ・カルトンもカジュアルにはなりましたが、それでも全員着替えて素敵な装いで集合。Anne先生も着替えてシャワーを浴びてやってきました。

ツアーを構築するときから、「最後に美味しいものを食べられれば旅の想い出も印象もよくなる」ということでパリの最後の夜をディプロマ授与ディナーとしたのですが、その目論み通りの美味しさで裏切られませんでした。コースの度に変わるお皿もオリジナルなテイストで伺ってみたところ、最初の位置皿を除いてはすべて現存陶芸家に依頼して作らせているものだそうです。こだわりが料理だけでなく細部までガストロのミーの精神を感じられる空間でした。

みなさんで記念撮影をしていただき、Anne先生より研修終了ディプロマを授与、楽しかったロンドン&パリ研修がこれにて終了。さて、明日は出発が早いのでパッキングが待っています!!


ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間~DAY 5~

さて、いよいよパリの研修がスタートします。ロンドンのガイドさんもプロ中のプロで素晴らしかったですが、パリでは一般のガイドではなく、オークショニア国家資格所持者がみなさまをご案内、そう、フランスではオークショニアとしてハンマーを叩ける資格は国家資格、それも超難関で法務省の管轄下にあります。この資格を持っていてもオークション会社で働かずアート・ディーラーになる人、大学で教える人など様々で、我らがAnne Kolivanoffはこのようにフリーランスとしてアート界でのconférencier(コンフェランスを行う人)として働いている人です。

ホテル・カスティリオーネに来ていただき、初めての方、ご無沙汰の方、オンライン授業で顔は合わせているけどリアルは初めての方、それぞれ自己紹介をしたところで、パリ・サザビーズへ向けて出発。普通に歩けば目と鼻の先ですが、このフォーブール・サン・トノレ街の18世紀から現代までの変遷、なぜオテル・パティキュリエ(個人邸宅)が多く建っているのか、オテル・パティキユリエの建築スタイルの話、そしてエリゼ宮にまつわるお話、と話が尽きません。

ロンドンでも戴冠式ムードを肌で感じてきた私たちですが、ここにもイギリス大使公邸を発見!

そしてサザビーズ・パリ。ロンドンでも下見会を見学してきましたが、パリ・サザビーズでは来週開かれるジャック・ガルシアのオークションの舞台作りが進行中、これは是非とも見るべきセノグラフィーですが今回は日程が若干合わず残念。準備会場を横目に下見会は現在オンライン・オークションが開催中のアイルランド絵画が2階に展示されていました。アイルランドの作家たちはいつくらいからどのようにして絵画を制作していたのか、印象派やポスト印象派の時代の他のアーティストの関わりなど、お話も聞けた上に、作品も比較的中堅どころでエスティメートも手の届く価格、こういうのがいつどう化けるかわからないのがアートの世界ですね。

サザビーズを後にし、次なる目的地ジャックマール・アンドレ美術館へ。このエリアは正統派のアンティークのお店がたくさん並ぶ地区で、フォーブール・サン・トノレはブランド品ショップで有名ですが、実はエリゼ宮を境にその先は高級アンティーク・ショップが立ち並ぶ屈指の名街でもあるのです。

ジャックマール・アンドレで最初に行ったのは・・・それはランチ!!もうしっかりお腹が空いているのですよね。この館内のサロン・ド・テはかつてこの館の食堂だったところ、さりげなくティエポロの壁画があったりしてびっくりなゴージャス空間でいただくキッシュとサラダにデザート。ちょっとライトミールかなと思っていましたが、一切れのポーションが日本のキッシュの2~3倍ですから、もうお腹いっぱい。

ランチでお腹を満たした後は知識で頭を満たしましょう、ということでパーマネント・コレクションをAnneの解説で回ります。ここはかつてネリー・ジャックマールとエドゥワール・アンドレ夫妻の実際に暮らしていた館。19世紀、第二帝政時代といえばフランスの資本主義が完成し、ブルジョワ富裕層らが登場、彼らは大革命で消失した18世紀の工芸品を様々な国を訪れては買い戻し、自らの屋敷にそれらを展示し訪問客に披露、やがて最後は国家に遺贈するという図式はロンドンのウォーレス・コレクションと同じですね。ただアートの目利きであるかないかはとても重要、エドゥワール・アンドレはナポレオン3世のアート・アドバイザーでもありましたから、小規模な館ながらも洗練と贅を尽くした数々のアート品・工芸品が並びます。

もう少し留まりたいところですが、残念ながら滞在は限られています。オスマン通りで私たちを待ってくれていたバスに乗り込み、今度はマレ地区のカルナヴァレへ。幸い道は混んでおらず、30分ほどで到着しました。

