AEAOサロン倶楽部」カテゴリーアーカイブ

写真の世界を解き明かす!ロバート・メイプルソープ写真展@シャネル・ネクサス・ホール

 AEAOサロン倶楽部4月の会は、写真をテーマに取り上げてみました。
 

 古いセピア色の写真、ちょっと形がいびつになったアンティークの写真が、蚤の市でもよく売られています。モノクロだけれど、一色だけ赤やピンクのカラーが入っているものも、ときどき見かけます。そもそも写真は、いつから、どのようにして発展してきたのか、市場価値はどういうところがポイントなのか、写真の「オリジナル」って果たしてあるのか・・・そんな写真に関する疑問を解き明かそう、ということで、写真の修復家でもある白岩修復工房の白岩洋子氏をお迎えしてのレクチャーを、銀座のカフェにて行いました。
 

 まずは写真の誕生の歴史から。ダゲール、タルボット、ウェッジウッド、ニエプスといった、19世紀の写真史に欠かせない人物名が登場します。
 

 写真の構造を理解し、「写真」、「写真製版」、「印刷」、それぞれの見分け方を学びます。シルバーゼラチンプリントとプラチナプリントの違いは、現物を見て触って、ルーペで細かいところを見ながらのお勉強。今回レクチャーの後で見学するメイプルソープ展では、この2つのプリントが展示されていますので、まずはしっかり違いを学びました。
 

 現代ではデジタル画像が主流ですので、もう紙の写真は要らない、という人もいるでしょうが、要注意!デジタル画像の寿命は決して永遠ではなく、CDやDVDでの保存は有限です。それに対してアナログ写真、いわゆる紙の写真は、紙が燃えない限り、残ります。(アナログ写真には、紙だけでなく、ガラス、金属、プラスチックもあります。)
 

 写真の構造を理解した後は、カフェからシャネル・ネクサス・ホールへ移動し、いよいよロバート・メイプルソープ展の見学です。
 
 
 

 光と影のコントラストを巧妙に表現した数々の作品、その主題もさまざまですが、特に最晩年の作品のテーマである花には、作家自らが死を予感していたと思われる要素を読み取ることができます。
 

 フォーマットとしては珍しい正方形の写真、それでも安定感と居心地の良さを感じるのは、メイプルソープならではの洗練された構図によるものだからでしょうか。
 

 白岩先生のプレレクチャーのおかげで、十二分に堪能できた展覧会見学でした。
 
 ロバート・メイプルソープ財団のHP
 

ミュシャ展、いよいよ開幕

 数多く開催される展覧会の中でも、2017年の代表的なものの一つとも言える「ミュシャ展」が国立新美術館にていよいよ開幕しました。
 

 

 会場に入ってすぐに迫ってくるのは、610 cm x 810 cm の超大作、「原故郷のスラヴ民族」。本展覧会では、「スラヴ叙事詩」が全20作公開されています。どれも巨大な作品なので、かなり離れて鑑賞したいのですが、いつ行くと空いているのでしょうね、内覧会では人、人、人、黒山の人だかりでした。
 
 

 全20作を揃って鑑賞できるのは、チェコ国外では世界初ということですが、必ずしも制作年の時系列的に展示されているわけではありません。1点1点ゆっくり解説と共に見ていくと、あっという間に時間も経ってしまいますが、そもそもミュシャが晩年の約16年間を捧げた大作たち、思う存分時間をかけて鑑賞したいものです。
 

 そしてスラヴ叙事詩で魂を吸い取られたかのような気分になった後は、アール・ヌーヴォーと世紀末、よく知られたミュシャのお馴染みのポスターが待っています。デビュー作とも言えるジスモンダ、メディア、ロレンザッチオ、ハムレット・・・ミュシャのもう一つの顔です。
 

 本展覧会の会期中、5月のAEAOサロン倶楽部では、『ミュシャとムハ、椿姫とスラヴの調べ 〜美術と音楽で紐解く、ベル・エポックの寵児〜』と出したイベントを、素晴らしい空間で行います。自由が丘にある一誠堂美術館、そして併設のカフェ・エミールを貸し切り、そこでミュシャとムハをそれぞれ紐解いていきます。カフェ・エミールには、壁が、ミュシャのポスターで埋め尽くされています。
 

 ガレやドームの逸品を集めた一誠堂美術庵を見学した後のレクチャーは、アール・ヌーヴォーの専門家でもあり、著書「アール・ヌーヴォーの美術」もある岡部昌幸先生。そしてティータイムをはさんで後半は、ミュシャとムハを、ヴィオラ奏者の独奏を聴きながら、音楽で感じていくという企画、是非多くの方にいらしていただければと思います。
 

 

18世紀ファイアンスの魅力

 AEAOサロン倶楽部3月の会は、『18世紀ファイアンスの魅力〜サントリー美術館「コレクターの眼 ヨーロッパ陶磁と世界のガラス」展鑑賞および見どころトーク参加』を、六本木・東京ミッドタウン内にて行いました。場所の魅力か、3月で気候もよいせいか、おかげさまでこの会は満員御礼となりました。
 

 展覧会は、コレクターのお二人が、それぞれサントリー美術館に寄贈したコレクション、「ヨーロッパ陶磁」(野依利之氏)と「世界のガラス」(辻清明氏)から成り立っています。
 

 物があふれ、物の処分に困っている現代、蔵書を近所の図書館に寄贈しようとしても断られる時代です。しかし、「コレクターの眼」をもって蒐集した、歴史的芸術的価値のあるものは、こうして一流の美術館・博物館に収められ、多くの人の眼を愉しませてくれることになるのだという、まさにその見本のような展覧会でした。
 

