第10回アンティーク検定講習・3級が終了

前週に続き、またもや台風でヤキモキした三連休でしたが、週末に第10回アンティーク検定講習・3級が開催されました。今回より受講形態もコロナ前に戻し、講師と受講者みなさんで顔を合わせての会場講習を基本としています。

3級はご存知の通り検定試験も実施されており、試験を受けて合格すれば認定証を得ることもできます。しかしながら講習を受ける多くの方が「一人で本を読んで勉強してもつまらない」「納得して学んで、きちんと理解したい」という理由でしょうか、お忙しい中、貴重な週末を割いてご参加される方の需要が高まっています。そして終了後「やっぱり(試験ではなく)講習にしてよかった」とみなさん仰るのですが、それはやはり資格の取得が中身を伴った、という実感から来るものだからでしょう。

3級の講習、たった2日間ではありますが、単なる講義オンリーではなく、講習・アトリエ(鑑定)・見学を通して「アンティークとは何か」「装飾美術って?」「様式って?」という西洋アンティークの基礎を学んでいきます。

初日は顔合わせのウェルカム・コーヒーに続き、「アンティークとは何でしょう?」と定義をみなさんで考えることからスタート。100年の関税法、古物を表す異なる言い方、西洋とは、ファイン・アーツとの違い、概念を整理します。

そして「陶磁器」入門。普段何気なく使っている「陶磁器」という言葉、陶器と磁器は何が違うのか、陶磁器のルーツはどこから来たのか、よく聞く「ボーン・チャイナ」って何?と陶磁器のいろはを学びます。

みなさんでのランチを挟んで、次は銀器入門。なぜ銀器にだけは昔から刻印が入っているのか、「純銀」ってどういう定義なのか、実際に売っている銀器をどうやって見分けたらよいのか、各種ルーペの使い方と共に実際にルーペと銀食器を手にしながら自分の目で確かめていきます。

目をかなり酷使しますので、刻印の判読に成功した方からGODIVAのガトーでお茶タイム。

陶磁器、銀器と経た後、初日の仕上げはガラス。ヨーロッパにおけるガラスの名産地は?それぞれのガラスの特徴は?クリスタルとガラスの違いは?ガラスの製法、加飾法について学びます。

最後に7月に行われたアンティーク検定試験・3級の問題で陶磁器・銀器・ガラスの箇所を一緒に解きながらのまとめを行いますが、さすがに学んだ直後とあって、みなさんすでに知識が身についています!

2日目、午前はZoomによる「様式」についてのお勉強。建築や家具という大きなものから様式は広まり、やがて小さなものにまで波及していくので、有名な建造物を見ながら様式を理解し、椅子やコンソールなどの家具でその様式がどのように表れているかを見ていきます。

そして午後は見学。今日は鳩山会館を訪れました。バラの剪定を終えたばかりで満開の時期には早いのですが、雨上がりの秋晴れとあって、多くの方が訪れていました。私たちも日本の洋館の歴史、様式建築とは?和洋館並列型にした社会的背景、鳩山会館の「アダム様式」とは何か・・・建築と家具を実際に触れ、ほどよい運動とお喋りのまま、場所を移しお茶とスイーツタイムを兼ねたディプロマ授与。ここでも多くの質問が飛び交い、やり残した試験問題も一緒に行い、若干時間をオーバーしつつもみなさんで楽しい2日間の講習を終えました。

引き続き10月の2級を受講される方、2級は来年早々に受講される方など、みなさん学びの講習を続けてくださるとのこと、頼もしい限りです。

次回のアンティーク検定講習・3級は2023年1月に予定しています。

「フィン・ユールとデンマークの椅子」展と、創作料理

秋の三連休第一弾は台風で、日本全国で被害も出てしまい行楽日和とはなりませんでしたが、その三連休の最終日にAEAOサロン倶楽部・9月の会が開催されました。東京都美術館で開催中の展覧会フィン・ユールとデンマークの椅子」展の見学と体験です。

今回のサロンに先立ち、北欧料理、できればデンマーク料理が堪能できれば、と思っていましたが東京都美術館のある上野界隈にはそのようなお店が見つかりません。このサロンではお食事を楽しみ懇親することも会の趣旨ですので、それではどこかふさわしいレストランはないかな、と探して辿り着いたのが、今回利用しました Bistro NOHGAです。なんとなく北欧っぽいネーミング?(いえ、違いますね!)

