「鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅」見学と、天井高15mの大空間

AEAOサロン倶楽部・7月は変則的に平日に2回行います。その第1回目は、日比谷図書文化館にて開催されています「鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅」見学。鹿島茂さんといえばフランス文学者としてよりもフランスの古書蒐集家として知られ、現在では神保町にPASSAGEという共同書店をオープンしたことでも有名ですが、2019年に開催された第一弾に続きそのコレクション第二弾が今年5月から日比谷図書文化館にて開催、これをじっくり鑑賞しない手はありません!

この日比谷図書文化館の目の前に、知る人ぞ知るレストランがあります。その名は「アラスカ」。『なぜエグゼクティブは、アラスカに集まるのか?』という本があるのですが、ここに通った者は出世できるというジンクスがあるとか!?

日本プレスセンタービルの10Fに入っているこのレストラン、しかし我々は出世欲というよりは食欲、しかもこのレストランの窓際のテーブルから見える景色は絶景で、またホールは天井高15メートルもあるドーム型で、とても贅沢な空間なのです。

お腹が空いていては細かい版画や字も頭に入らない、ということでまずは「アラスカ」にてフルコースのランチ。外の鬱陶しい雨も振り切ろうと、キールやらスパークリング・ワインやらでアペリティフから。

お料理は非常に正統派クラシックな「洋食」フレンチ。

ランチをゆっくり堪能した後は、いよいよコレクション展へ。

会期の終わりが近づいていますが、平日の午後はやはり穴場ですね。雨の日のせいか、会場は混み合っておらず、おかげでガラスケースの上にへばりつくように1点1点ゆっくり鑑賞できました。これぞ贅沢な、まるで独り占めしているかのような鑑賞。すでに前期に一度訪れたという参加者さんも、後期は展示替えで作品(または見開きのページ)が入れ替わっているせいか、やはりじっくり見入っていました!静かで豊かな時空間。

鹿島茂さんのコレクションは多岐にわたりますが、やはり芸術性の面で目を引くのがアール・デコのポショワール、そしてアラスカは1928年創業のレストラン、同時代性を感じますね!

修復された新しい姿、ローアン館・スービーズ館の優美で豪奢なロココ装飾

2022年2月よりスタートした、パリと繋いで新アート・スポットをテーマにした講座「オンライン海外講習」、いよいよ最終回はローアン館、スービーズ館の室内装飾を学びます。

パリ・マレ地区。現在ではファッショナブルな街として、アートギャラリーや最先端のブティック、雑貨店が立ち並び、また夜はちょっと淫靡な雰囲気も漂うゲイの街としても有名ですが、この地区にオテル・パティキュリエと呼ばれる大邸宅が点在しているのは何故なのでしょう。

それは17世紀にまで遡ります。現在のヴォージュ広場と呼ばれている「王の広場」が誕生したのは1601年のこと。それ以来貴族に人気のエリアとなり、多くの貴族がこの地区に本邸を構えました。ところがやがて貴族の人気エリアがフォーブール・サンジェルマンの方へ移っていくと、元々「沼地」とされていたこのエリアが荒んでくるようになりました。1950年ごろには、このエリアはどちらかというと労働者の街だったのです・

シャルル・ド・ゴール政権下の文化大臣、アンドレ・マルロー氏はこのマレ地区を歴史文化保存地区として蘇らせる政策を取ります。この頃、例えばサレ館はピカソ美術館としてオープンするように、いくつかの館がリニューアルされ、美術館として再スタートを切ります。

今回取り上げた中のローアン館は、かつてパレ・ロワイヤル界隈に存在し1923年に取り壊され保管されていたシャンセルリードルレアンの内部装飾品を移築する計画が1960年代にあったのですが、諸事情により頓挫、そして2015年から6年ほどかけてようやく一部(4部屋)が完成し、その装飾を現在月に1度公開しており、見学が可能となったのです。まだすべての移築が終了しておらず作業が継続中のため、見学は月1度の予約制かつ内部職員と共にしかできませんが、2024年には一般公開されるとのこと。その頃にはもうかつてのように自由に海外を訪れる平和な日々がやってくるでしょうか…。

「ロココ」は室内装飾が特徴で、女性の文化とされていますが、この装飾を見るとそのことが頷けます。建物の外観からは想像できない優美で豪奢な装飾の数々、ぜひ現物をこの目で鑑賞したいですね。

