AEAOサロン倶楽部」カテゴリーアーカイブ

読書会第5回 美しいフランステーブルウェアの教科書

まだ5月の下旬というのにいきなり真夏になってしまったこの日、「美しいフランステーブルウェアの教科書」の第5回読書会が行われました。今日の章は「LES VERRES(ガラス)」、暑い日でも涼しげなガラスのお話です。

ガラスの原料、ガラスの歴史、ヨーロッパ各国でのガラスの覇権の流れをざっとおさらいし、テーブルに登場する食器としてのガラス製品であるボトル、カラフ、ピッチャー、ゴブレ、タンバルなどの特徴を図版や教科書の画像で学びました。

ガラスならではの装飾、カット、グラヴィール、アシッド・エッチング、サンド・ブラスト、オパリン、被せガラス、エナメル彩、金彩・・・美しい装飾が施されたガラスは、何も入れなくても美しいものがたくさんあります。

参加者のみなさんが持ち寄ったコレクションの鑑賞会もいつものように楽しく行いました。

ウィーン世紀末のグラフィック

5月のAEAOサロン倶楽部は、ウィーン世紀末とウィーン工房の世界に浸ってみました。

 
今年2019年は日奥修好150周年の年でもあり、ウィーン本家から多くの作品が日本へやってきています。国立新美術館の「ウィーン・モダン」展、東京都美術館の「クリムト展」が現在開催中、そして秋には「ハプスブルク展ー600年にわたる帝国コレクションの歴史ー」が国立西洋美術館にて開催されます。
 
そんな中、当サロン倶楽部で訪館したのは、目黒区美術館で開催されている「世紀末ウィーンのグラフィック」展、鑑賞に先立ってのミニ・レクチャー会場は、目黒川沿いにひっそりある隠れ家イタリアン「ラ・ルーナ・ロッサ」の個室。なんだか秘密基地のような世紀末風のお部屋で、美味しいイタリアンに舌鼓を打ちつつ、みなさんでウィーン話で大いに盛り上がりました。

 
腹ごなしの散歩の後に辿り着いた目黒区美術館では14時より関連企画で、山之内克子先生による講演会「世紀末ウィーンの社会と文化」がありましたが、私たちが到着した時点では「整理券配布はすべて終了しました」の文字。もう配布と同時に定員に達したそうなのですが、なんと直前になってラッキーなことに整理券のない希望者も補助椅子で聴講できることに!サロン参加者全員が潜り込んで、素晴らしいお話を聴くことができました。
 
ウィーンの伝統的な文化とは、ウィーンの19世紀、分離派が誕生するまでの社会や生活はどんな感じだったのか、歴史主義がなぜ興ったのか、ウィーンにおけるビーダーマイヤー様式とはなんだったのか、新しいウィーンの建築様式はなぜその建物がその様式で建てられたのか・・・これまでなんとなく漠然とスルーしていた事象が系統立ててつながり、おかげでウィーン分離派やウィーン工房の成り立ちやレゾンデートル、世紀末の退廃美の誕生などが理解できました。
 
展覧会場は1枚1枚眺めていくと、あっという間に時間が過ぎてしまう充実ぶり。ファインアートとは違う、日常生活に関わるグラフィックの新たなデザインの魅力にどっぷり浸かった展覧会です!


 
本サロンはこじんまりと数名限定で募集したため、あっという間に定員に達してしまいましたがキャンセル待ちの方も多く、第2弾を開催することになりました(こちらもすでに満席です)。秋にはハプスブルクにちなんだテーマで、また何か行いたいと思います。
 
 

平成最後の日のサロンは、皇室文化で

4月のAEAOサロン倶楽部は、本日平成最後の日に行われました。
 
2018年から2019年にかけて全国で巡回された「明治150年記念 華ひらく皇室文化 ー明治宮廷を彩る技と美ー」展のフィナーレが、学習院大学史料館にて現在開催されています。
 

 
展覧会の鑑賞に先立ち、本展の副委員長であり、学習院大学資料館学芸員の長佐古美奈子先生によるプレ・ランチトークを目白のロイヤルガーデンカフェにて行いました。


 

 
クリームチーズのKiriのフェア中で、Kiriを使った美味しいお料理と共に、ボンボニエールの由来や、いったいなぜ明治宮廷でこれを取り入れたのか、みなさんで推測しながら話し合いました。長佐古先生所蔵のボンボニエールに入った金平糖をデザートにいただき、ランチの後は、やや小雨の中を学習院大学史料館へ。


