AEAOサロン倶楽部」カテゴリーアーカイブ

パリジェンヌってなんだ!?

 3月のAEAOサロン倶楽部は、ちょうど世田谷美術館で開催中の展覧会「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」に合わせ、ファッションにおけるロココから20世紀初頭までのパリの世界での立ち位置、パリジェンヌの装飾品について学びました。
 

 当サロンはワンスポット形式で行なっており、基礎知識も特に必要なく、誰でもいつでも参加できる開かれたサロンなのですが、今日は1つ、参加者のみなさんへ課せられたデューティがありました。それは、「自分にとってパリジェンヌ(パリジャン)をイメージするものを、何か1つ身につけてくること」。何も新調する必要はなく、お化粧でもファッションでもベレー帽1つ、スカーフ1枚でも何でもよいので、ちょっとパリジェンヌ(パリジャン)を再現してみましょう、という企画です。
 

 この課題に「三日三晩悩みました」という方、「自分が思い描いたパリジェンヌのあの服を着ようとしたら、太ってしまって入りませんでした」などのコメントと共に、まずはお一人ずつ自己流パリジェンヌ(パリジャン)を披露しながらのスタート。普段のサロンでは、会場内に余計な音楽などが流れていたら音を消してもらうのですが、今回は、昨年亡くなったフランス映画界のミューズ、ジャンヌ・モローのシャンソンをBGMに。
 

 
 そして、中山久美子先生(共立女子大講師、当協会認定アンティーク・スペシャリスト)による「パリジェンヌ展」の講義を、展覧会の章立てに沿って、フランスの政治や社会、風俗の歴史とともに、ルイ14世時代からジャズ・エイジまでを一気に徹底解説していただきました。
 

 
 18世紀の頃のお話は、宮廷文化ゆえ自分たちに遠い存在であるパリジェンヌ感も、19世紀後半労働者の女性や娼婦までもがパリジェンヌになり得る時代になると、社会風俗も身近に感じられて、質問も積極的に飛び出し、活気あるサロンとなりました。
 

 今回のサロンは、参加者のご好意によりご自宅のあるマンションの共有施設を利用させていただいたのですが、終了後はみなさんで高層マンションの屋上に出て、パリではなく東京の初春の空気を吸って、楽しく終えました。
 

 さて、来週からは本物のパリジャン・パリジェンヌたちの中での海外研修が始まります。
 
 

シシィに愛された窯・ヘレンド

 AEAOサロン倶楽部・2月の会は、ちょうどパナソニック汐留ミュージアムで開催中のヘレンド展に合わせ、ヘレンドを取り上げました。会場は、12月のサロン(「華やかなりし、セーヴル磁器」)でお世話になった、銀座ミタスカフェの個室。ここのケーキはボリュームたっぷりで美味しい上、個室も素敵なアンティーク調度品で囲まれた空間なのですが、キャパに対して申込者が殺到し、2回ならぬ、まさかの3回開催となりました!ご参加いただいたみなさま、有難うございます。
 
 
 

 複製、コピー、パクり、真似・・・あまりよい言葉とはされていませんが、ヘレンドという窯がマイセンやセーヴルと肩を並べるほどの高級磁器の地位を築き上げたのは、まさにヘレンドが、古磁器を完璧に模倣することができたからなのです。マイセンのディナーセットの補充を請け負って、マイセンそっくりの品を作ることができた、この精緻な技術がヘレンドの発展に大きく寄与したのです。
 

 なんだ、マイセンのコピーか・・・と思うなかれ、そもそも陶磁器だけでなく、西洋の美術は模倣を手本としてきました。古くはルネサンス、古代ギリシア・ローマの美術を模倣して復活させることでした。陶磁器先進国であった中国からの青花を手本に、デルフトはブルー&ホワイトを生み出し、有田の柿右衛門はマイセン、シャンティイ、多くの窯にそのモチーフが転用されました。
 

 もちろん真似だけで大きく成長したわけではありません。ヴィクトリア女王に愛された「ヴィクトリア」シリーズ(注文されたからこそ、この名前がついたわけですが)、ウージェニー皇后に愛された「インドの華」、そしてエリザベート皇后に愛された「ゲデレ」など、時のファッション・リーダーたちから次々と愛されていったヘレンドの製品、実物を見れば、その理由もおわかりですよね。
 

