ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間〜DAY 3〜

ロンドン2日目、今日は朝からまずコートールド美術館へ。コロナ禍にリニューアルをしていて、リニューアル中には作品を貸し出していたので、東京都美術館で開催されていた「コートールド展」をご覧になった方も多いのではないでしょうか。

ホテルからロンドン・バスに乗って出かけたところ、途中で「この先、戴冠式の準備で道路封鎖、はい全員降りて」と降ろされてしまい…さてどうしようと思っていましたがYOKOガイドが急遽新しい観光ルートを開拓してくださり、コヴェント・ガーデンやロイヤル・オペラなどを眺めながらコートールドへ。

予約はしてありヴァウチャーも持っているのですが、受付係が「ヴァウチャー」という言葉や存在を知らない…YOKOガイドによると、コロナ禍で多くの人が辞めてしまった後に急遽雇われたスタッフは社員教育ゼロのまま現場についているので、こんなことはしょっちゅうだ、と言っていましたが、旅を進めていくにつれどこでもこの現場のマネジメントの混乱にぶつかることになります。幸いガイドの巧みな交渉と説明で問題なく鑑賞できることに。コートールドの規模もコレクターの館としてふさわしく、絵画、工芸品、装飾美術がほどよいバランスで展示されており、疲れることなく満足して、ランチを兼ねたアフタヌーン・ティのホテルへ移動します。

日本では「ヌン活」と言われて若い女性たちに大人気のアフタヌーン・ティですが、本場イギリスではシンプルで、それでもボリューミー。午前中さんざん歩き回った身体でも最後のスイーツまで完食することは叶わず、一部はお持ち帰りにすることに。

午後はいよいよサザビーズへ。オークションでは、下見会(プレビュー、エクシビッションなどと呼びます)が必ず開かれ、下見会は誰でも見にいくことができます。今回はチャールズ3世の戴冠式に合わせた「戴冠式オークション」「SAMURAI」「日本の近代版画」のオークションの下見会が開催されていました。昨今は会場オークション以外にオンライン・オークションもあり、今回のオークションはすべてオンライン・オークションです。期間中入札することができ、下見会も開催されています。

サザビーズでゴージャスなトイレを借りた後(!)、次なるアンティーク・マーケットのカムデン・パッセージへ。ロンドンはお祝いムードが溢れていますので、街の散策も楽しい。

カムデン・パッセージはロンドンの北の地区、リージェンツ運河沿いにあり水曜と土曜日にオープンしているマーケットで、ストールと呼ばれるテントのマーケットが出るのですが、黄金のショッピングタイムは午前中。私たちが着いた16時くらいからはだんだん仕舞い始めるストールが目立ちましたが、それでもしぶとく何やら見つけて買ってしまいました。

毎日1万歩くらいは歩いているのでしょうか、この日の夜はフリーで、もうお腹空かないからとホテルでパッキングをする人や、近場に出かけようという人に分かれ、それぞれのロンドンの夜を過ごしました。

ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間〜DAY 2〜

ロンドン研修がこの日からスタートです。今回は在ロンドンのベテランガイド・YOKOさんがロビーに迎えにきてくださいました。ユーラシア旅行社さんと何度も事前打ち合わせを交わしてくださったおかげで私たちの研修目的や意図が200%正確に伝わっており、これ以上の人はいない、という方でした。

まずはウォーレス・コレクションへ。今回の研修では「コレクターの館」というのも一つのテーマで、大規模美術館(大英博物館やナショナル・ギャラリー、テート・ギャラリー)は訪れずに、かつてのコレクターたちの蒐集品のテーマや過程を館とともに楽しむのにここを避けては通れない、洗練された屋敷とコレクションです。ウォーレス・コレクションの成り立ちについてはオンライン説明会にてお話ししていますので、YouTubeをご覧くださいね。

ランチは最近新設されたというウォーレス・コレクションの中庭のカフェにて。「イギリスですから、美術館内カフェとはいっても、まあ味の保証は…」なんて旅行社さんと話していましたが、これがなんと美味しい!スープも、チキンのシュプレームもデザートもどれも美味しい。YOKOさんも美味しいと仰っていましたので、イギリスはどうやら美味しい国へ昇格していますよ!

ランチ後はアンティーク・マーケットを2つ回りました。ロンドンは曜日ごとに開かれているマーケットというのがあって、有名なところでいえば月曜日のコヴェント・ガーデン、土曜日のポートベロー、のように毎日どこかで何かがあるのですが、唯一ないのがこの火曜日。グリニッジまで行けば火曜日に開いているのですが、若干遠い上にホテルとは逆方向。

というわけで、午後は常設のマーケット、グレイズ・アンティーク・センターとアルフィーズを巡りました。アンティークを買う決定的なサインは「モノが自分のところに来たがっている」かどうか、よく「モノに呼ばれた」という表現を使いますが、マーケットを回っても何もピンとこないこともありますし、値段に関係なく「これだ!」と感じることもあります。