NOHGA HOTEL内にあるこのビストロは、非常にこだわりのコンセプトを主張したお店で、たとえば地域の食材を使ったものがたくさん出てきます。コーヒーはコーヒー愛好家の間でも有名な「蕪木」珈琲で自家焙煎しているもの、パンは浅草にあるマニファクチュールというお店のもの、グラスは湯島にある木村硝子さんのもの、と地域の優れものを上手にアピールしています。

「これは・・・かなり当たりのお店では!?」とみなさんお料理も含め大満足。ホテルの方もビストロの方も非常に気持ちのよい接客で、今度は泊まってみたい、なんて声も。

台風の影響で晴れたかと思うと嵐、雨、という目まぐるしい天気の中、晴れ間がやってきたので今のうち、とレストランから東京都美術館へ移動。ちょっとした近道コースがあり、それほど濡れることもなく美術館へ。

こんな日にわざわざ来る人もそういないよね、という勝手な想像はアート好きの老若男女によって覆されましたが、並ぶこともなく展示会場へ入れました。

写真撮影OKの部屋とNGの部屋に分かれますが、かなりの作品で撮影がOKになっています。

フィン・ユールだけでなくアルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナー、イブ・コフォード、ラーセンをはじめとするデンマークの名だたる建築家・家具デザイナーの作品が勢揃いです。

最後の部屋は、これらの椅子に実際に座って体験できるコーナー。そう、家具工芸品は鑑賞するものではなく人が使うものですから、いくらフォルムが美しくても座り心地が悪い椅子ならごめんですよね、それで座ってみると・・・量販家具店で試し座りしていたものとは比べ物にならないコンフォートと優雅感が湧き出てきます!

台風で鬱々とした連休も、このサロンでちょっと気分良く過ごせた、という感想を頂きまして、主催者も大満足です。ご参加のみなさま、有難うございました。

「フィンユールとデンマークの椅子」展は10月9日まで東京都美術館にて開催しています。

新シリーズ・アカデメイア

2022年秋よりアカデメイアの新しいコースがスタートします。1つは9月よりスタートの「19世紀のイギリスとフランス ~モノ、コト、流行~」シリーズ、もう1つは10月よりスタートの「宝飾品 ~肖像画の中に見るジュエリー~」シリーズ、どちらも当協会アンティーク・スペシャリストによる講座です。

夏休み明け最初の活動は9月17日(土)、このアカデメイアの新コースの第1回「ポスターと色彩革命」でスタートしました。

19世紀末はポスターの黄金時代と言われますが、なぜこの時期に黄金時代が出現したのか、今ならポスターオタクと呼ばれそうなポスター愛好家「アフィショマニー」が出現した背景はなんだったのか、そんな社会現象を紐解きます。

また私たちが一般にポスターと呼んでいるこの複製芸術は、どんな技術が用いられているのか、版画の種類や歴史についても学びました。カラーリトグラフとクロモリトグラフの違い、どのようにして見分けるかわかりますか?今回のアカデメイア受講生なら、もう答えはおわかりですね。

美術史的にも有名で、よくその図版を目にするジュール・シェレ、ピエール・ボナール、トゥールーズ・ロートレック、アルフォンス・ミュシャといったポスター大家の作品を見ながら、絵画ではないポスターならではの構図や色使いに関する理由がわかると、なぜこれれほどこの時代に人気を呼び、人々が熱狂して収集し始めたのかがわかる、大変面白いテーマでした。

次回は10月8日(土)、「鉄道旅行」です。お申し込みは随時受け付けています。見逃し配信オンデマンドもありますので、気になる方は是非。

大満足の旧細川護立邸・和敬塾見学と椿山荘でのお食事、オプションにルルドの泉と肥後細川庭園

AEAOサロン倶楽部、夏休みに入る前の7月第2部の会は、申し込み開始から5分で満席となってしまった「旧細川護立邸と、椿山荘で愉しむランチ」でした。キャンセル待ちのリクエストも何人かあり人数増を試みたのですが、すでに和敬塾の見学人数も定員オーバーということで、また秋以降にリベンジ会を行おうと思っています。

まずはその庭園が美しいラグジュアリーホテル・椿山荘でのランチ。ゆったりとしたこのホテルはロビーから回廊から至る所に品格を感じさせる美術品・工芸品が展示されています。ロブマイヤーのグラスなど、見たこともないようなシリーズもあって、目の保養になります。

11時半から食事のできる唯一のレストラン「ザ・ビストロ」で、美味しいコース料理をいただきます。今回は、後で歩き回りますのでノンアルコールで!

