投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

2016パリ・アンティーク海外研修 =2日目=

 今日は、午前中は18世紀にワープします。
 見学地はニシム・ド・カモンド美術館。
 
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 この美術館は、パリのど真ん中にありながら、いつもひっそりと佇んでいます、まるで元の持ち主の魂のように・・・そう、ここは、洗練された18世紀の家具調度品の大コレクターであったモイーズ・ド・カモンド伯爵が、家具に合わせて建てた邸宅なのです。
 普通は先に館を建てて、それから館にふさわしい家具調度品を入れるものですが、ここはその逆。建てられたのは20世紀に入ってからですが、18世紀のコレクションにふさわしい、洗練された往年の貴族の館という風格を備えています。とはいえ、エレベーターや暖房、電話やインターフォンといった近代設備も備え付けられている、快適な館、こんなところで(ブルジョワとはいえ)家族と使用人で暮らしていただなんて、昔のヨーロッパの金持ちというのは、とてつもないですね。
 

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 アンヌの解説にYさんの完璧な通訳で、すっかり18世紀の家具調度品を堪能した後は、ランチ休憩、そして場所を移動して、またまた豪華な館であるバカラ美術館での見学が始まります。

 現在のバカラ本社、バカラ美術館、バカラのブティック、そしてレストラン・クリスタルルームが入っているこの元ノワイユ子爵夫人が暮らした豪華な館、わたしたちが訪れたときはちょっと残念なことに外壁の工事中でした。

 でも中は・・・まばゆいばかりのクリスタル・コレクションにシャンデリア。美術館内部は写真撮影禁止なのですが、みなさんお手洗いの写真はパシャパシャっと!フランス人装飾家、フィリップ・スタルクの魔法の手にかかると、こんな風になるのですね。

 
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 バカラ美術館見学の後は、一旦解散。というのも、みなさんお召し替えがあるからです。今夜のハイライト、パリ・オペラ座でバレエ・ジゼルを見るという、プチブルなプログラム。

 
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 やはりこのオペラ座はの建物は何度見ても、何度入っても圧倒されます。フォワイエの絢爛豪華さに、シャガールの天井画、建物見学だけでも十分クラクラしてきますが、パリ・オペラ座バレエ団のエトワールダンサーたちの素晴らしいこと!

 
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 終演後は、ENTREACTE(幕間)という名のカフェで、全員モナコ(パナシェをグルナディンで割った、カクテルビール)で乾杯。
 

(翌日に続きます)

2016パリ・アンティーク海外研修=1日目=

=1日目=
 
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 いよいよパリ・アンティーク海外研修です。
フランスは研修前の1ヶ月間ほど春とは思えない酷いお天気で、太陽が全く出ていないという滅入る気候の中、数日前からの洪水でセーヌ川の水位が上昇、ルーブル美術館やオルセー美術館は急遽閉館し、地下にある所蔵作品を避難させる準備を始めました。
 

 そんな中で開幕(?)した、研修初日、まずは顔合わせ&ウェルカム・コーヒーです。この日はどうやら1ヶ月ぶりに朝から太陽が出ているではありませんか!
 

 当協会の海外研修は、現地での研修のみをオーガナイズしており、旅行部分(フライトやホテル)は各自で手配をすることになっています。したがって、初日の集合場所も住所のみの通知、果たしてみなさん集まれるのかとナビゲーターもやや不安ではありましたが、さすが研修生のみなさん、全員時間前にアポイント場所に集合です。
 

 ウェルカム・コーヒーは、現地オーガナイザー講師のアンヌ・コリヴァノフが、ご自宅からコーヒーマシーンと20世紀初頭のマイセンのコーヒーカップで、ヴィエノワズリと共に迎えてくれました。
 

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 通訳のYさんも加わり、午前中はフランスのテーブル・アートの歴史を、中世から20世紀まで一気に学びます。フランス料理といえば、テーブルウェアが華やかなことでも有名ですが、果たして昔からそうだったのか、今のようなスタイルになったのはどういう経緯でいつから起こったのか、かつての貴族やブルジョアの食卓はどうだったのか・・・謎が解き明かされます。
 