グレイズは高級なアンティークショップが入っていますが、ご参加者さんのお一人が「呼ばれた」ようで、素敵なプレートをお買い上げ。店主とお話しをしたところ、知識豊富でまともな店であることも判明しましたが、それもそのはず、鑑定士として書籍にもそのお名前が登場している人のお店でした。イギリスにおけるアングロ・ジャパニーズ・スタイルの陶器を主に扱っているお店で、クリストファー・ドレッサーの作品などもたくさん置いていました。

アルフィーズは正統派アンティークというよりは、ヴィンテージを扱っているマーケット、ロンドンは前日がメーデーのお休み、そして6日が戴冠式ということでこの週はクローズしているお店も多かったのですが、これもYOKOガイドの事前調査でオープンしているお店がそれなりにあることがわかっていたので訪れました。今回は少人数でもありましたのでロンドンバスで動いたのですが、エリアによって建築や雰囲気、人が変わるというのを実感できる旅で、このアルフィーズの辺りは中心部とはまた違ったエリアを垣間見られました。

みなさんで屋上のカフェで一息つき、そして迷路のようなアルフィーズをぐるぐる回り、買いやすいお値段のものも多かったのでそれぞれお買い物に精を出し、さて帰りましょうの直前で見つけたアンティーク食器店で立ち止まってまたお買い物、と一期一会の機会を十分に堪能してホテルへ。

夜は自由なのですが、前日のアシスタントさんが紹介してくださった、すぐ近くにあるちょっと高級なフード・マーケット内にフード・コートがあって食べられるようになっているということで、全員でホテル周りの散策も兼ねてそちらへ。お昼がコース料理だったためもうあまりお腹は空いていないのですが、温かいものを少し胃に入れて、ぐっすり眠りにつきました。

ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間〜DAY 1〜

3年間保留していた海外研修、いよいよ行える日がやってきました!今回はコロナ禍で色々現地状況も変わっていることに不安を感じている方々の声を反映し、通常の現地集散型ではなくツアー形式で出発から帰国までみなさんで動くという形を取ることにし、数ある旅行会社の中でも懇親丁寧な手配をしてくださることで有名なユーラシア旅行社さんにお願いしました。

燃料費高騰、ヨーロッパのインフレ、円安…と決して海外旅行をするのによい時期ではないのですが、そんな中ご参加いただいたみなさまに感謝です。

羽田空港には集合時間にユーラシア旅行社さんのスタッフが迎えてくださり、時間通りに出国。

今回のご参加者は5名、奇しくも全員女性で全員一人参加、年齢層もプロフィールも似通っているのか、みなさんでLINEグループを作り、あっという間に仲良くなりました。

ロンドンまではBAで直行便、ウクライナ戦争で飛行時間が伸びたものの直行は助かりますね。当初はパリ→ロンドン、にしようとしていましたが、チャーズル3世の戴冠式に重なって交通規制がされることや、食事が美味しい場所が最後の方が旅の思い出として印象がよい、ということでこの順序を入れ替えたのですが、BAの機内食が意外や意外、美味しくて拍子抜け。

14時間半近くのフライトでロンドン・ヒースロー空港に到着。時差でちょうど現地は夜ですので、このままホテルで眠れば明日朝から動けます。

ロンドン在住のアシスタントさんが空港に出迎えてくださり、ケンジントン地区のホテルへ。空港から近いので30~40分でホテルへ到着。かつて日本人観光客がたくさん泊まっていたであろうことを示すこんなプレートも!

ロンドンの夜は若干寒いのか、部屋にはセントラルヒーティングが入っていました。今夜はバタンキューでみなさまお休みに。そうそう、お水を羽田空港で買っておいてよかったです。羽田空港では100円、ホテル内で買うと3.99£=700円以上!!物価高をひしひしと感じながら眠りにつきました。

2023年度、8名のアンティーク・スペシャリストが公式認定!

アンティーク検定試験の1級取得者のうち、公式にアンティーク・スペシャリストに認定されるには年1回開催される講習会に参加することになっています。アンティーク検定の各級の資格は永久に有効ですが、最上位であるアンティーク・スペシャリストは「アクティブな」資格であり、現在でもアンティークの研究を続けている方々をスペシャリストと公式に認定しています。

昨年、一昨年はまだコロナ禍でもあり、本講習会の時期はタイミング的に講習会会場も緊急事態宣言で前日に休館になったり、県外への移動を控えるような圧力がかかっていたりで会食を行えるような状況ではなかったのですが、そもそもアンティーク・スペシャリスト講習会は、和やかにみなさんで会食&懇親をしつつ、発表を通してそれぞれのスペシャリストが思っていること、感じていること、新しく発見したことなどを意見交換しつつ、更なる好奇心を高めていきましょう、という会です。

装飾美術工芸の世界は範囲も広く、誰もがすべての分野に精通しているわけではありません。家具に興味がある人、銀器に興味がある人、版画が好きで集めている人…様々です。お互いの興味のある分野のことを紹介し合いながら、未だ知らない世界についても知識を分け合っていければ、という趣旨で行っています。