椿山荘を出て和敬塾へ行く間にある東京カテドラル・聖マリア大聖堂(丹下健三設計)、ルルドの泉をチラッと見学して、いよいよお殿様のお屋敷へ。

現在は「和敬塾」となっていますが、ここは旧細川護立邸。肥後熊本藩主を務めた細川家の第16代当主であられた方のお屋敷です。元々は和洋館並列型住宅を建てていたのですが、関東大震災で被害を受け、昭和11年(1936年)にチューダー様式を基調とした洋館単独型の新本館を立て直しています。

その邸宅と敷地は戦後接収されオランダ人が住まわれていたそうですが、接収解除後に前川喜作が細川家より購入し、学生寮を設立、現在の「和敬塾」に至っています。ちなみにどこか特定の学校の寮ではなく、学生の大学はさまざまだそうで、近場の早稲田大学がその半分を占めているようです。コロナ前までは留学生も20%ほど寄宿されていたとか。

本館内部はガイド付きで細部までご案内いただき、明治の洋館ではない昭和の洋館、不穏な時代に邸宅のセキュリティを如何に工夫したか、空調は、冷暖房は、日差しの向きは、といった現代にも通ずる家屋の設計をも丁寧にご説明いただきました。

写真は撮り放題でしたが、blogやSNSへのupはご法度ということで、今回は見学終了後にいただいたポストカードでその雰囲気を残したいと思います。

細川侯爵は「美術の殿様」とも言われており、美術品のコレクションにも熱心でした。大抵お金持ちで地位のある方は古今東西美術品を収集しますが、この方は実は借金をしてまでも美術品を購入していたとか。そのコレクションは、この近くに美術館として永青文庫に収められています。今日は残念ながら展示替えで閉館中。

その後、現在は都立公園となっている池泉回遊式庭園の肥後細川庭園、リニューアルされた松馨閣も見学し、たっぷり歩いた1日でした。気温30度を越す蒸し蒸しした日ではありましたが、楽しかったですね。ご参加のみなさま、お疲れ様でした。

AEAOサロン倶楽部、8月はお休みです。また秋以降のサロンは決まり次第公表したいと思います。

「鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅」見学と、天井高15mの大空間

AEAOサロン倶楽部・7月は変則的に平日に2回行います。その第1回目は、日比谷図書文化館にて開催されています「鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅」見学。鹿島茂さんといえばフランス文学者としてよりもフランスの古書蒐集家として知られ、現在では神保町にPASSAGEという共同書店をオープンしたことでも有名ですが、2019年に開催された第一弾に続きそのコレクション第二弾が今年5月から日比谷図書文化館にて開催、これをじっくり鑑賞しない手はありません!

この日比谷図書文化館の目の前に、知る人ぞ知るレストランがあります。その名は「アラスカ」。『なぜエグゼクティブは、アラスカに集まるのか?』という本があるのですが、ここに通った者は出世できるというジンクスがあるとか!?

日本プレスセンタービルの10Fに入っているこのレストラン、しかし我々は出世欲というよりは食欲、しかもこのレストランの窓際のテーブルから見える景色は絶景で、またホールは天井高15メートルもあるドーム型で、とても贅沢な空間なのです。

お腹が空いていては細かい版画や字も頭に入らない、ということでまずは「アラスカ」にてフルコースのランチ。外の鬱陶しい雨も振り切ろうと、キールやらスパークリング・ワインやらでアペリティフから。

お料理は非常に正統派クラシックな「洋食」フレンチ。

ランチをゆっくり堪能した後は、いよいよコレクション展へ。

会期の終わりが近づいていますが、平日の午後はやはり穴場ですね。雨の日のせいか、会場は混み合っておらず、おかげでガラスケースの上にへばりつくように1点1点ゆっくり鑑賞できました。これぞ贅沢な、まるで独り占めしているかのような鑑賞。すでに前期に一度訪れたという参加者さんも、後期は展示替えで作品(または見開きのページ)が入れ替わっているせいか、やはりじっくり見入っていました!静かで豊かな時空間。

鹿島茂さんのコレクションは多岐にわたりますが、やはり芸術性の面で目を引くのがアール・デコのポショワール、そしてアラスカは1928年創業のレストラン、同時代性を感じますね!