アート・ディーラー(画商)とアーティスト

アーティストの名前は知られていても、彼らを世に出したアート・ディーラーの名前まではなかなか後世に伝えられないのかもしれません。メディチ家がルネサンス期の芸術家たちを擁護するパトロンとしての力を持っていたのは知られていますが、近現代においては君主の擁護がなくなった代わりに、アート・ディーラーがその役目を担った、と言ってもよいでしょう。

現在、パリのリュクサンブール美術館で開催されている展覧会、
 

expo_Ruel

             『Paul Durand-Ruel
          Le pari de l’impressionnisme
             Manet, Monet, Renoir』
           『ポール・デュラン=リュエル
                印象派の賭
            マネ、モネ、ルノアール』
 

などは、まさに印象派のアート・ディーラーとしてのポール・デュラン=リュエルの扱った作品を展示しています。パリの後、今年はロンドンのナショナルギャラリー、アメリカのフィラデルフィア美術館を巡回します。
 

アート好きなパリっ子でも、実はデュラン=リュエルの名前を知らない人は沢山います。「そんな画家の名前、聞いた事ない」って、やはりアーティスト名と勘違いしてしまうのですね。
 

ルノワールによるデュラン=リュエルの肖像画

ルノワールによるデュラン=リュエルの肖像画

現在では「ギャラリスト」と言う呼び名もあり、彼らは自らギャラリーオーナーとなって、芸術家を一緒に育て、プロモートしていく仕事ですから、ただ作品を転売するアート・ブローカーとは違う、という自負を持っている人も多いようです。19世紀〜20世紀にかけてのフランスでは、このデュラン=リュエルをはじめ、ヴォラール、カーンワイラー、ギヨームなど、多くのディーラーたちが芸術家を支え、世に送り出したという経緯がありますから、彼らの功績をもっと評価してもよいのでしょうね。

第1回「アンティーク検定」

 11/30(日)、第1回アンティーク検定『アンティーク・コレクター2級』の検定試験が実施されました。会場は東京・上智大学四ッ谷キャンパス。遠方から新幹線で上京して受験された方もいて、受験者のモチベーションの高さが伺えました。
 
 『アンティーク・コレクター』2級は4科目。西洋美術史、西洋装飾美術工芸史、外国語(英語またはフランス語の選択)、現代時事アンティークから構成され、80分のハードな試験です。

 

第1回アンティーク検定 『アンティーク・コレクター2級』

第1回アンティーク検定
『アンティーク・コレクター2級』

   
 中でもとりわけ難しく、従って正答率が低かったのが現代時事アンティークでした。アンティークに興味がある方が受験しているわけですが、個別の分野に関する作品の由来や歴史に詳しくても、現代事情などはなかなか把握していなかったり、数字に弱かったり、そんな苦手意識が伺える結果となりました。

  
 しかし、アンティークのガレやドームは、彼らの時代にはコンテンポラリーの工芸品だったのです。印象派の絵画は、19世紀末には現代アートだったのです。アンティーク、というのは相対的な時代性であって、同時代のものとどこかで断絶しているわけではありません。

  
 この問題の出題委員は、「普通に美術雑誌やライフスタイル誌などぺらぺらめくっていれば書いてある事象で、決して重箱の隅をつついたような問題ではない」と言っていますが、インプットすべき情報が氾濫している現代において、特別なアンテナを張り巡らしていないとなかなか入って来ないのも事実です。今流行の「matomeサイト」で誰かが作ってくれれば便利なのですが・・・。

  
 検定試験は、すべての採点が終わり、受験者の皆様へは通知を発送する準備をしています。

  
 今回、残念ながら不合格となってしまった方も、次回は是非この「特別なアンテナ」を張って、再チャレンジして頂きたいと思います。

ナポレオン1世の二角帽子、オークションで高値落札!

