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第2回アンティーク検定・対策ブログ=その1=

 いよいよアンティーク検定まで、あと2週間となりました。
 受験するみなさんは、普段から、アンティークや美術に興味のある方達ですので、特別な勉強が必要なわけではありません。でも、知らないことを知る、という好奇心はとても大切です。
 これから試験日までの間、こんなことを中心に、おさらいしてみてください。
 
【3級】
 
・「アール・ヌーヴォー」、「アール・デコ」という名前の由来はなんでしたでしょう?
 
・クリスタルとガラスの違い・・・クリスタルには鉛が含まれています。その鉛クリスタル(レッドクリスタル)が開発された国は?
 
・アンティーク・ドールで『ジュモー』というメーカーがあります。よく聞く名前ですね。どこの国の工房?
 
・優雅なティータイム。カップ、ソーサー、プレートと3点セットのものを何と呼ぶでしょう?
 
trio
  
 
・ジュエリーでよくあるカメオ。ストーンカメオとシェルカメオがあります。カメオってそもそもどんな意味?
 
・銀食器。英語で言う『スターリング・シルバー』、銀は何%入っているのでしょう?
 
【2級】
 
(西洋美術史)
 
・美術家と美術商(アートディーラー)の関係は、切っても切れない関係。ドガ、ルノワール、ピカソ、ポロックの画商は、それぞれ誰でしたか?
 
・スキャンダルを巻き起こした、マネの『オランピア』。この絵には構図の元となる絵画が存在します。それは・・・?
 
・絵を実際に美術館で見ると、想像していたよりもサイズが大きかったり、小さかったり・・・画集やインターネットでは、イマイチそのサイズ感が頭に入らないものです。たとえば、ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』と、ダヴィッドの『皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式』の絵、さてどちらが大きいか、答えられますか?
 
(西洋装飾美術工芸史)
 
・今年創立240周年を迎えた、ロイヤル・コペンハーゲン。バックスタンプの意味を知っていますか?
 
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・マイセンの中での有名シリーズ、『ブルー・オニオン』。青いタマネギって?
 
・天然鉱物の中で最も硬いダイヤモンド。このカットは時代と共に進化してきます。現在主流のカットは、何面体あるのでしょう?
 
 

国内のアンティーク・フェアは、モノを見る目を養う、よい機会

 5月も最後の週となりました。
 

 さて、普段アンティークのモノにあまり触れる機会がない、という方にとっては、チャンスの週です。というのも、なかなかアンティーク・ショップや骨董店には入りにくい、あれこれ聞くのは恥ずかしい、手ぶらで帰ってもいいのだろうか・・・と、お客さまは神様の国であっても、二の足を踏む人は意外と多いもの。その点、こういうアンティーク・フェアは何百というお店が平場に同時に並ぶわけですから、いろいろなお店を見比べたり、催事期間中の特別な掘り出し物に出会えたりもします。
 

 5/26(火)27(水)の2日間、さいたまスーパーアリーナにて「骨董アンティークフェア」が、5/29(金)〜31(日)の3日間は、新宿・第一生命ビルにて「アンティークフェアin新宿」が開催されます。どちらのフェアも年2回のみ、しかもインドアですから、このところ初夏を思わせる東京の日差しも避けられます。
 

  ・さいたまスーパーアリーナ「骨董アンティークフェア」
 
saitama2015
 

  ・「アンティークフェアin新宿」
 

shinjuku2015
 

 どちらも「初日が勝負」とも、「最終日の終了時刻間際が値切りのチャンス」とも言われていますが、アンティーク品は1点限りのものばかり。出会いと、インスピレーションを大切に、気に入ったものがあれば、お財布と相談の上、手に入れる絶好のチャンスかもしれませんね。
 
 

美術商のおはなし 〜ハウス・オブ・ヤマナカ〜

 古美術やアンティーク好きの人にとって、大変に面白い本をご紹介しましょう。
 

 『東洋の至宝を世界に売った美術商 ーハウス・オブ・ヤマナカー』
  朽木ゆり子著
 
 

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 19世紀末、ヨーロッパでもアメリカでもジャポニスムが流行り、数多くの日本の美術工芸品が輸出された時代に、山中商会という日本の美術商が活躍し、世界中に顧客をもつまでになりました。ところが今やその名を知るものはほとんどいなくなってしまった、それは何故?という近代美術史最大の謎を解く一冊です。
 
