投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

第5回アンティーク検定講習・2級

4日間に渡って行われました第5回アンティーク検定講習・2級が終了しました。
 
すでに上位級を取得しているにも関わらずこの講習を何度も受けられている方もいて、懇親会では「この世界におけるアンテナの張り方がわかった」「なにをどう紐解いていけばよいかの入り口がわかった」という感想もいただき、評価をいただいてはおりますが、今後も新しい挑戦、新しい取り組みに向けてより有意義な講習を目指していきたいと思っています。
 
2級の講習は西洋美術史、西洋装飾美術工芸史といった座学の講習に加え、実際にいきなり陶磁器やガラスを目の前に置かれて「はい、鑑定」とdescriptionを書く練習、銀器を手にとって刻印を読み取りながら年代や生産地を解明していく練習、さらには英語のオークションカタログの読み方や写真と写真製版の違いを学んだり、現代アートマーケットについての事情を学んだり、建築物を見学したり、と実践も伴う講習で、よりアクティブな参加型となっています。


 
今回の見学は、日本の洋館建築に焦点を当てて行いました。フランク・ロイド・ライト建築では日本に4館しか現存しないうちの1つ、豊島区にある自由学園明日館、そしていよいよ今年2020年には金沢に移転してしまう、北の丸公園に面した東京国立近代美術館・工芸館の旧近衛師団司令部庁舎を訪れました。日本の明治建築とヨーロッパにおける歴史主義建築の関連や、建築と家具が如何に密接に繋がっているか、また家具の中でも特に椅子に建築の特徴が表れやすいのか、などについて知ることができました。


 
ディプロマ授与と懇親会は、パレスホテルのラウンジ・プリヴェにてアラン・デュカスのアフタヌーン・ティ。フランス式なのか、キュウリのサンドイッチもスコーンもなく、その代わりサーモンのガトー レモンクリーム キャヴィア やらオリーヴとバジルのケーキやらを、何度でも飲み変えができる各種お紅茶とともに楽しみ、日が暮れた旧江戸城を見下ろしながらのひと時でした。


 
ご参加いただきました皆様、お疲れ様でした。
 
次回第6回のアンティーク検定講習は、9月〜10月ごろに実施の予定です。
 

1月のサロン「サラ・ベルナール最後の巡回地、松濤にてベル・エポックを偲ぶ」

3連休最後の成人の日、AEAOサロン倶楽部・1月の会を開催いたしました。
 
「ところで、サラ・ベルナールって誰?」
 
日本でも演劇やフランス文化に詳しくない人たちには、その名を知られているとは言えない100年前の女優、サラ・ベルナール。
 
2018年秋より日本全国を巡回中の「サラ・ベルナールの世界展」も、いよいよ最後の巡回地である松濤美術館にて、残すところあと半月となりました。空前の繁栄をしていたとされるフランスの19世紀後半〜第一次大戦までの「ベル・エポック期」のミューズとして生きたサラ・ベルナールにまつわるアイテム(写真、ポスター、舞台衣装、宝飾品、絵画)を見ながら、今一度この時代を振り返ってみました。


  
サラ・ベルナールはもちろん女優としての第一人者でしたが、実は彼女は画家でもあり彫刻家でもありました。特に彫刻作品はサロンにも入選するほどの出来栄えで、今回の展覧会でもサラの彫刻作品が展示されていますが、ロダンが嫉妬したのも納得するほどの見事なもの。


 
ミュシャ、ラリックといった天才アーティストたちを惹きつける魅力はどこになったのか、彼女の生き様とその時代、女性が1人で生きていくためには洗濯女かお針子さんか娼婦になるかしかなかった、そんな時代に芸術を庇護し、芸術を愛し芸術に愛され、社会を牽引していった1人の女優の生涯を、本展日本側監修者・岡部昌幸先生の解説でお話いただきました。
 

 

