お屋敷シリーズ、旧古河虎之助邸を訪ねる

9月のサロンは、お屋敷訪問シリーズ第二弾、昨年9月に行われた第一弾の鳩山会館に続き、今回は旧古河虎之助邸を訪ねる会でした。

お屋敷訪問シリーズを催行するのは季節のよい5月、9月、10月などで、雨さえ降らなければ・・・と思っていたのに明け方はまさかの雨・・・でしたが、ランチの時間には小雨となり、どうやら止む様子。まずはプレレクチャーを、アンティークの調度品が可愛く飾られている隠れ家カフェにて、フルコースランチをいただきながら。

明治から戦前までの日本の社会階層や住居はどんな状況だったのか、なぜこの期間に洋館が建設されたのか、施主はどんな人たちだったのか、どのくらいの女中や下働きの人たちが必要とされていたのか、建築スタイルとしては何様式が多かったのか、持ち家率ってどのくらいだったのか…住まいにまつわる話題は誰にとっても身近なだけに盛り上がったところで、前菜がサービスされました。

特別にお願いして作っていただいたお料理は、どれも丁寧に料理された感がたっぷりの、ヘルシーで美味しいものでした。全員しっかり完食!

ランチを終えて外に出たら雨は止み、それほど気温も高くなく、ちょうどよい庭園散策日和となりました。

そしていよいよ館内ツアー。館内は事前予約制で、館内学芸員によるガイドでのみ見学ができます。この会はほぼ協会サロンの参加者で、ゆっくりと隅々まで鑑賞することができました。

明治〜昭和初期に建設された多くの邸が和洋館並列形式なのに対し、ここは洋館単独として設計され、内部に和館が取り入れられているという、一見外観からはわからない造りとなっています。

学芸員さんによれば、コンドルが設計した「洋館の中に和館を取り入れる」スタイルは4館しか設計しておらず、この旧古河邸が現存している唯一のものだそうです(他の3館は消失)。

洋と和を両方取り入れるのに、よく「折衷」という言葉を使いますが、ここは「折衷ではなく、調和と共存」。和館が存在している様子は外観からは一切わからない、また屋敷から眺めた庭はあくまでもイングリッシュ・ガーデンのみが目に入り、その向こうの低地にある日本庭園は、まさかあるとは気づかない、そんな計算された設計で、言われてみると美しく調和しているのですね。

戦後の財閥解体によりまずは国に接収され、次に進駐軍による接収の後、「30年間、お化け屋敷のように荒れ放題だった、動物も住みついていた」状態の館を数年かけて修復工事、平成元年にようやくほぼ元の状態に復元し美術館としての開館となりましたが、荒れ放題からの修復の大変さ、困難さを経験してきただけに、現在ではスリッパに履き替え、ガイドツアーのみの見学となっています。

30年の空白期間ゆえか当時の様子でわからないことは残っており、たとえば館内見どころの1つである大理石を使用して作られた五右衛門風呂のような丸い浴槽にどうやってお湯を張っていたのかについても、諸説あるようです。

館内内部には冷房施設はなく、扇風機や冷風機のみでした。真夏でなくて、雨上がりの今日でよかったわね、と結果オーライ!まだバラの季節前だけあって、庭の訪問者があまりいないのも、かえって当時の邸の住人になれたような気分を味わうことができました。

好評のお屋敷訪問シリーズ、今度はどこを訪ねましょうか・・・。