AEAOサロン倶楽部」カテゴリーアーカイブ

ヨーロピアン・ジュエリーの歴史とショーメ

 7月のAEAOサロン倶楽部は、6/28〜9/17まで三菱一号館美術館にて開催される、「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界―1780年パリに始まるエスプリ」 展のプレ講座として、ジュエリーの世界について学びました。
 

 まずはジュエリーの素材と加工についてあらためておさらいします。どこまでをジュエリーと呼ぶのか、プラチナはなぜ流行らなかったのか、金と銀はどちらが先に使われていたのか、クローズド・セッティングって?ー第7回アンティーク検定・3級に、クローズド・セッテイングについての設問がありましたね。
 

 

 そしてショーメの歴史上の重要人物について、ショーメ側(ジュエリーデザイナーや経営者)と権力者側(ナポレオン、ジョゼフィーヌ、マリー・ルイーズ、オルタンス、ウージェニーetc)からの視点で、19世紀のフランスの歴史と絡めて、たっぷりとお話いただきました。参加者のみなさまも、フランス史やフランス絵画に詳しい方も多く、いろいろな視点から見ていきます。
 

 最後に今回の展覧会の構成、見どころ、特別な用語の説明(パリュール、アクロスティック・ジュエリー、シャトレーヌ・ウォッチ、エグレットetc)などについてもしっかり解説をいただき、いつ行ったら空いている?女子割の日があるの?なんて話まで、みなさんで盛り上がりました。
 

 ジュエリーに対する価値観も、国によって、また時代によって、大きく異なっています。政変が不安定な国では、常に資産を宝石類として所持し、何かあればそれを持ってどこかに行けるようにしていたとか。お金があっても、宝飾をはじめ自分を飾ることに興味のない世代が増えている、昔と違って財力を示すバロメータとしてジュエリーはもはや時代遅れ、ティアラなんて絶対身につけることは生涯ないけれど、それを側に置いておくだけで幸せな気分になるに違いない・・・懇親会では、いろいろな意見が出ました。
 


 
 

 ヴァンドーム広場の宝飾店は、観光でパリに行ってもなかなかおいそれと入れるところではありませんが、美術展ではこうして一流の名品が(手には取れないですが)見られるのですから、ぜひ足を運んで見ていただければと思います。
 

 「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界―1780年パリに始まるエスプリ」 展
 
 

オールド・ノリタケ、煌めきの世界

 AEAOサロン倶楽部・6月の会は、日本におけるオールド・ノリタケの第一人者であり、東京藝術大学・特任教授の井谷善惠先生をお迎えして、オールド・ノリタケの世界を徹底解説していただきました。
 

 
 会場は、ご参加者のお一人の好意で特別に借りられた、素晴らしい見晴らしのゆったりした空間。ここで、井谷先生秘蔵の貴重な資料を見せていただきながら、日本の近代輸出磁器の事情、アメリカでなぜノリタケが迎え入れられたのか、当時どんな意匠が人気があったのか、などを学び、当時のノリタケの製品がいかに贅沢で、凝ったものだったのかということがよくわかりました。
 

 

 

 NIPPONと入っている銘とJAPANと入っている銘、どちらが古いのでしょう、何年まで使用していたのでしょう、なんてことも、しっかり解説いただきました。
 

 ノリタケのアール・デコのアイテムはもう市場でも高値がついていて、なかなか手に入らないものですが、今日はその中でも貴重な「デコレディ」の香水瓶をお持ちいただき、みなさんで鑑賞させていただきました。バレエ・リュスやエルテを彷彿させる原色とシャープなラインの、優雅な香水瓶にうっとり。
 

 もうすぐ、井谷先生の新著「アガサ・クリスティとコーヒー」という、何やら面白そうな本が発行されます。こちらも楽しみですね!
 
 

日本の建築から見た、アール・デコ

 AEAOサロン倶楽部5月の会は、「日本の建築から見た、アール・デコ」と題し、東京都千代田区にある学士会館を会場に、フランス料理・フルコースを食べながら、という贅沢な会を催しました。本サロンは、そっとupしたにも関わらず、あっという間に埋まってしまったため、第2回も6/16に行われます。
 

 「アール・デコと東洋ー1920-30年代・パリを夢みた時代」(2000年東京都庭園美術館)展を当時企画された、岡部昌幸先生(本「アンティーク検定」監修者)の基調レクチャーにて、当時の日本の建築事情、フランク・ロイド・ライトと帝国ホテルのおはなし、歴史主義建築と機能主義建築の違い、装飾と建築、いろいろなお話を聴きながら、美味しいお料理タイムとなりました。
 

 


 

 フランス・レストランLatinは、いわゆる今風のフレンチとは少し違って、「正統派」という言葉がぴったりかな、と思います。お料理も、奇をてらったものはなく、メイン料理は牛肉のワイン煮とかお魚のポワレなど、19世紀から食べていたであろう伝統的なお料理。サービスには、お客様は神様的なへつらいが一切なく、時には慇懃無礼に感じることもありますが、たとえば飲み物は右からサービス、料理は左からサービスして右から下げる、といった基本中の基本をきちんと守る、数少ない(今ではフランスでさえ知らない人が多い)サービスを守っています。19世紀のフランスでのレストランサービスは、給仕する名誉、給仕するエレガンスというものも存在していましたが、まさにそれを彷彿させます。
 

 またこのような、ガストロノミーと共に集まるサロンを企画してみたいと思います。
 
 
 

読書会が熱い!?

