AEAOサロン倶楽部」カテゴリーアーカイブ

GO TO ART DECO

11月のAEAOサロン倶楽部は、GO TO ART DECO と称して、日本で味わえるアール・デコを堪能しました。

関東大震災前、「グランド・ホテル」に代表される多くの外国人用ホテルが山下町界隈に建設されましたが、震災によりすべて破壊、その後1927年に「ホテル・ニューグランド」が開業され、現在に至っています。

「最新式設備とフレンチ・スタイルの料理」がキャッチフレーズのこのホテル、外装・内装とも時代を反映したアール・デコ様式が散りばめられています。

ランチは大西洋を結ぶ豪華客船ノルマンディ号のダイニングルームを再現させた同ホテル内フレンチレストラン「ル・ノルマンディ」にて、正統派フレンチ・フルコースを頂きました。奇をてらった料理は一切なく、伝統的な安定の美味しさです。カトラリーはクリストフルの「アリア・シリーズ」、古代建築の円柱を模したこのフォルムはアール・デコ様式にぴったり。

腹ごなしの運動として、すぐ目の前に停泊している日本郵船氷川丸を見学、ホテルと同時代の1930年に竣工した貨客船です。

1937年までは北米航路シアトル線として、戦時中は病院船に改装され南方戦線に赴き戦後は復員輸送と一般邦人の引き上げ輸送として、そして1951年から1960年までは再びシアトル航路が復活し1960年の引退まで活躍した波乱万丈のこの大型船も現在は山下公園に係留、国の重要文化財として見学が可能になっています。

バリア・アリーのこの船内、階段を登ったり降りたりを繰り返し、「一等食堂」「一等社交室」などを利用した当時の船旅人に思いを馳せながら、フランス人工芸家マーク・シモンが手がけたアール・デコ装飾を堪能しました。

アール・デコは、世界で時差なく興ったスタイル・ムーブメントだということが、日本の建造物をこうして見てあらためて感じられます。

氷川丸見学後は、観光客で賑わっている横浜中華街を抜けて、ご参加者のお一人のご家族であるアーティスト・線幸子さんの個展<Layerーまど 2020>を見学、線を織り成すモチーフの素敵な絵画オブジェを作家自らに解説していただきました。仕掛けがあるわけでもないのに、見る角度や位置によって立体感や色彩が異なって見えるという、綿と色彩と油の結実とも言うべく不思議な作品、本展覧会は11月29日まで1010 ART GALLERYにて開催されています。

ようやく実現したアフタヌーンティ&ハイティー

2020年4月のAEAOサロンにて行う予定の「アンティークの祝祭」試写会&アフタヌーンティ、試写会が緊急事態宣言下で中止となり、しばらくお預け状態でしたが、ようやく実現することができました。ずっとお待たせしていたみなさまと、別々ではありましたが対面で語り合い、お話できる日が戻ってくるまで、実に7ヶ月以上もの歳月が流れていました。

このサロンには当初の定員以上の方がお申し込みをされており、リッツカールトン様にお願いして、ロビーには2つしかないという6人がけのお席をすべて1ヶ月前には押さえていただいていたのですが、残念ながら4月の集まりはコロナ禍で延期に。また試写会も中止となりましたが、ご参加者様用にキノフィルムズ様から本上映券をご提供いただき、まずは個別ではありますが映画を見ていただくことにしたのが6月の緊急事態宣言明け。この時期は前後左右人が入らない配置での上映でしたので、今よりもはるかに感染症対策が施されていたような気がします。

そしてそろそろ少人数でなら会食をしてもよいかなという兆しになってきたのが、東京がGO TO解禁になってからです。とはいえさすがに全員集合での会食はまだ時期尚早ですので、少人数ずつで行うことになりました。

まずはリッツカールトンでのアフタヌーンティ、当初の予定では「苺の〜」でしたが、今回は「秋の収穫祭〜」と季節がアップデートしています。平日の午後のひとときを、ランチとディナーを合わせたようなたっぷりの量でいただきました。

