読書会『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』第3期がスタート!

月1回、土曜日のおたのしみ読書会、『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』の第3期がスタートしました。すでに第1期、第2期を受講のおなじみの方々ばかりではありますが、信者ではない方などしばらく空くと「え~っと、この人は誰だっけ」「何した人だっけ」と何度も聞いたのに忘れてしまった聖人の名前や偉業も復習しつつの、第5章に入ります。

まずは聖母マリア。超有名人でありながら、実は素性があまり知られていない上、聖書ではほとんど記述がないのです。マリア様は神様なの?神の母親ってことは神?人間?でも処女でキリストを授かったって、それどういうこと?と謎だらけですよね。その辺りを教会ではどのように位置づけられているのかも含めながら、色々な絵画で聖母マリアの生涯を見ていきました。

そして教科書にはないですが、ロザリオについての解説をしていただきました。よくアンティークの聖品グッズとしてもメダイやロザリアは人気アイテム、信者でない人もお守りとして持っていることがありますが、そもそもロザリオってどう使うの?ネックレスやブレスレットではないわよね、ということで、ロザリオの使用方法、ロザリオがいつから使われ始めたのか、などのお話をいただきました。

数々のロザリオ

さて、ここから有名聖人が登場します。まず洗礼者ヨハネ、イエスよりも早く生まれた人物です。旧約と新約をちょうどつなぐ位置に存在します。そしてサロメ。ファム・ファタル・ブームの頃に脚光を浴びた美少女にして悪女の代名詞のように使われますが、そもそもサロメって聖書ではどのように記述されていたかというと…実はサロメという名前すら出ていなかったのですね。

続いて福音書の著者である聖人たち、今でいうジャーナリストでしょうか、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネがそれぞれ登場する絵画を見ながら何をした人か、を学びます。

そして十二使徒、イエスから選ばれた弟子たちで、中に裏切りもののユダも含まれています。彼らを一同に描いたのがあの誰もが知っているダ・ヴィンチの「最後の晩餐」ですね。

聖人を学ぶ際に切っても切り離せないのがアトリビュートと呼ばれる、記号。それぞれの聖人のキャラ付けをするための小道具があり、それが描かれていたら「あっ、この人だ」とわかるようになっているのですね。

この辺りが、よく中山先生の仰る「絵画は読むもの」につながるわけで、やはり西洋絵画、特に宗教画は無垢の感性だけではその面白さがわかりません。もちろん優れた絵画に言葉は要らない、はその通りなのですが、ここに知識というものが加わるとその絵画の魅力が何十倍にも感じられるのですね。

アンティーク検定講習・2級=後半の部=

今週末は第14回アンティーク検定講習・2級の後半の部が行われました。土曜日は夏のような気温、日曜日は冬の始まりのような気温と気候が乱高下の中、午前のオンライン講習に午後の見学講習、2日間とも楽しく学びました。

オンライン講習では西洋美術史の前半からの続き、モードやジュエリー史の宝飾芸術の世界、現代時事にアート・マーケット、そして家具と建築について、それぞれ1時間ずつと短いながらも濃い内容にまとめられた講座でした。アンティークと一言で言っても馴染みのある分野と全く目にも留まらなかった分野が人それぞれで、この講習ではその全てを網羅するだけになかなか大変です。それでもみなさん、このマラソンに頑張ってついて来て下さいました。

土曜日の見学講習は、パナソニック汐留美術館で開催中の「ベル・エポック―美しい時代」展の鑑賞、土日は日時指定予約制だけあってスムーズに入場。19世紀末から第一次大戦までの古き佳き時代、総合芸術が開花するパリに集まった芸術家、工芸作家、装飾家たちの作品~美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、そして科学~がコンパクトにまとめられた幕の内弁当豪華版でした。

日曜日の見学は、迎賓館・赤坂離宮。明治以降の素敵な洋館は各地にいくつか残されていますが、東宮御所として作られたこの建物は外観も内装もすべてレベチです!

ちょうど午前のオンライン講座で家具や建築を学んだばかりだったので、「この椅子はルイ16世様式」「兜や戦争モチーフ、これはアンピールね」と答え合わせも順調に。ところどころ迎賓館専属のガイドさんに、この食器はどこのメーカーのものか(陶磁器はノリタケと大倉陶園、銀器は燕三条、クリスタルはカガミ、とすべて国産でした)、シャンデリアは当時のオリジナルのものなのか、などと色々質問もしてみました。ここのガイドさんは見学者から質問されたいオーラを満面に出しているので、どんな微細なことでも気軽に聞けるのですよね。

今年に入って、部屋によっては撮影可の日も設定されていたのですが今日は残念ながらすべての部屋での写真撮影が禁止、それでも青空の中で映える堂々とした松に噴水の主庭はその美しさと優雅さに「雅」を感じます。