カルナヴァレはパリ歴史博物館です。パリの歴史を様々な角度から眺められる博物館で、数年間リニューアル工事のため閉館していましたが、ようやくオープン、その斬新な入り口のセノグラフィーも話題になりました。

かつてパリには通りの名前はありましたが番地がなかった、でもこのような看板で人はああここは肉屋さんだとか、鍵屋さん、時計屋さん、と判別ができたのですね。

先史時代から見る時間はさすがになく、バロックあたりから華やかなりしロココ、革命期、アンピールの様子、19世紀のパリ、20世紀初頭のプルーストの部屋、アール・ヌーヴォー時代のミュシャが内装を手がけここに移築されたジョルジュ・フーケの宝飾店まで駆け足で巡りました。

ヴォージュ広場に早めに停まっていたバスに乗り込み、ホテルへ。この日の夜は唯一のフリータイム、お土産を買う方は逃せない日でもありますが、実は金曜日はルーヴルが夜間営業をしており、21:45まで開館、しかも第1金曜日は無料デーなのです。あらかじめ20時入館のチケットを0円で全員分予約しておいたのですが、行きたい方を募ったところ代表を含め4名が「行く!!」と。みなさん疲れているはず、しかもルーヴルはだだっ広く歩きます。最初から「ギャラリー・アポロンとナポレオン3世のアパルトマンと18世紀の家具の部屋を見に行きますが、すべて場所がバラバラで、めっちゃ歩きますよ」との脅しにもかかわらず「それでも行く!!ついて行く!!」組4名で、1時間ちょっと、ルーヴルをマラソンしてきました。

ギャラリー・アポロンでは、アカデメイア「宝飾品 〜肖像画の中に見るジュエリー〜」で目黒先生が先日お話された、ル・サンシーとレジャンが目の当たりに見られて感激。55カラットとか140カラットのダイヤとか見たことがないのですが、このギャラリーの中で見ると不思議とここにあるのが当たり前のような気分になってきます。

メトロでコンコルド広場に戻ったら、ちょうど10時ぴったり、エッフェル塔が点灯していました。こんな下手な写真では表せられないほどキラキラ輝いていて、足の疲れも吹っ飛びました。今日だけで1万5千歩歩いていました。


ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間~DAY 4~

今日の午前はフリータイム。チェックアウトを済ませ、全員でヴィクトリア&アルバート美術館へ行きました。ツアー構築にあたりロンドンとパリのどちらで半日の自由時間を確保するか悩みましたが、参加者さんの中から「どうしてもV&Aに行きたい」というリクエストが多く、それならロンドンで半日フリータイムを設け、各自自由に好きなところを訪れるというスタイルにしていました。

この日の午前は当初ツアーで訪問を予定していたクイーンズ・ギャラリーも一応開いていることになっていますし(但しバッキンガム宮殿敷地内なので、戴冠式の関係で交通に問題が出る可能性も)、木曜日にはヴィンテージとアンティークのマーケットが出るオールド・スピタルフィールズ・マーケットもあるのですが、ホテルのあるケンジントン地区のV&Aが一番時間も有効に使えそうということで、希望が全員一致。今回はロンドンの地下鉄でサウス・ケンジントンへ。

オープン前から人がちらほら集まっていますが、ここは大型美術館とは言ってもいわゆる「装飾工芸美術館」。アートの世界でいえばファイン・アートではなくデコラティブ・アートのジャンルですので、大英博物館やナショナル・ギャラリーほどの知名度はないかもしれません。でも装飾工芸の分野ではおそらく世界一を誇る規模でしょうし、研究者用にも多くのサービスが開かれています。

アンティーク好きの我々には1日いても飽きない、見切れないボリュームなので2時間でどう回るか、最初からある程度計画をしておく必要があります。この建物、同じ階でもいったん別の階に行かないと渡れない通路などもあり、複雑な上に、なにしろ広大な敷地ですから、ドネーション(寄付金)1£を払ってマップを手に入れ、どこにどう行くかをチェック。

日本と異なり、例外を除いて基本どこでもなんでも写真を撮れますので、どうしても時間がかかりがち、まだまだ見切れないけどここだけは眺めておかなくては、というウィリアム・モリスのデザインした「モリス・ルーム」を最後に係員に案内してもらい(イギリスの美術館の係員さんは本当に親切で、言葉で場所を示すだけでなく実際に来てくれるのです!)、「お茶する時間がなくても写真だけ撮ってもいいんだよ」との優しい言葉にほっこり。

イギリスを離れたら使用不可となるポンド現金をミュージアムショップで使い切り、ホテルへ戻る地下鉄サークル・ラインでは行き先を間違えてしまい、乗り換えようとしたところ、ナビゲーターが乗ったタイミングでドアがクローズ!でもすぐLINEで連絡を取り合い、ナビゲーターがみんなのランチを買ってホテルで落ち合うことにし、無事再会。すでに初日にお会いしたアシスタントさんも待機して下さっていました。