第5回アンティーク検定講習・3級

新年早々の3連休ですが、1/11-12の2日間、アンティーク検定講習・3級が開催されました。今回も西は奈良県からこの講習のために上京しご参加いただいた方もいて、また職歴も年齢もさまざまな方達が、ただ「アンティークが好き」「西洋装飾を勉強したい」という共通点の元に集まった講習会でした。
 
初日のウェルカムコーヒーで初めて顔合わせをし、自己紹介。近い将来アンティークディーラーになりたい、アンティーク雑貨店を開いてみたい、ヨーロッパの美術館や古城を訪れるのに、ベースとなる西洋美術・装飾の知識を身に付けたい、アンティークジュエリーに惹かれて、その背景を知りたくなった・・・いろいろな理由と目的で偶然集まった方達です。
 
2日間と短期間ではありますが、3級は装飾様式の歴史、西洋家具、銀器、陶磁器、ガラスと一通りの基礎を学び、実際にモノを鑑定する際の指標も覚えます。
 

 
試験ではなく講習で級を取得する場合、「参加すれば級が取れる」というメリットはありますが、講習に参加する方達は、おそらく試験を受けても合格するであろう能力のある方達がほとんどです。みなさん「1人で本を読んで勉強するより、同じような趣味の仲間と知り合って、みんなで勉強して内容も納得した上で取得したい」という趣旨で、あえて貴重な時間と費用をかけて参加される方がほとんど。講習でレクチャーを受けた後に、実際の「アンティーク検定試験」の問題を解いてみるのですが、みなさんモチベーションが高いためか知識の定着も素早く、実際45分の授業を受けただけで、その分野の問題はほぼ完璧にできてしまいました。
 
今回の課外授業は渋谷区立松濤美術館で開催中の「サラ・ベルナールの世界展」。1世紀前の一女優の展覧会がなぜ?そもそもサラ・ベルナールって誰?参加者の間でも、女性陣はほぼ知っていて、男性陣は「うーん?」と知名度がイマイチでした。この展覧会を3級の課外授業に取り上げたのには理由があります。
 
アンティークとは装飾美術であり、装飾美術を牽引していたのは、かつてはその国の王様、だからこそ「ルイ15世様式」「ナポレオン様式」「ヴィクトリアン」などと呼ばれていたのですが、その王様がいなくなってしまったとき、一体誰が流行の発信源だったのか?文化、風俗を牽引していたのは誰だったのか?というと、その1人が今回のサラ・ベルナールだったりするわけです。
 

 
本展覧会の監修者でもあり、アンティーク検定の総監修者でもある岡部昌幸先生に展覧会の苦労話や設営上の工夫、所蔵元の違いなどの裏話的なお話も含めた解説をしていただいた後は、みなさんで昨年12月にオープンしたばかりのラデュレ松濤へ。


 
シャンパーニュ・夜パフェセットと共にディプロマ授与式を行い、2日間の濃い講習会が終了、参加者全員がディプロマを手にし、鑑定士の卵があらたに生まれました!
 

 
 

オークションへ行ってきました!

今年最後のAEAOサロン倶楽部は、特別サロンとして「オークションのプレヴューへ行こう」を開催いたしました。本サロンは5周年特別記念として参加費を無料としたところ、希望者多数となってしまい、抽選の結果ご参加いただけない方も出てしまうほどの人気となりました。

運良く抽選に当たった方達と、まずはカフェにてプレ・レクチャー。オークションの歴史、サザビーズやクリスティーズはいつ、どこで、どのような背景で誕生した会社なのか、アートマーケットとオークションはどう連動しているのか、そんな背景を学んだ後は、実践に必要なテクニックを学びます。ロットってなあに?エスティメートは誰がどうやって決める?入札は誰でもできるの?どんな方法で?オークションで買うのは得か損か、どんな人がオークションに向いているのか・・・すでに何度もオークションに参加している参加者さんからも手ほどきを受けながら、いよいよプレヴューの会場へ。

