アカデメイア」カテゴリーアーカイブ

読書会『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』第2期がスタート!

2023年の旧約聖書から引き続き、新約聖書のお話がどのように絵画に描かれているかを紐解くアカデメイア『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』の第2期がスタートしました。講師は引き続き中山久美子先生です。ちなみに中山先生は幼少の頃から教会へ通っていた信者さんだけあって、その解説のわかりやすさはピカ一なのです。

今日は、最初に来月見学で行く教会の基礎知識として、教会建築についてのお話をいただきました。今年1月にAEAOサロン倶楽部でニコライ堂(東京復活大聖堂)へ見学に行きましたが、こちらは東方教会の方でした。このアカデメイアで訪れる予定の教会は西方教会で、一般的にどういう作りと構成になっているのか、バシリカ式やラテン十字形とはどういう形なのか、ロマネスクやゴシック建築の教会の例を挙げながら解説いただきます。

そしていよいよ絵画に登場する、新約聖書の世界で描かれるあんな場面やこんな場面、順を追って見ていきます。前期の復習を兼ねて新約聖書と旧約聖書のあらまし、ユダヤ教とキリスト教、ところでイエス・キリストって何者、というきほんのきをおさらいしたところで新約聖書のあらすじに添ってテーマ別に絵画を見ていきます。

第1回目の今日は「受胎告知」「エリザベツ訪問」「東方三博士の礼拝」「神殿奉献」「幼児(嬰児)虐殺」「エジプトへの逃避」のそれぞれの主題で、歴代の画家たちがどのように描いているのかを読みほどいてみました。描く画家の時代や国によってそれぞれ解釈の違いがあり、また画風や様式は異なりますが、帰する主題が同じなので共通点が見えてきます。全然違う国と時代の絵画を並べて比較すると、知識がなければ全くの異なる2枚の絵から、一つの同じ物語が浮かび上がってくる…これぞ先生がよく仰っている「絵画は見るものではなく、読むもの」の醍醐味なのですね。

<この2枚の絵画、全く同じ主題が描かれています。>

ところで本当に奇跡は起こったのか、本当に一度死んだ人間が復活したのか…科学的に考えればあり得ないことなのでしょうが、科学がここまで解明されている現代でもこれらの絵画に誰もが感じる神々しさ、そして宗教を狂信するあまり現代でも起こっている戦争をみると、神と人間の在り方についてあらためて考え込んでしまいます。

1枚の絵からこんなに多くのことが発信されている、絵画の力ってすごいですね!

次回は教会建築見学です。


海外研修関連講座:「リモージュの魅力」Vol.2

先月に引き続き、今月のアカデメイアは「リモージュの魅力」第2回でした。前回は19世紀までのお話をしましたが、今回は20世紀のリモージュ。

20世紀の二大様式と言えばアール・ヌーヴォーにアール・デコ。リモージュも敏感に反応します。アール・ヌーヴォー期には流れるような曲線のテーブルウェアが、アール・デコ期にはジェオメトリックで様式化された、シャープなデザインの食器が作られます。

そしてこの時代になると、芸術の他分野(画家、彫刻家、ポスター画家、イラストレーター)で活躍しているアーティストたちも、リモージュの窯とコラボレーションしていきます。エドゥワール・コロンナ、ジョルジュ・ドゥ・フール、ポール・ジューヴ、アントワーヌ・ブールデル、エドゥワール=マルセル・サンドス、ジャン・デュフィ、シュザンヌ・ラリック…

リモージュ生まれのカミーユ・タローというセラミック・アーティストが活躍するのもこの時期。エナメルの絵付けを用いた大胆な花柄紋様のフラワーベースはアイコニック的な作品です。タローといえばジロー、というわけで(!?)リモージュにはアンドレ・ジローという人もいました。André Giraud & Brousseauの作品はニューヨークのMoMAにも所蔵されています。

