展覧会」カテゴリーアーカイブ

かっこよすぎるカッサンドル!

 AEAOサロン倶楽部、2月の会は、現在埼玉県立近代美術館で開催されている「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」の見学と、特別講演会の参加でした。もちろんプレ・レクチャーも、お茶&お菓子付きで!
 

 カッサンドルといえば、あの有名な「ノルマンディ号」がすぐに思い浮かんできます。イヴ・サン・ローランの「YSL」のロゴも、カッサンドルの作品です。
 
 
 
 
 

 よく言われていることですが、アール・ヌーヴォーもアール・デコも、一時期「粗大ごみ」扱いされていた時代がありました。どちらもブームが去ってしまって、完全に過去の遺物、おばあちゃんの時代の、もう物置に捨てられているもの・・・そんな50年代に、カッサンドルのポスターをコレクションしていた、先見の明のある人が我が国にいたのです。
 

 BA-TSUの創業者である松本瑠樹氏(1946-2012)、彼が生涯をかけて蒐集したポスターの一部が、今回の展覧会にて展示されています。そしてこのコレクションは、世界最高峰のレベルであり、こんな素晴らしいものが我が国で見られることに、同じ日本人として感謝しなくては。
 

 今日の岡部昌幸氏の講演会でも言われていましたが、「不動産に掘り出し物はない、でも芸術品には、掘り出し物はある。良いものは、安い(時期が必ずある)」!!
 

 では、なぜカッサンドルの作品はかっこ良いのか?
 岡部氏は、この秘密を黄金分割の概念から紐解いていきます。美の原理を探求、秘密を発見することから生まれた黄金分割、一般に黄金律と呼ばれる1:1.618こそが自然の美のバランスであり、それをカッサンドルは商業芸術であるポスターに取り入れることに成功したのでした。
 

 またカッサンドルのタイポグラフィーの芸術性の高さにも驚かされます。今、わたしたちが使う、パソコンでのフォントのベースとなるような書体のデザイン、カッサンドルはすでに1920年代に作っていたのですから。
 

ビフュール(Bifur、1929年)
 

 

アシエ(Acier、1935年)
 


 
ペニョ(Peignot、1937年)
 

 

 今回の展覧会では、リトグラフのポスター以外にも、いくつかの原画が同時に展示されています。また、カッサンドルがデザインしたLPジャケット、缶ケース、ボナルのガラス瓶まで・・・今でもパリの蚤の市に眠っているかもしれない、お宝カッサンドルが満載です。
 

「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」

2017/2/11〜3/26
埼玉県立近代美術館
 
 


かわいいナビ派の装飾

 三菱一号館美術館にて、『オルセーのナビ派展』が開幕しました。副題は、「美の預言者たちーささやきとざわめき」。
 


 
 ゴーギャンを師とし、前衛的な活動を行ったナビ派の作家、ボナール、ヴュイヤール、セリュジエ、ヴァロットン、ドニなどの逸品が展示されていますが、今のわたしたちの目には、前衛的どころか、「かわいい〜」になってしまうほど、愛らしい作品のオンパレードです。
 

 
 

 

 その中には、ヴュイヤールが絵付けをした、磁器のお皿も展示されています。リモージュ・アビランドの生地を示す刻印が入っています。
 
 

 絵画における「装飾」という機能に関心を持っていたとされるナビ派の作家たちは、絵画以外にも、舞台芸術、装飾画、ステンドグラス、工芸、グラフィックデザインなど、さまざまな世界で活躍します。
 

 ナビ派の装飾については、4月期のよみうりカルチャー恵比寿、目黒学園カルチャースクールにてプログラミングしています。
 
 


日本人の大好きな、マリー・アントワネットの展覧会

 ヴェルサイユ宮殿監修、というお墨付きの「マリー・アントワネット展」が、森アーツセンターギャラリーにて開催されています。連日多くのマリー・ファン(?)が押しかけているようです。
 

 この展覧会、西洋アンティーク好きな我々にも、たくさんの参考となる作品の宝庫です。というのも、18世紀後半のフランス装飾美術工芸品がすべて、この中に押し込められているからです。
 

・モードとジュエリー
 

 フランスがモードの中心となる18世紀、マリー・アントワネットがヨーロッパのファッションリーダーの役目を果たすのが1770年代。洋服、靴、髪型、アクセサリー・・・ロココから新古典への流れの中で、マリー・アントワネットのファッションがどのように彩られていくのでしょう。
 

・漆器コレクション
 

 チャイナと言えば磁器、ジャパンと言えば漆器、というのは、ヨーロッパ工芸界での常識ですが、マリー・アントワネットもお母様同様漆器好きで、コレクションをしていたようです。本展覧会では、17世紀末から18世紀にかけての、マリー・アントワネットが持っていた日本の漆工芸品を見ることができます。