 「何かヘレンドをお持ちの方はお持ちください、みなさんで一緒に鑑賞しましょう」と呼びかけたところ、1回目は講師だけが持参したのですが、2回目は何名かの方がそれぞれのキャビネットケースからお持ちくださり、さらに3回目は、もうクロスに乗り切らないほどみなさんあれこれお持ちいただきました。やはりコレクターも多いですね。
 


 

 先日開かれていたテーブルウェア・フェスティヴァルでもヘレンドのテーブルコーディネートのブースがあり、新作「ヴァイオレット」が展示されていました。皇妃エリザベートが愛したすみれの花のモチーフで、とても上品なシリーズです。4月より、販売開始となるそうです。
 


 
 

ラリックの香水瓶の世界へようこそ!

 AEAOサロン倶楽部・1月の会は、ラリックの香水瓶をテーマに集まりました。ちょうど松濤美術館で開催されている「ルネ・ラリックの香水瓶ーアール・デコ、香りと装いの美ー」展の見学も兼ねて、ラリックの香水瓶の世界を深く知ろう!という主旨です。

 
 
 見学前のミニ・レクチャー会場は、カフェ・タカギクラヴィア。お隣にはコンサート・ホール「松濤サロン」があり、スタインウェイのピアノのある素敵なカフェです。こちらで、特製サンドイッチ(美味しい!)とコーヒーをいただきながら、フランスと香水の切っても切れない関係、香水の歴史、香水瓶のデザインの変遷、などを学びます。
 
 

 

 そして、松濤美術館へ。この日は同美術館学芸員の方が、私たちのサロン参加者のために、特別に作品解説をしてくださるというVIP待遇を受けました。やはり事前に章ごとの解説を頭にインプットしておくと、時代やテーマが頭に入りやすいですね。
 


 
 ミニ・レクチャーで少しお話しましたが、日本のマーケットではフレグランスの化粧品業界全体に占める割合がダントツに低く、むしろ「香水公害」という言葉もあるほどで、香水があまりウェルカムな社会ではありません。一方、ルネ・ラリックを生んだフランスはといえば、歴史的にも18世紀にはほぼ全員がなんらかの香水をつけていたと言われる香水大国です。
 

 その香水ですが、かつてはお客さんはお店で調合してもらって量り売りで買い、自宅で自前の容器に入れ替えていました。その習慣を20世紀初頭に塗り替えたのが、まさにルネ・ラリックの香水瓶だったのです。
 

 アール・ヌーヴォー期にジュエリー・デザイナーとしてすでに大成功を収めていたルネ・ラリック、外見のデザインの工夫で、如何に中身(コンテンツ)が素晴らしいものであるのかを表すことを知っている、元ジュエリー・デザイナーの知恵だったと言えるのでしょう。彼の香水瓶は、量産品であるにも関わらず、ただの容器の域を超えて、やがて美術工芸品としての価値にまで高められていきます。
 

 本展覧会は、1/28(日)まで開催されています。お見逃しなく!
 
  
 

小平新文化住宅へお邪魔しました

 本年も残すところあと1週間となりましたね。本協会も1年を振り返りますと、多くのみなさまに支えられながら数々の活動をしてきました。2回の海外研修、第6回アンティーク検定試験、そして毎月1回行われているAEAOサロン倶楽部、それぞれ多くの方達にご協力・ご参加いただきました。
 
 AEAOサロン倶楽部・8月の会でゲスト講師を務められた、淺井カヨ先生のご自宅が東京都小平市にあり、この度お邪魔させていただきました。最近ではマスコミへのご出演も多い先生ですので、ご存知の方も多いでしょうか。日本モダンガール協會の代表であり、古きよきものを愛するライフ・スタイルを実践していらっしゃいます。音楽史研究家のご主人・郡修彦さんとお二人で設計を行ったそのご自宅にて、「蓄音器鑑賞会&建物紹介」が随時開催されています。
 