ときどき勉強も兼ねてお邪魔している毎日オークションさん、今日はラッキーなことに翌日のオークションに出品される作品のプレヴューと、本日開催されているオークションと、同時開催日でした。オークション会場に入場するには手続きが必要ですが、プレヴュー会場でも声が聞こえてくるので、どのくらいのスピードで落札されていくのか、手に取るようにわかります。

普段画像でお勉強している「ガレ」や「ドーム」の花瓶、「バカラ」のシャンデリア、「ミュシャ」の挿画本など、すべて手に取って触ってみることができる、贅沢な体験。一瞬で落札するに当たって、そのものを状態から何からすべて理解して納得した上で入札するのですから、当然の行為なのです。

プレヴューで展示されているモノに惚れ込んでしまった参加者さんの中にはは、翌日のオークションに来られないけれど欲しい!と事前委託入札を申し込んだ方も。そしてまずはオークションがどんな様子が知りたい、という気分で参加された方の中にも、次回はこういうのが出たらこのくらいの価格で入札しよう!と意を決した方もいらっしゃって、みなさんしっかりハマっていました。

オークションはギャンブル性もありますので、「熱くならない、冷静に!」の鉄則が分かっていても、ついついテンションが上がってしまうもの。でもこれこそがマーケット感覚なのですから、お楽しみですね!

親切にいつも解説をしてくださる毎日オークションのスタッフのみなさま、有難うございました。

12月のサロン、リヒテンシュタイン侯爵たちのの名作磁器

12月のAEAOサロンは、東急Bunkamuraにて開催中の「建国300年 ヨーロッパの宝石箱 リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」の鑑賞会をみなさんで行いました。1719年にリヒテンシュタイン侯国が誕生して今年でちょうど建国300年。しかしリヒテンシュタイン家の歴史ははるか12世紀まで遡ります。

どうしてこんな豆粒(失礼!)のほどの国家が存在するのか…そういえばヨーロッパには他にも小さな国家、いわゆるミニ国家がいくつかあります。宗教的な特殊性をもつところから、19世紀における近代国家統一の際に組み込まれずに存続した結果小さな国家として維持されているところまで、そしてその産業は観光であったり、宗教であったり、法人誘致であったり。

まずは鑑賞会の前にちょっと予備知識を入れておきましょう、ということで、ドゥ・マゴでランチをいただきながらのレクチャーです。

通常のランチメニューにはデザートが付いていないので、ケーキをオプションで付けていただきました!

いつも展覧会会期の最後の月は会場が混み合ってゆっくり鑑賞できないのですが、幸い入場した時間帯は休日の食事時間帯と重なっていたのでしょうか、比較的ゆったりしていました(その後どんどん人が入ってきましたが)。

リヒテンシュタイン侯爵家の家訓の「美しい美術品を集めることにこそお金を使うべき」にふさわしい美術品ばかりですが、中でもわたしたち西洋装飾工芸愛好家を唸らせるのは、数々の磁器コレクションが揃いも揃ってその歴史的価値だけでなく、美意識、審美眼の点においても最高のものであることです。

景徳鎮窯や有田窯で焼かれた磁器を輸入して、ヨーロッパで金具をつけ、自分たちの生活に取り入れるという技法は、こうしてみるとまるで最初から仕組まれていたかのよう。今でもアンティークの愛好家は、古い道具や工芸品を現代の生活に合わせて用途を変更して楽しみますが、何百年も前に花瓶に金具をつけてキャンドルスタンドにしていたのですね。

本展覧会は最後の会場のみ写真撮影が可でした。といっても写真ではなかなか伝わらないかもしれませんが、この部屋では油彩画と磁器への絵付けが同時に展示されていて、一瞬どちらがどちらかわからなほど、磁器への絵付けの繊細さが際立っています。西洋の顔料は、東洋(日本や中国)の顔料に比べてガラス分が少ないため、濃淡のグラデーションが可能と言いますが、作品を目の前にするとその精緻を極めた技術にうっとりしてしまいます。

大好評の本展覧会、会期を少し延長して26日までとなったようです。クリスマス後も見られますので、ぜひこの機会に鑑賞されるとよろしいと思います。