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読書会:『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』第2期終了!

いよいよ第2期最後の回、クライマックスともいうべきイエスの死がやってきました。今日のテーマは十字架の道行き、磔刑(十字架昇架、イエスの死)、十字架降下、そしてキリストの復活、と多くの名画で描かれているおなじみの場面がたくさん出てきます。

キリストが十字架に磔られている絵は多くの画家が描いていますので実物の絵画を見たことがある人は多いでしょうが、この磔刑図にも痛く苦しそうな表情と、穏やかに寝ているような表情があり、美術史を知っているとその画風の違いも理解できそうです。

キリスト像の上には「INRI 」という言葉がよく描かれていますが、これは「Iesus Nazarenus Rex Indaeorum」の略記で「ナザレの王イエス、ユダヤ人の王」の意味。そういえばロザリオにもよく「INRI」の文字が刻まれていますね。

十字架降下図も多くの画家が描いていますが、やはりバロックの画家たちの絵画が強烈な印象を与えるのは、そもそもバロック絵画が対抗宗教改革としてカトリックの営業発信ツールだったことにも関係しているのでしょうか。このルーベンスの作品は初期の代表作です。

そしてキリスト復活、エマオの晩餐、キリスト昇天、聖霊降誕とストーリーは続きます。

第2期の読書会はここまでですが、引き続き第3期では有名な聖人やキリスト教美術の定型的な主題を見ていきます。サンタクロースのモデルになったのはだれ?三島由紀夫がお気に入りだった聖人は…など、さまざまな話題を交えながら、西洋美術をより深く楽しめるようになる知識が身につく講座です。

12月には、丹下健三の名建築としても有名な、東京カテドラル聖マリア大聖堂を見学する予定です。

第3期のお申込み、お待ちしております。


アカデメイア、ストーリーが面白くてしょうがない『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』

今日は月1回のアカデメイアの日、聖書に登場するテーマごとの絵画を中山久美子先生にわかりやすく解説していただく講座です。新約聖書の3回目は、「山上の垂訓」からイエスが逮捕されるまでのストーリーを数多の絵画を見ながら学びました。

・山上の垂訓

イエスの説教を聴きに集まってくる人たちを描いています。これはお弟子さんだけ。

フラ・アンジェリコ「山上の垂訓」

お話をすればするほど信者が増えていく、という情景で、多くの人たちが描かれていますね。

コジモ・ロセッリ、ペトロ・ディ・コジモ「山上の垂訓」

・キリストのたとえ話

教育を受けていない貧しい人々にもわかりやすく、身近なたとえ話を用いて教えを説くシーンです。「盲人」というのは物事を理解していない人、学びが不十分な人のたとえです。

ピーテル・ブリューゲル(父)「盲人のたとえ話」

・貢の銭

「税金を払え」「え、あなたは自分の息子にも税金を課すの?」「いや、息子からは取らないよ」「じゃあ私は神の子だから、払わなくてもいいわけで」と思ったものの徴税人を困らせてはいけない、と思ったイエス、魚の口から銀貨を出させて税金を納めましたとさ。

マザッチョ「貢の銭」

・最後の晩餐

レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画がダントツに有名ですが、多くの画家がこの情景を、ユダの配置を工夫しながら描いています。

・イエスの逮捕

いよいよ逮捕されてしまうイエス、まだ生きていますがその先には遠からずの死が待っています。

フラ・アンジェリコ「キリストの嘲弄」

今日はここまで。次回はいよいよイエスが殺されてしまうのです…が復活します。磔刑図、十字架降下の図、復活の様子、そして昇天、とクライマックスですね。


アカデメイア・読書会『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』新約聖書第3回

今日のアカデメイアは2か月ぶりのZoomの講座でした。先月は実地研修ということで神田教会に出かけたのですが、そこで目にしたステンドグラスに描かれている世界は、まさにこの聖書の中のストーリー。聖書を制すると絵画が読める、というわけですね。

まずは前回のおさらい。受胎告知からイエスが誕生し、エジプトに逃れ、予言を受けるところまでをざっと復習。

そして今日のテーマ、博士たちとの議論、キリストの洗礼、キリストの誘惑、奇跡の漁り、キリストの変容、キリストの奇跡へと辿りました。

聖書を題材とした絵画はオールドマスターズだけかと思いきや、実は19世紀でも20世紀でも描かれているのですね。

ゴッホ『ラザロの復活』ー さてキリストはどこに描かれている!?

