投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

第3回アンティーク検定・お役立ちblog4

 そもそもこの検定試験は、こと細かい知識を暗記して、試験に臨む、という主旨のものではなく、西洋アンティークに興味があり、ものの見方や、西洋装飾美術工芸の世界に詳しくなりたい、という人たちの目安になれば、というスタンスで行っています。
 

 2級を受ける方の中には、アンティーク検定なのに、西洋美術史を勉強しなくちゃいけないの?と、仰る方がいるのですが、西洋美術史は、西洋装飾美術工芸を理解する上で、基礎となるもの…というより、そもそも西洋装飾美術工芸と、西洋美術は、ルネサンスまでは、同じスタイルでした。それが、絵画彫刻の、いわゆる美術と、家具や工芸品などの装飾美術に分かれて様式が発展していったのが、ルネサンス以降なのです。
 

 美術史では、ルネサンス以降19世紀前半まで、このような様式で進んでいきます。
 

 バロック、ロココ、新古典主義、ロマン主義・・・
 

 一方、西洋装飾美術工芸史では、例えばフランスを例に取ると、代表的な様式で、
 

 ルイ14世様式、レジョンス様式、ルイ15世様式、ルイ16世様式、帝政様式、王制復古様式、ルイ・フィリップ様式、ナポレオン3世様式・・・
 

 と進んで行きます。
 

 でも、ルイ14世様式って何か?と言えば、まさにバロックなのです。荘厳で、ドラマティックで、光と陰の対比的な彫刻や、ふんだんな金(きん)使いは、たとえばイタリアバロックの巨匠、カラヴァッジョの絵画やベルニーニの彫刻に通じるところがあります。
 

 ロココ絵画とルイ15世様式は、切っても切れない関係、ヴァトー、ブーシェ、フラゴナールといった画家たちの絵は、雅宴画という新ジャンルを生み出しますが、ルイ15世様式というのは、小さいスケールで、華やかで軽快、柔らかいモチーフで貴族趣味のスタイルです。
 

フラゴナール「ぶらんこ」

フラゴナール「ぶらんこ」


 
 
ルイ15世様式

ルイ15世様式


 
 

 バロックとは、「歪んだ真珠」という意味、ロココとはロカイユ(貝殻装飾)から派生した言葉、これも語源を知っていれば、なんとなく想像できるスタイルですね。
 

 新古典主義の絵画と、ルイ16世様式の家具を見てください。
 

ダヴィッド「ホラチウス兄弟の誓い」

ダヴィッド「ホラチウス兄弟の誓い」


 
 
ルイ16世様式

ルイ16世様式


 
 
 

 どちらも、ロココやルイ15世様式とは違って、とても直線的で、理性的なものを感じませんか?
 

 同時代の美術と装飾美術工芸、こうして密接にリンクし合っているのですから、西洋美術史もこの際、一緒に知っておくと、西洋装飾美術工芸の理解の手助けに、大いになるのです。
 

 受験者のみなさま、このblogで登場している用語、是非覚えておいてくださいね。
 
 

ホテル・オークラの家具調度品のオークションが本日スタート!

 前回のblogでも紹介しましたが、本日から、ホテル・オークラ東京の家具調度品のオークション並びに、一般販売がスタートしています。
 
okura

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 オークションは、おなじみヤフオクの管理運営のサイトに飛ぶようになっていて、今日から入札が可能です。
 

 旧本館最高の貴賓室「ロイヤルスイート」にあったランプや、ダイニングテーブルセットなども出品されていて、1円スタートのオークション、もう既に入札が100人以上になっているものも!
  

オークションサイト
 

 オークション形式ではなく、一般販売として買えるものもあり、こちらは館内プレートからクッションまで、プレミアムイヤリングに至っては、100万円で販売されています。
 

販売サイト
 

 オークションは、相場より安く買えることも、また高く買ってしまうことも、あります。
 需要と供給のみで決まるプライスですから、決して、材料費だとか仕入れ値といった、一般のメカニズムで価格が決定されるわけではありません。
 

 元々アンティーク品は、
 

 年代 + 状態 + 品質 + 希少性 + 来歴 + 話題性 = 価値(値段)
 

 といった式があり、今回のホテル・オークラの場合、年代としてはそれほど古いわけではありませんが、来歴、話題性という要素はやはり大きいでしょう。もちろん品質も、一流ホテルの調度品ですから、廉価品ではないはず。状態は、実際に見る事ができれば一番よいのですが、写真と記載である程度判断するしかないですね。
 

 旧帝国ホテルの内装や家具調度品は、フランク・ロイド・ライトの名前と共に、既にアンティークとして価値のあるものになっています。今回のオークラの出品物も、あと50年もすれば、立派に価値あるアンティークとしての市場価値を得ている可能性は十分に高いでしょう。
 

 断捨離だなんて言っている場合ではない!?
 
 

ホテル・オークラの家具調度品がオークションに!

