AEAOサロン倶楽部」カテゴリーアーカイブ

猛暑の中、「世界の名画とエマーユ」の世界へ

7月のAEAOサロン倶楽部は、2018年に開館した日本初のエナメル専門の美術館「エマーユ七宝美術館」で開催されている「世界の名画とエマーユ」展を見学する会でした。

まずは見学前にランチ・レクチャー。

今回のランチ会場はなんと3回チェンジをしたのですが(第1候補のお店は駅から若干歩く、お店のキャパが小さい、というので猛暑予報により駅直結のレストランに変更したのですが、7月の週末とあってファミリー感があり過ぎるかなと思い、予約を取り直したのが今回のお店)、ここが大当たりの素敵なレストランでした!カジュアルなフレンチ・ビストロで、エスニックも混じっていて、夏のランチにぴったり。渋谷川のほとりにある一軒家レストランCociさんにて。

アミューズで「穴子とフォアグラとイチジクのミルフィーユ」をいただいた後、「南瓜のカレー風味の冷たいスープ」、「真牡蠣のカダイフ巻き揚げ レモンバームのエキューム」の前菜、そして「大山鶏むね肉のポシェ・フランボワーズのマスタード」と、もうどれも絶品のお味。もちろんそれぞれ選んだデザートもとっても美味しく、この会って美味しいものを食べる集まりでしたっけ?というくらい、お料理についてのお話でも盛り上がりました。

さて、お腹も満足したところで、お茶を飲みながらのミニ・レクチャーです。

エナメル?エマーユ?七宝?

実はこれ、すべて同じ言葉です。英語のEnamel、フランス語のÉmail(複数形になるとÉmauxと活用します)、そして日本語では七宝・琺瑯という言い方をします。

このエナメルでの装飾技法の言い方として、シャンルヴェ(Champlevé)、クロワゾネ(Cloisonné)、プリカジュール(Plique-à-jour)、ロンドボス(Ronde-bosse)、バスタイユ(Basse-taille)などがありますが、すべてフランス語の言葉。エナメルの起源は古代エジプトとされていますが、中世のころはリモージュがエナメルの中心地であったことにも関係しているのでしょうか。リモージュといえば、アンティーク界では郊外でカオリンが発見されたことによるフランス硬質磁器の発祥地としての方が有名ですが、実は伝統的にエナメル作品が製作されていたのです。

さて外は炎天下ではありますが、レストランで十分身体も冷やし、これからいよいよ「七宝エマーユ美術館」へ徒歩にて。渋谷橋を登って渡らなくてはいけないのが玉に瑕ですが、みなさんでおしゃべりしながら歩いていたらあっという間に到着。

この美術館はかつて歌手として一世を風靡し、その後ジュエリー・アーティストへ転向した梶光夫氏が長年に渡って蒐集されていたコレクションが展示されています。19世紀後半、ナポレオン3世時代~アール・ヌーヴォー期の美しい女性を描いた作品が主なコレクションですが、今回の開館5周年記念「世界の名画とエマーユ」の特別展示では、ボッチチェルリやアングルの名画をエマーユに描いたものも展示されていて、ガラス越しにじっくり眺めていたところ・・・

なんと館長・梶光夫氏が直々に展示会場に来てくださり、色々ご案内をいただきました。これらのコレクションは、40年ほど前から自らフランスやイギリスを回って蒐集されたものとのことで、美しい貴婦人が描かれた小箱、装身具などが所狭しと展示されています。

アール・ヌーヴォーと言えば誰もがガレやドームなどのガラス製品を思い、コレクションされる方も多いでしょうが、館長はアール・ヌーヴォー期の彫刻にも惹かれたというお話で、館内には小ぶりな美しい彫刻作品も並んでいます。

今日は毎日オークションさんでメインセールが開催されていたのですが、その一環でウクライナの人々への平和と復興の願いを込めたチャリティ・オークションが同時開催され、梶光夫氏の作品(絵画、ジュエリー)がオークションで販売、その売上はすべて在日ウクライナ大使館を通してウクライナへ全額寄付という、ノブレス・オブリージュな偉業を成し遂げた後に、わざわざ会場にいらしてご説明してくださいました。さらにご参加者さんが身につけていたアンティーク・ジュエリーを一目みて「これはアゲートかな」「これは19世紀後半のイギリスのものでしょう」「このカメオはドイツのものじゃないかな」と鑑定!G.I.A.G.G.の資格をお持ちの鑑定士でもあるジュエリー・アーティストの目は誤魔化せないですね、ドキドキ。

会場内の写真はNGでしたが、Webサイトで様子を伺うことができます。またミュージアム・ショップでは「エマーユー美しい貴婦人たちー」という素晴らしい図録も販売されています。

美味しいものをいただき、たっぷりと素晴らしい作品を鑑賞し、猛暑の中の幸せなひとときでした。ご参加いただいたみなさま、お疲れ様でした。

8月のAEAOサロン倶楽部は、夏の終わりの銀ブラ、「大人の銀座のアート遠足&夏パフェまたは夏アフタヌーン・ティ」です!!


