投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

パクりとコピペと、名画と工芸品

 東京オリンピックのエンブレムの盗作疑惑に続いて、トートバッグのデザインで著作権法侵害の疑いが持たれている、我が国のデザイナー。アシスタントが実際にトレースしたと白状して、販売を取り下げているものが何点かあり、日夜ネット上で炎上しています。
 

 著作権という概念が生まれたのは、それほど古いことではありません。かつて、芸術家は過去の「他人のもの」を模倣しながら、作品を生み出していたのです。
 

 美術史上で有名なものを挙げてみましょう。
 

 ・ジョルジオーネ作「眠れるヴィーナス」1510〜11
 

Giorgione
 

 ・ティツィアーノ作「ウルビーノのヴィーナス」1538
 

Tizian
 

 ・モネ作「オランピア」1863
 

olympia
 

 これは、パクリ?それとも、「影響を受けた」に過ぎないのでしょうか?
 

 また、これはどうでしょう。
 

 ・ゴヤ作「プリンシペ、ビオの丘での銃殺」1814
 

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 ・マネ作「皇帝マクシミリアンの処刑」1867
 

manet
 

 ・ピカソ「朝鮮の虐殺」1951
 

picasso
 

 絵画だけではありません。工芸品の世界にも、山ほど例があります。
 

 フランスのシャンティ窯では、柿右衛門そっくりの軟質磁器が作られています。いわゆる「柿右衛門スタイル」と呼ばれるものですね。
 

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 さて、今の時代だったら、これらもすべて「炎上」しているでしょうか!?
 
 

夏は、やはりミステリー!? 〜アンティークにまつわる、ミステリーご紹介〜

 美術品、骨董品を巡るおはなしは、古今東西ミステリーの題材としても打って付けではないでしょうか?
 

 今日は、3冊をご紹介。
 

 その1:「死体あります アンティーク・フェア殺人事件」by リア・ウェイト
 

文集文庫「死体あります アンティーク・フェア殺人事件」

文集文庫「死体あります アンティーク・フェア殺人事件」

 骨董市を舞台に、4人の古美術商が殺され、やはて5人目の殺人が・・・
 

 その2:「アンティーク鑑定士は疑う」by エミール・ジェンキンス
 

RHブックスプラス「アンティーク鑑定士は疑う」

RHブックスプラス「アンティーク鑑定士は疑う」

 鑑定士が盗難品の査定に、博物館へ赴くと、贋物が混じっており・・・
 

 その3:「アンティーク鑑定士は見やぶる」by エミール・ジェンキンス
 

ランダムハウス講談社「アンティーク鑑定士は見やぶる」

ランダムハウス講談社「アンティーク鑑定士は見やぶる」

 ニューヨーク・オークションハウスの裏話もたくさん登場、鑑定方法の解説もバッチリ・・・
 
 ミステリーですから、これ以上は語らないようにしましょう。
  
 是非お試しあれ。

暑い夏は、骨董ジャンボリーへ!

 連日の猛暑続き、これだけ暑いとさすがにうんざりですね。
 
 ヴァカンスたけなわの8月、本場ヨーロッパでは、オークションハウスも夏休み、アンティークマーケットや蚤の市も出店者が極端に少なくなるのですが、避暑地と呼ばれる、水のある地域(例えばカンヌやビアリッツなど)では、避暑客向けなのか、オークションが夏に開かれますし、ヴァカンス地では、ヴァカンス客向けの蚤の市なども開かれたりしています。
 
 さて、東京では明日から3日間、年に2度の大イベント・骨董ジャンボリーが東京ビックサイトにて開催されます。初日はアーリー・バイヤーズ・デー、一般の人でも特別のチケットを購入すれば、この日に入場することができます。1点ものの骨董・アンティーク品ですから、誰よりも早く入場してお気に入りを見つけたいのが、コレクターの性。
 
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骨董ジャンボリー公式サイト
 

 
 ここは冷房完備の屋内フェアですから、熱中症の心配、ご無用です。よいものに巡り会えますように!
 
 

オークションハウスはネット化へ進み、小売りはダイレクト販売へ逆戻り?

 当協会の秋の海外研修は、オークションハウスにフォーカスを当て、実際に美術品・工芸品のオークションがどのように行われているか、その舞台裏を垣間見ます。
 

オークション・ハウス DROUOT

オークション・ハウス DROUOT


 

 海外研修に関するお申し込み・お問い合わせは、こちら
 

 さて、世界最古のオークション会社はどこでしょう?というのはアンティーク検定・2級の問題にも過去に出ていますが、これはサザビーズ。1744年、サミュエル・ベーカーが、蔵書を売却するためにロンドンにて設立されました。インターネットによる入札システムを取り入れたのも、サザビーズが最初ですが、このサザビーズが、eBayと提携をしてネット・オークションをスタートさせたのが今年。eBay内の専用プラットフォームでオークションの様子を配信し、決済などでもeBayのシステムを利用することになります。
 