第12回アンティーク検定試験・終了

2022年のアンティーク検定試験が終了しました。すでに2020年よりオンライン試験となり、もはやこの流れが定着していくのでしょうか、他の検定試験でもオンライン受験が主流になってきているように思います。

オンライン試験のメリットは何と言っても会場に出向く必要がないこと。当アンティーク検定試験は第1回より東京会場のみで開催されており、かねてより地方在住の受験者より地方会場での実施の要望もありましたが、全国での実施は受験者数を鑑みるとハードルが高いのが現状でした。それがオンライン実施により全国どこにいても受験が可能となりました。さらに時差はあるものの、海外からの受験も可能になっています。

オンライン検定試験のカンニングをどう対策するかは大きな課題です。例えばTOEFLなどは試験監督者によるオンライン監視の下に行われているようで、カメラをオンにして受験する必要があります。当アンティーク検定試験は今のところ「宣誓」をするだけでカメラによる監視は行なっておりませんが、作問の段階で簡単に検索できないような問題となっており、また記述式ではコピーペーストのチェックは行なっています。SNS等の発言によっては、合否通知後でも合格を取り消されることもあります。ゆくゆくはAIによる監視システムなども取り入れていくことになるかもしれません。

オンライン検定試験のデメリットとしては、臨場感の喪失でしょうか。会場に赴き、試験監督員や他の受験者の中で緊張して臨み、問題用紙が配られ、解答し、時間になったら終了。この一連の儀式めいた臨場感がないので、一体自分は本当に試験を受けたのか?解答を送信したけれど、果たしてちゃんと送信されたのか?と色々不安になってしまいますね。また万一パソコンがフリーズしたら?Wifiの接続ができなかったら?とハード面でも不安になりがちです。

世の中の流れとして、どんどん「人が解しない」ことによる不安と向き合う時代となっているのは事実、例えば某LCLの航空会社ではセルフチェックインが標準であり、もし有人カウンターでチェックインをした場合は、追加料金がかかるというしくみになっているとか。預け入れの荷物もすでにセルフ手続きが標準となっていますが、初めて利用したときは、これで果たして本当に目的地に荷物が送られるのか、不安でたまりませんでしたね。

さて、今回の検定試験はオンラインになって3級では4回目、1級でも3回目ということもあり、幸いなことに大きな混乱は見られませんでした。(昨年は2級と1級の受験時間中に大豪雨による停電が一部の地域でありました。)もう受験者もオンラインでの回答に慣れてきている成果でしょうか。受験者のみなさま、お疲れ様でした。

「検定試験を受けるのはちょっと」という方向けには、9月にアンティーク検定講習・3級が実施されます。こちらは検定試験とは異なり、集中講習を受講することで級を取得できるシステムです。全くの入門者でも2日間の講習で取得することができますので、ぜひご受講ください。

ビアズリーの『サロメ』に表れた「ラインブロック」が実現した美

アカデメイアの60分で紐解く絵画「19世紀末アール・ヌーヴォーの時代の絵画」第5回最終回は、この世紀末からだんだんと増えてくる新しい表現方法の1つ、ラインブロックで描かれたビアズリーの『サロメ』の作品について学びました。

ラインブロックとは、印刷技術の発展に伴って生まれた印刷方法です。写真製版を基に印刷された複製芸術で、この方法により従来では非常にコストのかかった印刷が安価で可能となったのです。「生活に美を」求めたウィリアム・モリスのケルムスコット・プレスに比べると、その十分の一以下のコストで印刷が可能となったということで、アートが一部の富裕層のものだけではない時代の幕開けとも言える時代がやってきます。

ラインブロックの欠点は中間色が出せず、従って白か黒か、という平坦な色調になりがちですが、そのラインブロックの欠点がむしろ幻想的な美として表現されているのが、まさに今回取り上げられたビアズリーの作品。

ビアズリーのこれらの作品は、オスカー・ワイルドの戯曲の挿絵として描かれたものですが、母語である英語ではなくフランス語で先に出版され、そのフランス語が後に英訳されて英国で出版されています。ビアズリーの挿絵はこの英語版のもので、出版はできたもののワイルドが男色家であったことや内容の背徳性により、イギリスで上演できるようになったのは第一次大戦後の1930年になってからでした。ビアズリーもワイルドも19世紀末に亡くなっていますので、母国イギリスではお芝居としてよりも、むしろこのビアズリーの挿絵が評判になって有名になっていったようです。

ワイルドは46歳で亡くなっていますが、ビアズリーに至っては25歳でこの世を去っています。そしてこの挿絵を描いていたのが、わずか20歳を超えたばかりの年齢…幻想的で耽美なこの作風をこんな若さで表現できたビアズリー、もっともっと評価されてもいいアーティストの1人である気がします。

「60分で紐解く絵画」シリーズ、秋からもまた新シリーズをお届けしますので、どうぞ引き続きお楽しみに!