今年はようやく会食も可能な雰囲気になりましたので、まずは会食&懇親会から。ホテル・メトロポリタンの25階にあるダイニング・バー Ovest の個室にて、今月のテーマである「メキシコ」風ランチコースをいただきました。メキシコ料理のフレンチコース風でしょうか、アペタイザーまたはスープ、タコスまたはパスタ、お肉かお魚、デザートの4コースで美味しく頂きました。フランス料理ではあまり使わない香辛料がアクセントとして、料理の味をエキゾティックながらも上品に引き出しています。

ランチ後は場所を東京芸術劇場へ移動し、講習会です。まずは監修者の岡部昌幸先生のお話。最近リニューアルされたご実家を、アンティークを取り入れたインテリアにする決心をされたということで、アメリカのご友人から頂いたティファニーのランプや1940年代のアンティークのキャビネットをご披露いただき、それらにまつわるお話、また先生自ら手掛けていらっしゃる展覧会やプロジェクトのお話もいただきました。

続いて小山ひろ子先生による、「絵画の中の手芸・アンティーク・レース」のお話。永年手芸出版社の編集のお仕事をされていた先生は、お仕事の傍ら個人でアンティーク・レースの研究や蒐集を行っていたのですが、その資料的コレクションをお持ちいただき、ヨーロピアン・レースの歴史をフェルメールの「レースを編む女」の絵画から紐解いてご説明いただきました。10時間ほどの濃く深いレクチャーを20分に縮めた内容で、消化不良を起こした参加者続出・・・これは是非、アカデメイアでシリーズものとしてお送りしたいと思います。

そしてラストは中山久美子先生の最新コレクション「ちりめん本」について。中山先生はかつて版画やポスターのコレクションを多く持つ川崎市市民ミュージアムで学芸員をされていた方ですが、このちりめん本も木版印刷です。和紙に印刷し、ちりめん状に加工して和綴じした絵本のことを「ちりめん本」と呼び、明治中ごろから昭和10年ごろまで作られていたもののようです。外国人の日本土産として人気が出たことで、外国人向けを意識した内容になっているとのことで、今回は中山先生が手に入れられた4冊をお持ちいただいたのですが、どれもこれも「可愛い」「愛らしい」という声が上がるものばかり。果たしてこれは西洋アンティークの仲間入りをしても良いものなのだろうか?という疑問と共にご発表をいただきました。

本講習会は何かの答え合わせをするような研究発表会ではなく、答えのない問題について、色々考えを述べたり、疑問や思いを提起したりする場なのですが、発表者&参加者のみなさん全員で実りのある意見交換会となりました。

予定時間を若干オーバーしましたが、監修者よりスペシャリストの方々へ認定証が交付され、2023年度のアンティーク・スペシャリスト講習会は終了しました。

マラカイトのパリュールの謎とカメオ

アカデメイア「宝飾品 〜肖像画の中にみるジュエリー〜」第3回、肖像画はデジレ・クラリーを取り上げました。デジレと聞いて、ああナポレオンの元婚約者で後にスウェーデン王妃になった人だ、とわかる人は相当の歴史オタクでしょう、日本では一般にほとんど知られていない人物といってもよいと思います(日本語ウィキペディアは作成されていますが)。

デジレ・クラリー

元デジレが所有していたこの美しいマラカイトで作られたパリュールは代々デジレの子孫に受け継がれていった後、1913年からノルディック博物館にて収蔵されています。ところがデジレがこのパリュールを身に着けて描かれている肖像画は今のところ見つかりません。

デジレのパリュール(現ノルディック美術館所蔵)

そもそもマラカイトのパリュールというのは非常に珍しいものです。それが高価だからという理由ではありません。マラカイト自体が宝石の中で特に価値のある石という訳ではなく、むしろ柱などの建材に使われるような素材。当時のヨーロッパの一国の王妃がパリュールを注文しようと思ったら、他にも高価な鉱物は沢山あります。マラカイトのパリュールというのは、宝石業界に長くいらっしゃる目黒佐枝先生も、ナポレオンの最初の皇后ジョゼフィーヌのパリュールと、デジレのパリュール、この2つしか見たことがないと仰っています。

ジョゼフィーヌのパリュール

今回の「謎」とは、いったいデジレはこのパリュールを身に着けたことがあったのか否か、もしかしたら自分との婚約破棄をしたナポレオンが結婚した相手ジョゼフィーヌがマラカイトのパリュールを作っていたので、自分も対抗してただ作らせただけではないのか、件のパリュールはスウェーデン王妃になった翌年から10年間くらいの間に製作されており、その時点ではジョゼフィーヌもこの世を去っている、自分はジョゼフィーヌに勝ったのだ、という証として作らせたのでは・・・と色々想像が膨らみます。

マラカイトという鉱物について、カメオやインタリオの歴史も含め、宝石学レクチャーもいつもながらのコンプリートな解説で、あっという間の1時間半でした。カメオも2層だけでなく、8層まで存在するのだとか。今回は4層、5層の作品を見せていただきました。

「人は嘘をつくが、ものは真実を語る」と言われますが、ものの中でも宝石は色々なストーリーが想像されて、更なる好奇心が沸き起こってきますね。

次回はウージェニー皇后とエメラルドについてのお話をいただきます。