 「西洋骨董鑑定の教科書」の発売と同時に、本書を読み解いていく集まり、「読書会」が誕生しました。
 

 どこから読んでもよい、西洋アンティークの辞典的な作りとなっている本書ですが、テーマを決めて、そのテーマについて触れている箇所を読みながら、あれこれツッコミつつも、装飾美術の世界を深めていく、そんな勉強会です。
 

 当協会では、本書の監修を担当させていただきましたが、著者はあくまでも英国人のジュディス・ミラー氏、彼女の文章やその翻訳を尊重し、文意などをいじることはしていません。ちょっとわかりにくいかもしれない、という語彙に注釈を加えたり、日本語としてすでに通用している語彙表現を統一したり、そんなお手伝いをしたにすぎません。ですので、「これは、イギリス目線から見るとそうだけど、必ずしも言い切れないのでは?」とか、「これが入ってて、あれが入っていないのは、なぜなのか」と言った疑問も、実は出てきました。
 

 読書会、などとちょっと堅苦しい言い回しにしたので、通常のサロンより人は集まらないかもしれない、専門家講師をお招きして拝聴する、という形式ではなく、内輪の勉強会だから、まあ時間があって、ちょっと一緒に勉強してもいいかな、という少数参加者を想定していましたが、初回から多くの人が集まり、2回目は満員御礼となりました!
 

 第2回の家具では、椅子についてのページを読み解いていきました。西洋の室内に欠かせない、椅子・・・なのに、実はその歴史は意外とそう古くはありません。その時代の姫たちはどんなファッションだった、どんな髪型だった、だから椅子はこうでなくてはならないのではないか、いや、この時代にこの木はこの国にあったのか、当時の家具職人って、どういう身分だったの、家具職人の中にも、高級素材を扱える人と扱えない人で、職位どころか職業を表す名称まで異なっていたの、この値段なら買えないこともないわねえ、などと色々な意見を出し合い、あっという間の2時間の読書会でした。
 

 
 よく、アンティークは「偽物だった」「騙された」ということがつきもののように思われますが、そもそも骨董品の価値の解釈はさまざま、そして「本に書いてあること」が必ずしも正しい、とも限りません。もちろん出版された書物というのは、それなりに(こんなblogの文章なんかよりも)信頼に値するものではありますが、それでも数学のように正しい答えが1つだけ書いてある、というものではありません。それを十分に承知の上で、ちょっと斜め目線で、見方を変えて読んでみる、そんな「読書会」があってもよいのかも。
 

 次回第3回は「陶磁器」がテーマ、6/2(土)の夕方より行います。当初、夕方からなら、ちょっとアペリティフでも飲みながら・・・と考えていましたが、会場の規定でアルコールは禁止ですので、可愛く、ノンアルコールのアペリティフで行なっています!
 
 

サヴィニャックを見尽くす会 〜AEAOサロン倶楽部・4月の会〜

 レイモン・サヴィニャックというポスター画家を知っていますか?
 

 ミュシャ、ロートレックなどのアール・ヌーヴォーのポスター画家、またアール・デコ時代のカッサンドルなどに比べて知名度は低いかもしれませんが、「あぁ、牛乳石鹸のあのポスター!」「ペリエの、あれね!」とフランス人なら誰もが知っている、ユーモア満載のポスター画家、その展覧会「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」が練馬区立美術館にて開催しています。
 

 AEAOサロン倶楽部・4月の会は、サヴィニャックLOVEの中山久美子先生のプレ・レクチャーと、本展の見学会で行われました。
 

 レクチャー会場は、近隣カフェでお茶&タルトをいただきながら。サヴィニャックとは、どんな作家だったのか、彼がポスターに秘める思いとはなんだったのか、どんなメッセージをどんな方法で描いているのか、そんなお話を、図録を見ながら解説していただきます。
 
 

 

 

 サヴィニャックがアシスタントを務め、崇拝していたカッサンドルが最後には自殺してしまうのと対照的に、94歳まで生きたサヴィニャックの作品は、パリという20世紀の都会のウィット、ユーモアをふんだんに表しており、どれも愛らしいモチーフ、そこには強い政治的プロパガンダやイロニーといったものは見られません。実家が大衆食堂を営んでいた家庭であり、芸術家目線ではなく、一般人目線でものごとを捉えていたがゆえに、街中の広告というものの意図や効果をより理解していたとも言えるのでしょう。
 

 美術館会場は土曜日とあって、また会期の終わりに近づいていることもあり、多くの人で賑わっていました。なんと200点を越す作品数で、同館のほぼ全会場が本サヴィニャック展に当てられていました。
 
 

 現在のポスターデザイナーは、みなさんデジタル制作でしょうが、本展ではポスターの原画が数多く出品されています。グワッシュなどで描かれた原画は、それだけでファイン・アートと言える作品のレベルです。
 

 

 本展は練馬区立美術館での展覧会は4/15までですが、その後宇都宮美術館、三重県立美術館、兵庫県立美術館、広島県立美術館を巡回いたします。