20世紀後半、戦争で疲弊したリモージュでは多くの窯が廃窯となりました。戦争だけでなく、人々の生活や価値観も大きく変わってしまったのです。もう人は食器で豊かさをマウントすることもないし、何百点ものセルヴィスを買うのは時代遅れになります。それでもリモージュの磁器産業を絶やしてはならない、現代のセンスと共にリモージュも共存していくのだ、という気持ちがあったのでしょう、コンテンポラリー・アーティストであるアルマンやセザールらとコラボをしたり、エルメスと共作したり、話題を作っていきます。

そんな中で「リモージュ・ボックス」が生まれます。もともと18世紀に貴族の間で流行った嗅ぎタバコ入れやドラジェ入れ、つけぼくろ入れといった小箱の文化は19世紀に貴族の消滅と共に廃れてしまいました。それらを復活させよう、として1960年代に生まれたのが、すべて手作りで1点1点作り上げるリモージュ・ボックス。このリモージュ・ボックスには世界中にコレクターがいます。開けてみると、あっと驚くような仕掛けがしてあったり、細かい部分が実に精巧に演出されていたりで、なんとも愛らしい!これは場所を取らないし、可愛いし、滅多に割れたり壊れたりもしないのでコレクションしやすいかと思います。ただ凝ったものはそれなりのお値段ですが。

2回に渡って行いました「リモージュの魅力」は今回で終了です。

3月のアカデメイアは海外研修のためお休みとさせていただきます。

4月から新アカデメイア「読書会:『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』第2期」がスタートします。5月には教会見学も入っています。ご受講をお待ちしています。


海外研修関連講座:「リモージュの魅力」

いよいよ3月の海外研修が2ヶ月後に近づいてきました。せっかく遠い遠い地へ赴くのですから、そしてそれぞれの美術館や施設での見学時間は限られていますから、できるだけ知識を事前に入れておくと現地での解説もわかりやすいかな、ということで、今月と来月は「リモージュの魅力」と題しリモージュ磁器に関する勉強会を行うことになりました。

リモージュの焼き物は日本でも手に入りやすいですから、もちろん今回の研修のご参加者でなくても本講座を楽しんでいただけます。

第1回目の今月は、リモージュ焼きの誕生から19世紀末までのお話。リモージュがどんな地なのか、かつての工芸品にどんなものが作られていたのか、そして磁器の原料カオリンはどこでどのような経緯で発見されたのか、フランス革命でどんな影響が起こったのか、やがて19世紀のリモージュは…と歴史を辿っていきます。

工芸の世界、中でも革命後も国立製陶所として生き残ったセーヴルと対照的に民間の手に委ねられたリモージュでは、歴史的資料が残っていないのか詳細がわかっていないことが多々あります。たとえば19世紀の前半に活躍した陶工ベニョル、一時はフランスでも忘れ去られていた名前でした。研究者や陶磁器博物館の学芸員たちが彼の作品からその制作活動に関して研究を続け、ようやくまとまった第一段階のものが仕上がり、展覧会を開催したのが一昨年のこと。彼こそがリモージュ磁器のパイオニア的存在であり、現在のリモージュのテーブルウェアの基礎を作り上げた人だったのです。

この19世紀の窯へは3月の研修で実際に訪れる予定ですので、我々もその痕跡を辿ってみたいと思います。

19世紀後半には万博の影響もあってリモージュには多くの窯が誕生し、そのいくつかは現在も残っています。ベルナルド、アビランド、レイノー…そしてかつてのセーヴルで作られたモチーフを復刻したものがリモージュで作られ続けています。そんな煌びやかな18世紀セーヴル時代を彷彿させる名品は、ナポレオン3世時代の第二帝政下でさらに華開いていったのでした。

次回は、黄金期のリモージュが20世紀に入ってどのような経緯を辿っていったのか、現在のリモージュ窯はどうなっているのかを学んでいきたいと思います。

アカデメイア「リモージュの魅力」、オンデマンドでもご視聴いただけます。


旧約聖書編・最終回「読書会:マンガでわかる西洋絵画の見かた 聖書編」

2023年7月よりスタートした読書会『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』の、第一部・旧約聖書編もいよいよ最終回を迎えました。今回はスペシャル回ということで、クリスマスの図象について、色々と学びました。