ピカソの陶芸と地中海に想いを馳せる会

AEAOサロン倶楽部・6月の会は2020年にオープンしたばかりのヨックモックミュージアムにて開催中の「地中海人ピカソ」展を見学し、ピカソと地中海との関係に迫る、という企画でした。というと大袈裟ですが、地中海料理を食べて、ヴァロリスに移り住んだピカソとその陶芸を知ろう、という集まりです。

ヨックモックと言えば、日本中の家庭にあのシガールの缶ケースを何かの容れ物に使っているのではないかと思うほどポピュラーな、それでいてとても美味しいお菓子が有名。実は海外の方にもヨックモックは大好評です。ヨーロッパやアメリカの人へのお土産というと、ついつい抹茶や小豆系のお菓子で日本らしさを感じてもらいたい、と思いがちですが、本気で誰にでも喜ばれるのが実はヨックモック。今回のご参加者の中にも海外駐在をされていた方が、激しく同意されていました!

まずは、夏らしいランチでスタートです。ミュージアム近辺で地中海料理のお店を色々探したのですが、数名で落ち着いて簡単なミニレクチャーもできて、お料理も美味しく雰囲気のよいところ、となればヨックモックそのものがあるではありませんか!表参道のヨックモックショップに併設されているブルー・ブリック・ラウンジにて夏のコースランチをいただきました。

当初は「お天気がよければテラスで」とお願いしていましたが、お天気はよいというより、湿度が高く一降り来るかも!?という微妙な感じ、お店の方の機転で店内のよいお席をご用意いただくことができました。

メニューは、最初にハーブのアイスティ、海ぶどうが添えてあるフルーツトマトのファルシ、とうもろこしや枝豆の乗ったパイを添えたコーンスープ、鱧と彩り野菜の冷製フレッシュパスタ、デザートはグレープフルーツとライチジュレのパフェと、本当に夏らしい、まるで地中海のリゾートホテルのラウンジで優雅にランチをいただいているかのよう。美味しいものをいただくと幸せになるのは誰しも同じで、初めて顔を合わすメンバーでも楽しくお話しが盛り上がりました。

このお店は予約時からアレルギーの有無やメニューの説明などとても丁寧にご対応いただき、こういうサービスは集客につながりますね。11時の予約の時点でかなり埋まっており、13時の退店時には席待ちの列ができていました。

ランチ後はヨックモック本店から歩いて10分ほどのミュージアムへ。南青山という都内でも屈指の高級住宅&商業地、散歩をしているだけでも楽しいエリアです。

そして辿り着きました、ヨックモックミュージアム。設計は隈研吾建築都市設計事務所出身の栗田祥弘。青色の屋根瓦は、ヴァロリスの赤茶色の屋根瓦をイメージしてつくられたものということですが、お隣に立つ秀和レジデンスの建物とピッタリ調和していますね。そういえば秀和レジデンスのコンセプトが南欧リゾート風だと聞いたことがありますが、まさに地中海での共通点が。

現在ミュージアムは予約制で30分枠に6名とあって、小さなミュージアムでも混雑することなく、ほぼ貸切状態のように見学することができました。

ところでなぜヨックモックミュージアムにピカソのセラミック作品が展示されているのかというと、ヨックモック社が30年以上かけて500点ほど蒐集してきたようです。今回はその中で「神話世界にあそぶ」というテーマのもとに集められた30点余りと、常設展示の54点が展示されていました。

写真撮影はNGですが、この椅子スペースでは記念撮影が可能です。

カフェやミュージアムショップ、ライブラリースペースなども、コンパクトながら地中海風な明るい雰囲気でした。

終了後、近くにある登録有形文化財の指定を受けているメゾンデュミュゼの外観を見学したり、青山地区の建築やブティック、お店を散策しながら帰途につきました。

ご参加のみなさま、楽しかったですね。お付き合い有難うございました。

7月のサロンは、2回とも例外的に平日開催です。8月はお休みです。