 11月16日、フォンテーヌブローにて世紀のオークションが開かれました。
ナポレオン1世の愛用品などゆかりのある品物が1000点余り、モナコの宮殿からの出品物です。
  

 中でも注目を集めていたのは、ナポレオンが1800年、マレンゴの戦いのときに着衣していた、二角帽子。尖った部分が前後でなく左右に来るように冠るのですが、これは戦場で目立つためだった、と言われています。
 
 

ナポレオンが冠っていた二角帽子

ナポレオンが冠っていた二角帽子


 

 落札したのは韓国人で、評価額40万ユーロに対し、その4倍以上の188万4千ユーロの値が付いたということです。
 

 このように、アンティークの美術工芸品の中には、その品物そのものの価値よりも、誰が所有していたか(ナポレオン皇帝)、そして来歴はどこなのか(モナコ宮殿)、という付加価値が品物の値段を大きく左右することがあり、これもその一例と言えるでしょう。
 

 ちなみにこの帽子を始めとする数々のコレクションは、モナコのアルベール王子の曾祖父であるルイ2世(1870-1949)がコレクションし、その後はモナコ宮殿の併設美術館にて展示されていたもの、故事来歴はハッキリしています。
 

 もしも同じ型の帽子で、同じ年代のものがあったとしても、一般人の所有品であればこれほどの値は付かず、単なる歴史的服飾品としての価値に留まってしまいます。
 

 ワールドカップで有名なサッカー選手が着用していたユニフォームが高値で売買されているのと、まあ似た現象ですね。
 
 

アンティークの動向とアートマーケットのニュース

 アンティーク検定の2級は今月末に行われますが、その中に現代時事アンティークという科目があります。これはなあに?と思われる方が多いのですが、アート(装飾美術工芸品を含む)が市場でどのように取引をされているのか、何が人気があって何が今は底値なのか、そういった事情を知っておくのも、コレクターにとって大切なこと。自分が好きでコレクションしている分野のものが、それほど高くない時代と、高い時代、というのは明らかにあります。
 

 例えば銀器。アンティークを扱うお店では常に存在するアイテムですが、スターリングシルバーと呼ばれる純銀製のお値段は、30年前よりも現在の方が30%ほど相場が下がっています。
 

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 これは恐らくこれまで持っていた人が、もう手入れも大変だし、家族でほしがる人もいないし、多くの人を呼ばなくなったし、といって市場に売り(供給)、一方で購入する方は、こんな12人分のセットは要らない、純銀は重くて大変だし、シルバープレートでも十分(さらには、ステンレス製の方が食洗機にも入れられて便利)、牡蠣は家では食べないから牡蠣のフォークなんて要らない、凝った料理はあまりしないから、肉を切り分けるこんなナイフは要らない、と、ほしがる人は減り(需要)、需要と供給で値段の決まるこの世界のこと、美しくて素晴らしいもので価値があるものでも、値段は変動していきます。
 

 日本でもバブル時代に高値のついた印象派、ガレやドームのガラス器、今はどうなっているのでしょう。
 


 

 と思っていたら、11月5日のNYクリスティーズにてエドゥアール・マネの晩年の作品「春」がオークションに出品され、予想落札価格3500万ドルを遥かに上回る6510万ドルで落札されました。マネの最高価格の更新で、まだまだ印象派は世界的に人気がありますね。
 

北斎とジャポニスムとアンティーク

 東京・上野の森美術館では「ボストン美術館浮世絵名品展・北斎」が連日賑わっていますが、パリのグラン・パレでも、北斎展に朝から人が並んでいるようです。
 
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 北斎はジャポニスムの元祖、というのも1856年、フェリックス・ブラックモンが北斎漫画を目にしたことから始まったと言われているからです。
 

 19世紀後半の万博の時代、ロンドンやパリでジャポニスムが大流行、展示物も飛ぶように売れたと言います。薩摩藩、長州藩、幕府それぞれが万博で出展した日本の美術品・工芸品に影響を受けて、欧米の工芸品もジャポニスムを取り入れ、その集大成が1900年のパリ万博と言えるのでしょう。
 

バカラのジャポニスム/オパリングラス

 

 
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アヴィランドのジャポニスム

 

 
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ガレのジャポニスム

 

 
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