 他のオークション会社も、インターネット入札システムは既に行われており、今後どんどんネットによる入札が増える、と言われています。紳士淑女の社交の場としての存在でもあったオークションハウスも、だんだんと様変わりしていくのでしょうか。
 

 ところが、日本のヤフオクなどのインターネットサイトにおけるアンティーク品・骨董品・美術品の落札率は、実はかつてほど良くはありません。ディーラーさんたちの間でも、「(格安品を除いて)ネットでは売れない」と言っています。これは、実際にモノを見て触って確かめてからでないと、というのと、やはり出品者と落札者の信用だけで行われるシステムであり、上記の、オークショニアがいて鑑定士が鑑定した作品とは、根本的に違うからでしょう。
 

 そして、クレーマーが多いのもネットの特徴。ネットの世界は、裾野が広がる分、マーケットも開きます。街の骨董店・アンティークショップなどに足を踏み入れたことのないような人も、お客さんとなります。アンティーク品という理解のない人が、「どこそこに疵があった」「剥げていた」などと言いがかりを付けるので、かつてはネットで販売していた人も、直接のコミュニケーションを求めての販売へ、と戻ってきているようです。
 
 信用が確定しているものはネットで買える(サザビーズでセールとなる美術品、メーカー品のミネラルウォーター・・・)が、よくわからないものは、手に取って触って、納得した上で直接買う、というのがこれから消費スタイルになるのでしょうか?
  

 参考サイト:ウェブ化する世界最古のオークション・ハウス:サザビーズ、eBayと提携
 
 

第2回アンティーク検定・前日

 いよいよ明日は第2回アンティーク検定の受験日です。
 東京のお天気は、残念ながら雨模様の予報ですが、少し涼しい分、頭も働きますよね!?
 これまでの対策ブログにざっと目を通し、あとはリラックスして、受験に臨んでいただければと思います。
 
 今回3級を受験し、目出たく合格された方は、次回是非2級にトライしてみてください。
 2級を受験し、目出たく合格された方は、次回、初の1級の検定が行われますので、是非初代合格者となっていただきたいと思います。2級に関しては、一部合格という制度もありますので、今回合格された一部科目については、以降2回分の再トライ時には免除合格となります。
 
 3級と2級の間には、やはりそれなりの知識・レベルの差があります。
 これは、他の検定試験、例えば英検なども同じで、英検3級を履歴書に記載しなくても、英検2級なら履歴書にも書けますよね。つまり、3級は、アマチュアとして「知っている」と言えますが、2級になれば、プロとしても通用するレベルの最初の級と言えるでしょう。
 
 2級以上の級は、西洋アンティークを正しく理解するために、基礎となる「西洋美術史」、そして、ヨーロッパで実際にアンティークを買う際に、アンティーク商とコミュニケーションができるための「外国語(英語またはフランス語)」、現在の市場はどうなっているのかを把握している「現代時事アンティーク」の科目が加わります。主軸である「西洋装飾美術工芸史」も、やはり専門的になります。
 
 しかし、日本には多くの有益な書物が存在し、「西洋美術史」に関しては、こういった本を1冊通読すれば、答えられる問題ですので、それほど難しくはありません。類似試験で美術検定というのがありますが、こちらは時代も古代から現代まで、また西洋美術史だけでなく日本美術史も含まれ、難関な試験です。この美術検定よりは、範囲が狭い分、易しいと言えるでしょう。
 
 「外国語」については、語学能力を問うものでは一切ありません。たとえば、オークションカタログに記載されている言葉がわかるかどうか、それもごく基礎的なものです。この写真はフランス語のオークション・カタログですが、86のTravail françaisというのは、「フランス製品」であり、89のTravail Italienは「イタリア製品」ということ、circa 1960とあるcircaとは、「約」という意味、このようなごくごく基本的なことです。

 

オークション・カタログ

オークション・カタログ

 
 
  
 「現代時事アンティーク」は、初回の受験者の方も、最も難しい!と悲鳴をあげていましたが、これこそ普段からちょっとだけアンテナを張って、美術雑誌や美術マーケットに関するニュースを目にしていれば答えられる問題にしています。

  
 そうはいっても、検定試験公式テキストのような参考書が存在しない中で(3級には当協会編「公式ハンドブック」があります)、どうやって勉強してよいのかわからない、という方もたくさんいます。

  
 そのために、いくつかのカルチャー機関にて、対策講座を実施していますので、これらの講座を受講し、その中で一緒に学ぶという方法もあります。

  
 この度、対策講座を一定時間数以上受講した方には、2級以上の検定につき、免除資格を設けることになりました。たとえば、アンスティチュ・フランセ東京で「フランス・アンティークの世界と鑑定」を20時間以上受講した方には、外国語・フランス語の科目は免除合格となります。これは、フランス語を用いたアンティークの授業を、フランス語の映像などと共に学んでいますので、受講された方は、そこで理解した、とみなされるためです。

  
 詳細につきましては、本日更新しました、公式認定校のページをご覧ください。

  
 それでは、明日の受験、どなたさまも万全を期して臨まれますよう!