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 濃厚な授業が終わり、ランチタイム。フランス人のランチは13時からが多いので、12時前ですと、どこも空いていて、サービスノロノロのこの国でも比較的スピーディに済みますね。
 

 午後は、オークションハウス・オテル・ドルーオーを見学。このオークションハウスは19世紀半ばの創業で、公的なオークションハウス、誰でも入場し、オークションに参加することができます。この日は16のルームのうち、ほとんどが翌日のオークションのための下見会場となっていて、家具や工芸品、ジュエリーなどを実際に「触って」見ることが可能。美術品を直に手にとって触ってひっくり返して鑑賞できるのは、オークション下見会ならではです。さらにオークションを行っているルームも見学、みなさん間違って頭を掻いたりしないよう、やや慎重に、オークショニアの動きを観察します。
  
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 その後の自由時間では、オテル・ドルーオーの周りに点在する他のオークションルームやギャラリーなどを自由に散策、疲れたらカフェで小休止です。
 
 夕刻より、保険会社で盗品の評価額を鑑定していた経験をもつDさんも加わって、ドルーオー界隈の高級家具ギャラリーや、パッサージュを見学、オークションハウスの周りにオークション会社や美術工芸品の鑑定事務所が軒を連ねているのも合理的、この辺りではQADという看板があちこちで見られます。QAD=Quartier Art Drouot(ドルーオー・アート・エリア)と名付けられたこの界隈を歩くだけで、アートに囲まれた雰囲気を味わえます。
 

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 ドルーオー界隈散策の終点は、アンヌもお気に入りのお菓子屋さん、A LA MERE DE FAMILLE(ア・ラ・メール・ド・ファミーユ)で。ここのアイスクリームもチョコレートも絶品。
 

(翌日に続きます)

蚤の市、むかし・いま

 日本では今、蚤の市ブームでしょうか。
 東京蚤の市、代官山蚤の市、湘南蚤の市・・・あちこちで蚤の市が開催され、多くの人で賑わっています。
 

 ところで、蚤の市というと、どんなイメージがあるでしょう。
 

 なんとなく掘り出し物に出会えそう
 普通のお店には売っていない、オリジナルなものが見つかる
 普通よりも、うんと安く買える
 ごったまぜの中で、お気に入りを探す楽しみがある
 敷居の低い、骨董・アンティークにお目にかかれる
 

 こんなところでしょうか。
 

 蚤の市という言葉は、英語やフランス語の翻訳になりますが、語源は文字通り、「ノミだらけの中古品を売る市」であり、フランスにおいては1885年が蚤の市誕生の年とされています。
 

 この年、サントゥアン市議会が、蚤の市の存在を初めて認め、周辺の道路を舗装し、歩道を作りました。ガラクタの露店商売が、正式に市として認められることになったのです。
 

 やがて蚤の市は、常設店舗の権利を得、屋根のついたスタンド形式へと発展していきます。
 現在、「クリニャンクールの蚤の市」と日本人が呼ぶのは、このサントゥアンの蚤の市へ来るアクセスとして、メトロが開通し、クリニャンクール駅ができたことによります。
 

サントゥアンの蚤の市

サントゥアンの蚤の市


 

 このサントゥアンの蚤の市は、1920年代には、すでに実業家の投資先となり、第二次大戦後はアメリカ人客も急増、現在では業者数だけで1500以上になる、ヨーロッパ最大の蚤の市に発展しています。
 

 そして、中にはヴィロン、セルペットといった高級アンティークを売る市場があり、ガラクタどころではない、とてつもない値段のついた骨董品が売られています。
 

 当協会主催の、パリ・アンティーク海外研修では、最終日にこのサントゥアン市を訪れ、ディーラーさんたちのお話を聞きながら、雰囲気溢れる蚤の市内のレストランでランチをし、散策を楽しみます。
 
 