愛のヴィクトリアン・ジュエリー展とホテル・オークラでのティータイム

6月のAEAOサロン倶楽部その2は、大倉集古館で開催されている「愛のヴィクトリアン・ジュエリー展ー華麗なる英国のライフスタイルー」展見学を行いました。まずは見学前にミニ・レクチャーを目の前のラグジュアリーホテル「The Okura Tokyo」(オークラ東京)にて。先週に引き続き、ホテルごっこを楽しんでいます。

最近はコロナのリバウンドでどこも混み混みというお話ですが、改装後のオークラ東京のロビーはゆったりしていて、いつもながらの非日常空間。間接照明でほんのり照らされた明るさ(暗さ?)は落ち着きますね。さっそくロビー階の「オーキッド」でそれぞれお好きなケーキと飲み物をいただきながら、まずは懇親会。

胃と脳が幸せ状態になったところで、ヴィクトリアン・ジュエリーについてのお話です。ジョージアン、ヴィクトリアン、エドワーディアンのそれぞれの時代別ジュエリー事情、中でもヴィクトリアン時代の社会と世界情勢、そしてジュエリーの世界での歴史的な出来事ーゴールド・ラッシュやダイヤモンド鉱山の発見、カメオ・モザイクの流入、量産化とジュエリーの初カタログの誕生などーを背景として頭に入れておきます。

センチメンタル・ジュエリー、スコティッシュ・ジュエリー、ホルバイネスク・ジュエリー、ハーフパール、ジェットといった言葉の意味と実例を先に図録で見てから、さて本物を見に大倉集古館へ。

梅雨時の平日ですから幸い鑑賞者も多くなく、ゆったりと1点1点鑑賞することが可能でした。写真撮影禁止でしたので残念ながら会場の様子の写真はありません。展示会場の2階からバルコニーに出られるので、そこで一息。

地下の第3会場ではレースの展示もあり、レースを習っている方はじっくり眺めていらっしゃいました。

ミュージアムショップでは、アンティークジュエリーではないのですがヴィクトリアン時代のデザインの復刻ジュエリーを販売しており、ジェットの実物ジュエリーも手に取って見させていただきました。お話によると、ヴィクトリアン時代にあまりに流行り過ぎたためジェットがもうなくなってしまい、しばらくはジュエリーメーカーも制作できなかったのだとか。最近あらたに見つかったその貴重なジェットで、ヴィクトリアン・デザインのジュエリーを制作しているのだそうです。ジェットの原石も置かれており、その光沢や重さ(軽さ)も実感できて、とても楽しい目の保養でした。

7月のサロンはエナメルミュージアム見学です。エナメル・ジュエリーも素敵ですよね!


大正ロマン X 百段階段 ー 昭和の竜宮城でアフタヌーン・ティ

6月のAEAOサロン倶楽部その1は、ホテル雅叙園東京で開催されている「大正ロマン X 百段階段 ~文豪が誘うノスタルジックの世界~」展を訪れ、アフタヌーン・ティをいただくというちょっとレトロ&ハイソな会でした。梅雨入りした関東ですが、前夜から降り続いていた雨は幸いお昼で上がってきましたので、幸先よいです!

ホテル雅叙園は、かつて目黒雅叙園の名で、壁画や天井画、彫刻や工芸品などで館内の装飾が施されており、「東洋一の美術の殿堂」、「昭和の竜宮城」と呼ばれていました。何度かリニューアルされた現在の建物内も依然として竜宮城の名にふさわしく、あちこちにふんだんに装飾がされています。お手洗いですら、「え、ここ?」と戸惑うような豪華絢爛な空間につい撮影をしたくなりますが、お手洗いはさすがに遠慮すべきですね。デモチョットダケ。

今ではよく中華料理店で目にする回転式の円形テーブルの発祥地も、この目黒雅叙園と言われています。

さて、「百段階段」へ。1935年に建設され、現存する唯一の木造建築で、国の登録有形文化財、また東京都の有形文化財に指定されています。百段とありますが実際には九十九段で、階段の途中に7つの部屋があり、その部屋が桃山風だったり日光東照宮の系列の装飾だったりで、どの部屋も息を呑むような空間。