 松方コレクションとのかかわり、ロックフェラー家との手紙でのやりとりなど、美術品市場を学ぶにあたっても、面白いエピソードが満載です。
 
 タイトルを見ると、なんだか日本の逸品を海外に売ったワルモノのようにも見受けられますが、そもそも日本の美術品・工芸品を高く評価したのは欧米人であり、日本美術を海外へ紹介した、という点で、山中商会をはじめ、美術商の果たした意義というのは大きいのです。
 
 美術品、工芸品が、何億、何十億という値段になり、資産となっていく背景には、美術ディーラーとオークション、この2つが近代以降、大きな役割を果たしています。作家や工芸家が自らの作品を、最初から高額で売った訳ではありません。
 
 生産者と最終消費者の間の流通過程をなるべく省くのが、一般の製品流通におけるコスト減につながりますが、美術品・工芸品には、この流通という過程で目利きがいないと、どうにもなりません。それが美術ディーラーであり、また公開オークションという場なのです。
 
 まあ、まずは読んでみてください。

株とアンティーク

 何やら変なタイトルを付けてしまった今回のblogですが、株とアンティーク品というのは、意外と共通点があります。株価と、アンティークのお値段、という点において。
 

 金融商品の中でも、例えば為替は、これは相対的なものです。ある通貨がある通貨に対して上がれば、一方は下がっている、といった具合に、最近の言葉遣いで言えば、必ずどちらかが「勝ち」でどちらかが「負け」の期間があります。
 

 でも株は、すべての株が上がっていたり、すべての株が下がっていたり、ある株だけやたら上がっていたり、と、株式市場全体で底上げや冷え込みがあり、そして抜け駆け的に強いものも現れます。現在はアベノミクスのおかげで日本株は好調です。わずか3年前に500円だった株価が1000円の値を付けている、といったものもあるでしょう。
 

 アンティーク品は、実はこの株と値段が似ています。
 みんなが欲しがっていると、そのものの値段が高くなります。
 そして、欲しがる人がいなくなると、途端に値崩れを起こします。
 ある地域だけで売買されているものが存在します。
 まさに需要と供給、それだけで大半が成り立っている世界です。
 

 株価を分析すれば、そこには理由があるように、アンティーク品の値段にも理由があります。
 
 「人気がある」「みんながほしがる」の要素の中には、そのものが好きだ、ほしい、という純粋な気持ちとは別に、投資目的もあります。アンティーク・ジュエリーや、美術品のマーケットはもうそういった要素抜きにしては語れない時代でもあります。
 

 書を一冊ご紹介。
 

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 これは、なかなか面白い本です。『現代アート経済学』、「現代アート」の経済学ではなく、現代の「アート経済学」、です。アートは経済や政治と密接に関係している、というおはなしで、アートをアンティーク、に入れ替えても当てはまります。
 

 ところで日本の西洋アンティーク業界はそれでは今はどうなのか、というと、業者さんにとっては厳しいことに、つまりコレクターにとっては幸いなことに、全体的にお値段がお安くなっている時代です。
 

 ちょっと前までは、海外に行くともっと安く売られているようなものなのに、日本のアンティークマーケットでは、やはり送料や関税もかかって、このくらいの値段になってしまうのだなあ、と溜息をついていたようなものが、下手をすると本家本元よりも安かったりします。たとえばパリの蚤の市で有名なヴァンヴ、ここにはカフェオレボールだけを扱う業者さんが出ていますが、今や状態のひどい(欠けやシミがある)ものでも最低35ユーロ。でも日本で状態のよいジアンやサルグミンヌのアンティーク・カフェオレボール、探せば4000円くらいで見つかることもあります!
 