この読書会は本当に超初心者にもわかる「聖書と絵画」ということで、そもそもクリスマスとは何か、ということからスタート、「え、イエス・キリストが生まれた日がクリスマスでしょ」と思ったらそれはちょっと乱暴な考え方になります。正しくは「イエス・キリストの降誕を記念する祭日のこと」。ところでイエスって名前?キリストって苗字?という幼稚園児が先生に聞きそうなことも今更聞けない…という大人の気持ちを忖度してか、最初からやさしく教えてくださる中山先生、おかげさまで「降誕」という言葉はイエス以外には使わないとか、「キリスト」とは言葉としてどういう意味か、三位一体とは、なぜイエスは処刑されたのか、等々きほんのきについてあらためて理解できました。

クリスマスといえば教会に行く方も多いでしょうが、プレゼピオ(イタリア語)ークレッシュ(フランス語)と呼ばれるイエスの降誕を再現した模型を目にすることがありますね。個人宅でもキリスト教の世界では小さなこの模型をリビングルームに飾るのが一般的。そのプレゼピオのアイテムである聖母、ヨセフ、羊飼い、天使たち、マギ(東方のサン博士)、そして羊、牛、ロバや飼い葉桶や洞窟に至るまで、それぞれ意味をあらためて知ると面白いですね。ヨーロッパではこの時期、プレゼピオの模型が色々売られていて、陶器のもの、ガラスのもの、凝った工芸品が多く、アンティーク市でも売られていますよ!

最近では日本でも少しずつアドベント・カレンダーが知られるようになりましたが、アドベント=待降節の期間は一日一日その日を楽しみに待つ、ということで、今ではお菓子メーカーが毎日一つずつ開けると小さなお菓子やチョコレートが入っているカレンダーを売り出していますね。12月1日から1つずつ開けるのですが、待ちきれずにフライングしてしまう子供も多いとか。

エピファニー(主の公現)にガレット・デ・ロワを食べる習慣も日本でも知られるようになりましたが、このロワ(王様)とは誰なのか、そもそもこの日は誰が何を祝っているのか、そんなこともあらためて教えていただいたところで、今日の大切な一言!それは、

「キリスト教徒にとって最大のお祝いの日がクリスマス、と思われがちですが、実は最も大切な日は復活祭」

さて、この続きは本読書会「新約聖書」の方でまたゆっくり習うことにしましょう。

2024年4月より、あらたに「新約聖書の世界」を何シリーズかに分けて行う予定です。旧約聖書編はアーカイブ講座として学ぶこともできますので、ご興味のある方は是非この機会にオンデマンドにて!!


読書会:マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編・第4回「旧約聖書の世界 2」

前回に引き続き、旧約聖書の世界を絵画で辿っていきます。前回のあらすじを簡単にご説明いただき、みなさんの脳内に「天地創造、楽園追放、ノアの方舟」などが戻ってきたところで、今日はモーセから。

モーセといえば誰もが「モーセの十戒」を思い浮かべますね。やってはいけないこと十箇条が石板に書かれているものを神から授かるのですが、これも多くの画家が題材にしています。

これは教科書にも出ている、レンブラントの絵。

ルーベンスの「サムソンとデリラ」。

「ルツとボアズ」のエピソードがベースにあるという、この超絶有名なミレーの絵。

世界一有名な「ダヴィデ」はやはりこの人のもの。

「ソロモン」の審判は、日本の大岡裁きですね。

艶かしい美しさの「スザンナ」。

今日の授業はここまでですが、この辺りの歴史、ユダ王国が新バビロニアに滅ぼされ、人々が捉えられるバビロン捕囚、やがてその新バビロニアもアケメネス朝ペルシアに滅ぼされ…と昔々世界史で習った(けど忘れた)出来ごともわかりやすく説明いただき、誰もが同じことを思ったでしょう、「今まさに起こっているイスラエルとパレスチナの戦争…どこまで歴史を遡っての恨みごっこなんだ!?」と。戦争は1日も早く休戦してほしいですが、その根っこまで解決することはもう不可能かもしれない、そんな気分にもなってくるくらい、複雑に絡み合っています。

次回はユディットからと、クリスマスの図像を学びます。