前回訪れたときは半分工事中だった正門も奇麗にお化粧直しされていました。

ところで昨今どこでも観光地にはインバウンドの観光客があふれていますが、ここはほぼ日本人、あとは少数の東アジアの人たちで明治神宮とはやはり違いますね。

最後の懇親会は、迎賓館の前庭でもキッチンカーが出ていてカクテルが楽しめたのですが、別邸にあるカーブドッチ迎賓館のカフェへ。ガラス張りの明るい空間の中、お茶&スイーツをいただきながら、2級の修了証授与が行われました。受講者のみなさま、おめでとうございました。本日、こうしてあらたなる鑑定士が誕生しました。

アンティーク検定講習・2級

9月の最終週末は、アンティーク検定講習・2級の前半の部が行われました。講習参加者はみなさん3級を講習または試験で取得していますので、既に基礎的な知識は持っている方々ばかりです。2級でより深い知識と鑑定の術を培うべく、今回の講習を受講されています。

初日は終日座学講習で、まずは顔合わせと自己紹介。なぜアンティークに関心を持っているのか、どこに惹かれてハマったのか、そんな思いを語り合ったところでテーブルウェアの歴史をざっと学びます。

「美しいフランステーブルウェアの教科書」も、「西洋骨董鑑定の教科書」もどちらも写真や画像が豊富で良い本なのですが、情報量が多すぎて事典的なものとなってしまい、どこをどう噛み砕いて読んでいけばよいのか、独学ではなかなか難しいかもしれません。

そこで実際にモノを見て、これは何のための道具?何用のカトラリー?といった知識も身につけると同時に、実際にモノを鑑定するという実技に入ります。

普段は、例えばアンティークショップにある品物、またはオークションに出品されている品物の解説を読む=受動な立場なのですが、この2級では自らそれらを鑑定する=能動、の作業を行います。

言われればそうだけど、自分で言語化する、というのは慣れていないとなかなかできないもの、最初は「え~っと…」と戸惑うのですが、何を言えばよいのか、リストに沿って言語化していくうちに出来るようになります。

みなさんそれぞれ配られた鑑定品のdescriptionを仕上げていきます。サインが摩耗していて読めない、これは手彩?プリント?この刻印はいったい何?と、アンティーク品ですから状態も様々。様式は?装飾文様は?とさまざまな角度で紐解いていきます。ちなみにこの鑑定品はそのままお持ち帰りいただけるのですよ。

どっと疲れたところでお昼は近くのお店でランチ。講習会場近辺のレストランは色々利用しましたがコロナ以降なくなってしまったり経営が変わってしまったりで、そんな中このところ利用していて評判のよいのが「スパイス料理とワインZero」という名の、カレー屋さん。全くカレーの雰囲気がない店名と店内なのですが、お昼のカレーが美味しくて、みなさん満足してくださいます。

焼き立てのナンが絶品!

午後の3限目は銀器の鑑定を、刻印を入念に読み込みながら実践です。休憩時にルイボス・ティと生クリーム大福で目の疲れを取ったところで、4限目は複製芸術について。写真、版画の世界を紐解いていきます。よく蚤の市などで見つかる古い写真やファッションプレートの見かたを、ルーペを使いながらの鑑定ごっこで初日の講習が終わりました。

いつも講習で利用している東京芸術劇場が来年7月中旬まで一時休館とのことで、次回の講習はこの便利な会場が利用できずに残念。

1日目は終日会場にこもっての講習でしたが、翌2日目は午前にオンライン講習が2コマ。1コマ目はアール・ヌーヴォー&アール・デコ。ちょうど午後の見学地にも沿ったテーマですね。そして2コマ目は西洋美術史I。なぜアンティークを勉強するのに西洋美術史をやらなくてはいけないのか、というご意見(ご批判)はよくあるのですが、アンティーク=装飾美術は西洋美術史と深くかかわっているのです。西洋美術史の流れを知らずして装飾工芸品を語ることはできないのです。

オンライン講座が正午で終わり、午後は東京都庭園美術館にて集合、当協会の検定監修者である岡部昌幸先生による解説で館内を見て回ります。とはいえ「館内」に入れたのは実に集合から1時間後、まず庭園にてこの館が建てられた歴史、国の重要文化財に指定されるまでの経緯、野外彫刻の存在から茶室見学、建物の外観での建築としての見かたなど教わり、そしてようやく「建物公開2024 あかり、ともるとき」展を鑑賞。

外は時折小雨が降ったり止んだりのどんよりなお天気な上、展覧会も会期の初めにも関わらずかなりの入館者でにぎわっていました。そのためか館内カフェも混み合っており、予約時で7組待ちでしたが、ちょうど一通り旧館を鑑賞できたタイミングで席に案内され、お茶とケーキでの懇親会を兼ねたひと時も。

最後に新館の方の展示品も鑑賞し、足も脳みそもフル回転でしたがこれにて前半の講習が終了いたしました。後半はまた3週間後ですね。ご参加いただいたみなさま、お疲れ様でした!