ユーロスター駅のセント・パンクラス国際駅へバスにて移動、今回の参加者の中にはかつてユーロスターでパリ=ロンドン間を移動したこともある人も何人かいましたが、イギリスのBrexit以降大きく変わってしまいました。飛行機に乗るのとほぼ同じ、パスポートコントロールに荷物チェックがあり、特に荷物は飛行機なら預け入れ荷物も自分で持ってレーンに上げるという筋肉トレーニング作業が待っており、そのため遅くても1時間半前には到着している必要があります。

無事全員通過したものの、待合室は満員で座れる椅子もなし、前のブリュッセル行きのタリスがまだ出ていなかったのです。もっともスタッフがあちこちにいて「Everything is OK?」と愛想をふりまきながら構内を巡回してくれています。私たちのチケットは一等のプレミアム・スタンダードで、ラウンジはプレミアム・ビジネスしか使えなかったのですが、しばらくして我々のパリ行き列車もホームに到着、乗車できました。

今回は6名で、一等車でしたのでちょうど6名で囲う向かい合わせの席を取っていただいていて、快適そのもの。走り出す前にランチを食べきり、走り出すとしばらくして食事が配られてきました。イギリスではブリティッシュ・エアウェイズ航空でも同じでしたが、必ずベジタリアンメニューとお肉の入ったメニューがあって選べるようになっています。ベジタリアンといってもマイルドなもので、今回はファラフェルと、キノアのサラダ。美味しいのです!そして「今週だけの特別デザートだよ」と戴冠式スイーツが付いていました!

ユーロトンネルを通過してフランス領内に入ると一気に速度が速くなり、あっという間にパリ・北駅に到着。時差が1時間あるので実質2時間20分ですが、到着したらすでに19時ごろに。ここでもアシスタントさんが迎えてくださり、専用バスでホテルへ。

今回のホテル・カスティリオーネは立地が最高で、パリのど真ん中、コンコルド広場やマドレーヌ広場から歩いて5分のところですが、一通の狭い道路に面しているため残念ながら大型バスがホテルの目の前に停まれません。えっちらおっちらキャリーを引きホテルへ到着、チェックイン時に若干手違いか時間がかかりましたが、室内はリニューアルされたばかりで清潔感あふれる内装、ミネラルウオーターやコーヒーマシーンのサービス付きでした。アール・デコ・スタイルの建築は内装でも復元されているのを感じます。

ランチとユーロスター食で結構お腹いっぱいになっていましたので、ほとんどの方が明日からのパリ研修に備え、ゆっくり休まれたかと思います。さて、明日に続きます。


ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間〜DAY 3〜

ロンドン2日目、今日は朝からまずコートールド美術館へ。コロナ禍にリニューアルをしていて、リニューアル中には作品を貸し出していたので、東京都美術館で開催されていた「コートールド展」をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

ホテルからロンドン・バスに乗って出かけたところ、途中で「この先、戴冠式の準備で道路封鎖、はい全員降りて」と降ろされてしまい…さてどうしようと思っていましたがYOKOガイドが急遽新しい観光ルートを開拓してくださり、コヴェント・ガーデンやロイヤル・オペラなどを眺めながらコートールドへ。

予約はしてありヴァウチャーも持っているのですが、受付係が「ヴァウチャー」という言葉や存在を知らない…YOKOガイドによると、コロナ禍で多くの人が辞めてしまった後に急遽雇われたスタッフは社員教育ゼロのまま現場についているので、こんなことはしょっちゅうだ、と言っていましたが、旅を進めていくにつれどこでもこの現場のマネジメントの混乱にぶつかることになります。幸いガイドの巧みな交渉と説明で問題なく鑑賞できることに。コートールドの規模もコレクターの館としてふさわしく、絵画、工芸品、装飾美術がほどよいバランスで展示されており、疲れることなく満足して、ランチを兼ねたアフタヌーン・ティのホテルへ移動します。

日本では「ヌン活」と言われて若い女性たちに大人気のアフタヌーン・ティですが、本場イギリスではシンプルで、それでもボリューミー。午前中さんざん歩き回った身体でも最後のスイーツまで完食することは叶わず、一部はお持ち帰りにすることに。

午後はいよいよサザビーズへ。オークションでは、下見会(プレビュー、エクシビッションなどと呼びます)が必ず開かれ、下見会は誰でも見にいくことができます。今回はチャールズ3世の戴冠式に合わせた「戴冠式オークション」「SAMURAI」「日本の近代版画」のオークションの下見会が開催されていました。昨今は会場オークション以外にオンライン・オークションもあり、今回のオークションはすべてオンライン・オークションです。期間中入札することができ、下見会も開催されています。