 プレ・レクチャーは、サントリー美術館のある、東京ミッドタウン・ガレリアの2階にあるukafeにて。オーガニック・カフェなので、オーガニック・コーヒーや和紅茶など、カラダが喜ぶ飲み物です。
 

 参加者のみなさまと、ukafeでお茶とともに、陶磁器のおさらい。陶器と磁器の違いは?鉛釉陶器、錫釉陶器、ボーン・チャイナ、硬質磁器、炻器・・・まずは焼き物の種類を学び、そしてそれぞれ何と呼ばれていたのか、「マヨリカ」「デルフト」「ファイアンス」・・・時間のない中、さらっと復習して、東京ミッドタウン・ガレリア3階に上がります。
 

 まずは学芸員による見どころトークに参加、そして待望のコレクションを鑑賞しました。コレクションのノウハウを知った後では、やはりみなさんの見どころ、チェックポイントが断然違ってくるようで、デルフトの染付や、マヨルカのアルバレロなど、熱心に鑑賞しています。
 

 ヨーロッパでは割合と残っているデルフトやマヨルカ、日本ではなかなか見る機会が少ないので、貴重な展覧会であると言えるでしょう。
 

 今回の展覧会は、写真撮影可とあり、貴重な素晴らしい工芸品をカメラに収めることもできました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

かっこよすぎるカッサンドル!

 AEAOサロン倶楽部、2月の会は、現在埼玉県立近代美術館で開催されている「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」の見学と、特別講演会の参加でした。もちろんプレ・レクチャーも、お茶&お菓子付きで!
 

 カッサンドルといえば、あの有名な「ノルマンディ号」がすぐに思い浮かんできます。イヴ・サン・ローランの「YSL」のロゴも、カッサンドルの作品です。
 
 
 
 
 

 よく言われていることですが、アール・ヌーヴォーもアール・デコも、一時期「粗大ごみ」扱いされていた時代がありました。どちらもブームが去ってしまって、完全に過去の遺物、おばあちゃんの時代の、もう物置に捨てられているもの・・・そんな50年代に、カッサンドルのポスターをコレクションしていた、先見の明のある人が我が国にいたのです。
 

 BA-TSUの創業者である松本瑠樹氏(1946-2012)、彼が生涯をかけて蒐集したポスターの一部が、今回の展覧会にて展示されています。そしてこのコレクションは、世界最高峰のレベルであり、こんな素晴らしいものが我が国で見られることに、同じ日本人として感謝しなくては。
 

 今日の岡部昌幸氏の講演会でも言われていましたが、「不動産に掘り出し物はない、でも芸術品には、掘り出し物はある。良いものは、安い(時期が必ずある)」!!
 

 では、なぜカッサンドルの作品はかっこ良いのか?
 岡部氏は、この秘密を黄金分割の概念から紐解いていきます。美の原理を探求、秘密を発見することから生まれた黄金分割、一般に黄金律と呼ばれる1:1.618こそが自然の美のバランスであり、それをカッサンドルは商業芸術であるポスターに取り入れることに成功したのでした。
 

 またカッサンドルのタイポグラフィーの芸術性の高さにも驚かされます。今、わたしたちが使う、パソコンでのフォントのベースとなるような書体のデザイン、カッサンドルはすでに1920年代に作っていたのですから。
 

ビフュール(Bifur、1929年)
 

 

アシエ(Acier、1935年)
 


 
ペニョ(Peignot、1937年)
 

 

 今回の展覧会では、リトグラフのポスター以外にも、いくつかの原画が同時に展示されています。また、カッサンドルがデザインしたLPジャケット、缶ケース、ボナルのガラス瓶まで・・・今でもパリの蚤の市に眠っているかもしれない、お宝カッサンドルが満載です。
 

「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」

2017/2/11〜3/26
埼玉県立近代美術館
 
 

セラミックス・ジャパン

 本日はAEAOサロン倶楽部、1月の回でした。
 渋谷区立松濤美術館で開催中の「セラミックス・ジャパン」展の見学をメインに、日本の陶磁器の世界を、江戸末期から第二次世界大戦中まで、西洋との関わりを含め、世界市場での状況などを一緒に紐解いていきました。
 
CERAMICSJAPAN
 

 事前レクチャーは、松濤美術館のすぐ近くにある、落ち着いた素敵なカフェ、Takagi Klavierにて。ここの松濤チーズケーキは絶品です!
 

 セラミックスとは陶磁器、陶器と磁器の両方を言いますが、日本の磁器のスタートは1616年。これは、昨年2016年が「日本磁器の誕生400年」として、ざまざまな展覧会やイベントが行われていたので、記憶に残っている方も多いでしょう。ヨーロッパの硬質磁器のスタートはマイセンの1709年ですから、約1世紀前には、日本ですでに磁器が作られていたのですよ、とよく話していますが、ヨーロッパのように、硬質磁器の製法解明に伴って従来の陶器が下火になるかと言えば、日本ではそんなことはありませんでした。
 

 幕末から明治の初期にかけての万博に参加したことにより、西洋にはジャポニスム・ブームがやってきますが、やがてそのブームも衰退します。そんな中、日本の陶磁器業界では、どのようにして乗り切っていったのか、日本にはアール・ヌーヴォーはあったのか、民藝とどのような接点があったのか、日本の最初のディナーセットはどのようにして作られたのか、戦時中はどんなものを作っていたのか、デザインの変遷は・・・こんなすべての問いに、「セラミックス・ジャパン」展は答えてくれました。
 

 会期中、前期と後期で作品の一部が入れ替わっていたため、すべての作品は展示されていませんでしたが、それでも十分に堪能できる展覧会。
 

 作品の多くが「個人蔵」で、滅多に市場ではお目にかからないものも。精磁会社や京都陶器会社といった、今は亡き窯のこういった作品は、本当に貴重な資料ですね。