投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

オンライン海外講習、第1回は生まれ変わったカルナヴァレ美術館

2020年の海外研修を延期してそろそろ2年になろうとしています。なかなか次回の海外研修計画が立てられない中、パリの講師とつないでのオンライン海外講習をスタートしました。

第1回目は、生まれ変わったカルナヴァレ美術館。パリ市の歴史博物館です。老朽化のため4年の改修工事を経て、コロナ禍の2021年にリニューアルオープンしました。1つの町の歴史としての博物館では世界最古で、オスマンによるパリ大改造の中、1880年に誕生しています。

コレクション数で言えば60万点を越しルーヴルを上回ると言われているこの館、そのコレクション数も膨大ですが、今回のリニューアルであらたに登場したのが看板展示室。

現在ではどの建物にも住所の番地が割り振られていますが、かつてはその建物が何屋さんであったかを示すアイコンのような看板が掲げられていたとかで、その看板展示室から見学をスタートします。

この新設された階段も、アンヌ・コリヴァノフ講師曰く、「最初に目に入ったときはとてもショックでした。伝統ある歴史博物館にはそぐわない、モダンすぎる装飾で酷いセノグラフィーだと感じたのです。でも見学をしていくうちに、この階段のおかげで美術館の順路も非常に機能的かつ効率的で、見学を終えて振り返ってみると、あの階段はもうなくてはならないもののように思えてきたのです」と。

そしてやはりこの館を紹介するには外せない、セヴィニエ侯爵夫人。この人が暮らしていたからこそ、この地が博物館になったのですが、その経緯についてたっぷりとお話しいただきました。彼女の美しいポートレートには多くの質問も寄せられました。デコルテのローブ、左右非対称な着こなし・・・

ミュシャの装飾のジョルジュ・フーケ宝飾店、コルベール・ド・ヴィラセール侯爵邸、ジョゼ・マリア・セルト・イ・バディアによる、ウェンデル夫妻の館の舞踏の間・・・ため息の出る装飾に、やはり画像だけでは物足りない、早く行かなくては!という気になりますね。

受講者の中にはフランス語を学んでいる方も多くいらっしゃって、久しぶりに生のフランス語での説明が聞けて、楽しかった、というご感想もいただきました。でもなんと言っても小栁由紀子先生の完璧かつ補って説明してくださる通訳があってこそ、理解も深まるというもの。小栁先生、有難うございました。

次回はオテル・ド・ラ・マリーヌをご紹介いただきます。

ガウディの家具を見てガウディを考える

アカデメイア「60分で紐解くアンティークの名品」第2部の最後の回は、ガウディの家具について行いました。ガウディと言えば誰もが知っている「サグラダ・ファミリア」、完成までに300年かかると言われていた教会建築ですがどうやら2026年には完成予定とのこと、現在生きている人たちの多くが生きている間に完成を見届けることができそうです!

世紀末〜20世紀初頭にかけて、ヨーロッパの至るところで新しい芸術の兆しが起こりました。総称してアール・ヌーヴォーと呼んでいますが厳密にはこの呼称はスペイン・ベルギーのフランス語圏での表現であり、ガウディが活躍したスペインではモデルニスモ、しかもモデルニスモはバルセロナを中心とするカタルーニャ地域で興っていましたので、カタルーニャ語で「ムダルニズマ」と呼ばれています。このムダルニズマを代表する建築家がガウディであり、そしてガウディは建築だけでなく室内装飾・インテリアのデザイナーでもあったので、ガウディのデザインした椅子をはじめとする家具が残されています。

カルヴェ邸のためにデザインしたアームチェア

ガウディの生き様、求めたもの、当時のバルセロナの社会・経済背景、街づくりの計画、いろいろな視点でガウディを眺めてみました。

ちょうどこの今、バルセロナのカタルーニャ美術館でガウディを再考する展覧会が開催されています。3月までですので、なかなか行く機会もないかもしれませんが、その後この展覧会はパリのオルセー美術館へ巡回します。

今回にて「60分で紐解くシリーズ」第2部は終了、来月からは「60分で紐解く絵画」シリーズがスタートします。お申し込みをお待ちしています。

秋の遠足、横浜山手西洋館を巡る旅

今日は昨日の荒天から一転して秋晴れの穏やかな日、まさに遠足日和でした。

5月に計画していたAEAOの遠足シリーズ、春の「笠間で語ろう 〜夢二×ローランサン 乙女の夢はアヴァンギャルド展〜」は残念ながら緊急事態宣言により中止となってしまいましたが、秋の「横浜山手西洋館を巡る旅」は無事催行できました。普段オンラインでお互い顔は見ていても、リアルでの集まりはやはり楽しいものですね。

お昼前に元町・中華街駅のアメリカ山公園からスタート、岩崎博物館、山手111番館、大佛次郎記念館、横浜市イギリス館と回り、庭や花もたっぷり堪能した後は、山手十番館にてフレンチ・フルコースのランチ。

みなさんやはりこの1年、外食はそれなりに控えていたようで、こういう会食ができるようになってよかった!