サザビーズでゴージャスなトイレを借りた後(!)、次なるアンティーク・マーケットのカムデン・パッセージへ。ロンドンはお祝いムードが溢れていますので、街の散策も楽しい。

カムデン・パッセージはロンドンの北の地区、リージェンツ運河沿いにあり水曜と土曜日にオープンしているマーケットで、ストールと呼ばれるテントのマーケットが出るのですが、黄金のショッピングタイムは午前中。私たちが着いた16時くらいからはだんだん仕舞い始めるストールが目立ちましたが、それでもしぶとく何やら見つけて買ってしまいました。

毎日1万歩くらいは歩いているのでしょうか、この日の夜はフリーで、もうお腹空かないからとホテルでパッキングをする人や、近場に出かけようという人に分かれ、それぞれのロンドンの夜を過ごしました。


ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間〜DAY 2〜

ロンドン研修がこの日からスタートです。今回は在ロンドンのベテランガイド・YOKOさんがロビーに迎えにきてくださいました。ユーラシア旅行社さんと何度も事前打ち合わせを交わしてくださったおかげで私たちの研修目的や意図が200%正確に伝わっており、これ以上の人はいない、という方でした。

まずはウォーレス・コレクションへ。今回の研修では「コレクターの館」というのも一つのテーマで、大規模美術館(大英博物館やナショナル・ギャラリー、テート・ギャラリー)は訪れずに、かつてのコレクターたちの蒐集品のテーマや過程を館とともに楽しむのにここを避けては通れない、洗練された屋敷とコレクションです。ウォーレス・コレクションの成り立ちについてはオンライン説明会にてお話ししていますので、YouTubeをご覧くださいね。

ランチは最近新設されたというウォーレス・コレクションの中庭のカフェにて。「イギリスですから、美術館内カフェとはいっても、まあ味の保証は…」なんて旅行社さんと話していましたが、これがなんと美味しい!スープも、チキンのシュプレームもデザートもどれも美味しい。YOKOさんも美味しいと仰っていましたので、イギリスはどうやら美味しい国へ昇格していますよ!

ランチ後はアンティーク・マーケットを2つ回りました。ロンドンは曜日ごとに開かれているマーケットというのがあって、有名なところでいえば月曜日のコヴェント・ガーデン、土曜日のポートベロー、のように毎日どこかで何かがあるのですが、唯一ないのがこの火曜日。グリニッジまで行けば火曜日に開いているのですが、若干遠い上にホテルとは逆方向。

というわけで、午後は常設のマーケット、グレイズ・アンティーク・センターとアルフィーズを巡りました。アンティークを買う決定的なサインは「モノが自分のところに来たがっている」かどうか、よく「モノに呼ばれた」という表現を使いますが、マーケットを回っても何もピンとこないこともありますし、値段に関係なく「これだ!」と感じることもあります。

グレイズは高級なアンティークショップが入っていますが、ご参加者さんのお一人が「呼ばれた」ようで、素敵なプレートをお買い上げ。店主とお話しをしたところ、知識豊富でまともな店であることも判明しましたが、それもそのはず、鑑定士として書籍にもそのお名前が登場している人のお店でした。イギリスにおけるアングロ・ジャパニーズ・スタイルの陶器を主に扱っているお店で、クリストファー・ドレッサーの作品などもたくさん置いていました。

アルフィーズは正統派アンティークというよりは、ヴィンテージを扱っているマーケット、ロンドンは前日がメーデーのお休み、そして6日が戴冠式ということでこの週はクローズしているお店も多かったのですが、これもYOKOガイドの事前調査でオープンしているお店がそれなりにあることがわかっていたので訪れました。今回は少人数でもありましたのでロンドンバスで動いたのですが、エリアによって建築や雰囲気、人が変わるというのを実感できる旅で、このアルフィーズの辺りは中心部とはまた違ったエリアを垣間見られました。

みなさんで屋上のカフェで一息つき、そして迷路のようなアルフィーズをぐるぐる回り、買いやすいお値段のものも多かったのでそれぞれお買い物に精を出し、さて帰りましょうの直前で見つけたアンティーク食器店で立ち止まってまたお買い物、と一期一会の機会を十分に堪能してホテルへ。

夜は自由なのですが、前日のアシスタントさんが紹介してくださった、すぐ近くにあるちょっと高級なフード・マーケット内にフード・コートがあって食べられるようになっているということで、全員でホテル周りの散策も兼ねてそちらへ。お昼がコース料理だったためもうあまりお腹は空いていないのですが、温かいものを少し胃に入れて、ぐっすり眠りにつきました。