月別アーカイブ: 2025年3月

AEAOサロン倶楽部「華族文化 美の玉手箱」展を訪れる

三寒四温とはよく言ったもので、昨日までは春の陽気だった天気が一転して冬に逆戻って来たこの週末、土曜日はAEAOサロン倶楽部が開催されました。学習院大学史料館が霞会館記念学習院ミュージアムとして昨日リニューアルオープン、本サロン倶楽部で早速特別展のギャラリートークに参加しました。

まずは目白駅から学習院とは逆側に少し歩いたところにある「パニエ・ド・レギューム」という小さなフレンチレストランにてミニレクチャー&ランチ懇親会。11時半のオープン時には予約者が待機していて、あっという間に埋まってしまうだけあって家庭的ながらも素敵なお店でアペリティフ&コース料理を。

この辺りには徳川ビレッジという庭付きの大きな邸宅が建ち並ぶ界隈があるのですが、今日はいつもの街散策はスルーして、学習院大学・正門へ。昨日オープンしたばかりの機関なので念のため守衛さんにお尋ねすると「沢山の方がもう行かれてますよ」と道案内をしてくださいました。

ミュージアムと書かれた建物、はて、新たに建てたのかと一瞬錯覚してしまいましたが、かつての大学図書館が博物館施設としてリノベーションされたものでした。しかも建築はモダニズム建築の先駆者と言われる前川國男の設計、学習院大学には「前川國男建築」と言われる建物が数棟まだ残っているのだそうです。

最も古い大学博物館とされるのはイギリス・オクスフォード大学で1683年に作られたアシュモンレアン博物館とされており、これは当時流行していたヴンダーカマー(驚異の部屋)が起源と言われていますが、日本の大学博物館というのは実に多種多彩にわたっています。中でも学習院大学はその性質上、公家・大名・華族・幕臣の史料などを豊富に所蔵しており、かつての学習院大学史料館は1975年(昭和50年)に発足しています。

オープン2日目の今日のギャラリートークは研究員・森谷さんによる解説で、なぜこれだけの建物内に展示室がこれだけしかないのか、「パトロネージュ」という言葉にはどういう意味が込められているのか、今回の展示品の中で、用途不明だったとあるものの正体について、なんと現在の天皇が皇太子時代に解明されたのだとか、実に興味深いお話をいただきました。また以前のAEAOサロン倶楽部でもご解説いただいた長佐古美奈子学芸員より、展示室の真正面に展示されているローブ・モンタントに関する佐賀錦のお話とその技法についても詳しくお話をしていただきました。

特別展示室は撮影禁止ですが、常設展示の方は撮影も可能でした。学習院の歴史を辿っていくと、そのまま日本の近代史が浮かび上がってくる、そんな展示でした。

かつての学習院大学史料館であったこの建物も、登録有形文化財ですからちゃんと残っています。
今日は雲行きも怪しく若干寒々しかったですが、もうすぐ開花しそうな気配ですね!


第15回アンティーク検定講習<3級>

季節外れの暖かさの3月1週目の週末、第15回アンティーク検定講習が開催されました。今回は初めての会場、あうるすぽっと(豊島区舞台芸術交流センター)にて。従来は東京芸術劇場を使用していましたが、現在リニューアル中でクローズしているため、この会場を今回は利用させていただきました。定員33名の勿体ないほどの広さなのですが、この講習会は少人数制ですから、ゆったりと使えます。

今回のご参加者さんは、現役の大学生から1歳のお孫さんがいらっしゃるというグランパまで、そして遠くは福島県から車を運転してお越しになられた方も。日曜日が東京マラソンのためホテルがなかなか取れない中、無理をして宿泊も兼ねてご参加いただきました。まずは自己紹介とアンティークに対する想いなどを語っていただき、早速アンティーク入門、装飾美術とは、と講習会がスタートします。

ランチはすぐ近くのビストロにて。半個室のようなところを取っていただいたのですが、その部屋にベルナール・ビュッフェの版画が掛けられていました。一目見て「ビュッフェっぽいよねえ」とすぐ作家の名前が出ることからもわかるように、今回の参加者のみなさんの美学に対する基礎知識はすでに高いレベルにあるのです。

陶磁器、銀器、ガラスと、身近にある入りやすいアイテムからものの見かたを学び、そして3級にして自ら鑑定をするという体験をします。今回は陶磁器組と銀器組でそれぞれアイテムを調べ、鑑定士になったつもりで発表していただくというアトリエ形式で実践しました。みなさん即席にしてはかなり到達点が高かったのです。

ところどころで昨年のアンティーク検定試験3級の問題を解きながら進めていくのですが、はじめて見たときはちんぷんかんぷんでも講習を受けた後では解けるようになる、これが理解して学ぶ、の講習形式の効率性ですね。3級は教科書を手に独学で勉強して試験で取得することももちろん可能ですが、短期集中で仲間と共に一緒に理解し学ぶという楽しみが得られるのがこの検定講習です。

2日目はオンラインにて建築・家具について様式を中心に学び、そして午後の見学は重要文化財である旧岩崎邸庭園(かつての岩崎久彌氏の邸宅)へ。本協会でもサロンや講習で何度か訪れていますが、ようやく庭園部分のリニューアル工事が終了したようで、なんとサービスセンターがあらたに設けられていて券売所も正門に移っていました。

みなさんで待ち合わせてさっそく洋館見学へ。平日は写真撮影ができるのですが、土日は残念なことに不可、外観のみです。

ジョサイア・コンドルの設計、明治29年の建造物です。17世紀のイギリス・ジャコビアン様式の装飾に加え、ルネサンス様式、イスラム様式の部分も垣間見られます。西洋建築の基本中の基本である柱頭も、ベランダ部分に回ると1階のトスカナ式と2階のイオニア式の2種類の柱頭の違いがよくわかります。

元々は洋館をはるかにしのぐ大きさであった和館は現在1棟のみしか残っていませんが、洋館と和館が別々に敷地内に建てられているのではなく、併置されているという珍しいスタイル、この和館の方に小さなカフェがあります。予約不可ですし日曜日なので大人数では無理だろうとダメ元で行ってみると、たまたまのタイミングで6人座敷に座れるという超ラッキーなシチュエーション(私たちの後には満席の札が!)。こちらでディプロマ授与も行い、お抹茶と上生菓子で優雅な明治の富豪の気分になったところで、お庭を散策。

最後に撞球室(ビリヤード場)の外観を見学し、2日間のアンティーク検定講習・3級が終了しました。またあらたに鑑定士の卵が5名誕生しました!ご参加のみなさま、2日間おつかれさまでした。