普段の運動不足と、お肉にもお魚にも合うとオススメされたシチリアワインでちょっと眠くなってしまいましたが、食後は山手資料館、山手234番館、エリスマン邸、ベーリックホールを見学。コロナになってから一部見学できない部屋などがあって残念でしたが、それでもどこも感染対策が万全にされていて、安心でした。

横浜はアップダウンの激しい地ですが、それがマイナスではなくプラスに作用している街づくりの美しさが垣間見れた気がします。

ジェラール水屋敷地下貯水槽なども通り、華やかなイルミネーションの元町ショッピングストリートを通りすぎ、元町に創業して40年の老舗アンティークショップをしっかり堪能させていただきました。

ちょうど1年前の今日、コロナ禍で休止していたAEAOサロン倶楽部を再開し、ホテル・ニューグランド横浜にてランチ+氷川丸の会を行ったのですが、あれから1年ぶりの横浜。1年前の方がまだワクチンもない中で感染が徐々に拡大している時期で恐々としていた気がします。今も決して油断はできませんが、ワクチン接種とこの1ヶ月ほどの感染者激減により、人々の顔つきも少し明るくなっているこの状況、どうかこのまま収束しますように。

アンティーク検定講習・3級

この週末はアンティーク検定講習・3級を実施いたしました。
当初は9月に予定していましたが緊急事態宣言中であり、この11月に延期しての開催です。

2日間の講習会に参加をして級が取得できるこの講習コース、初日は「アンティークとは?」「装飾美術とは?」「ヴィンテージ、コレクタブル、レトロ、ブロカント、デッドストック・・・」といった定義をみなさんで解明し、そして陶磁器、銀器、ガラスに関しての基本的な知識を学びます。

幸いランチも解禁となり、アクリル板のある天井高のレストランで美味しくいただきました。

2日目は午前中にZoomで集合しての家具や様式、そしてアンティーク・マーケットの昨今についてのお話をし、午後の見学はバラが見頃の鳩山会館を訪れました。

様式の名手と謳われた岡田信一郎氏の建築です。

夕暮れ時も美しい天井の影。

バラの開花の季節は混み合うのですが今日はそれほどでもなく、お天気にも恵まれお庭もゆっくりと探索することができました。和館も中は見られませんが近くまで行けました。

(こちらの鯉たちは、いい餌を食べて暮らしているそうです!)

お疲れ様会は、栗ブリュレを。

楽しい2日間の講習会でした。
ご受講者のみなさま、お疲れ様でした。

1年ぶりのアンテイーク検定講習・2級

緊急事態宣言の明けた10月より、少しずつ日常が戻ってきていますね。

当協会もこれまで控えていたAEAOサロン倶楽部の集まりを開始、またアンティーク検定講習も実施いたしました。2級は3級を合格していることが受講条件ですのでみなさんすでに過去の検定試験で3級を合格しており、さらなるブラッシュアップのための受講となりました。

前半は「鑑定とは何をすればよいのか」について。陶磁器、銀器、ガラスなどを実際に手に取り、それぞれのdescriptionを行う練習をします。普段受動的に「これはこういうものですよ」と教わることに慣れている日本人、さて自分がものを説明する側になって言語化するという作業は、慣れていないとなかなか難しいかもしれません。オークションのエントリーカタログを書けるようになる、これが2級の実力です。

西洋美術史もルネサンスから20世紀まで一気に行い、後半では写真や版画と複製芸術について、モードや宝飾芸術、またアートマーケット、ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへの流れなど幅広く学びます。前半で行なった鑑定を、今度は英語で表現する、という練習も行いました。

見学は東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)での「英国王室が愛した花々」展にパナソニック汐留美術館での「ブダペスト国立工芸美術館名品展」。どちらも予約制のおかげでゆっくりと堪能することができました。

ディプロマ授与の会場はパークホテル東京内のアートカラーズダイニングにて。このホテルはアートフェア東京の会場にもなりますが、お泊まりの方にとっては「美術館のようなホテル」としてとても有名です。

講習者全員が全過程を履修し、無事2級の修了ディプロマが授与されました。

9月に行う予定だった3級は、11月に日程を延期して行います。