そして先日は、椿山荘のロビー「ル・ジャルダン」にてイブニング・ハイティーをいただきました。こちらは夜のコースですので、お酒付き。ハイティーというと、ハイクラスのハイを思い浮かべがちですが(実際イギリスからアメリカへこの言葉が渡ったときは、ハイクラスの意味に捉えられてしまったようです)、元々の意味はテーブルの高さが「ハイ」、つまりアフタヌーンティのようにローテーブルではなくハイテーブル、食卓のテーブルで食事を兼ねたお茶会のことを指します。農民や労働者たちが始めたお茶会なので、上流階級の人たちは自分たちのお茶の時間を決してハイティーとは呼ばなかった、などとも言われていますが、お肉やお魚などの料理も並びますし、立派なデイナーです。そして椿山荘「ル・ジャルダン」のハイティーはシャンパンで始まり、ローストビーフがメインですから、フルコース・ディナー以上の満足感がありました。

GO TOで加算されるポイント分をみなさんにお土産で還元できたりして、10名以上での会食よりも少人数でゆったりまったりと映画の感想などを語り合えて、かつラグジュアリーホテルですからソーシャル・ディスタンスも十分取れたかなとは思います。それでもまだまだ状況は予断を許しませんね。

11月からAEAOサロン倶楽部も再開いたしますが、十分に気をつけて行っていきたいと思います。

大盛り上がりの読書会

第2回の読書会が終わり、次回はいよいよ第1部のハイライト、盛期ルネサンスへ入ります。盛期ルネサンスは楽しみにしている人も多いせいでしょうか、申込者も16名になりました。みなさん感想や質問なども活発に出ていますし、「そういえば昔、これを見たんだったわ」と後から記憶が蘇ってくる方もいらっしゃって、やはりオンライン上でもアート追求への力は大きいと感じます。

第1回、第2回と古代、中世、初期ルネサンスと駆け巡ってきました。

今回特にみなさんの興味を惹きつけているのが、ユニコーンのタピスリー。現在ではパリ・カルティエ・ラタンにある国立中世美術館に所蔵・展示されています。このタピスリーが発見されたのは、19世紀のロマン主義全盛時代。ロマン主義の人たちが中世LOVEだったのは知られていますが、このタピスリーを発見したジョルジュ・サンド、当時の歴史記念物監督官であったプロスペール・メリメの功績が如何に芸術の保護に貢献してきたか、あらためて思い知らされます。

音声フランス語、字幕英語ではありますが、この連作タピスリーがどこで見つかったのか、こちらの映像で詳しく説明されています。

それではいよいよ今週は第3回、盛期ルネサンスですね。ご参加のみなさま、どうぞお楽しみに!

読書会「ぜんぶわかる西洋美術史と、さらにわかる絵画で読み解く装飾品」がスタート!

半年ぶりに再開しましたAEAOサロン倶楽部、今秋は読書会という形で年内までオンラインにて行われることになり、昨日第1回がスタートしました。10名程度でと思っていましたところ、はるかに超える人数の方々がお集まりいただき、好調な再開となりました。

AEAOサロン倶楽部は、従来月1回有志で集まり、会食や喫茶と共にレクチャーを行い、時にはそのテーマに応じて美術館や建造物を見学しながら懇親し、楽しんでいました。でもコロナ禍で最も避けなくてはならない要素であるおしゃべりと会食が入っていますので、このご時世に無理して行って万が一のことがあったら・・・と思うとなかなか踏み出せません。4月の『アンティークの祝祭』鑑賞に伴うアフタヌーン・ティの会もまだペンディング中です。

そのような中ではありますが、読書会は各自が同じ本を手元に置いて、内容を紐解きながら理解し合っていくもの、これはオンラインでもなんとかできるのではないかと思い企画をしましたところ、思いがけぬ多くの方々からのご参加をいただきました。ありがたい限りです。

タイトルに「全部わかる」「さらにわかる」と思いっきり豪語していますが、西洋美術史というのはすべての美術品・工芸品・装飾品を理解する要のルーツです。単にこの時代には〜主義が流行ってooという画家がxxという作品を描いた・・・というものではなく、その時代時代の生活様式、宗教観、世界観、価値観、社会の様式や変遷などがすべて影響し合って生まれてくる美意識のストーリーなのです。