そしてルネサンスの画家もバロックの画家も、同時代の人々をそのまま登場させていたりして、現実と聖書が混じり合ったような絵画が描かれている、そんな絵を見ていくと敷居が高いように感じられた宗教画も実は身近なところにあったんだ、と感じられますね。


アカデメイア『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』教会見学と東京美術倶楽部

今日は現在開催中のアカデメイアの教会見学の日でした。見学地は千代田区西神田にあるカトリック神田教会、聖フランシスコ・ザビエル聖堂を見学し、聖堂内のしつらえについて学ぶべく実際に訪れてみるという実施講座です。

当初の予定はカフェでレクチャー+見学でしたが、前座として参加者一同でランチ。神保町といえばカレーですが、古書店街から少し離れた界隈で美味しそうなスープカレーのお店を見つけ前日に予約、ここはカスタマイズがすべてにおいて(辛さ、スープの味、ご飯の量、トッピング…)できるシステムで、それぞれ自由に選んでみました。といっても初心者の「微辛」を選んだ人が多かったですね。野菜たっぷりのスープカレー、なんだか健康食のような気がしてきました!?

ランチ後のカフェではレクチャーと共に持ち寄った銀器の刻印鑑定会や7月に行われる国内研修の話などにも花が咲き、お腹もお喋りも満たしたところでいよいよ神田教会へ。

日本で最初に聖フランシスコ・ザビエルに捧げられたこの教会は1874年(明治7年)の創設です。歴史を感じますね。明治29年に建立された聖堂は関東大震災で失われましたが1928年(昭和3年)に再建、現在では登録有形文化財に登録されています。

当然ながら教会内部の写真撮影はできませんが、美しいステンドグラスの窓はしっかり目に焼き付けることができました。中山久美子先生の資料はステンドグラスの場面の解説付きですので、資料を見ながらさまざまな聖書のシーンを追っていきます。アダムとエヴァの楽園追放、マギの礼拝、受胎告知、イエスの埋葬、最後の晩餐…かつて聖書を「読めない」人々にもお話がわかるようにステンドグラスにおはなしを描いていたということがよくわかります。

その後、みなさんで東京美術倶楽部にて開催中の「工+藝 KO plus GEI 2024」展を見に行きました。

高級美術商がその会員であり敷居が高いとされている東京美術倶楽部ですが、一般公開されているこの展覧会は誰でも作品を鑑賞することができ、また作家さんを交えてのギャラリートークも開催されているとあって、覗いてみたところ作品もギャラリートークも期待を大きく上回る体験でした。

また国内の茶道名家家元が利用する済美庵にて御茶をいただくという機会にも恵まれ、美術館ではガラスケースの中に入るような高級なお茶碗でお点前をいただき、お庭も鑑賞できてハッピーな気分に。

東京美術倶楽部を出たら東京タワーも見られて、とても充実した1日でした。中山先生、ご準備や下見、有難うございました。来月は「博士たちとの議論」から「キリストの奇跡」まで、ですね。


読書会『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』第2期がスタート!

2023年の旧約聖書から引き続き、新約聖書のお話がどのように絵画に描かれているかを紐解くアカデメイア『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』の第2期がスタートしました。講師は引き続き中山久美子先生です。ちなみに中山先生は幼少の頃から教会へ通っていた信者さんだけあって、その解説のわかりやすさはピカ一なのです。

今日は、最初に来月見学で行く教会の基礎知識として、教会建築についてのお話をいただきました。今年1月にAEAOサロン倶楽部でニコライ堂(東京復活大聖堂)へ見学に行きましたが、こちらは東方教会の方でした。このアカデメイアで訪れる予定の教会は西方教会で、一般的にどういう作りと構成になっているのか、バシリカ式やラテン十字形とはどういう形なのか、ロマネスクやゴシック建築の教会の例を挙げながら解説いただきます。

そしていよいよ絵画に登場する、新約聖書の世界で描かれるあんな場面やこんな場面、順を追って見ていきます。前期の復習を兼ねて新約聖書と旧約聖書のあらまし、ユダヤ教とキリスト教、ところでイエス・キリストって何者、というきほんのきをおさらいしたところで新約聖書のあらすじに添ってテーマ別に絵画を見ていきます。

第1回目の今日は「受胎告知」「エリザベツ訪問」「東方三博士の礼拝」「神殿奉献」「幼児(嬰児)虐殺」「エジプトへの逃避」のそれぞれの主題で、歴代の画家たちがどのように描いているのかを読みほどいてみました。描く画家の時代や国によってそれぞれ解釈の違いがあり、また画風や様式は異なりますが、帰する主題が同じなので共通点が見えてきます。全然違う国と時代の絵画を並べて比較すると、知識がなければ全くの異なる2枚の絵から、一つの同じ物語が浮かび上がってくる…これぞ先生がよく仰っている「絵画は見るものではなく、読むもの」の醍醐味なのですね。

<この2枚の絵画、全く同じ主題が描かれています。>

ところで本当に奇跡は起こったのか、本当に一度死んだ人間が復活したのか…科学的に考えればあり得ないことなのでしょうが、科学がここまで解明されている現代でもこれらの絵画に誰もが感じる神々しさ、そして宗教を狂信するあまり現代でも起こっている戦争をみると、神と人間の在り方についてあらためて考え込んでしまいます。

1枚の絵からこんなに多くのことが発信されている、絵画の力ってすごいですね!

次回は教会建築見学です。