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ムスティエ・サント=マリーを訪ねる <DAY3>

今日は一日エクサン・プロヴァンスを離れ、バスで1時間半ほどの距離にある山間の村、ムスティエ・サント=マリーを訪れます。「フランスで最も美しい村」の一つとされているこの村へ向けて朝9時出発、前日がゆったり日でしたので時差も解消された頃でしょうか。

ムスティエと言えばフランスのファイアンス愛好家なら誰もが知っている、17〜18世紀の錫釉陶器の中でもマルセイユと並んで国際評価の付いている窯なのですが、日本では西洋陶磁器は大ブランド磁器(マイセン、ヘレンド、ジノリ…)を好む傾向があり、かつてのフランス宮廷御用達であったこのムスティエ窯を知る人はごくわずかでしょう。

17世紀、まだ磁器の材料カオリンが発見されていなかったフランスでは、磁器研究と並行して白い陶器作りの情熱も持っていました。このムスティエはイタリアのファエンツァから僧侶が住み付き、やがて錫釉陶器の技法が伝えられ、17〜18世紀に錫釉陶器の黄金時代を迎えた村なのです。

その栄光も19世紀になると磁器の生産や産業革命の波にのまれ、やがて窯の炎が消える運命に。そして1920年代になって再びかつての栄光をとり戻し村に活気を、と復興運動が起こりまた錫釉陶器を復活させるのですが、一旦消えた炎を灯す作業は簡単ではなく、かつての技法を解明するところからのリ・スタート、20世紀にはそれでも10を超える窯ができたのですが現在では数軒のみとなっています。

その1つ、ムスティエでのナンバー1とも言われているボンディル窯の店主にお話を聞き、また本来なら3月はまだ閑散期、4月以降に週1回だけ決まった曜日に見学が可能となっているアトリエを特別に無理言って開けていただくという機会に恵まれた今回のプログラム、まずは陶器美術館よりスタートします。

閑散期の今月は土日祝のみオープンしているこの美術館、私たちで貸切状態でした。ムスティエ陶器に特化した可愛らしいこの美術館をアンヌ先生のガイドによりテーマを追って学んでいきます。器形と装飾の特徴、顔料と焼成温度の違い、ムスティエらしさの意匠…当時のムスティエがどれだけの影響を与えたかと言うと、なんと西洋がこぞって真似た中国磁器に「模倣された」くらいなのです!!

貸切状態で見学した後は、3コースのランチ。山間だけにお天気が変わりやすく太陽が出たり隠れたりしていますが、幸い雨は降らないので三方が見渡せる囲まれたテラス、でいただきました。

午後は18世紀のムスティエの邸宅、メゾン・クラピエを見学、都会とはまた異なった田舎の名士の邸宅の様子を案内いただき、ムスティエ陶器のナンバー1のお店、ボンディルで説明を聞きながらのお買い物。その後で他のお店も回りましたが、このムスティエの白さはやはりここがピカイチでした。

しばしのフリータイムでは、急な斜面もある険しい道を頑張って登ってシャペルまで行った勇者から、引き続きお買い物散策をした方などみなさん自由に過ごしていただき、バスでムスティエ村の麓まで降りて、お願いしてあったアトリエへ。

迎えてくださったマダムは「私は職人じゃないから、今日は言葉による説明だけ」と言いつつも生地を捏ねて平にし型に嵌めて、というデモンストレーションを披露し、第1焼成、第2焼成のそれぞれの窯の中を見せてくださり、そして最後の絵付けまでも実演してくださいました。かつて45年間にわたってこの窯を守り続けてきた魂を見たような気がします。

ムスティエ村を後にし、エクサン・プロヴァンスまでバスで戻り、夜はフリータイムとなりました。