アンティーク検定でも2級以上で「西洋美術史」が必須となりますが、たとえ海外研修に参加してもこの「西洋美術史」だけは免除になりません。これだけは自分の力で理解しなくてはならない最後の砦です。

幸い西洋美術史を学ぶための書籍などは日本語でも多く出版されており、また昨今では展覧会もいろいろな時代・分野の作品で開かれていますので、たとえ学校で専門的に美術史を学んでいなくとも、1冊の通史を読んだり展覧会を鑑賞したりしていれば、ある程度の流れは理解できるようになります。とはいえなかなか孤独なプロセスですし、せっかくなら仲間で集まって、美術史をこの際古代からゆっくりゆっくり紐解いていきましょう、ということで、1年半、全15回かけて行う予定でプログラムを組んでみました。そしてどうせなら、絵画に描かれている装飾品などもいろいろ調べてみて、美術史と装飾美術史を並列して理解してみましょうよ、ということになり、「全部わかる」「さらにわかる」という意気込みだけはすごいタイトルが生まれてしまいました。

初回は古代〜国際ゴシックまで。まだまだルネサンスには行き届きません。「語れるようになる西洋絵画のみかた」では序章になる時代で、たった6ページの分量です。それでもその後ルネサンスが生まれる要因となるすべてが詰まっています。文明の発祥であるメソポタミア、エジプトからギリシア美術、ローマ美術、ビザンティン美術、ロマネスク様式、ゴシック様式、国際ゴシック、タピスリー、装飾写本・・・一気にこの辺りを読み解いていき、その後のチャット・コミュニケーションタイムでは「なぜ、裸?」「壁画ってただの壁?」「なぜタピスリーを壁にかけたの?」「なぜこんなに色鮮やかな色彩なの?」・・・と実に多くの質問や感想が出て、オンラインでもこうして楽しく対話ができる文明の時代がやってきたのだなぁ、とあらためて実感できました。

ご参加いただいた方、有難うございます。消化しきれなかった宿題は第2回に、次回は10/17(土)に開催されます。1回ごとでのご参加も可能ですので、興味のある方はこちらよりお申込みください。

マイセン ・セーヴルの源流の古伊万里を訪ねて

多くの文化イベントが自粛要請を受けてバタバタと中止になる中、3月のAEAOサロン倶楽部もどうすべきか色々協議を重ねてきましたが、できることをできる人だけでやろう、ということになり、希望者だけで可能な限りの対策をした上で、予定通り開催されました。

平年より12日も早い歴史的な桜の開花宣言がされたこの日は、皮肉にも前日の春のような暖かさとは打って変わっての寒い一日。朝から東京の気温はどんどん下り、午後には冷たい雨は霙になり、やがて雪。そんな中ですが、参加者のみなさんの向学心と好奇心、そして楽しく生きるための食欲は健在です!

ランチ・レクチャーは渋谷界隈でありながら、中心地の喧騒とは無縁のやや離れた場所にあるレストランにて行われました。

乾杯のドリンク、前菜、リングイーネのパスタ、メイン料理、デザート、と美食を堪能しつつ、中には久しぶりに外に出てきたという人もいたのか、みなさん話に花が咲きます。

その後は専門家の方を交えてのレクチャーです。古伊万里について初期伊万里から江戸全期を通してどのように器形や文様、顔料が変化していったのか、その変化の社会的背景には何があったのか、輸出伊万里はどのような経緯で製作され輸出されるに至ったのか、伊万里に見られる江戸の美意識とは・・・。

マイセン、セーヴルのみならず多くのヨーロッパの名窯が憧れて模倣した伊万里様式。そのオリジナルの「美」の真髄を知ることにより、なぜ西洋の陶磁器窯がどこもこぞって取り入れたがったのか、そのルーツがわかりかけてきました。

伊万里様式はいまでも海外のアンティークマーケットでは人気の品、またオリジナルの古伊万里は日本でも骨董市場で目にする機会が多いかと思いますが、まずは体系的に学び、そして数ある中でも一流品を目にすることから目利への第一歩が始まります。

4月よりスタートするこの展覧会、ぜひ訪れたいものですね。コロナウイルスの影響が落ち着いて、一刻も早く文化施設が再開されますように。