 海外では、ホテルのリニューアルの際に、家具調度品をオークションで一般市民に売り、その費用を改装費用の一部に充てる、といったケースがよくあります。
 

 たとえば、2013年のパリ・ホテル・クリヨンのオークション。ホテル・クリヨンは、日本の天皇陛下もお泊まりになられた、コンコルド広場を一望できる、由緒ある老舗の高級ホテル。ベッド、カーテン、バスローブ、食器、カトラリー、ワイン、ドアマンの制服・・・ありとあらゆる備品・調度品がオークションにかけられ、コンシエルジュのキャビネットボックスやセザールのバーテーブルは、その落札額と共に、当時話題になりました。

 

セザールのバー・テーブル

セザールのバー・テーブル


 
コンシエルジュのキャビネットボックス

コンシエルジュのキャビネットボックス

  
  

 2014年には、同じくパリのホテル・ルテシアが全面リニューアルのため、同様に一切合切をオークションに。アール・ヌーヴォー、アール・デコの家具がすべてオークションにより、一般の人の手に渡っています。
 

 日本では、こういう話はあまり聞かない・・・と思っていたところ、なんと先日リニューアルのため、いったん閉鎖されたホテル・オークラ東京の「旧本館」の家具・備品がオークションにかかることになりました。
 
 hotel-okura-tokyo
  

 オークションは11/4(水)より、7週にわたって開催されるそうです。インターネットでも参加できます。こういったものが、やがてアンティーク家具として大切に保存されていくのは、嬉しいですね。
 

 詳しくは、こちら
 
 

第3回アンティーク検定・お役立ちブログ3

 第2回アンティーク検定の3級に出た問題です。
 

 「ヨーロッパの工芸界では、チャイナといえば磁器、ジャパンといえば陶器のことである」
 

 ◯X式で答える問題です。
 

 もちろん、答えは、X。
 

 チャイナといえば磁器、は正しいのですが、ジャパンといえば陶器、ではなく、漆です。
 

 第1回、第2回アンティーク検定2級の英語の問題にもありましたが、Japanningという言葉の説明、これは漆という言葉が入っていれば、正解です。受験者の中には、いわゆる19世紀後半にヨーロッパで起こった、「ジャポニスム」と間違いした説明の解答が見られました。
 

 チャイナと言えば、磁器。これは、ヨーロッパでは長い事、磁器製法が解明されずに磁器を作る事ができず、中国から輸入された磁器に頼っていた期間が長かったため、チャイナ=磁器、だったのです。
 

 ボーン・チャイナについて。
 ティーカップの裏に、BONE CHINAなどと入っているものがあります。
 

ボーン・チャイナのチョコレートカップ(19世紀前半)

ボーン・チャイナのチョコレートカップ(19世紀前半)


 

 ヨーロッパの人でも、陶磁器のことに詳しくない人などは、「なんだ、これは made in China か」なんて言う人もいますが、とんでもない。BONE CHINAというのは、イギリス独特の、骨灰磁器のこと。BORN CHINA(中国で生まれた)ではありません!
 

 骨灰磁器?一般の磁器と何が違うの?イギリスだけにしかないの?
さあ、調べてみてください。
 

*10/30(金)の、よみうりカルチャー恵比寿センターでの対策講座の授業は、このボーン・チャイナについてのお話です。更に詳しいお話に迫ります。(途中入校可)
 
 

2016年海外研修・プレお知らせ

 まだ詳細は決定していませんが、2016年の海外研修につき、このblogで先にお知らせいたします。
 

 GWが終わり、日本からの航空運賃が安くなる2016年5月下旬または6月上旬頃、「アート」「アンティーク」「テーブルアート(ガストロノミー)」のトリオを組み込んだ研修を予定しています。
 

【アンヌ・コリヴァノフ(オークショニア、ギャラリスト)と共に過す、アール・ド・ヴィーヴル 〜アート、アンティーク、テーブルアートを知る〜(仮)】
 

滞在地:フランス・パリ
 

1日目 
アンティーク・マーケット(バスティーユまたはクリニャンクール)の見学
メゾン・バカラ見学
オペラ座観劇

 
2日目 
ワイン博物館、見学とティスティング
オークションハウス「ドルーオー」と、ドルーオー界隈のアート&アンティークギャラリー見学

 
3日目 
ニシム・ド・カモンド美術館見学
ミシュラン2星レストラン「Grand Vefour」にて、テーブルアート・レクチャー及び、昼餐会
パリのパッサージュ巡り
コメディ・フランセーズ観劇

 
4日目 
BOURRIENNEの館特別見学(特別開館)
マキシム美術館にて、アール・ヌーヴォーのレクチャー、ティータイム

 
5日目 
金銀細工ギャラリー見学
パリ装飾美術館またはセーヴル陶磁器博物館見学
カクテルパーティ

 

 アンヌ・コリヴァノフは、2014年の研修でも、テーブル・アートのレクチャーをしていただき、そのチャーミングな笑顔とバイタリティで、ファンが多い講師です。
 
IMG_2891
 
 (2014年公式海外研修 修了ディプロマ授与式記念撮影に慌てて現れたアンヌ)

Emi et son groupe  

 
 研修の日時や参加費の詳細は、年内までに決まり次第、お知らせいたします。また年明けに、研修説明会を開催予定です。検討していらっしゃる方、是非説明会だけでもご参加ください。