日別アーカイブ: 2019年9月30日

第4回アンティーク検定講習・2級

9月の土日4日間に渡って行われました、第4回アンティーク検定講習・2級が昨日終了しました。

2級を試験で挑戦した方はおわかりかと思うのですが、3級と2級には大きなレベルの差があります。2級を試験で合格するには、4科目(西洋美術史、西洋装飾美術工芸史、外国語、現代時事アンティーク)ですべて基準点をクリアする必要があり、1科目でも落とした場合は、次年度に1回のみ、既に合格した科目の免除が与えられていますが、そこで逃してしまうとまたゼロから受け直しとなります。

ちなみに第8回アンティーク検定試験(2019年・6月実施)の合格率は30%でした。

そこで、そんな難しい試験を受けて不合格になって落ち込むよりは、講習でみっちり4日間集中講座を受けて気持ちよく2級を修了しよう、というニーズもそれなりにあり、今回も7名の方が講習に臨みました。全員全講座を受講し出席率100%、最後に2級のディプロマを手にすることができました。

3級の講習を半年前に受けた方、1年前に受けた方、今回同時に受けた方、さまざまでしたが、みなさん既に3級の知識は有していますので、2級はさらに奥深く踏み込みます。

西洋美術史はに関しては、中世からキュビスムあたりまでの流れを深く切り込み、同時に装飾様式との関連を学びます。また特別な装飾様式であるアール・ヌーヴォー、アール・デコを始め、歴史主義とは、折衷主義とは、といった言葉を大きな建築から小さなジュエリーに至るまで、深めていきます。

そして2級を受験する人はまずほとんどの人が過去問を見て「手も足もでない」と怯える現代時事アンティーク。ちなみに2019年の合格基準では、他の科目が30点満点中20点で合格なのに対して、現代時事は18点と、合格基準を下げていますが、それでもなかなか合格に至らない、受験者泣かせの科目です。この現代時事アンティークのところを、体験談をも含めて興味の間口を広げようと、上野の森美術館学芸課長の坂元暁美先生に解説していただきます。受講生側からの質問も活発に出て、「現代アートとテーマパークはどう違うのか?」「なんでもかんでもアートと呼ぶ現代の風潮は如何なものか」といった有意義な議論にも発展しました。

また2級では実際にモノを見て触っての「鑑定」を行います。陶磁器、銀器、ガラスのそれぞれについて、いきなり自分の目の前に「鑑定物」が置かれ、それらについてdescription(記述)をします。ただ講義を聞くという受動的なスタイルに慣れていると、この能動的な作業に思った以上に「書けない」「わからない」ということが認識できるのですが、そもそも鑑定は記憶から情報を取り出すのではなく、何をどう調べればよいか、さえわかっていればできる作業です。そのノウハウについて学びます。

外国語(英語)も、語学としての英語を学ぶのではなく、特殊なオークション用語や、3次元のもののサイズを表現するのにどの順番で表現するのか、美術館の銘板に書いてあるこの用語の意味はどういうことに使うのか、といった、海外文献を読んだり美術館を訪問したりするのに役立つ英語を学びます。

版画や写真といった紙モノの世界についても、実際に「写真」と「インクジェットプリンターの写真という名の印刷物」との違い、一見全くわからないのですがルーペでドットが見えるかどうか、などを体験します。

課外授業は、当協会監修者である岡部昌幸先生による、ブラタモリならぬブラオカベ!今回は会期終了直前の「1933年の室内装飾展」(東京都庭園美術館)を隅から隅まで見学、庭をも含めてたっぷり2時間歩き回された後も、白金台界隈めぐりが続き、最終目的地ショコラティエではみなさん「甘いホットチョコレートのドリンクに、スイーツとしてのチョコレート」をほうばって疲労回復。

4日間で12単位という実にハードな集中講習をすべて終え、カクテル&ディプロマ授与では全員が笑顔で終えることができました。受講生のみなさん、出講いただいた先生方、お疲れ様でした。

次回第5回アンティーク検定講習・2級は2020年1〜2月に実施する予定です。