今回は展覧会のテーマに沿って、各部屋に明治から大正・昭和初期の文豪とその作品の世界を三次元で鑑賞する、というエンターテイメント性の高いものでした。さらに現代の人気イラストレーターや漫画家たちがイラストも添えるというコラボレーションで、スタート地点からもう若い女性やかつて若かった(!)女性たちで大賑わい。またかなりの来館者がその時代の雰囲気に思い切り浸ろうと、着物や浴衣をお召しになっていました。これも後でわかったことですが、ホテルの企画で「大正ロマン&着物ランチ」というセットがあり、レトロな着物をレンタルして楽しむ姿だったようです。

百段も一気に登るわけではないので、息が切れるというほどではありません。7つの部屋を、まるでテーマパークに入り込んでいくかのように楽しみながら、登りきりました。

スポーティな展覧会鑑賞をした後は、アフタヌーン・ティ。ホテル内のCafe&Bar「結庵」では、「大正ロマン喫茶室」を期間限定でオープンしており、そちらでメロンのアフタヌーン・ティをいただきました。

5月の研修旅行では本場ロンドンのホテルでもアフタヌーン・ティをいただきましたが、日本は「ヌン活」ブームとあって、色々なホテルがそれこそ毎月テーマの異なるアフタヌーン・ティを提供しており、その種類や発想は独特の文化を遂げていますね。今回のセイボリーには「豆腐とトマトの酸辣湯風スープ」とか「ジェノベーゼ カッペリーニ」などもあり、お茶も「メロン和紅茶」水出しメロンティ」など、今回ならではのアフタヌーン・ティを楽しみました。

セイボリーとスイーツで満腹だったので、腹ごなしを兼ねて近場にオプション(!)展覧会見学・戸栗美術館「柿右衛門の五色」展へ。古伊万里からマイセン、そして現代の十五代酒井田柿右衛門の作品まで「柿右衛門様式」とされる作品を一気に鑑賞、素晴らしい作品だらけです。じっくり五色の色を比較しながら見て回る中、館長が見えてご説明いただいたことにより、大雑把に「柿右衛門」と呼ばれるものの中にも、地域や時代によって筆の使い方、色の乗せ方、顔料染料の配合などの違いがわかってきました。作品と向き合う、本物と向き合う、この大切さをあらためて感じたひと時でした。オススメの展覧会です!


雨の中の鎌倉にて、英国アンティーク博物館BAMと鏑木清方記念館

4月のAEAOサロン倶楽部は鎌倉遠出(?)をしました。昨年秋にオープンした話題の英国アンティーク博物館BAMを訪ねたい、と予々思っており季節的にも散策の楽しい4月を待ってこの日に設定したのですが、生憎の雨模様。台風であれば中止にするところですが、もうすでにお昼のガストロノミックなランチも予約済み、雨雲如きに負けていられるか、ということで決行です。せっかく満席になったことですし。

雨の日は電車も遅れがちですが、全員集合時間前に揃い、まずはランチでスタート。以前GW期間中に鎌倉に来たことがある、という参加者さんは「あの時はすごかった、改札を出るのに30分、待ち合わせた友人は1時間かかった」、また別の参加者さんも「以前来た時は人、人、人で歩けない、進めない、飲食店はどこも満席、トイレすら困った」という人気スポット・オーバーツーリズムの鎌倉ですので、却ってこの雨で人出も抑えられたのかもしれません。

最初に向かったのは、小町通りとは逆側にある、琵琶小路にある「ラ・コクシネル」。クオリティの高い鎌倉フレンチです。鎌倉の焼き野菜などもふんだんに使われており、大満足な味。団体での予約でしたので事前の連絡時に、その後でBAMに行くんです、と世間話をしていたところ、なんと従業員の方はかつてBAMでお仕事されていたとのこと、また前日にもこちらでお食事をした後にBAMに向かうお客さんがいらしたのですよ、とお話いただき、親近感が増してしまいました。とにかく何を食べても美味しいので、お昼も満席でした。早めにリザーブしておいてよかったです。

そしていよいよ英国アンティーク博物館BAMへ。鶴岡八幡宮のすぐ近くにあります。隈研吾氏の設計で、小さいながらもこの建物にジョージアン時代、シャーロック・ホームズの部屋、ヴィクトリアン時代の室内装飾品がぎっしり詰まっています。館内ガイドとして、QRコードから館長の解説動画が再生できるようになっており、館内でそれを聞きながら鑑賞できます。写真撮影もOK。展示物に対して歩き回れるスペースが狭いのが残念ですが、この日も雨にもかかわらず多くの来館者で賑わっていました。銀器コレクションは圧巻でしたし、ジョン・ロブの靴の木型のコレクションもなぜこれがここに!?という珍しいもの。ホームズのヴァイオリンだけでなく18世紀末に製作されたというハープ、ヴィクトリアン時代のピアノ、と楽器も色々展示されていました。