9月のAEAOサロン倶楽部「大人の銀座のアート遠足 Vol.2」

今日は2023年8月に実施しました「大人の銀座のアート遠足」の第二弾、昨年はさすがに暑かったので今年は暑さの和らぐ9月に設定したのですが、まさかの真夏のまま!来年は10月以降にしましょうね。

スタートは銀座にてプレ・レクチャー&懇親会ランチを1925年創業・洋食の原点とも言うべきレストラン「三笠会館」にて。中二階を意味するメッツアニーノがお店の名前なのですが、その名の通り中二階にあり、並木通りに面した席をリザーブしてくださいました。

前菜3種に、淡路島産玉ねぎの冷製スープ、お好みのパスタまたはリゾットを選び、そしてドルチェも2種類選べます。銀座の老舗ならではのとても上品なトラットリアでした。今回は初めて参加された方もいらして、アート&アンティーク全般に興味があるとのこと、きっと新しい将来の鑑定士さんが誕生しそうです。

ランチの後は、エルメス・フォーラムで内藤礼の「生まれておいで 生きておいで」展を見学、近くの泰明小学校の建築(大正建築の復興)外観なども見て、今話題のプラネタリアTOKYOへ。

事前に会員登録を済ませ、予約開始と同時に押さえたので全員プレミアム・シートで『イタリア星空散歩』を鑑賞、プレミアム・シートは靴を脱いで寝転びながら空を眺められるソファーシートなのです。

ギリシア神話に連なるローマ神話から星々を読み解く擬似イタリア旅行の後は、ポーラ・ミュージアム・アネックスにてRYU ITADANI「Everyday Life « THERE »」展を鑑賞、ポップな色彩と顔料の質感が印象的でした。

お天気が怪しくなりそうでしたが、慌てて1930年建築のYONEIビルのファサードと、1932年建築の銀座奥野ビルを探し当てたところでポツリポツリと雨が!

銀座は歴史的建造物にアート、そしてまだまだ面白い発見があって飽きないですね。またVol.3も企画してみたいと思います。

8月のサロン「朝活!さようなら学士会館、こんにちは如水会館」

8月のAEAOサロン倶楽部は、今年12月をもって再開発事業計画により営業終了となる学士会館の建物見学に参加させていただきました。この建物見学ツアー、前々月に抽選による完全予約制の申し込みが開始されるのですが、予約開始時間と同時に申し込んでも秒で受付が終了してしまいます。今回は奇跡的に当協会で6名の枠が取れ、学士会館をはじめ神保町界隈を知り尽くす会にしてみました。

朝10時にフロント集合ということで我々は10分前に招集をかけたのですが、総勢10名のツアーのはずなのにどうも人が多い…どうやらあまりに多くの申し込みがあり、今日は特別に4本のツアーが作られたということでした。

私たち6名と、他の方々で1グループとなり、学士会館のベテランスタッフの方に案内いただきます。

すでに営業終了となってしまった、フランス料理レストラン「ラタン」の内部。チューダーゴシック装飾です。何度か当協会でも奥の個室を借りてサロンを開催しましたが、クラシカルな内装にゆったりした配置、お料理も尖ったものはなく安定した伝統的フレンチ、是非また復活してほしいです。

ここにポール・シニャックの絵があったのですが、今は取り外されて保管されているとのこと。

かつて正面だった旧館側の階段広間は人造石張りの十二角形の柱に、KAWAIのオルガン。

201号室のロビーとエレベーターホールを分けるアーチの装飾も素敵。

建設当初の姿をほぼ残しているという201号室、ドラマ「半沢直樹」に使われた土下座部屋で有名になりましたね。

色々な部屋を見せていただきましたが、神殿もありました!そして今日はお天気も良いということで、なんと屋上にも上がらせていただきました。

96年前のこの魅力ある建物、その後どうなってしまうのか尋ねたところ、白山通りの拡張計画(都市計画)に伴いまず新館を解体、そして旧館を曳家保存するとのこと、7メートルくらいセットバックするのだそうです。少しずつ慎重に曳家工法で動かす、その過程を時々神保町に出かけた際に見ていくことにしましょう。

記念碑も再開発でどうなってしまうのか、今の段階では不明なようでした。

旧帝大とされる7大学のOBクラブの学士会館の斜め横に、今度は一橋大学の「如水会」の建物、如水会館があります。如水という言葉は渋沢栄一が命名したそうです。こちらの建物の竣工は学士会館より早い1919年でしたが、関東大震災で被災し、大正末に全館修復、その建物も1979年に解体し新会館が竣工したのは1982年、比較的新しい建物なのですが、外観もロビーもクラシカルな雰囲気で、アンティーク好きの我々には落ち着きます。

ランチは1Fにあるカフェ&パブ マーキュリーでコースランチを。現在運営は東京會舘が受託しているのですが、デザートはオプションで東京會舘の名物「マロン・シャンテリー」にしてもらいました。初代製菓長がモンブランを日本人向けにアレンジして発案したと言われるこのスイーツ、全員ペロッと完食。そしてお店の方から私たち全員にマドレーヌをお土産に頂いてしまいました。

食後、強い日差しの中、日陰を求めながら少しだけすずらん通り界隈をみなさんで散策。

明治20年創業の「文房堂」の外観、そして小学館運営の映画館「神保町シアター」、2Fに「神保町よしもと漫才劇場」が入っています。有名な喫茶店「さぼうる」も。

新旧の建物が入り混じる神保町、古き佳きものを上手に残していってほしいものですね。