 日本では少子高齢化に伴い、これまでコレクションをしていた人たちがそろそろ身辺整理を始めるにあたり、「もう家族の誰もこんなの欲しがらないから、売ってしまいたい」とコレクションを手放す人も出て来ました。ものが市場にだぶついている、とも言えます。実際値段が上がっているときは「もっと上がるだろうから」とコレクターは手放さないので、ものが市場に流通しません。今は比較的ほしいものは「出てくる」時代だと言えます。
 

 10年20年前の、骨董やアンティーク関連の雑誌を見ていますと、そこに記載されている値段は、今の値段よりもはるかに高いものが多く、本当に一部の余裕のある人しか買えなかったようなものが、今では少し無理をすれば手の届く時代になってきているようです。
 

 とはいえ、株も水もの、骨董・アンティーク品も水もの、この先また人気が出て需要が出て、うんと上がることも十分ありえます。今ほしいものがあって、買えそうであれば、それは手に入れるチャンスかもしれません!
 

アンティーク、古物、骨董に興味がない人

 アンティーク好きな人がいるように、「古いもの」に全く興味のない人もいます。むしろ、興味のない人の方が大半かもしれません。そもそも日本人は「お古」があまり好きではなく、真新しいもの、誰も使っていない新品が好きなのです。
 

 格式ある「骨董店」を構えている店主はこんな経験はしなくても済むのでしょうが、日本でアンティークや骨董を扱っている人たちは、その性質上アンティーク・フェア、骨董市、蚤の市といった催事に出店することが多く、そこには実に色々なお客さんが散歩を兼ねてやってきます。
 

 そしてそこでは、とんでもない会話が繰り広げられることがあります。
  

 「これって人が使ったもの?なんだか気持ち悪いわね」(ホテルやレストランの食器やカトラリーも人が使ったものですが。)
 

 「1つしかないの?」(量産品とハンドメードの1点ものの区別が付かない。)
 

 「あら、ここ、なんだか疵がついてるじゃない」(それは銀器の刻印です。)
 

 「このグラス、形がゆがんでない?どうしてこんなに高いの?」(18世紀の宙吹きガラスです。)
 

 「アンティークはねえ、割れるから嫌よねえ」(現行品の食器だって、割れます。)
 

 「今日は何時まで?売れ残ったら、安くしてくれる?」(生鮮食料品ではないので。)
 

 
 「(1万円と表示してあるものに)これ千円だったら買うんだけど。だいたい10分の1で値切れって言うわよ」(ここはアラブ市場文化ではないのです。)
 

 「リサイクル市にしては、高くない?」(ちょっと違うのですが。)
 

blog21

 

 また逆に、「アンティ−ク」という言葉に過剰な期待を持つ人もいます。
 

 「この紋章はどこの貴族のものか調べられないの?」(それ、ただのイニシャルです。)
 

 「何年に作られたものか、正確にわからない?」(500円の雑貨にそこまで求めますか?)
 

 「こういうものは、今買っておくと将来何百万円にもなる?」(ならないでしょう、20世紀初頭の量産品です。)
 

 「これ、絶対ホンモノよね?ニセモノじゃないわよね?」(3千円のもののニセモノを作る意味があるのでしょうか。)
 

 あまり知識がないからか相場がわからず、1つの値段をセットの値段だと勘違いする人、「あら、今日はガラクタ屋さんがやっているわ」と、古物=ガラクタと決めつける人、「これと同じもの、たくさん家にあるわ、持って来たらこの値段で買い取ってくれない?」と売り込む人、本当にいろいろなお客さんがいます。
 

 アンティーク屋さんも客商売、無知なお客さんを相手にしても仕方がないので、そこは大人の態度で笑ってスルー(心の中では「おとといおいで」と思っていても)、逆に、古物を愛する人や、ものの価値がわかりそうな人には、お客さんと一緒になって骨董談義に花が咲き、結果とてもよい関係になって、ものによっては割り引いたりしてくれます。
 

 アンティーク・コレクターに知識は必要か?と言われれば、これは絶対必要です。自分の中の感性のみで絶対的なプライシング能力を持っている一部の人は別として、ものの値段には必ず理由がありますから。なぜ同じ窯のものでAよりもBの方が綺麗で状態もよさそうなのに、安いのか、そこには品物を見ただけでは分からない、色々な理由が潜んでいます。そんな謎解きをするのもアンティーク・コレクターにとっては醍醐味のひとつ。
 

 ただ、やはりこの世界は非常に特殊でニッチな世界、政治や教育ではないので、日本中の人を納得させる理由も要らないし、それほどの使命もないのかもしれません。興味がある人より、興味のない人の方が圧倒的に多いのが事実ですから。