BAMを出た後は、小町通りを横切って、鏑木清方記念美術館へ。「清方、鎌倉に住まう」展が開催されていました。東京・神田生まれの鏑木清方は、戦後は鎌倉で活動の場を求め、亡くなるまで鎌倉で過ごしていたそうです。没後、遺族が土地建物と作品を鎌倉市に遺贈したことで記念美術館になっています。

画風とこの建物がとてもマッチしていて、安らかな気分に浸れる美術館でした。

外はまだ雨がしつこく降り続いていますが、小町通りはそれでも賑わいを見せていました。至る所で「食べ歩き禁止」となっているのは、晴れていたらそれこそすごい人出なのを窺わせます。この日は普通に歩けたのも吉と出たと思うことにしましょう。みなさんそれぞれ鎌倉のお土産などを買い込み、帰途につきました。

5月以降のAEAOサロン倶楽部、近日中にupしますので、どうぞお楽しみに!


春の遠足は、笠間で散りゆく桜とともに

4月初旬の暖かい晴れた日、AEAOサロン倶楽部で笠間へ遠足に行ってきました。笠間日動美術館にアンティーク・ドールのコレクションが展示されていると聞き、このプランを最初に計画したのが2021年4月。しかし残念ながら緊急事態宣言となり、「県外への移動は避けてください」「県外の方は来ないでください」とそれぞれの知事が訴えており、敢えなく断念。今回はそのリベンジです。

みなさん笠間は「遠い」「交通が不便」という印象を持っているのか、他のサロンに比べると集まりが少なかったのですが、上野から特急ときわに乗れば1時間で着くのです。おそらく通勤圏でしょう。私たちは通勤の人たちとは逆方向ですので、当日の出発15分前に指定券を購入し、それでもみなさん隣同士で希望の席が取れました。友部駅に着いて、かさま周遊バス(これも特急の到着時間帯に合わせてあるようなタイムテーブルが組まれています)で、まずは笠間日動美術館へ。

当館学芸員の塚野氏が迎えてくださり、アンティーク・ドール部屋まで案内してくださいました。フランスのドールとドイツのドールがそれぞれのショーケースにまとめて展示されており、圧巻です。なぜこれだけのコレクションがこの美術館に収蔵されているのか、についてもお話を伺いました。オリジナルの衣装など、なかなか本国フランスでも見ることができないものも多いのです。

笠間日動美術館の常設コレクションもどれも素晴らしいものばかりですが、今回は特別展で岸田劉生展も開催されていました。誰もが美術の教科書で見たことのある、あの「麗子」を描いた画家です。またお隣の展示室「鴨居玲の部屋」もとても興味深い展示でした。

緑あふれる贅沢な敷地の笠間日動美術館から歩いてすぐのところが笠間稲荷神社と門前通りのある中心地。ここで蔵を改造したような庭カフェKULAでランチをいただき、次なる目的地は春風萬里荘です。もともと鎌倉にあった北大路魯山人の住居がこの笠間に移築され、日動美術館の分館となっています。

地図上にあるはずのかさま周遊バスの停留所が見つからず、あたふたしているところへやってきたバスを無理やり止め(!)、春風萬里荘へ。時空間が全く異なる世界にワープしたような静けさ。魯山人のお風呂やトイレまでもが展示品です。

1時間ほどゆっくり館内や庭などを散策、茶屋であんみつもいただいて、またかさま周遊バスへ。帰りの特急の本数があまりなく、今回はこれにて駅から上野へ戻ったのですが、焼き物に興味がある方は茨城県陶芸美術館を始め、やきもの通りやギャラリーロードなどを回ってショッピングをしたり、焼き物を体験することもできるようです。

帰りの特急もギリギリでしたが指定席を予約、無事みなさんで一緒に座れてあっという間に上野へ到着。

このところインバウンドが復活して、どこもかしこも混雑しているという話を聞きますし、メジャーな観光地(京都など)はトンデモナイことになっているようですが、笠間では本当にのんびりゆったり自然を味わうことができました。空が広く、二階建ての建物が「高い!」と思えるほど、贅沢な空間が広がっています。車の街ではありますが観光客にも優しいインフラが整っていることがわかり、今度は紅葉の季節にも訪れてみたくなりました。