 
会場そのものは小さな一部屋ですが、平成最後の日とあってか、多くの鑑賞者で賑わっていました。
皇室の正餐用食器・銀器、そして掌上の皇室文化である「ボンボニエール」が年代ごとに展示されています。
 
明治時代、外国に追いつけ追い越せと洋装や洋食器を取り入れた宮廷文化、しかしただのモノマネではなく伝統文化の保護や日本の精緻な技が凝縮された数々の逸品揃い。改元に伴って新しい時代を迎える今、明治期の文化の素晴らしさをあらためて感じたひとときでした。
 
 

ラリック・エレガンス

AEAOサロン倶楽部・3月の会は、練馬区立美術館で開催中の『ラリック・エレガンス』展の見学会でした。この後、3月後半の海外研修で訪れるラリック美術館のプレ講座としてもグッド・タイミングの展覧会です。
 

ランチ・レクチャーの会場は、美術館の近くにある洋食レストラン。当初よりも人数が集まってしまったため最適なところが探せず、それでも予め「端っこのなるべく静かな席で」とお願いしておりましたが、子連れ客などに囲まれてしまったため、岡部昌幸先生のとっておきのお話がみなさんに行き通らず、ストレスがたまるレクチャーとなってしまいました。申し訳ございません。
 
敗者復活で、レストランのロビー(というより待合席)のようなところを陣取り、再度レクチャー。参加者からの質問の流れもあり、ラリックは人としては悪い人だった、でもそういう悪い人を支えよう、信じようという人がいたからこそすべての芸術家の作品は残るのだ、という哲学にまで発展し、ありきたりの作家としての系譜や作品の特徴に留まらないところが、岡部先生のレクチャーの醍醐味なのです。ちなみに悪い人、というのは大抵女性関係が絡んでいるものであり、女性を泣かせた、資産家の女性を利用した、というのもお決まりパターンですね。
 
ラリックがイギリスに滞在していたことから、当時のアーツ・アンド・クラフツの影響を受けたに違いなく、アーツ・アンド・クラフツからアール・ヌーヴォーへの流れ、そしてアール・デコへの転換期の前兆としてアール・ヌーヴォーが事実上終焉するのが1906~07年辺り、というお話が出ましたが、その時期に香水瓶ラベルを発表したのは、たまたま運が時代に味方した、という結果論ではなく、工業デザイナーとして先を見ていたマーケティングの勝利だったのでは?となったところで、いよいよ展覧会会場へ。
 
この日は折しもロビーでのコンサートが開催されていて、展示場内にも音が響き渡っていましたが、そのおかげか、輪になって解説をするとすぐに監視員に注意される、といういつものお叱りも緩和されていて、ゆっくりとガイディングを聴きながら鑑賞することができました。
 
鑑賞会後はアフターでのお茶会も行い、お天気には恵まれた練馬の美術館鑑賞会となりました。
 

フランステーブルウェアの教科書 読書会第3回

毎回早いうちに満席御礼となってしまう、フランステーブルウェアの教科書の読書会、第3回が行われました。前回の「LES ASSIETTES (陶磁器の皿)」に続き、今回は「PLATS ET SERVICES SPÉCIFIQUES (大皿と特別な用途の器)」の章を一緒に読み進めていきました。
 

耳慣れないカタカナ、ポタオイユ、エキュエル、食品を表す言葉ではない食器としてのテリーヌ、そしてちょっとは想像がつくスーピエール、ソーシエール、レギュミエ・・・それぞれどんな歴史でどんな用途で使っていて、今はどう使っているのか、そんなことを学びます。
 

フランスの蚤の市に行くと目を引く派手派手バルボティーヌ、アスパラガスや牡蠣が如何に食卓で華やかさを醸し出していたのかもわかります。
 

そして卵、チーズのための食器。今の卵とは大きさが違ってもっと小ぶりだった19世紀、卵を食べるために登場したコクティエやウフリエ、今はそんな優雅な朝食をなかなか取れない私たちですが、当時のブルジョワの朝(ほとんど昼)のベッドの中での気だるさが想像できるようです。
 

コンポティエ、プレザントワール、コルベイユ・・・他にも立体的な食器がたくさん登場する同章、写真や画像を見ているとワクワクしますが、狭い居住空間の現代、あまり使う人もいない上、フランスから持ち帰るのも大変そうなフォルムなので、お皿に比べるとコレクションしている方はあまりいないのも宜なるかな、ですね。

KELLYという東海地方で発売されている雑誌にも、当書籍が紹介されていました。嬉しいですね。
 

 

次回の読書会は、4月20日です。お申し込みはお早めに!