オークションというもの

 オークション会社の人から見たらたまったものではないでしょうが、美術工芸品を間近で見たい、と思ったら、オークション会場に足を運ぶことです。もっとも日本では、招待状がないと入れなかったり、業者さんに限っていたり、よほどの度胸がないと入りづらかかったり、ということがありますが、欧米では、市民が気軽に街のオークションハウスを訪れます。
 

 下見会、内覧会と謳っているときは、基本その商品をじっくり手にとって見て、状態をすべて納得した上で入札してもらうために行われるものですから、あらゆる情報を与えるように設定されています。
 

 そうは言っても、よいこと(有名人の来歴など)は比較的目立つように書いてあっても、悪いこと(瑕疵など)は、時として書かれていないこともあります。しかし、目の利く人であれば、落札予想価格から、状態や、たとえば年代的に修復されているのが当たり前の作品であるとか、熱処理をしていないわけがない石だとか、そういったことは暗黙の了解になっていますし、聞けば普通は正直にスタッフが教えてくれます。
 

 出品者にとっても、オークション会社にとっても、競争相手がいればいるだけ価格は上がりますから、なるべく多くの「潜在的入札者」がいる場所で開催しようとします。たとえば、現代アートならアメリカ、宝石や時計ならスイスや香港、というように・・・。
 

宝石のオークションの下見会

宝石のオークションの下見会


 

 残念ながら日本は、かろうじて先進国ではありますが、一般に美術品を買う人が少ないのか、世界的なオークションが開催されることは稀です。しかしながら、日本で価格を保っている近代作家の作品などは、やはり日本のオークションでよく見かけます。
 

 また、オークションが行われる場所によって、値段が異なってくるのも、よくある話。その地域にたくさんコレクターがいれば、当然その地域での価格は上昇します。
 

 それならは、すべてその地域で行えばよいのではないか、と思いがちですが、欧米の街のオークションハウスには、たとえば出品者の遺族がまとめて放出したありとあらゆるジャンルのものがあり、1点2点だけを特別なジャンルのオークションに出すまでもない、ということがあるのです。その場合、お宝であっても、まとめたジャンルのオークションではない場合、テキトーな値段で落札されてしまう、といったこともよくあります。
 

 オークション会社、というと、有名な会社の名前ばかりが頭に浮かぶ人も多いでしょうが、街のオークションでは何千円、といった金額で落札されるオークションも普通に行われているのです。
 

 当協会の6月の海外研修では、オークションハウスの見学が入っています。パリ・ドルーオー会館は、16のオークションルームがあり、日曜日以外は毎日、下見会かオークションが開催されていて、誰でも気軽に(最近は荷物検査がされているようですが)入ることができます。その日はどんなものが出ているのか・・・楽しみですね。
 
 

5月のAEAOサロン倶楽部は、KO-MINKA国彩館で!

 AEAOサロン倶楽部、2月〜4月までは、6月の海外研修で見学する訪問地に焦点を当てたテーマにて行いましたが、いよいよ第4回アンティーク検定に向けての勉強会を開催致します。
 

 5月のサロンの会場が、ちょっと面白いスペースですので、ご紹介。
 

 最近「古民家再生」が巷で流行っていますが、その名も『CO-MINKA 国彩館』、東京都文京区にあります。ヨーロッパでいうところの、「中世の街並みにあるような、入りくんだ路地を抜けて」いくと、ポツリと古い建物が。でも不思議と周りと調和していて、近くには小さな教会も。
 

 おそらく昭和初期の建物だったのでしょうか、古民家なのですが、お客様を迎えるスペースだったと思われる応接間の「洋室」があります。天井が高く、メンテナンスは行き届いていますが、当時の雰囲気を上手に再現した内装で、なんだか落ち着きます。
 

 こちらの『CO-MINKA 国彩館』では、アナログ・レコードのコンサートやライブ、ワークショップなど様々な文化的・国際的な交流が行われているようです。
 

 わたくしどものAEAOサロン倶楽部での使用にも、アンティークの世界の普及ということで、相通じるものがあったのでしょうか、心よく応じてくださいました。
 

 アンティークも古民家も、「古いものを捨ててしまわずに、大切に、そして魅力を最大限引き出して活かしていこう」のスタンスですから!!
 

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