 文化住宅というのは、日本で1920年代から30年代にかけて流行した和洋折衷様式の住宅で、この小平新文化住宅は、見事に当時の様式を再現した建物です。
 
 1920年〜30年代といえばヨーロッパはアール・デコの時代、当時の宮様であった朝香宮様は、パリにしばらく生活し、パリで出会ったアール・デコ・スタイルをそのまま日本で再現し、朝香宮邸(現東京都庭園美術館)を造りましたが、日本の一般の中流階級では、文化住宅と呼ばれる、三角屋根のある応接間を備えた住宅を建てていたようです。玄関を入ってすぐに応接間と呼ばれる洋室があるのが特徴、その応接間にて、ゼンマイ式蓄音機による音楽鑑賞会が催されました。
 

 蓄音機で聴く音楽鑑賞会、いまではとても貴重な時間です。昭和初期の音楽、当時の宝塚の少女たちの歌声・・・しばし時が止まります。
 

 

 そして、待望の建物紹介。どこもかしこも細部にわたっての、お二人の古き良きものを愛するこだわりが垣間見られる空間、アルミサッシではない木枠の窓枠は触ってもひんやりせず、エアコンなんてなくても火鉢のぬくもりで十分に暖かいお部屋です。
 


 

 とてもシンプルで機能的なお台所。
 


 

 これが噂の「氷冷蔵庫」です。電気を使わなくても物は冷やせていたのですね。
 


 

 2階の書斎も、アンティークなアイテムが和洋たくさん。
 


 

 そしてなんと、クリスマス・ケーキというサプライズが待っていたのでした。クリスマス、やはり大正から昭和の方たちも、楽しんでいたようですよ!
 


 
 AEAOサロン倶楽部、2018年もまた淺井カヨ先生との楽しい会を企画したいと思っています。前回ご都合のつかなかったみなさまも、乞うご期待くださいね。
 

 
 

華やかなりし、セーヴル磁器

 今日は今年最後のAEAOサロン倶楽部。師走の土曜日といえば、みなさんお忙しいでしょう、と思いきや、本サロンは早い段階で満席となり、キャンセル待ちが出てしまいました。それで急遽二部制とし、午前の回・午後の回と2回に分けて行うことに。
 

 セーヴルというのは、食器のオートクチュールのようなもの、さすがにそうそう出回っているものではありません。今回、ちょうどサントリー美術館にて開催されている「六本木開館10周年記念・フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」展を機会に、セーヴル磁器をちゃんと学んでみましょう、ということで、AEAOサロンでは初のテーマとしてセーヴルを取り上げてみました。
 
 

 主催者の色が思いっきり入り込んだ、身勝手な解釈を押し付けてしまったかもしれませんが、セーヴルの魅力はなんといっても18世紀の、軟質磁器時代にあると思っています。18世紀の装飾品・工芸品はエレガンスの頂点を極め、19世紀以降のコレクターの中にも、多くの18世紀贔屓な人たちがいて、お金持ちはこぞって18世紀の美術工芸品を買い集めていました。やはり社会の格差が大きく、富が集中していたからこそ華開いたエレガンスなのかもしれません。
 

 展覧会は、「マリー・アントワネットから草間彌生まで」と、18世紀から現代までを俯瞰する構成になっていますが、本展覧会の醍醐味はなんといっても18世紀の作品ではないか、ということで、ほぼ18世紀にフォーカスしたお話となりました。
 
 
 
 18世紀の貴族の生活、18世紀のテーブルアートの歴史などを知っていないとなかなか入り込めないアイテムもあります。そんなお話をしながら、また軟質磁器時代でしか作れない色、金彩の盛りについて、硬質磁器と軟質磁器が並行していた時代の絵付け顔料の違い、セーヴルが独自に開発した、ビスキュイと呼ばれる無釉白磁がセーヴルの花形商品であった経緯、リトロン、トランブルーズ、硬質磁器と軟質磁器はどうやって見分けられるのか、刻印はどう違う・・・と、18世紀だけでもどんどん話が尽きず、あっという間に時間は過ぎ去ってしまいます。
 

 会場は、銀座の、とあるカフェの個室、このお部屋はアンティーク調度品でセンスよく飾られた空間、本サロンにぴったりの雰囲気を醸し出しています。軽食の野菜のシフォンケーキやフレンチトーストもボリューム満点で、今回もとても楽しく充実したサロンでした。
 

 次回、来年早々のサロンは「ラリックの香水瓶」を取り上げます。
 (現在「満席」と表示しておりますが、会場のカフェは貸切にしましたので、お問い合わせください。)