 

17世紀末~18世紀初 木、漆 6.5×10.2cm ヴェルサイユ宮殿美術館(パリ、ギメ美術館より寄託) ©神戸シュン/NTV

17世紀末~18世紀初 木、漆 6.5×10.2cm
ヴェルサイユ宮殿美術館(パリ、ギメ美術館より寄託)
©神戸シュン/NTV


 

・磁器コレクション
 

 カオリンがマイセンで発見されてから遅れること半世紀以上、ようやくフランスでもリモージュ郊外でカオリンが発見され、硬質磁器の焼成ができるようになります。本展覧会では、軟質磁器と硬質磁器の両方で焼かれた、セーヴルの食器セットが展示されています。

 

1784年頃 磁器、軟質陶土、硬質陶土、釉薬、金彩 ヴェルサイユ宮殿美術館 ©Château de Versailles (Dist. RMN-GP)/©Jean-Marc Manaï

1784年頃 磁器、軟質陶土、硬質陶土、釉薬、金彩
ヴェルサイユ宮殿美術館
©Château de Versailles (Dist. RMN-GP)/©Jean-Marc Manaï

 

・家具
 

 フランス家具の歴史で、ルイ16世様式、第一次新古典主義様式とも言われるこのスタイルは、古代回帰が特徴です。マリー・アントワネットのプライベート・アパルトマンで、ジャコブに発注された椅子を見ると、お約束とも言えるパルメット装飾、エトルリア装飾がみられます。

 

1788年頃 ブナ材、木彫、塗装 96.3×63.3×65.3cm ヴェルサイユ宮殿美術館 ©RMN-GP (Château de Versailles)

1788年頃 ブナ材、木彫、塗装 96.3×63.3×65.3cm
ヴェルサイユ宮殿美術館
©RMN-GP (Château de Versailles)

 

 本展覧会は、来年の2月26日まで。きっと年末年始は混みそうですから、お早めに見ておかれるとよいでしょう。
 
 


モードとインテリアの20世紀展

 9/17より11/23までの会期で「モードとインテリアの20世紀展」が汐留・パナソニック・ミュージアムにて開催されています。
 

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 作品はすべて、島根県立石見美術館のコレクション。ここは、日本人で初めてパリ・オート・クチュール協会に名を連ねた、森英恵さんの出身地でもあります。
 

 この展覧会では、ただファッションを時代別に眺めるだけでなく、各時代のインテリアとともに追うことができます。19世紀初めのアンピール(帝政様式)のリバイバル、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、ミッドセンチュリーといった装飾様式を一緒に学ぶことができます。
 

 詳しくは、下記公式HPにて
 

 『モードとインテリアの20世紀展』
 

 ファッション展は珍しくないですが、インテリア(室内装飾)と絡めた展示により、装飾美術の流れを知ることのできる、大変有意義な展覧会です。お見逃しなく!
 

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アート・ディーラー(画商)とアーティスト

アーティストの名前は知られていても、彼らを世に出したアート・ディーラーの名前まではなかなか後世に伝えられないのかもしれません。メディチ家がルネサンス期の芸術家たちを擁護するパトロンとしての力を持っていたのは知られていますが、近現代においては君主の擁護がなくなった代わりに、アート・ディーラーがその役目を担った、と言ってもよいでしょう。

現在、パリのリュクサンブール美術館で開催されている展覧会、
 

expo_Ruel

             『Paul Durand-Ruel
          Le pari de l’impressionnisme
             Manet, Monet, Renoir』
           『ポール・デュラン=リュエル
                印象派の賭
            マネ、モネ、ルノアール』
 

などは、まさに印象派のアート・ディーラーとしてのポール・デュラン=リュエルの扱った作品を展示しています。パリの後、今年はロンドンのナショナルギャラリー、アメリカのフィラデルフィア美術館を巡回します。
 

アート好きなパリっ子でも、実はデュラン=リュエルの名前を知らない人は沢山います。「そんな画家の名前、聞いた事ない」って、やはりアーティスト名と勘違いしてしまうのですね。
 

ルノワールによるデュラン=リュエルの肖像画

ルノワールによるデュラン=リュエルの肖像画

現在では「ギャラリスト」と言う呼び名もあり、彼らは自らギャラリーオーナーとなって、芸術家を一緒に育て、プロモートしていく仕事ですから、ただ作品を転売するアート・ブローカーとは違う、という自負を持っている人も多いようです。19世紀〜20世紀にかけてのフランスでは、このデュラン=リュエルをはじめ、ヴォラール、カーンワイラー、ギヨームなど、多くのディーラーたちが芸術家を支え、世に送り出したという経緯がありますから、彼らの功績をもっと評価してもよいのでしょうね。